ゆめまぼろしの皇帝と楽園の住人   作:あだもすてー

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迷子の皇帝

 食事が終わり、それぞれが各自の用事に戻ると、ロムルスはレミリアと今後どうするかについて話すため、彼女を呼び止めた。レミリアは、なら部屋で話しましょう、と言ってロムルスを案内していった。

 部屋へ着くと先に口を開いたのはレミリアだった。

「それで?あなたはこれからどうしたいのかしら」

「ここに、いつまでもいさせてもらうわけにはいかないだろう。…少ししたらまた旅に出るつもりだ」

 

「旅に?ロムルス、あなた外へ出ても右も左もわからないんじゃなくて?」

 

 ロムルスの返答にそう答えたレミリア。彼も図星を突かれた顔になってしまう。確かに、彼が先ほど美鈴に地名を聞いてもまったく知らないものであったので、おそらくはロムルスは旅をするにしてもどこに行けば何があるかもわからない。たとえ地図をもらったとしても、彼の戦闘能力ならば町へ着くことは可能にしてもその町が警察の汚職にまみれたものであったり、旅人に不平等な法が敷かれていたとすればそれは彼にとっても悪い結果になるのは目に見えている。なので、ロムルスはその言葉に顔をしかめるしかなかった。

 

「…ああ。確かに私はここの土地勘はまったくない」

「だろうと思ったわよ。パチュリーが呼び出したんだったら、大体そうなるわ」

「それは一体…どういうことだ?」

「パチュリーったらたまに魔法で異世界の生き物を召喚したりしててね。その中に人間がいることもあるのよ。」

 

 その言葉におもわずロムルスは面をくらってしまう。それもそうであろう。自分は異世界に飛ばされてしまったかもしれないからだ。ただ、彼は少しはそうなることを期待し、予想していた。もともとあの転移装置は古代人たちが異世界へと転移するものと同じものだと聞いていたからだ。

「い、異世界か。まさか、本当に…」

「ふふっ、少しは驚いたかしら?そもそもね、普通パチュリーに召喚された人間は私を見て驚くものなのよ。それなのにロムルスは対して驚きもしないで私にあんなことを…」

「誤解を招くような言い方はやめてもらおうか」

 

 レミリアがいたずらな表情をして言ったのに対してロムルスもあきれ顔でそう返した。どう見ても幼女なレミリアに、それなりに本気で倒そうとする大の大人の絵は明らかにまずいものではある。ただ、どちらともまじめに戦ってはいるので、その心情さえわかれば誤解は生まれえないだろう。だからこそ、この二人も戦いの中で種族は違うが、お互いに認め合ったのだ。

 そうしていると再びレミリアが話し出す。

「まぁ、冗談はさておき、よ。私たちは近々別の世界に引っ越すのよ。私としては、あなたをこの世界に知り合いもいないで放り出すのはとても…なんていうのかしら、名残惜しいというか…」

「少し、心残りになるということか。それにしても異世界に引っ越しとはまたすごいな」

「そういうところかしらね。だからロムルスもそれまではここにいるといいわ。旅をするのはそれからでもいいんじゃないかしら」

「それはありがたい。そういってくれるなら、厚意に甘えるとしよう」

「じゃあロムルスは引っ越しまでの間、紅魔館で仕事をしながら過ごす。これでいいわね」

 

 レミリアはそういって話をまとめようとするが、その言葉の中に余計な一言が入っているのをロムルスは聞き逃さなかった。

「仕事をしながらか。なるほど、働かざる者、食うべからずということか」

「ええそうよ。物わかりが良くて助かるわ」

「…別に問題はないが…確か客人扱いだったよう。」

「細かいことは気にするものじゃないわ。それに仕事って言ってもあくせく働かせるようなものじゃないわ。ちゃんと休みもあげるから、ね?」

「わかったよ。それで、私は何の仕事をすることになるんだ?」

「そうね、執事でもしてもらおうかしらね」

「執事か」

「そうよ。私の執事。男手がいないからちょうどいいのよ」

 

 レミリアの提示した仕事内容にまた驚いてしまうロムルス。彼は元々皇帝であったため、武術以外にもテーブルマナーや貴族としての仕草など、上級階級に位置するものとしての教育を受けてきてはいた。だが、執事となるとまた少し事情が変わるのかも、と一抹の不安を感じてしまったのだ。また彼としてはいきなり呼び出された、まだ知り合って間もないものに執事をさせるということ――彼としては雑用でも任せられるのかと思っていたらしいが、にも驚いていたのだ。

「執事…。私でいいのか?」

「ええ、別にいいわ。やってもらうこともたいしてないだろうし。せいぜい紅茶を運んでもらうくらいかしらね。それと私の部屋の掃除に…そうね、私の気が向いたらまた戦うなんてこともしてもらおうかしら」

「…最後の部分は少し了解しかねるな」

「ふふ、主人としては自分の身を守る者の実力は常に把握しておかないとね。だからよ?別に私がなんとなく戦いたいからなんて理由で戦うなんてねぇ?もう何百年も生きてるのよ?」

 

 そう嬉々とした表情でいうレミリア。明らかにそんなことを廊下のチリ程度にも思っていないのは、ロムルスから見てもすぐにわかるものであった。そのようなことより、ロムルスはレミリアの最後の部分の言葉に注目した。

 

「やはり吸血鬼にもなると何年も生きられるのか」

「ええ、そうね。うーん…。大体、500歳くらいかしらね?」

「500歳か。やはり寿命は長いのだな」

「そうよ。それにしてもあなた、やっぱり驚かないわね。こっちとしてもちょっと面白くないわよ?」

「フフフ、500年くらいなら驚きはしないな。せいぜい3000年ほどでないとな」

「3000年…。じゃあそんなことを言うあなたもそれくらい生きているのかしらねぇ?」

 

 その質問にそうと言えばそうだが…と言って少し考え込むロムルス。レミリアはそんなロムルスを不思議そうに黙ってみている。

 そして考えがまとまったのかロムルスは少し長くなるが、と言って話し始めた。

 

 私はかつて、元の世界でアバロン帝国という国の皇帝だった。帝国の皇帝はいつからか昔、世界を救った七英雄というものたちと戦うようになったのだ。だが彼らは英雄、私たちはただの人間だ。その戦力は差があった。その解決策として古代人という七英雄と同じ、かつて私たちの世界で私たち人間を使役していた、オアイーブという者に伝承法を伝授された。それは帝国の皇帝の技や戦闘の経験を次の皇帝へとそのまま引き継ぐものだった。だが、その伝承法も永遠ではなく、私の代で伝承ができなくなったのだ。そして私の代で七英雄と決着をつけることを余儀なくされた。その伝承法の歴史が実は3000年ほどなのだ。

 

 こんなところだろうか、といって話を終えたロムルス。その話にレミリアはあっけにとられてしまった。そのあとに自分の表情に気付いたのか、彼女は今度はハッとした表情になる。そして元の少し余裕を見せるような表情に戻った。

 

「へぇ…だったら私と戦いあえたのも納得がいくものね。3000年の歴史がこもった戦闘術、ってわけね」

「ああ。だから私としても負けてはかつての皇帝たちに申し訳ないのだ。」

「…というよりもあなた、皇帝なんてやっていたのね。どうりで食事の時も無駄に行儀がいいわけだわ」

「おや、見られていたのか」

「そもそもあなたが話しかけなかったら私から話しかけてここにいさせるつもりだったのよね。それで行儀が悪かった教育しようかと思っていたのだけれど…問題なさそうね」

 

 気に入られて何よりだ、とかえすロムルス。自分の話を信じてくれなかったらどうしようか、とも彼は思っていたがその不安も解決し、少し安心した顔持ちではある。

 レミリアはレミリアで、自分の好敵手にそのような事情があったことに表情には出ていないが、まだ驚いた様子であった。

 そして話は終わった様子なことを判断したレミリアは、こういった。

 

「じゃあお互い話したいことは話したみたいだし、お開きにしましょうか。私は少しやることがあるのよ。ロムルスもまだこの館のことよくわからないだろうから、少し見て回るといいわ」

 

「ああ、そうさせてもらうとしよう」

 

 そうしてふたりは部屋を後にした。

 

 

 

 

「さて、どうしようか」

 

 そういいながら廊下を歩くロムルス。かなり広い紅魔館のなかを案内もなくふらつくのはおそらく賢明ではないだろう。ロムルスもそれは百も承知だったが、こういうのは案内なしの方が面白そうだ、といってかつてダンジョンを探索した時のことを思い出し一人で歩き出した自分を責める形となっている。要するに今、彼は迷子なのだ。

 

「まったく、敵が出ないからいいが、随分と広い屋敷だ」

 

 そういいながら歩を進めるロムルスであったが敵という単語で思い出したかのようにそういえば私の装備は…、とつぶやく。彼は起きた時には美鈴にすでに服に着替えさせられていたので自分の鎧の場所がわからないでいた。なので彼は、

 

「とりあえず、門に行くか」

 

といってようやく目的地を決めたのであった。

 

 

 

 

 

 

「…門を、目指しはしていたんだがな…」

 

 そういって、先刻の自身の意気込みを再びいうロムルス。彼は美鈴のいるだろう()の門を目指していた。だが今彼がいるところは明らかに紅魔館の中、それも地下であった。だが、彼の前にはしっかりと門のようなものはある。

 

「まっすぐに外へ向かえばよかったんだがな…。やはりこういうところは昔から変わらない、か」

 

 そういい自分を責めるロムルス。彼は外へ向かおうとしてはいたのだが、ついつい気になるところへ寄り道に寄り道を重ねてしまい、とうとうこんなうす暗い、おそらくただ事でない見た目の門の前までやってきてしまったのだ。

 

「それにしてもなんだこの門は。まるで何か閉じ込めているような…」

 

 そこまで言い切ると、彼は少し気づいたかのように言葉をやめた。そう、食事の時の話を思い出すためだ。

レミリアは、自分の妹の様子がおかしいと言っていた。

パチュリーは、調べようとしても暴れるといっていた。

 つまり、これはその妹君を閉じ込めているものか、というところまでロムルスが推測し終えると、門の中から何か声が聞こえてきた。その声は遊び仲間を探す子供のような声で、こういっていた。

「誰か、いるの?」

 その声にロムルスは忍び足で近寄る。だが気配は読まれたのか、声は少し嬉しそうにまたする。

「やっぱり誰かいるのね?」

 

 ロムルスはその声を聞き、おそらくレミリアと同年代の童女の声と判断した。また同時にこの声の主がレミリアの妹なのだろう、ということもほぼ確信を得た。

「ああ、いるよ」

「やっぱり!ねえお兄さん、中に入ってきてくれないかな?」

「…中に入って何をするんだい?」

「一緒にあそぼ!」

 

 そこまで話してロムルスは再び考える。この声の様子を聞くと何もおかしいところはない。もしかしたら呪いの効果とやらも切れているのではないだろうか。そう思ってしまった。

 だが、開けることはなかった。

 

「残念だが、今は遊んでる暇はないんだ。すまないね。」

「…ちっ。…そう」

 

 一瞬、少女の声ではない別の何かの声が聞こえたロムルス。その声を聴いてやはりまだ呪いの効果が切れてないこと、おそらく今の装備で入ることは愚策だろうと彼は判断した。なので言った言葉の通りその場を去ろうとする。

だが、その帰り際、帰る気配を察したのか門の奥から少しか細い声でこう聞こえた

 

「一人に…しないで…」

 

「…また、後で…。必ずだ」

 

 そういいある決意を胸にロムルスは地下を後にした。

 

 

 

 

「なんとか、外まで出れたみたいだ」

 

 地下の門を後にして結局彼は廊下にいたメイド妖精に案内してもらい、外へ出てきた。その表情は少し情けないように見える。

「結局、案内してもらうことになるとは…。まあこうして門へはたどり着けたからいいとしよう。さて美鈴は…おや…」

 彼が目的の人物のを見つけたとき、彼女はおそらく寝ているかのような姿をとっていた。それも地べたに。だがロムルスは彼女の肩を持ってかはわからないがこういった。

「あれは確か…羅漢臥睡功(らかんがすいこう)…だったかな?」

 実際にはそんな高尚なものでない。そのことに彼も近づくとすぐに気付いた。

「…器用なことだな」

 彼女は寝ていたのであった。その様子を見て彼は起こすために少し肩をゆすると、

「ロ、ロムルスさん?どうなされました?」と言って寝ぼけ眼ながらも起きた。

 

「寝ていたのか?」

「い、いえいえ!これはですね…そう!睡功っていう内功を鍛える鍛錬でして…」

「…本当に?」

「はいそれはもう!」

「…そうか。では少し聞きたいことがあるのだが…。私の装備はどこに置いたか聞きたい」

 

「装備っていうとロムルスさんのつけてた鎧とか剣ですか?それならもう修繕して倉庫に置いてありますよ。案内しましょうか?」

 

 案内と言われて少し顔色を悪くするロムルスではあったが、また同じ過ちを繰り返したくはないらしく今回は案内を素直に受けてもらうことにしたのであった。

 そうして倉庫へ案内してもらい装備品を確認し終えると、彼はあるところへ向っていったのであった。




以上になります。
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