よくよくありふれたお話。

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初めて持った武器を俺は今日売った。

 最近、どうにもモンスターに攻撃が通りづらく感じる。上位へとなって実力も付けて、相手の攻撃の隙に攻撃を当てる事も巧くなって。けれど、幾ら殴っても効いている感じがしない。クエストの時間が掛かる。最悪の時は、タイムオーバーで失敗することもあった。

 

 武器がやはり悪いのだろうか。そう思い、自分がハンターになってからずっと使っているベルダーハンマーに目を向ける。柄の部分を指で撫で、岩の質感を指に覚えながら指を離す。

 

 365日。ハンターとして生きていく中で、長い間一緒にいた。教習所を抜けハンターとなった自身に父が初めてくれたプレゼントだった。

 

 新しい武器は用意した。愛着の残るこの武器をアイテムボックスに眠らせておく──それもいいとは思う。けれど、ここで手放しても、そこでこいつが完全に死ぬわけではない。人から人へ。思いはバトンのように受け継がれていく。愛した武器に拘って命を落とす事なんて、馬鹿の所業でしかない。

 

 いや。分かっている。結局は自分の腕不足のせいだって。自身が弱いせいで、こいつを十全に扱い切れてなかったせいでクエストが終わらないんだ。

 

 何時か、一つの武器に執着する自身を愚者だとだれかが罵った。初心者ハンター用の武器に執着して新たな武器に乗り換えず、そうしてクエストに失敗する様を見てだれかが笑った。

 

 もう一度、柄を撫でる。切れ味が落ちているかもしれない。砥石をポーチから取り出して、丁寧に、別れを惜しむ思いを込めて研いでいく。

 

「ありがとう」

 

 お前には随分世話になったな。ハンマーの頭を水で濯ぐ。定期的にメンテナンスもしてもらって、最大強化までして。第一線で活躍できる程可能性を秘めたこいつを扱い切れなかったのは自分だ。

 欲を言えば、こいつとずっと一緒に狩りをしたかった。初めて貰った武器の重みは、若い自分には充分と重かった。初心者用に軽量化されているとはいえ、初めて持った石造りの武器は重みが違った。今まで持った事のない程の重さだった。

 

 それは、命の重さだった。

 

 

 ◇

 

 

「ありがとう、親父」

 

「いいってこった。……その武器ももう、見れなくなるのか……淋しくなるなぁ」

 

「……こいつのメンテ、本当にありがとう」

 

 もう一度、岩肌を撫でる。初心者が扱える武器として売りに出せるだろう。

 

「……思えば、長かったなぁ」

 

「……そうですね。俺が駆け出しの頃から、親父にはこいつを見て貰ってた」

 

「今や龍歴院最強のハンター一歩手前か。……本当に、こいつは長かったもんだ」

 

 苦節幾年。駆け出しとしてハンターデビューをしてから何年経ったんだろう? こんなにも長い付き合いになるとはこいつも、思ってなかっただろうな。

 

「そろそろ行きます。──明日は、別の武器かもしれませんね」

 

「かもな。……今まで、お疲れ様だ」

 

 親父はそう言って、ベルダーハンマーに目を向ける。

 

 一歩、足を進めた。

 

 行こう。──フリマへ。

 

 

 ◇

 

 

 座って、待った。こいつを求めてくれるハンターを。

 

 待って、待って、待って。人は此方に目を向けて、そして直ぐに逸らした。

 

 駄目か、と思った時。家族連れの男ハンターが此方の前に立った。

 

「その、ベルダーハンマーを貰えないか?」

 

「……はい。300ゼニーです」

 

 そういうと、男は驚いたように目を見開く。

 

「そんな値段でいいのか?」

 

「ええ。いいですよ……こいつを、使ってくれるなら」

 

 そういうと、男は笑って言った。

 

「この子は昨日ハンターになったんだけどね? この子の為の武器だ……この子は、何でも使えなくなるまで使う子なんだ。きっと、ずっと使ってくれるさ」

 

 そう言って男は少女の頭に手を載せる。少女は無邪気に、此方に笑い掛けた。

 

 釣られて自身も笑んだ。

 

「安心した──」

 

 300ゼニーを受け取る。そうして、ベルダーハンマーを渡す。

 

(ありがとう、お前には随分世話になったよ)

 

 人から人へ。物は繋がれていく。

 

 そして、別れがあれば出会いもある。

 

 

 ◇

 

 

「──ハンターになりたい?」

 

「……いや、駄目ではないが……」

 

「……」

 

「そうだ、■■。なら、君にはこれを あげよう」

 

「お母さんも、俺も、お前位の頃に使っていた武器さ」

 

「名前はね──」

 

 

 

 

「ベルダーハンマー、って言うんだ」




リハビリ作でした

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