ゆめまぼろしの皇帝と楽園の住人   作:あだもすてー

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決戦!スカーレットデビル

今までハンターと吸血鬼が戦っていた場でまた戦いが起きようと、いや、すでに起きていた。対峙するのは吸血鬼、レミリア・スカーレット。そして、自称「旅人」のロムルスである。

 

 まさに今、レミリアが口火を切り、そして言葉を言い終えた瞬間ロムルスへと突進していく。その疾さは風を操るともいわれている天狗と同等のものに近く、常人では見切る事はおろか反応すらできないものである。 ちなみにこのスピードをレミリアは先の戦闘ではこれっぽっちも出していない。彼女がロムルスを見ただけでその強さを認め、また試すためでもあった。つまり、その域に侵入者が達していないだけのことであった。

 その突進をロムルスはレミリアが思った通り、かわしてみせた。レミリアはかわされたと判断、というよりかわされることをわかっていたかのように身をきり、そして魔力で槍を形成する。

 

「ハァッ!」とその掛け声と同時に槍は投擲され、魔槍は寸分たがわずロムルスの頭部へと吸い込まれるかのように向っていった。

 ロムルスもこれに対応し、剣を抜く。

 

「フッ!」こちらも気合一閃、剣を振り下ろし、槍を切っ先から両断した。

 そして向きが入れ替わり再び二人は見つめ合う。先に言葉を投じたのはロムルスだった。

 

「待ってほしい!私は戦うつもりはない!出来ることならするといったが戦うなんてことは…。それに、私と戦っても楽しくはないと思う!そこまで私は強くない!」

 

 砂糖のように白々しく甘い嘘である。今の戦いぶりを見るに明らかに吸血鬼の過剰な戦闘力に対応している。それだけでもとてつもないことである。もちろんレミリアには、というより誰が聞いても嘘と分かる言葉を聞いてそうですかと素直に受け取ることはなかった。

 

「じゃあその剣は何かしらねぇ?…あなたの鎧と同じ鱗がついているみたいだけど?」

 

 彼は引き抜いてしまった剣を見る。その顔は見るからにしまった、と言っているような表情だ。

「これは…」そういい彼も黙ってしまう。そんなロムルスを見て、レミリアは言葉を続ける。

 

「それにいくら戦う意思がないって言ってもね、戦わなかったなら戦わないで、私はあなたを仕留めにかかるだけよ。あなたの生殺与奪と罪の天秤は私の手の中よ?」

 

 確かに、レミリアからしたらいくら彼が何と言おうが侵入者に違いはない。ならばその不届きものに対する処遇は彼女の手の内にあるには違いなかった。その言葉を聞きロムルスはこう尋ねた。

 

「どちらにしろ、戦えというのか貴女は…」

 

「ええ、そうよ。力は自分の言い分を通すためにある、自論だけどね。あなたも戦いたくなかったら戦いなさいな」

 

 矛盾した言葉をかけるレミリア。それは謎掛けでもなんでもなく、あなたに選択の余地はないというそれだけの意味を持っていた。その言葉を理解したか、あきらめたかは定かではないが、彼の気配は形を変えた。

 抑えていた彼の気配は強まり、部屋を覆いつくさんかとばかりに気が膨れ上がり、そして全てロムルスの元へと収束した。そこにいたのは先ほどとは顔つきがより鋭敏になり研ぎ澄まされた、ロムルスその人だった。

 

「…ならば、いかせてもらおう。…音速剣!」

 

 持っていた竜鱗の剣を振る。ただそれだけの簡単な動作が大気を震わせ、衝撃波の形となってレミリアへと殺到した。音速剣は元々、リーチの短い剣でも遠距離にいる敵にあたるよう、開発された技である。その音を超えた速さ故に、通常ならば防禦は間に合わず、直にその刃に身をさらすこととなる。

 しかし、レミリアはなんとその刃を紙一重、といったところでかわして見せた。だが——

 

「…今、わざと外したわね?」

 

「フフッ、さてどうだか?」

 

 ロムルスはその衝撃波をレミリアの反応速度を読み、ぎりぎりかわせるか否かで放ったのだ。おそらく、外してなかったらレミリアは胴体を切り裂かれていたかもしれないのである。

 

「…今度そんなことをしたら承知しないわよ?それと、攻撃を受けてあげるのは最初だけ。あなたはみすみす機会を失ったわ。…その軽骨さを後悔しなさい!」

 

 そして言葉を言い終え、レミリアは魔方陣を四個展開し、その魔方陣から魔力を固めた鏃のようなものを射出する。ロムルスはそれに対応し詠唱を始める。

 

「唱えさせはしないわよ!ハートブレイク!」

 

 先ほどの槍と同じほどの大きさの槍を作り出す。その投擲の速さは先ほどの音速剣より少し遅い程度といったところか。だが十分に速いものであった。

 ロムルスも魔法の詠唱中にその速さに対応することはできず、剣でぎりぎり受ける形となって壁に激突してしまった。

 

「くっ、こんな館の主だけあってただのヴァンパイアではすまないか!」

 

 そういいつつまた魔法を唱え始める。ただどうやら別の魔法のようである。

 

 レミリアはというと相手が壁にぶつかり土埃がはしり少し笑みがこぼれる。だが、その中から魔力反応が出るとその笑みは消えうせた。だがその声は狂喜にあふれている。

 

「まだやれるみたいね。いいわ、もっと楽しませなさい!」

 

 今度は先ほどの「ハートブレイク」と呼ばれ投げられた槍よりさらに小さい、指にはさめる程の槍をそれぞれ八本、形成し同時に撃ち放つ。それらは全てロムラスの元へ向っていく。だが、レミリアは土埃にまぎれ判断が遅れてしまったせいでロムルスに詠唱を許してしまっていた。

 

「ウインドカッター!」

 

 言葉と共に都合十本の風の刃が生成され槍を迎撃する。余った刃はレミリアの元へと向かうが爪により引き裂かれる。

 

「あらあら、この程度かしら?随分とだらしのない魔法ねぇ?

 

 挑発半分自らの余裕を見せつけるレミリア。それをみてロムルスは黙ってはいない。

 

「もっと術を見たいなら見せてあげよう。…ファイアストーム!」

 

「くっ、炎の渦…いや嵐!?」

 

 ロムルスが作り出したのは巨大な炎の嵐であった。まるで牙を剥き出しにした肉食動物のように獰猛な、すべてを焼き尽くす嵐であった。これにはレミリアも呻いてしまう。

 

「…先ほどのは風の術法、「ウインドカッター」。そしてこれは火と風の合成術だ!くらうといい!」

 

「ちっ…こんなもの…。なら…!」

 

 レミリアは魔力を集中し始める。ロムルスはそれを待つことなく嵐をレミリアへ解き放った。

だがファイアストームがレミリアへ届く寸前、彼女の魔力はその体へと充填された。

 

「はぁぁぁ!」

 

 準備ができたレミリアは炎へと魔力を伴って突進する。観客がいたらほとんどが自殺行為と思う代物である。

 だが結果は予想されうるものとは別の形となった。そう、なんとあの嵐を無傷で貫きロムルスへと肉薄したのである。まさか自らの術の中でそれなりに威力のある合成術、「ファイアストーム」が破られると思わなかったロムルスはその突進を直に受けてしまった。

 

「何!く、ぐぅっ!!」

 

 突進の衝撃にうめき声を漏らしつつロムルスは再び壁に叩きつけられる。ただ先ほどとは違い、レミリアと共に激突した。レミリアは激突した彼を追撃とばかりに蹴り飛ばす。ロムルスはうめき声をまき散らしながら転がり飛ぶ。結果的に両者はまた距離をおく形となった。

 

「ふ、ふふ、ははははは!どうした!?もう終わり!?最初にあんな余裕見せるからよ!」 

 

 勝ち誇るかのように嗤うレミリア。あんな大がかりな魔法を打ち破ったんですもの、と勝利を手にしたかのようにまるで見た目通りの童女のように笑う。

 だがその笑いはすぐ消えた。平然とした顔で敵が立ち上がったからだ。

 

「まさかあれに突っ込んでくるとは…。…ならば、私も全身全霊で戦おう!」

 

「なっ…。…ふぅん?負け惜しみ?あの嵐を破られたのが悔しいのかしら?…随分つまらないこと言ってくれるわね」 

 

「見栄かどうかはすぐにわかる…。行くぞ、妖精光!」

 

 すでに術を詠唱し終えていたのか、立ち上がりすぐ術を発動するロムルス。そしてその術の影響はすぐに表れることとなる。――月である。月が部屋の天井に現れたのだ。そしてその月から彼へと光が渡される。

 光を受けると彼は、レミリアへと向っていく。しかし、その速さは先ほどとはくらべものにならないほど速くなっていた。

 

「自己強化の魔法!?なんて速さ…」

 

「行くぞ、受けてみるがいい!マシンガンジャブ!」

 

 レミリアが言葉を言い終える前に彼は彼女へ詰め寄り、そして剣ではなく拳を見舞った。その拳はおそらく一つ一つが確かな殺傷性を持った重い、技の名の通り機関銃の雨のようであった。

 その拳をはじき、かわし、打ち払うレミリアだがとうとう処理が及ばなくなり、その体に拳を打つことを許してしまった。そして先ほどのロムルスのように、レミリアも吹き飛ばされてしまう。 

 だが彼女は吸血鬼、その打突のダメージはあったが立ち上がれないほどではなく、即座に身を立て直す。

 

「なるほど、それがあなたの奥の手、といったところかしら…。だったら私もあなたの力にこたえなくちゃあねぇ!」

 

 再び魔力を身に宿すレミリア。全身に赤くなった魔力と闘気を纏う。それが意味するのは彼女が本当の本気になった証拠でもある。そしてレミリアは高らかに宣言するかのように声を立てた。

 

「行くわよ人間!もう、小細工は無用!正々堂々、戦おうじゃない!」

 

 それに応えるかのようにロムルスもただ一言、声を出す。

 

「行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――数時間後、いまだに戦いを続ける二人がいた。

 だがレミリアの方はその紅い服をお互いの血でさらに朱く染めあげ、帽子もとうの昔に吹き飛んでいる。

 ロムルスもマントはボロボロになり、明るい金髪に血がつき、動くたびに血が地面へ飛び散っていた。そんな両者の姿は見るもの――今はいないが、すべてにその戦闘の激しさを訴えかけるに十分なものであった。

 

「フフ…アハハハハハ!!すごいわあなた!人間のはずなのにこの私と力で、疾さで、魔力でも渡り合えるなんて…!ハハハ!最高よ!こんな楽しい夜にはもう一生会えないかもしれないわ!」

 

「ハハハハ!…私もだ!…こんなに白熱した戦いはいつぶりのことだろうか!」

 

 あたりは見るも無残な光景。にもかかわらずその中心にいる一人の男と一人の吸血鬼は高らかに嗤っている。その姿は狂気じみているようにも見える。その笑いを止め、ロムルスは話す。

 

「ふふふ…。さて、楽しんでもらえただろう。もう、終わりにしないか」

 

「ふふっ、そうねぇ。だけど舞台にはシメが必要だと思うのよ。…わかってるのよ。まだ、見せてない技があるんでしょう?」

 

「おや、それはお互いさまだろう。君もまだあるはずだ。…隠し玉が」

 

「ばれてたのね。なら、お互いやることはわかるわね?」

 

 そういいまだ衰えぬ闘争心を剥き出すしにする二人。お互い、最後の技にすべてをかけるのだろう、その気力を魔力をすべて振り絞り、すべてを相手に捧げようとしている。

 その心は相手を思いやる恋人のようにも思えなくもない。そんな中レミリアはふと思いついたかのように声を上げた。

 

「…そういえば名乗ってなかったわね。私はレミリア・スカーレット、人は紅い悪魔とも呼ぶわ」

 

「レミリア、レミリア・スカーレット、か。…そういえば君の友人の名前も聞いていなかったな」

 

「そんなことより、今はやることがあるはずよ?」

 

「そうだったな…。では、征くか!」

 

 今更の自己紹介をし、最後の技をぶつけようとする両者。その発動の時は全く同じであった。

 

「千手観音!!」「スカーレットデビル!!」




以上になります。
タイトルが完璧あれですね、うん。

1じゃねーか!

というわけで戦闘のみで終わりました。戦闘描写は難しいです。
なので批評の方もどんどん募集しています。
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