今年もよろしくお願いします。

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ヴォルデート「新年のお辞儀をするのだ!」

 その日、マルフォイ邸には闇の陣営が一堂に会していた。

 普段魔法省や闇祓い局に潜入してるスパイは勿論、ダンブルドアに取り入るという最も難しい任務を任されているセブルス・スネイプですらこの日ばかりは馳せ参じていた。

 これから戦争でもするのか、という面子だが、そういうわけではない。

 今日はお祝いすべき年越しの日、ヴォルデートの提案で闇の陣営全員で年越しをする事にしたのだ。

 

「ベラ」

「はっ!」

 

 ヴォルデートが最も信頼している死喰い人の一人、ベラトリックス・レスレンジに話しかけた。ベラトリックスは恭しく頭を下がる。

 

「俺様はお前を高く評価している。俺様が弱っている時、多くの者がダンブルドアに許しを乞う中、お前は俺様の復活を信じ、忠義を示し続けた。ヴォルデート卿は己に忠実なものには、同様に忠実だ」

「当然の事でございます、卿」

「お前の忠義を受け取ろう。かつて俺様は約束したな? 俺様を信じ続けた者には、最高の名誉が与えられると。故に──ベラトリックス・レスレンジ──お前に年越しのカウントダウンを任せよう」

「おお、我が君! 勿体なき褒美でございます!」

 

 ベラトリックスは涙を流した。

 一方で、ルシウス・マルフォイやパイアス・シネキックスは苦悶の表情を浮かべる。

 ──年越しのカウントダウン。

 それは年越しという一大イベントの中で、最も重要と言っても良い役割どころである。起源はかのホグワーツ創設者の時代まで遡るとされる、魔法界で最もポピュラーな儀式の一つだ。

 それを任されるには高い魔法の技量と忠誠心が必要とされるが、同時に最高の名誉ともされている。

 

「少々よろしいですかな、我が君」

「どうしたセブルス」

「我輩には少々、この状態は準備不足に思えますな」

「なんだと? なんだ、何が足りない。申してみよ」

「花火です」

 

 セブルスが短く答えた。ヴォルデートはまだ納得がいってないようで、赤い目でセブルスを睨んだまま、続きを促した。

 

「花火ならすでに用意しているではないか」

「我が君、不死鳥の騎士団──というよりダンブルドアですが──は我々より多くの、そして大きな花火を用意しているようです」

「多くの……そして大きな」

 

 ヴォルデートが繰り返した。

 赤い目はより一層色を深くし、スネイプをキツく睨んだ。スネイプは涼しい顔をしていたが、その周りにいたほとんどの者は縮み上がり、眼を背けた。

 

「そうか。なるほど、情報源は──」

「奴のレシートでございます」

 

 スネイプが財布からレシートを取り出し、魔法で宙に浮かべヴォルデートの方へ飛ばした。

 

「我が君」

 

 長いテーブルの向こう側──ヤックスリーが、身を乗り出して発言した。

 

「なんだ。発言を許そう」

「はい。セブルスの情報には、些かの間違いがあると思われます。闇祓いのドーリッシュが漏らした情報によれば、奴らの花火の規模は我々より小さいとの事です」

「我輩が得た情報によると、偽の情報を流す作戦があった。つまり──ここまで言えば分かるだろうが──お前は嘘の情報を摑まされたという事だ」

 

 部屋中の者がせせら笑った。ヤックスリーは顔を赤らめ、小さくなって椅子に座った。

 

「もう良い」

 

 ヴォルデートが呟くと──それは小さな声だったが──全員が黙った。

 

「ルシウス」

「はっ」

「お前に花火を買いに行く任を任せようではないか。ルシウス、俺様が大きな花火を沢山ご所望だ」

「畏まりました」

 

 ルシウスが妻と息子をチラリと見てから、震えた声で言った。

 年越しまで後1時間と言ったところ。当然店は閉まっているだろうから店主を叩き起こさなくてはならないし、もしかしたら売り切れかもしれない。もし年明けに間に合わなかったら──ルシウスは死ぬだろう。

 

「なんだ、俺様から任務を任されるのが嬉しくないのか?」

「滅相もありません、我が君。これ以上ない喜びでございます」

「本当にそう思うか?」

「はい。偽りない、私の本心です」

「ルシウス、嘘をつくな!」

 

 ヴォルデートが怒りの声を上げた。ルシウスは青い白い顔をさらに青白くさせ、妻の方を見た。

 全員が黙り、静かになる。ナギニのシューという鳴き声だけが部屋の中を這いずり回った。

 

「ドラコ、買い出しはお前に任せようか……」

「我が君! 我が君、それだけはどうか!」

 

 こんな寒い夜空の下、一人を息子に行かせるなど、正気の沙汰ではない!

 ルシウスとナルシッサは懇願した。ヴォルデートは蛇のような唇を少し歪ませた後、こう口にした。

 

「ならば、早く買ってこい。ルシウス」

 

 ルシウスは直ぐに煙突ネットワークを使い、ノクターン横丁へと向かった。

 ややあってから、ルシウスが大きな袋を抱えて帰って来る。

 ヴォルデートはそれをひったくる様に受け取り、早速中身を見た。そしてヴォルデートは花火を取り出し、高々と掲げた。

 

「見るが良い、花火だ」

「流石です、卿」

「おお、なんと神々しい」

「ルシウス、これを持って予言を得られなかったお前の失態を許そう」

「ありがたき幸せです」

 

 これには死喰い人達も感心したようだった。

 

「我が君、そろそろ時間でございます」

「ベラ、準備は良いか?」

「勿論でございます、我が君。では行きます10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……0! こーえた、超えた!年が超えた!」

「新年のお辞儀をするのだ! あけましておめでとうございます!」

「「「あけましておめでとうございます!」」」

 

 全員が頭を下げた。同時に、花火を打ち上げる。大変に盛り上がった。

 

「さて俺様のシモベ達よ。俺様は言ったな、マグル供を苦しませるような、素晴らしい余興を用意しろと。ルシウス、お前からだ」

「はい、我が君。私が用意したのはこれです」

 

 ルシウスが取り出したのは、白い長方形の物体であった。

 

「これは『もち』でございます」

「……見た所、特別な魔法は込められていないようだが?」

「そこが肝心なのです、我が君。これは魔法が込められていないにも関わらず、毎年極東の国で、多くのマグルの命を奪っているのです。力なき者がこれを食せば、たちまち息が出来なくなるのです」

「ほう、面白い。俺様を試そうというのか?」

「め、滅相もございません、我が君! これを屋敷しもべ妖精に食べさせ、皆で見ることを持って余興としてようと思います」

「なるほど。ではやってみせよ」

「はい。これはソイソースというソースをかけ、食べるとのことです」

 

 そう言ってルシウスは、豆乳を『もち』にかけて屋敷しもべ妖精に食べさせた。屋敷しもべ妖精は噛んでも噛んでも噛みきれないそれに慌てふためき、死喰い人達は笑った。

 

「大変良い余興であった。告白しよう、俺様は非常に満足させられた。そこでドラコ、お前に褒美をやろう。受け取れ、お年玉だ」

 

 ドラコは恭しくお年玉を受け取った。ついで、ベラトリックスもお年玉を渡す。

 闇の陣営の新年の夜は、まだまだ始まったばかりである……


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