馬越 界花(園長先生)
自称65歳。
りんくやこむぎ、そらがかつて通っていて、現在はほくとの妹・ののかやさち、クインシィが通っている『大泉こども園』の園長先生。
おっとりとしていてそれでいて明るく、お茶目で優しいおばあさん、といった趣の老婦人。
元々は先代園長であった夫とともにこども園を切り盛りしていたが、20年ほど前に夫が突然他界。以後は彼女が園長となってこども園を経営している。
人生で経験した体験談を園児たちに語って聞かせるのが好き。しかし魔女や魔法、妖精が登場したりするなど、ちょっとフィクションも混ざっているようにも聞こえる。
彼女自身も『魔女』を自称し、魔法が使えると豪語するが、実際に人前で使って見せたことが無いため真偽のほどは定かではない。
『ママが5人いた』『幼稚園を卒園する前に小学校を卒業した』と語るなど、ちょっと変わった幼年期を過ごしていたことは想像に難くない。
また一時期医師をしていたことがあるらしく、子供たちの健康管理や急病の際の応急処置にも精通している。
このような人柄と個性もあり園児たちには大人気で、保護者達からの信頼も厚い。
卒園後も彼女を慕って、学校の放課後にこども園を訪ねてくる卒園生は後を絶たず、卒園生の子供がまたこのこども園に入園する、というケースもままある。
りんくも彼女を慕っていたが、最近は疎遠になっていた。
――――――――――
先週のはぐプリで久々に『ネジがブッ飛んだプリキュア』を見た気がする稚拙です。
さて今回、書きたいことを書いてたらトンでもない文字数になってしまったので、区切りもいいので投稿させていただきました。
お遊戯会前日、それぞれの"戦い"を送信!
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―――――
―――――
―――――銀河の
―――――
―――――『
―――――待っています
―――――選ばれしヒトの子よ
―――――メモリアとともに、私に逢いに来る、その時を
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―――――……ゃん!りんくちゃん!
―――――りんくさん、ねぇ、おきてよぉ~
―――――りはーさるのさいちゅうに、よだれたらしていねむりなんていいごみぶんですの
――――――――――
―――――こころちゃん……それはちょっとどんびきなので……
「―――――……………………んぁ?」
あ……あれ……??
私、いつの間に寝ちゃってたの……??
あ~、アレか……最近、コンクール提出用の"ホン"を書きながら、ネットもやってプリキュア鑑賞もやって……
働きづめってヤバいかも……『フレプリ』の20話ラストで、ラブちゃんたちが過労で倒れた件もあるし……
プリキュアと学業と趣味って、全部こなすの大変なんだねぇ……
―――――っていうか、さっき、何か頭の中に響いてきたような……
どこかで……聞き覚えのある声だったけど…………
…………、あれ?
誰の声だったんだろう?
それに……なんてっ言ってたっけ……目が覚めたら忘れちゃった……
とっても漠然としてて…………でも、すごく重要なコトを言ってたような気がする…………
「りんくちゃん、おねぼーさんだね」
「ご、ごめんね……ん、ん~~~……」
私をのぞき込んでいたのんちゃんとみんなに笑顔を返して、思いっきり伸びをする。肩や首筋のあたりからこきこきと音がした。
「まったく……ほんばんはあしただというのに、ぷろでゅーさーがこれではなんだかふあんですの」
「―――――しかし、
「ほくとのにーちゃんとえんちょーせんせいも、うらかたでてつだってくれることになったしな!」
実はこの劇、音楽を流したり、効果音を鳴らしたり、セットを変えたりとか―――――
私、監督兼脚本兼演出兼音響監督兼大道具担当だったんですよ……一度通し稽古してみたんですが、これがまた大変で……
10分ほどの劇なんだけど、終わった後ヒィヒィ言いながら息を切らしてたところに、それまで劇の全体の様子を見ていたほくとくんと園長先生が、私に声を掛けてきた。
―――――よかったら、効果音手伝うよ?……みしんとみとん?あぁ、それなら大丈夫!リハーサルも終わって、あとは自主練だけだからさ!
―――――りんくちゃんひとりで大変でしょう?私にお手伝いできること、ない?
正直、涙が出るほどうれしかった。ほくとくんと園長先生のおかげで、『裏方作業』が大幅に負担減になったから。
それに、園長先生には裏方以外にも『あるお願い』をしようとも思ってたし、まさに渡りに船!
今日はほくとくんいないけど、当日は私といっしょに裏方としてがんばってくれることになっている。本当に感謝だよ~……
「よっし!明日の本番に向けて準備は万全!後は最後まで気を抜かないこと!がんばろうね、みんな!」
「ねーちゃんこそ、しっかりたのむぞ?」
「りんくさん、ほんばんでいねむりしないでね♪」
「うをッ!?……らんかちゃんいつになくキビシい……」
本番は明日。でもみんな、緊張とか、気負いとかは全然ない。6人全員、笑顔で本番を迎えられそうだ。
私も、みんなのために一生懸命頑張ろう……!
《!!りんく!》
いきなり、ポケットの中からメモリアが叫んだ、その瞬間―――――
けたたましい音を立てて、窓の防火シャッターが一つの例外なくいきなり降りてきて、遊戯室が真っ暗になった。
「―――――なんだ……!?」
「どぇぇ!?こしょーかぁぁ~~!?」
いきなり視界を封じられて何も見えない中で、子どもたちの声だけが聞こえる。この暗闇に怖くなったのか、泣き出す声がほかの部屋から聞こえる。ということは、遊戯室だけじゃなくって、他の部屋もこんな状態に……!?
「りんくちゃん!」
懐中電灯を持った園長先生が遊戯室に飛び込んできた。
「「「「「「えんちょうせんせい~~!!」」」」」」
のんちゃんたちが光を頼りに園長先生に駆け寄る。
「先生!これって……!?」
「わからないわ……どこも壊れてるわけじゃなくって……」
「園長先生!」
年中組の担任の松岡先生も、懐中電灯を手に遊戯室にやってきた。
「外に出れるドア、どこも電子ロックがかかっとって、出られへんようになってます……!それに、外に連絡しょうにも、何故かスマホが圏外になっとって……Wi-Fiも使えまへん!」
「そう……先生はみんなと一緒にいてあげて。怖がってる子がいたら、お願いね」
「……!わかりました!」
教室へと取って返す松岡先生。先生の言葉から察するに、私達―――――
―――――……閉じ込められた!?
この状況……そしてこの手口、あの時と似てる。
初めて、私がネンチャックに狙われた時と。
言うまでも、考えるまでもない。こんなことをするのは、ジャークウェブしかいない!!
「メモ―――――」
「りんくちゃん……」
ネットコミューンを手に取ろうとしたその時、私の服の裾を、震えながら引っ張る手が見えた。
そして、私を見上げてきていたのは―――――
「!……のんちゃん……」
今まで、見たことのないくらいの、不安いっぱいののんちゃん、そしてみんなの表情を見た時―――――
一瞬―――――葛藤した。でもそれはすぐに答えが出た。
私はメモリアのユーザーで、プリキュア見習いだけど―――――
でも―――――
「大丈夫、きっと大丈夫―――――」
私はのんちゃんと目線の高さを合わせて、そっと抱きしめてあげた。
―――――ここで、こんなに怖がってるみんなを放っておいてまで、戦いに行くことなんてできない……!
どっちにしろ、みんなの目の前でメモリアをネットに送り出したり、ましてや変身なんてできるワケない。
『今のみんなが必要』としてくれる『私』は―――――『東堂りんく』。『キュアメモリアル』じゃないんだから。
―――――~~~~。
ポケットの中がふるえる。ゆっくりと、私はポケットの中のコミューン、そのディスプレイに手を触れて―――――
LINK〈ごめん、メモリア……私、みんなのそばにいてあげなきゃ
―――――ブラインドタッチだっ。
私の特技、その3!『スマホブラインドタッチ』!
スマホの文字入力パターンを全部頭に入れておけば、脳内にスマホのキーボードを浮かべて入力ができるのダ!!
きちんと入力できたかは見てないからわからない―――――けど。
メモリアなら、たとえキュアネット空間に行けないとしても、何かの打開策を考えてくれるはず。
みんなのために―――――頼んだよ、メモリア……!
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「無茶振りだぁ~~~~~~~!!!!!???」
あたしは思わず叫んでた。
ぷかぷか浮かんでいる、〈ごめんめもり
状況はある程度、あたしもわかってた。さっき、一瞬だけだけど―――――バグッチャーの気配がした。
閉じ込められて、りんくがこども園から出られなくなったこともわかってる。
これって……前にトゥインクルが話してたことと、状況が似てる。
―――――変身しなきゃ!って思っても、カンジンなところで視線があったり、人前だったりってことがあったしね……
それに、りんくやみんなといっしょに見た"ぶるーれい"でも、『人前で変身しちゃダメ』とか、『正体は絶対誰にもないしょ』とか、プリキュアたちといっしょにいる"妖精さん"たちがしきりに言ってたのを見た。
りんくとあたしがキュアメモリアルに変身して、パンチでシャッターを壊せば、こども園のみんなを助けられるんだけど……
「だ、ダメダメ……!変身をみんなに見られちゃう……!りんくが変身するトコ、見られちゃダメだよぉ……」
う~ん、コレって八方塞がりじゃ~ん……
しょーがない、ここはあたしが今できることをしなきゃ……!
え~っと……まずは電波のチェック……圏外になってる!これじゃ、こども園の外に助けを呼べない……!データとも通信できないし、どうしよう……!?
でも、こども園の『中』……ココだけで完結してるセキュリティのシステムになら、何とかつなげられる……こども園の中の様子だけでも、確かめておかないと!
アクセス―――――ここだ!ここをこ~して、と……よし、出た!こども園の監視カメラ映像!
園長室、年長さんの教室、遊戯室に絵本の部屋……みんな真っ暗になってる。泣きじゃくってる子供たちがほとんどだけど、みんなに先生がついてる。一人ぼっちになってる子はいない……
その中で―――――気になる部屋があった。普段、ほとんど子供たちが寄り付かない―――――
―――――給食室。
頭の後ろに2つ、輪っかがくっついてるような髪型の先生が、あわてた様子で給食室の中を駆けずり回っているのが見えた。
なんだろう……?なんかイヤな予感がする―――――
音声をいっしょに拾ってみると―――――
《No~!No~!Stoooop~!!止まらないヨ~~!!》
《!?宮原先生、どうしたの!?》
《Ah、宍戸先生!水道の水が止まらなくっテ!水浸しになっちゃウ~!!》
見ると、給食室中の水道の蛇口が、滝のように水を出している。
「……まさか!?」
あたしは他の部屋の監視カメラもチェックしてみた。すると、廊下にある手洗い用の蛇口までもが、水を出し始めていた。
―――――間違いない。ジャークウェブの今回の手は、ネンチャックの時と似てるようで、違う……!
これは……
「水攻めだぁーーーーーーーーー!!!!」
このままじゃ、こども園が水浸しに……っていうか、みんなおぼれちゃう―――――…………!!!
りんくがののかたちといっしょにいる以上、あたしもネットコミューンから出らんない……
あたしとりんくが動けない今―――――頼りになるのはデータとほくとだけ……!
今回ばかりは他力本願させて、お願い!りんくとみんなを助けてあげて―――――!
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明日はのんやみんなの劇が上演されるお遊戯会の本番だというのに、今日に限って補習とは、我ながら情けない……
理数系が苦手な僕にとって、数学は鬼門だ。またしても平均点を上回れなかった。
もはや補習の常連と化した僕に、数学の西尾先生も困り顔だった。先生……僕も来たくて来てるわけじゃないんです……
《腕っぷしはいいけど脳筋ってある意味お約束だよな♪》
その声にネットコミューンを手に取ると、画面にはにししと笑うデータの姿。
「それ、データが言えるの?」
《そりゃぁ言えるぜ?アタシ、学校や"お師さん"のテスト、100点以外取ったコトねーもん》
「ほ、本当!?」
《前にも言ったじゃんかよ。アタシは見たコト聞いたコト、余さずアタマに入っちまうんだ。ノートなんざ書く必要ねーし、テストって見たコト聞いたコト、コピペすりゃいいだけの"作業"じゃねーか》
そういえば前にデータが言ってた。データは辞書のアプリアンで、絶対記憶能力を持ってる―――――と。
データにしてみれば、要点がカンペキに記されたノートを持ち込んでテストに臨めるようなものなんだろうけど……
「でもソレ、僕にはマネできないよ……」
《んあ?そーか?……だったらよ、アタシが勉強見てやろっか?》
「え?……でもデータ、中学の勉強わかるの?」
《わかるもなにも、アタシも14だし、こないだまで学校や"お師さん"から習ってたコトとほとんど一緒さ。それに、先生の言葉やら板書やら、全部アタシの頭ン中に入ってんだぜ?そんじょそこらの塾や家庭教師よりも、ウマく教える自信はあるぜ♪》
「……データって……僕と同い年、だったんだ……」
《驚くのソコかよッ!?》
なんか、のんを更にヤンチャにしたような印象だから、てっきり僕よりも年下だと思ってた。僕と同い年だったとは予想外だ……
……でも、データに勉強を教えてもらえば、これからのテストも―――――
《!ほくと!バグッチャーだ!!》
スニーカーに履き替えて、生徒玄関を出ようとしたとき―――――切羽詰まった声と、コミューンの振動。
またあいつらか……!
「場所は!?」
《遠かぁねぇけど…………ッ!?おいほくと!!バグッチャーの反応、のんのこども園からだ!》
「……!!!」
どくん、と、心臓が強く打つのを感じた。
まさか、のんやみんなをジャークウェブが狙ってきたのか……!?
それとも―――――
―――――それじゃ、先にこども園行ってるね!ほくとくんも補習、がんばってね~♪
―――――東堂さんが狙われた、のか……!?
どちらにしても―――――否、
「急ごう、データ!!」
《ああ!
もう……もう、"あの時"のような思いをするのは御免だ……!!
手遅れになる前に……手の届く、そこにいる内に―――――
のんも、東堂さんも、みんなも―――――
必ず―――――僕が……!!
――――――――――
『……!あれは……!?』
ビルからビルに飛び移りながら、全力でこども園に向かっていた僕は、こども園の上空に異質なモノを見た。
水が―――――巨大なボール状になって浮かんでいた。
そしてその中で、魚を思わせる鋭角的な
『くッくッくッ……遅かったな
『スパムソン……!!』
こども園のとんがり帽子みたいな赤い屋根に、腕組みをしながらヤツは立っていた。
僕はこども園全体を見渡せる、こども園から道を挟んだ向かいにある、4階建てのビルの屋上に着地した。
よく見ると―――――こども園にある扉や出入り口、窓といった外部に通じる場所、そのすべてが鋼鉄のシャッターで覆われていた。
園庭に出る教室のドア、その下から水が漏れだして、コンクリートが湿って変色している。
『何をした……何をしてるんだ!!』
『捕獲作戦であるッ!!プリ
やはり、コイツは東堂さんがここにいることを見越してた……!のんやこども園のみんなは、それに巻き込まれて……!
『見ての通りッ、この建造物の完全閉鎖は完了しッ、現在注水工作中であるッ!!1時間も経たぬ内ッ、この建造物は巨大水槽と化すのだッ!!!彼の戦国武将ッ、豊臣秀吉が備中高松城攻略に用いた由緒正しい戦略であるッッ!!!』
『き……さま……ッ!!』
《落ち着け、ほくと!……生体反応は確認してる……!のんもりんくも、みんな無事みてぇだ……!》
僕の視界の中のこども園の建物に、たくさんの赤い光点が灯る。これってもしかして、みんながいる場所なの……?
そして一つだけ、ピンク色に輝く大きな光点―――――遊戯室に重なるこれは―――――東堂さん……!
『よかった……』
心の中で安堵する。まだみんなを、助け出す余地はある……!
中から東堂さんが脱出できないのは、のんやみんながすぐそばにいるから―――――だろう。みんなの目の前で変身なんてできるわけないから―――――
『必ず……絶対に助ける……!だから―――――』
僕は心に強く決めて―――――ビルの屋上から飛び出した。
『―――――待ってて!』
『"それ"を簡単に許すとでも思っているのかッ!』
僕の意志は完全にこども園だけに向いていて、もはやバグッチャーの存在は視界からも心からも飛んでいた。それ故に―――――
『タカナ~~~~~レッッッ!!!!』
頭上から躍りかかった巨大魚型バグッチャーに、完全に不意を突かれた。
『グうッ!?』
ヤツが纏っている水の球体が、まるで巨岩のようにぶつかった。これはただの水じゃない、高水圧の水のカタマリか!?
僕はアスファルトの道路に叩き落され、そのまま水の球体の下敷きにされた。
『圧し潰せッ!!』
『バグッチャァァァァ!!』
超重量が体全体に圧し掛かって……!しかも掴もうにも、水を掴めるわけもなく……!!
五体が封じられて……何もできない……ッ!!
《だったらそれ"以外"を使えばァァッ!!》
視界に、〈EMERGENCY IGNITION〉と赤地に白抜き文字で大写しになったと思うと、ブーツの裏から蒼いイーネルギーの光が噴き出し、僕の身体を強引に押し出した。
とっさに受け身を取って、こども園の園庭、その中心に片膝を突く。
『ありがとうデータ……助かったよ』
《これくらいワケ無いぜ。……で、どーするよ?りんくやのんたちを助けるか?それとも―――――》
『……まずはバグッチャーをなんとかする!相手が"水"なら、これでッ……!』
躊躇うことなく、僕はサモナーから一枚のチップを呼び出して、コミューンにセットした。
《ピカピカぴかりん!じゃんけんポン♪キュアピースっ♪!》
《CURE-PEACE! INSTALL TO DATEAR!! INSTALL COMPLETE!!》
ヤツが水を纏っている魚型である以上、高圧電流が通用しないはずはない!
一撃で仕留める―――――そのつもりで、僕は
大気中の静電気や近くの電線を流れる電気―――――それらすべてを右手に集束させて、全身を駆け巡り、増幅される―――――
両手に作ったVサインから、バグッチャー目掛けて一直線に放たれた電撃が、空気を裂いて驀進し、バグッチャーの纏う水の球に命中した。これに耐えられるはずが―――――
『!?』
思わず僕は目を疑った。電撃が水の球の表面を伝わって、四方八方に拡散するのが見えた。中心にいるバグッチャーに届いては―――――いない!?
『電撃が……効かない!?』
《だったら直接ブチ込んでやれ!!》
《ほくとくん!電キックよっ!!》
何故か目を輝かせながら、鼻息荒くピースが言う。それなら―――――
『……うん!!』
―――――乗った!
どういう理屈かはわからないけど、水に電気が効かない道理はないはずなのだから!!
〈MASKED RIDER AMAZON〉
⇒ 〈MASKED RIDER STRONGER〉
〈SKYRIDER〉
《BEHOLD! CHARGE UP STRONGER!!》
『データ!ピース!やるよ!!』
《任せろッ!!》
《いっけええぇぇ!!》
心の中のデータベースにアクセスして、全身に電流を漲らせる。そしてその電流を右脚に集束させながら、左脚から駆け出し、バグッチャーのはるか頭上へと跳躍した。
僕だけじゃなく、データとピースのシャウトも重なった、三位一体・全力全開の電キック―――――!!
―――――これでどうだ!!
悪いけど、今はお前に構ってるヒマはない!一刻も早く、東堂さんを、のんを、みんなを!助けなければいけないんだ!!
『―――――クッシタリ、シナイ』
『!?』
確かに僕の放った電キックは、水の球体に真正面から命中した―――――でも、"そこまで"だった。
電流はすべて周囲に拡散していて、キック『そのもの』も、水の球に受け止められていた。
『ゴキゲンヨウッ!!』
その言葉と同時に、水の球からさらに噴水のような水流が飛び出し、僕は木っ端のように吹っ飛ばされ、こども園をぐるりと囲う塀にぶつかって止まった。
『か……ッ!!』
息が詰まる痛みと、固定観念を破壊されたことに―――――
僕の心に、焦燥と恐怖が広がっていくのが、わかる―――――
その僕の精神状態に連動したのか、それともダメージの限界か、"ピーススタイル"の変身が解除されてしまった。
『どうして……どうして水がキックどころか、電撃まで弾くんだ……!?こんなの、ありえない……!!』
《ほくと!おいほくと……!》
『だったらどうやればいい……!拳や蹴りが通じない……なら氣弾か……いやダメだ、あの水の球に弾かれる……』
《……落ち着けッ!ほくとッッ!!》
『!!』
―――――心の中の『部屋』で、データが握り拳をその『外壁』にぶつけているのを……
《今のお前はリクツがわかんねぇ上に、技が通じなかったからパニクってるだけだ!テンパったらそれこそヤツ等の思うツボだぜ!?》
『……!』
《とにかくまずは落ち着け、な?……『戦いは焦ったり、冷静さを欠いたヤツから負ける』……"お師さん"もそう言ってたし、お前のじーさんのコトだ、同じようなコト、言われてんじゃねぇか?》
『……言ってた』
《やっぱ、な♪……言ったろ?『アタシが何度だって、お前を正気に戻してやる』って。いい加減学習しろよな、"一心同体の上手い使い方"》
―――――まだまだだな、やっぱり僕は―――――
ひとりではまともに戦えないのが現状だ。そもそもこの"
それなのに僕は、自分ひとりで戦ってると錯覚して―――――
『……そうだね、データ』
僕達は―――――僕とデータ―――――ふたりで―――――
『僕達は……ふたりで、"キュアデーティア"だ!』
決意は―――――固まった。
僕はもう、自分が孤独だなんて、思わない!
《キまったところで知りたくねぇか?……あのバグッチャーの"水玉"に、ピースサンダーや電キックが通用しなかった理由をよ》
『え……?』
《アイツの"水玉"は……たぶん『純水』だ》
『純粋??』
《そっちのじゃねーよ。『スイ』は『水』だ。水以外に雑菌やら不純物やらがなんッッにも入ってねぇ、これ以上なくキレイな真水だよ》
『そ、そんな水があるの……!?』
《お前なぁ……この間の理科の授業で先生が言ってたろ?ちゃんと授業聞いてたかぁ?》
ごめん……理数系はニガテで、授業中、どうにも眠気が差してくる。
それはともかく、水が純水であることがどうして、電気を通さない理由になるんだ?
《水が電気を通すのは、水ン中に入ってる雑菌や不純物が電気を通してるだけで、水はあくまでガイドレールみたいなモンなんだ。水に何にも入ってなきゃ……ガイドレール『だけ』なら、電気は通らない……これが奴の"水玉"に電気が効かなかったリクツだ》
『そんなコトが……!』
《自然界にはまず存在しねぇがな……どうやらあのバグッチャー、水の組成分を自在に組み替えて操れるようだな……しかもアレにも高水圧を内側から掛けてる……バリアにもなるし攻撃手段にもなる……厄介この上ないぜ……!》
確かに―――――バグッチャーが纏っている巨大な水の球体は、まったく濁りの無い、無色透明な水だ。
ああして空気に触れている以上、目に見えない雑菌や不純物が必ず入ってくるはずだけど……
それも水質を変えて、制御しているというなら、やはりバグッチャー……そして取り込まれているプリキュアが、いかに人智を超えた力を持っているかを思い知らされる。
『貴官等の攻撃は無効ッ!まさしく鉄壁無比の要塞であぁるッ!!畳み掛けろ、
『オカクゴ~~~~ッッ!!!』
スパムソンの命令を受けたバグッチャーはドン!!と園庭から浮き上がると、水の球体の頂上から、さながらクジラのように水を噴き出した。噴き出された水が、中空で直角で曲がり、レーザーのように僕に向かってきた!
『!!』
僕は立ち上がり、とっさに回避する。さらにバグッチャーが発射したのか、2発、3発、4発と高圧の水が撃ちかけられる。
《なんだありゃ、近づけねえ!》
『でも、直線的だ!避けるだけなら―――――』
―――――簡単だと思ったのが甘かった。
次に僕が見たのは、バグッチャーが水の球体、その上下左右の4か所から高圧の水が発射され、そのすべてが、まるで空中に見えないあみだくじが仕掛けられているかのように複雑かつ直線的に屈曲しながら、確実に僕に向けて間合いを詰める様だった。
不規則に迫りくる高圧水流、とっさに僕は連続で身をよじって回避した。ほんの一瞬、発射された高圧水流が、アスファルトの道路に『潜る』のが視界の片隅に入った―――――
と、次の瞬間―――――
強烈な『下』からの衝撃が、僕の身体を空へと打ち上げた。完全な不意打ちで、空中で受け身を取ることもできない―――――
そこへ、四方―――――否、上下前後左右、あらゆる方位から無数の集中砲"水"が僕へと襲い掛かり―――――
『ぐああああああああ――――――――――!!!』
いつもよりだだ広く感じるこども園の園庭に、僕は叩き落された。
―――――強い!
今までのバグッチャーもそうだった……でも今回のバグッチャーは、『肌で感じる』強さよりも、『頭で感じる』強さがにじみ出ている。
僕の思考が追い付かない、力ではどうしようもない、僕が追い求める『強さ』とは全くの別方向の『強さ』を、このバグッチャーは
『クックックッ……このバグッ
《
『ぱ、ぱす……??』
またしても理科の授業か。なんか僕、頭痛くなってきた……
《液体ってのは、圧力を加えても体積が圧縮されねえ代わりに、圧力が液体を介してあらゆる面に同じように伝わるんだ。コイツの場合、あの"水玉"の中の水圧を、そのまま外に撃ち出してんだ……空中でグネグネ曲がるのは、おそらく目に見えない誘導レールみてぇなのを打ち出す瞬間に張り巡らしてんだろうな。地面に潜っても勢いそのままに飛び出してくるのももっともな話だな……》
『え……えぇっと……つまり……??』
《……あ、ほくとにはわかりづれぇか……あ~、そーだなぁ…………、!アレだ、"エレクトロファイヤー"だ!》
『ストロンガーの……!?』
《アレだって、静電気を使って砂鉄やらの目に見えづらい金属を導線代わりに使ってんだろ?あれと同じで、アイツは水を誘導する"導線"を空中に作って、水鉄砲をくねらせてんだよ》
『!なるほど……!』
それならわかる。つまりは目に見えない導火線……この場合は導"水"線と呼ぶべきだろうか。
それにしてもデータ、物知りな上に例えが上手だ。こんなデータに勉強を教えてもらえるなら、テスト勉強もはかどるかもしれない―――――
―――――なんて、どうして今テスト勉強のことを考えてるんだ!?今はコイツを倒して、のんと東堂さんを助け出すのが―――――
―――――……コイツを、倒して……?
いや、待て……今この瞬間もこども園への『水攻め』が進んでいて、僕がコイツを倒さない限り、それが終わることはない。
でも実際の僕は、バグッチャーに攻めあぐね、手も足も出せずにいる。このままじゃ遠からず"時間切れ"を迎える―――――
―――――『タイムリミットは近い』……!
そう考えれば、必然的に僕のやるべきことは変わる。今僕がすべきことは、『バグッチャーを倒すこと』じゃない―――――
僕は鋼鉄のシャッターで閉ざされたこども園を見て、確信した。
―――――『みんなを助けること』だ……!!
僕は何をムキになっていたんだ……?そもそもヒーローが戦う理由は、『守ること』であって、『倒すこと』じゃない。
そんな基本的なことを忘れてたなんて―――――
《思い出せたんなら、実践すりゃいーだろ》
心の中から、データがささやく。
《……アタシにいい考えがある。ヤツの―――――》
『わかった』
《!?アタシゃ何も言ってねーぞ!?》
『言わなくてもわかるよ。―――――"一心同体"、だよね?』
《……お、おぅ》
これはウソでも何でもなかった。僕の考えてることがデータに筒抜けなように、データの考えてることも、僕にはすべてわかる。
―――――乗ったよ、データ!
『データ、東堂さんのコミューンは!?』
《こども園のWi-Fi電波、あのバグッチャーに
『何をゴチャゴチャ話しているッ!?……攻撃を再開せよッ!!』
『リップルリップル~~~ッッ!!!』
バグッチャーの絶叫と同時に、高圧水流の連射が襲い来る。一か所に留まってちゃダメだ、『チャンス』が来る、その時までは!
《走れッ!!》
『データ、東堂さんのコミューンにつないで!!』
まずはこども園にいるみんなを、一か所に集めないと―――――!
つながれ、東堂さんに―――――いや、
――――――――――
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もう、見るからに逃げ場が無かった。
遊戯室の一段高いひな壇に私とみんなはいるけれど、私の膝下まで水につかっている。
どこから流れてきたのか、ゴムボールが2個ほどぷかぷかと浮かんでいた。真っ暗な中に、蛍光色のソレはよく目立つ。
水音だけが響くこの暗闇―――――私でさえ恐怖を感じるこの場所で、のんちゃんたちは―――――
「パパぁ……ぐすん、パパ、たすけてよぉ……」
「なくなよらんかちゃん!ないたら……お……オイラも……オイラもなぎだぐなっぢまうじゃねーがよぉぉ……」
「―――――…………」
らんかちゃんとぷらむちゃんの様子を見たのか、こころちゃんがみんなから顔を背けて、肩を震わせていた。たぶん―――――泣いてる。
「すまほもつうじないですの……はっぽーふさがりですの~!!」
「あぁ……こんなとき
さっきまでは気丈にしていたさっちゃんとクインシィちゃんまで、ついに取り乱し始めていた。
他のみんなも、泣いてたり、暗い表情で先生にしがみついて放さなかったり―――――
ちょっとだけ大人の私よりも、こども園のみんなの方が、ずっと怖い思いをしてるに違いない。
なのに私は―――――変身できない私は―――――
こんなにも無力で―――――
「……あきらめちゃだめだよっ!」
―――――でも、こんな中でも、涙ひとつ流すことなく、みんなを励ましている子がいた。
「のんちゃん……」
「ぜったい……ぜったいプリキュアがたすけてくれるよ!だから、あきらめないで!」
「で、でもむりだよ……プリキュアがくるまで、こんなの……」
「むりじゃない!ぜったいむりじゃない!プリキュアはぜったい、きてくれるもん!」
この子だけは―――――諦めてない。
心からプリキュアを―――――私たちを信じてくれている。
この子の気持ちに、私は応えたい。でも、この子がいると、私はプリキュアになれない―――――
―――――なんてジレンマなの……!!
葛藤が私の心を圧迫してたその時、私のネットコミューンが着信音を鳴らした。
ここには電波が通っていないハズ―――――ということは!?
私はとっさに通話ボタンを押した。
《東堂さん、聞こえるっ!?大丈夫なのっ!?》
やっぱり、ほくとくん!しかもこの声、
「ほくとくん!もしかして、来てくれたの!?」
《今、こども園のそばでバグッチャーと戦ってる!みんなを助けるために、お願いしたい事があるんだけど!》
デーティアの声に雑じって、ドゴン!ドガァン!!と、重々しい音が耳を突く。声の調子が強いのも、バグッチャーの攻撃を避けながら話してるから……なのだろうか。
「どうすればいいの!?何でも言って!?」
《園長先生、そこにいる!?話をさせて!!……できれば、みんなにも声が聞こえるようにして!》
園長先生、に……?いやな予感がしたけれど、私は「う、うん……!」と、気圧されるように返事をして、通話モードをスピーカーモードに切り替えた。
《園長先生!……突然、ごめんなさい!ぼ……わたし、プリキュアです!!》
「プリキュアっ!?♪」
デーティアが呼び掛けた園長先生よりも先に、のんちゃんが反応した。
「その声、キュアデーティアだよね?!そうだよね!?」
さっきまでぎゅっと唇をかんで恐怖に耐えながら、みんなを励ましていたのんちゃんの目から―――――
ようやく涙がこぼれた。
《のん……ののかちゃん!……よかった……みんなも無事!?》
「はい!ごたいまんぞく、もんだいございませんですの!」
「ぴんぴんしてるぞっ!!」
《必ず助けてあげるから……!もう少し、我慢できるね!?》
「―――――
「こわいけど……がまんするっ!」
《……よぉし、みんないい子だっ…………園長先生、聞こえますか?》
「聞こえているわ。貴女のことも、かねがね」
《いきなりこんなお願いをするのも恐縮なんですが……こども園のみんなを、遊戯室のひな壇に集めてください!それと……本当に申し訳ないんですが―――――》
デーティアは言葉を選んだのか、それともためらったのか、少し間を置いてから言った。
《こども園の建物の一部を―――――壊してもいいですか》
私の心が―――――少しだけずきりとした。
今すぐにみんなを助け出すには、こうするしかないのはわかる。でも―――――
ううん、違う。違うんだ。
《ここがみんなにとって大事な場所で、明日がお遊戯会だってことは知ってます……でも、こうするしか……!》
「……このこども園は、子供たちの……そして、かつて子供"だった"みんながつくった、たくさんの思い出が詰まってる大切な場所―――――私の半身のような、そんな場所よ―――――」
園長先生は目を閉じて、そっと胸元に手を当てて、厳かに、ゆっくりと語った。まるで、園長先生が心に刻み込んできた思い出を、言葉に乗せるかのように。
しかし園長先生は目を開くと、表情を真剣なものに変じさせた。こんな表情をする園長先生を、私は初めて見た。
「でも―――――」
ここで園長先生の表情が一変した。何かの覚悟を決めたかのようにカッと目を見開くと―――――
「今ここで怖がっている子供たちの命……子供たちの"未来"とは、とても代えられるものじゃないわ。建物は壊れたら直せるけれど、命は失くしたら直せないもの……!だから……思いっきり!ド派手に!!遠慮無くやっちゃってちょうだい!!!」
直接デーティアが見えるわけじゃないのに、園長先生は拳をグッと握って、なんか最後はノリノリだった。
でもその言葉は―――――紛れもなく『子供たちを守る大人の覚悟』、そのものだった。
これが―――――園長先生の本気、なんだ―――――
「園長先生……」
《……!ありがとうございます!……後は……任せてください!》
そこでデーティアの通話はプツッと途切れた。外からは、水音に雑じって轟音が響いてくる。
コミューンを私に返した園長先生は、メガネをかけた秋谷先生に、他の教室にいる先生や子供たちを集めてくるようにお願いすると―――――
「…………がんばってね――――――――――"お兄さん"」
こう、小さく呟いたのだった。
そしてその視線は、まっすぐ―――――
キュアデーティアが戦う、園庭へと向けられていた。
……SAVE POINT
キャラクター紹介
増子 みしん・みとん
りんくのクラスメート・増子美祢の妹で、双子の姉妹。
丸縁眼鏡をかけ、右側頭部に待ち針型のかんざしを付けていて、語尾に『~だな』と付けるのが記事担当の姉・みしんで、角縁眼鏡をかけ、左側頭部にミトン型の髪飾りを付けていて、語尾に『~だね』と付けるのが写真担当の妹・みとん。
ふたりともネクラ系でふたりだけの世界に入りがち。
ちなみに互いのことは『あねみしん』『いもうとみとん』と、わざわざ『姉』『妹』と付けて呼び合っている。
長姉の美祢同様、増子家の人間らしく探求心旺盛で、幼いながらこども園で『こどもえんしんぶん』を作っている。
『インストール@プリキュア』が現れてからはプリキュアの正体を探るべく行動しているが、公正な視点での取材をしておらず、明らかにプリキュアを貶めたり、悪評を広めようとしていることがわかる歪曲報道を行っている。
ふたりともあからさまにプリキュアを敵視しており、記事のでっち上げも日常茶飯事。そのためののかたちとは口論が絶えない日々。
何故ふたりがこのような行動をとるようになったのかは不明で、ウソ記事をこれでもかと書きまくるやんちゃな双子に、姉の美祢も困り果てている。
ちなみに姉妹揃って特撮ヒーロー番組に傾倒していて、その方面の知識に詳しいほくとは憧れのおにーさん。
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果たして次回、稚拙は1万5千字前後でうまくまとめられるのか……!?
第12話、ラストスパートは次回で!