パチュリーの部屋、別名紅魔館大図書館。
ロムルスがここへ来た理由は元々、パチュリーに魔術を教わるためであって談話をしに来たわけではなかったのであった。
なので彼はひとしきり話し終えると、パチュリーに話を切り出したのであった。
「そろそろ本題に入ろう、パチュリー」
「そうね、いつまでも話てたらキリがないもの」
「そういえばお兄さん、魔術を教わるって言ってたものね」
そうして先ほどまで笑っていた調子から一変して空気が張り詰めた。パチュリーの姿は、一人の魔術の研究者のものへ、ロムルスは高みをめざし、また何かを守ろうとする強い意志が現れているものへ。フランドールはというと、その二人の邪魔をしないようにとりあえず真面目な顔持ちにしておこうか、といったとらえ方もできる様子になっていた。
「とりあえず、術を見なきゃ始まらないでしょう。遠見の術で見たって言っても、間近で見なきゃわからにこともあるしね。なにか見せてもらっていいかしら」
「了解した。だが、こう本が多いと…」
そうロムルスが言うが、パチュリーは問題はない、といった様子で
「それなら大丈夫よ。そのためのこの陣と道具よ」
と言い、自分たちの周りの燭台や香炉のようなものを指し示した。いかにも、といったような形をした道具である。ロムルスもその道具を見て理解したのであろう、納得したように
「陣と道具で小規模の結界を作っているのだな」
と言い、パチュリーもそうよ、と一言言ってロムルスへ術の詠唱を促した。
ロムルスもそれに応じて、術を詠唱した。それは初歩的な術なのか、はたまたロムルスの詠唱が早いのか定かではないが詠唱は一瞬で終わった。
「では、まずは初歩的なものにしよう。離れてくれ」
「ちなみにどんな魔法を放つの?」
「火の攻撃系の術だ。大きめの爆発が起きる」
「じゃあ床に撃ってちょうだい。妹様、離れましょう」
パチュリーがそう言いフランドールも一言うん、と返事をして二人は結界の外へ出た。
今結界の内部にいるのはロムルス一人である。彼は二人が外部へ出たのを見届けると、術の発動を命じた。
「ファイアーボール!」
言葉と同時にロムルスの突き出した手のひらに赤くゆらめく球が形成された。そしてそれはロムルスの手から離れ、床にたどり着いた。
その瞬間、術は盛大な爆発音とともに炎と光をまき散らした。
――元来、ファイアーボールは敵一人を襲う術である。だが、ある基準以上に火の術法を扱える者のそれは、敵一人を襲うに収まりきらなくなる。
つまり、ロムルスはその基準を満たしていたのであった。
術による爆発、炎が収まり部屋には元の静寂が戻ってくる。術を出し終えたロムルスはそのままパチュリーへと近づきながら、はなしはじめた。
「今のが私の世界でいう火の術法だ。これ以外にも水、風、地、天の術法がある。私の国には伝わっていないが、冥の術法もあるらしい」
「すっごい迫力だねお兄さん!」
「そうね、威力も高そうね」
本当に初歩の術かしら、ともパチュリーは小さな声で付け加ていた。だがそれを聞いていたものがいたかは定かではない。パチュリーはそう、本当に小さく付け加えた後に、再びロムルスに尋ねた。
「ところで、ほかの系統の魔法は使えるのかしら。水だとか、風だとかもあるんでしょう?」
「あぁ、風の術法と天の術法は私も扱える。ただ…」
「水と、地は使えない、と?」
「残念だがその通りだ。火は水と。風は地と背反した属性になっていてどちらもを使う技術は研究されなかったのだ」
ロムルスの説明を聞いて、フランドールは何か納得したような明るい顔で、
「あっ、そっかー。火は水で消せるし、土は言葉通り風化するっていうからね?」
と言った。それを聞いてロムルスも、
「その通りだ。説明してくれてありがとう、フラン」
と言いながら隣に来ていたフランドールの頭をなでた。いい子にしていた子供にするような仕草ではあったが、人肌恋しいといったところなのだろうか、フランドールは微笑みながら、嬉しそうに頭をなでさせていた。
そして撫で終えると――フランドールは名残惜しそうにしていたが、ロムルスは再び説明を続けた。
「背反した属性同士は使えないが、合成術と言って術の特性を混ぜ合わせた術もある。例えば私なら、火と風、風と天、天と火を混ぜた術が使える」
合成術と聞いてパチュリーは興味ありげになった。そしてその好奇心を満たすためにロムルスへと話をつなげた。
「へぇ、術の組み合わせも可能なのね。私も魔術と魔術を合わせたものは使えるから、性質は似たものかもしれないわね。うーんそうね、使える術、全部見せてもらっていいかしら?」
自分の知らない世界の魔術がどのようなものか、それを知りたいがための言葉であった。ロムルスも隠す気はないという腹なのか、その提案を快諾した。
「これでようやく終わりだ」
最後の術を出し終えてロムルスはそう言った。火、風、天。それぞれの術を5個ずつ。合成術を6個。すべて出し終えたのであった。
「お疲れさま、お兄さん」
フランドールはそういって彼を労った。ロムルスも、
「あぁ、楽しめたかな、フラン」
と返した。そういわれたのでフランドールは楽しそうに、
「うん。特にね、こくりゅうはっていうのがかっこよかったかも!」
と言った。
パチュリーはというと、
「結構種類が多いのね。それに面白い術が多いわね。ただリヴァイヴァだったかしら。あれは少し卑怯ね」
といいロムルスの術への批評を展開していた。魔術師としての気質なのだろうか、ロムルスもそれは理解しているようで、パチュリーの言葉を黙って聞いていた。
「一つの系統にも色々な使い道があるのね。風でウインドカッターはわかるけど、体力を吸収するサクションだなんて…。天の術に至ってはギャラクシィなんて、あんな術をよく考えるわ」
ロムルス自身も少し疑問に思っていたことを突かれ、つい苦笑いしてしまった。
「そうだな、私は術法の専門ではないから詳しいことはわからないが、確かに面白いものだな」
彼がそういうと、その答えに導いたのはフランドールであった。
「天ってことは…。月光とか、太陽光線なんて術があったし、空にあるものに関係あるのかな。ライトボールも光でイメージするものは太陽だし、ソードバリアも光でできてるでしょう?」
「そうね。私の術にも月と太陽をイメージした術があるから、それと似たようなものかしらね」
「なるほど。天は空、宇宙にあるものに関係する、か。戦うばかりで考えもしなかったな」
「魔術を使う上でそういうイメージは大切ね。自然の中から新しい術のイメージをつかむことも多いわ」
そこまでパチュリーが話すと、ロムルスそしてフランドールも何か心得たかのような顔持ちになったのであった。即興ではあったが、そこには魔術に真剣に向き合う、まるで研究所のような空気になっていた。
するとロムルスは、
「そうだ、パチュリー。君の魔法も見せてくれないか。何か新しいものをつかむきっかけになるかもしれない」
と思い立ったようにそう言った。パチュリーもそういわれることはわかっていたようで、
「初めからそのつもりよ。あなたのだけ見て自分は見せないのは少し申し訳ないもの」
準備していたかのようにそう言ったのであった。
「私は魔術を、火水木金土日月、七つの属性に使っているわ。ロムルス、あなたも使えそうなのは火と木、それに日と月も使えるかもしれないわね」
パチュリーがそういうと、ロムルスはとても驚いた表情になった。
「七種類か、私の2倍以上あるな。」
「一応、魔法使いやってるのよ。なめてもらっちゃ困るわ」
「私が呪われる前からそうだったもんね、パチュリー」
フランドールがそういうと、パチュリーは
「呪いが解けるまでに生きていてよかったわ、妹様」
と言った。
パチュリーはそういうと、先ほどのロムルスのように二人に下がるように促した。
ロムルスはフランドールを連れて陣の外へでる。パチュリーはそれを確認すると、自慢の各七属性の魔術を唱えていった。
パチュリーが魔術を出し終えると、ロムルスは開口一番、すごい迫力だなと漏らしてしまう。
フランドールも、久しぶりに見たけどやっぱりすごいね、と話していた。
ロムルスはパチュリーに言われていた、自分が使えそうな属性の魔術を特に観察していた。そして気づいたことがあるのか、感想もほどほどに気になる魔術があったといって話を始めた。
「フォトシンセシスといったか。あれは私の月光に似た魔術だな。やはり似通ったところがあるのかもしれない」
「そうねぇ。…でもイメージ的にはあなたたちの世界風に名づけると日光と言った方がいいかもしれないわ。あれは植物の光合成をイメージした魔術だもの」
「光合成、なるほど。だから日と木の合成術というわけだな」
「そうよ。それにあなたの月光は体力を。私のあれは魔力の回復速度を早める術ね」
そうやってパチュリーが言っていると、フランドールは少しいぶかしげに、
「私がパチュリーのその魔術使ったら、逆に体力がなくなっちゃうわ」
と言った。パチュリーもそれには同意したのか、確かにそうかもしれませんね、と付け加えた。
ロムルスも、私の術を使った方がフランには似合うだろうな、などという調子であった。
ここまでで、彼らが使える魔術はお互いに全てを見せ合った。
それを踏まえて、彼らはそれぞれで使えそうな術を教えあうという結論に至った。
パチュリーは自分の日属性の魔術、ロイヤルフレアを一点集中したようなクリムゾンフレアと空から隕石を呼び出すギャラクシィに目を付ける。そしてロムルスは、炎をその手に纏わせ鞭のように扱うワイプモイスチャー、そして先ほどのフォトシンセシス、空気を弾丸のように打ち出すフラッシュオブスプリングに着目した。
「何百年も生きているけど、異世界の人から魔法を教わるのは初めての試みだったわ。やっぱり長生きするものねぇ」
知らないことも多いわ、とそのあとにパチュリーは呟く。それを聞いてロムルスはパチュリーにある疑問を抱いた。
「パチュリーもレミリアと同じくらい生きているのか?」
パチュリーはそれに対して当たり前と言ったかのように、
「うーん…忘れちゃったわ。多分同じくらいじゃないかしら」
と言った。ロムルスはやはりか、と言いながら言葉をつづけた。
「それは…種族的に長生きなものなのか?」
「違うわ。捨虫の術って言ってね、不老長寿になる術と捨食の術っていう食事と睡眠をとらなくてもよくなる魔術があるのよ。人間がそれを使ってようやく魔法使いになれるってところね。ちなみに私は先天的に魔法使いよ。ロムルスはそういうのに興味はある?ついでに教えてあげるわよ」
おそらく普通の人間ならば誰もがはいと答えるであろう魔法使いからの申し出である。
だがロムルスはその申し出に少し考えるところがあった。
「不老…長寿か。ふむ…」
だが、そのとどまりを打ち破ったのはフランドールであった。
「…もしかしてお兄さん、また自分がどう思われるかだなんて思ってない?」
「…ん。あ、あぁ…」
「さっきもいったけど、私はお兄さんと一緒にいれた方がうれしいわ。それに、不老長寿でしょ?私とお姉さまなんて不老不死よ、お兄さん。このままだと私は長生きできるけど、お兄さんは先に死んじゃうわ。でも、パチュリーから教わればそんなことなくなる、けど…。うー、でも最後に決めるのはお兄さんだし…」
そういってフランドールは頭を抱えてしまった。自分の思いとしてはロムルスと長く一緒にいたい、だが彼の意志も尊重したい。そのジレンマに陥ったのだ。自分が言っている途中でそのことに気づいてしまったのである。
そんなフランドールの姿を見てか、ロムルスは少し顔を崩して、
「…フラン、そこまで私が信用されてるとは思わなかったよ。わかった。術は教わるだけ教わってみよう」
そういった。その最後の言葉はたった少しの音に過ぎないものであったが、フランドールをジレンマの沼から救い上げるには十分すぎるほどの威力があった。
「…本当?本当に、やってくれるの?」
「ああ。ただ、習得できなかったらそこまでになってしまうけれどな」
「ふふっ、できなかったら私が吸血鬼にしてあげるわ」
がーっ、と牙を見せながらフランドールは話した。ロムルスは少し困り顔でこれは頑張らないとなとつぶやいていた。
そう二人がじゃれていると、パチュリーはそれた話を戻すために少し声を大きめにして話した。
「さてと。やることは決まったわね。お互い教えあっていきましょう。私も普段一人で研究をしていたから勝手がわからないかもしれないけれど、よろしく頼むわ」
ただ、もとから小さいのでこれで普通の声量と言ったところだ。そんなパチュリーにしては精一杯の言葉はしっかりとロムルスたちにも届いていた。先に口を開いたのはフランドールであった。
「あ、私も少し教わっていいかな。まだ夢から覚めたばっかな感じだから、ちょっと魔術も使いたいの」
「ええ、私は構いませんわ。ロムルス、あなたもいいわよね」
「ああ、人数が多い方がはかどるだろうし、フランにはさっきからヒントのようなものを出してもらっているからな」
ロムルスがそこまで言い終えると、パチュリーは決定ね、と言ってとりあえず二人に少し荒れてしまった道具や本をなおすよう促した。
修復中、ロムルスはフランドールにこんなことを聞いた。
「そういえばフラン、術は何を教わるつもりなんだ」
「うーんと、とりあえずお兄さんの月光は確定として、あとは…パチュリーの火の術もちょっとかな。実は前に少しだけパチュリーに火の魔術を教わってたの。だからそれの続きね」
「そうかそうか。教わるだけでなくて教えるのも頑張らないとな」
「ふふっ、頑張ろうねお兄さん」
――そして、その日はパチュリーの部屋の引きこもりが二人増えたのであった。
以上になります。
おくれてしまいました。申し訳ありません。
体力吸収だとしまらないかなと思ってロマサガ3を参考にサクションに名前を変えてしまいました。
ご了承ください。