この素晴らしい世界に「私のタルシスを!」   作:Romanov

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大変お待たせしました(汗
まだ一巻も買えていません。



EPISODE.02/SUBTITLE “異世界の住人達” ーHe is a Samuraiー

グッと閉じていた目を開けてみると現代の様式とは大きくかけ離れた建物が複数見えた。

 

続いて広い草原と、青い空が。それに

 

「この空気、なんと清々しいことか。地球のものより遥かに洗練されている。どうやら此処は都心部ではないようだな」

 

辺りを見回してみると前方に大きな影が差しているのがわかった。

 

振り向いてみるとそこには私のタルシスがあった。

 

「ほぅ、まさか本当に私のタルシスを運んでくるとは。あの女の戯言に付き合ってやっただけはある。…さて、駄目元ではあるが月面基地に通信をとってみるとしよう」

 

野晒しにされていた割には何処にも傷を負っていない。

 

フッ…当然か。我が愛馬は大砲でも受けない限り傷一つ付けられないのだからな。

 

なんとか搭乗してみると何やらおかしなことに気づいた。

 

「アルドノアドライブが止まっているだと!?……そうか、私は死んだのだったな。仕方あるまい、もう一度起動させるとしよう。起動せよアルドノア!うん…?起動せよ!!アルドノア!!何故起動しない!!」

 

アルドノアドライブ、この機体の核は一筋の光すら発しなかった。

 

おかしい、一度死んだとはいえアルドノアドライブの起動権を持っている者であれば起動できるはず。それが何故。

 

何度繰り返しても結果は変わらない。アルドノアドライブの接続に問題があるのか、もしくは別の部分に問題があるのか。

 

何れにせよ整備兵ではない私にはこの機体の異常を調べることはできない。

 

「何ということだ。これでは我が愛馬は死んだも同然ではないか。何の為に、何の為にこの世界に持ち込んだのか…」

 

しばらく深く落胆した後、私は徒歩で情報を集めることにした。

 

日はまだ高い。情報を集めるには丁度良い時刻だろう。

 

「ここは…なるほど、どうやら都心部でないのは確かなようだ。だが、それ以上に…」

 

近くの街に入ってみると人々は服を着ていた。当然だな。だがその衣服はそのどれもが近代繊維の織り込まれていないものだった。

 

違和感を覚え足早に街を巡り始めると、完全に時代錯誤なものを発見した。

 

「刀剣だと!?この屋台は刀剣を売り物にしているのか!?あり得ん。機体と銃器が飛び交うこの時代にこの様な物が一体何の役に立つというのか」

 

屋台の主人が冷ややかな顔をしているが、気にする必要はあるまい。値札を見ると四桁の数字が並んでいる。相場は知らないが、どうやら嗜好品という訳ではないらしい。

 

さらに歩くと川が見えてきた。この世界は豊かだな。近くには小さな子どもが飛び込んでいたり、若い女が洗濯をしているのが見える。

 

「幼少の頃に学んだことがある。何百年か前の地球では戦闘を馬に乗り刀剣を交えて行ったと。そして年をとった者は山で芝刈りをし、川で洗濯をしていたと。なるほど、この世界にはほとんど科学技術がないのだな」

 

そうとわかれば尚のことアルドノアドライブが起動しないことが悔やまれる。

 

私はさらなる情報の収集に努めた。

 

 

 

 

「初めまして、佐藤カズマさん。ようこそ死後の世界へ。辛いでしょうが、あなたの人生は終わったのです」

 

と、女神モドキが俺に言った。さっきのやり取りさえ見なければ此処が天国なのかーとか思ったに違いない。

 

さっきの芋虫ダンスさえ見なければ。

 

俺が黙ってジト目をしていると女神は言った。

 

「ご自身が亡くなられたことをまだ理解できないのですね。無理もありません。あんな、あんなぁ…死に方っ、おっ、されぇたのですから」

 

女神が顔に両手を当てて、声と肩を震わせていた。俺の死を思って泣いてくれるなんて、やっぱり女神なんだなぁ…なんて思ってたら口元が見えた。

 

こいつ、人の死を笑ってやがる…!

 

そう、俺は死んだ。女子高生を横から突っ込んでくるトラックから身を呈して守って死んだんだ。

 

家でゲームばかりをして過ごした人生にしてはなかなか名誉な死に方だったなぁ。

 

「いや、死んだことちゃんと理解してますから。してますから!ところで俺が助けた人は、あの女の子は無事ですか」

 

「ええ、無事ですよ。」

 

「よかった!俺の死は無駄じゃなかった訳だ」

 

一世一代の俺の勇気はしっかり実を結んだのか。本当によかった。

 

「もっとも、あなたが飛び出して来なければ傷一つ付かなかったんですけどね?」

 

「はい?いやいや俺が飛び出してなかったらあの子絶対死んでますよ?トラックですよ?傷付きまくりに決まってるじゃないですか」

 

「いえいえ、あのトラクターは女の子の前で止まったんです。それと、あなたの死因はショック死です」

 

……何だって?トラクター?トラックじゃなくてトラクター…?

え、じゃあ何、俺の死因はトラクターに耕されたってこと?いやショック死って言ってたな。どういうことだ?

 

「…プッ、プークスクス!あなたは轢かれそうになったショックで失禁!近くの病院に搬送!医者や看護師に笑われながら心臓麻痺にぃぃ!」

 

「やめろおおおおおおお!!聞きたくない!聞きたくない!聞きたくなぁぁぁい!」

 

「さらに病院に駆けつけたあなたの両親がその死因に思わず吹き出し…!」

 

「やめて!やめて!やめてぇぇぇぇ……」

 

「はぁ〜〜スッキリした。丁度さっきまで鬱憤溜まってたのよね。いいストレス発散になったわ」

 

ぶん殴りたい。こいつを今すぐ名誉毀損の罪でぶん殴りたい…!

 

「あなたには選択肢があるわ」

 

「その下りはさっきも聞いた。俺も異世界に行くよ」

 

「?どういうこと?あなたもしかして私が金髪の人を案内している時からいたの?だったら早く言ってよね。ほらさっさと決めちゃって」

 

そう言うと女神はバサっと書類を放り投げてきた。なんという変わり身だろう。一気に態度が悪くなった。……いや、大して変わってないか。

 

足元に散らばっている紙にはチート能力や装備の説明が書いてあるんだろうが、今の俺にとってはどうでもいい。あいつが投げてきた紙を拾って読む気にはなれなかった。

 

「……わかった。決めたよ」

 

「あら、案外速いわね。じゃあ魔法陣から出ないように立ってて」

 

「俺が持って行くのは、あんただ」

 

俺がそう言うと女神の足元にも魔法陣が現れた。ザマァ見ろ。

 

愉悦に浸っていると背中に大きな翼を持った女の子が降りてきた。あれが天使ってやつか。やっぱ可愛いな〜。

 

「ちょっ、なにこれ、え、え、嘘でしょ?いやいやいやぁ、おかしいでしょおおおお!?無効でしょ!?こんなの無効よねぇ!!」

 

フフフフフ、どうやら女神を引きずり込むことに成功したようだ。

 

「アッハハハハあんたは俺が持ってく『モノ』に指定されたんだぁ!女神ならその神パワーとかで精々俺を楽させてくれよ!」

 

「いやぁ!こぉんな男と異世界行きだなんていやぁぁぁ!」

 

ウワァーハッハッハッハッハッハという俺の笑い声をBGMに俺たち、もとい俺とコレは異世界に旅立った。

 

………

 

……

 

 

「おおっ!異世界だ、おいおい本気で異世界だ。え、本当に俺ってこの世界で魔法とか使ってみたり、冒険とか、しちゃったりするの!?さようなら引きこもり生活、こんにちは異世界!この世界の俺、ちゃんとやり直せるよ!」

 

俺が感動に震えていると、足元に大きな影が差しているのに気づいた。振り返ってみると、白い巨人が膝まづいて俺を見下ろしていた。

 

「おい、これロボットだよな。どう見てもロボットだよな。…さいっっっあくだよ!誰だよ異世界にロボット持ってきて置きっ放しにしてる奴は!俺の感動が台無しだよ!!」

 

深いため息をつきながら俺は近くの街に向かって歩き始めた。

 

が、女神が泣きじゃくって付いて来ないので引きずっていった。

 

嗚呼、夕暮れだよ。なんだろう、せっかくの異世界転生なのにどうしてこんなに悲しいのかなぁ。

 

どうにかギルドに着いた頃、女神はすっかり元気になっていた。

 

依頼を終えてきた冒険者達が多いようで、ギルド内はドンチャン騒ぎになっていた。

 

「おぉぉぉい!酒が足りねえぞぉ!!」

 

「見てくれよこの装備!昨日の報酬金で新調したんだぜぇ!」

 

「アークウィザードです!好きなものは爆裂魔法!特技は爆裂魔法!趣味は爆裂魔法です!!!」

 

おおー、賑わってるなー。さすが冒険者ギルド。辺りを見るとすぐに受付らしきものを見つけた。あそこで冒険者登録すればいいんだな。

金髪で超巨乳のお姉さんが居たので、すかさずそこに並んだ。

 

「はい、今日はどうされましたか?」

 

「えと、冒険者になりたいんですが」

 

「では最初に登録手数料がかかりますがよろしいですか?」

 

はいはい、、、登録手数料?振り返って金があるか女神アクアに催促してみるとフルフルと首を振られた。……斯くなる上は仕方ねえよな。

 

数分後、俺たちは賑わっているパーティーに話しかけながら何とか2,000エリスを借りてきた。

 

「あぁ、はぁ、確かに受け取りました」

 

お姉さんが俺たちに同情するような目を向けてきたのは気のせいだろうか。

 

「それではお二人共、こちらの水晶に手をかざして下さい」

 

 

 

 

「ふむ、散策を続けている内に夜も大分更けてきてしまった。そろそろ街に戻らねばなるまいな」

 

私は街の中をあらかた調べ終わり、現在は街から少し離れた場所に来ていた。

 

「しかし雨風をしのげる場所が馬小屋しかないとは。屈辱だが耐える他あるまい。明日は恥を忍いででも金銭を稼がねばな」

 

暗い先行きに足取りを重くしながらも私が意を決した時、背後から何かが近づいてくる気配がした。

 

「何者だ!」

 

背後には地球のカタフラクトと同じくらいのサイズの蛙が2体携わっていた。

 

私は反射的に杖を回し鞭へと変形させ一匹の蛙に放った。その間わずか3秒。我ながら過去最速の一撃であったに違いない。

 

蛙はエエェェェと鳴き声を上げてはいるが、この攻撃では死に至そうにはない。

 

「なんとか攻撃を凌ぎきり街まで撤退せねば!」

 

飛んでくる舌を鞭で相対させながらジリジリと後退する。

 

ここで私は失念していた。舌の攻撃ばかりに気を取られ足元を見ていなかった。

 

石に躓き私の体は背中から倒れてしまう。

 

「不覚!」

 

蛙はここぞとばかりに舌を私の足に絡ませ、軽々と私の体を口まで持っていった。

 

「クッ…ここまでか……」

 

その時聞こえてきたのだ、聞き覚えのある男の声が。

 

『抜・刀』

 

突如、私を飲み込まんとしていた蛙が両断される。

 

同じようにもう一体の蛙も血しぶきを上げる。

 

「御無事ですか?クルーテオ伯爵」

 

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