ZOIDS ~Era Travelers~ 作:Raptor
真っ白な空、真っ白な大地。
しかしここは天高き雲の上でも、凍てつくような冷気を放つ雪山でもない。
ここは
魔物が出ると恐れられる一年を通して霧が晴れることのない場所である。
彼のライガーゼロはその霧の中で風をきるようにして走っていた。
「今のところレーダーには反応がないな………。ミズハ、何か感じるか?」
「うん、大丈夫なにも感じないわ。」
前日通過した時に味わったあの恐怖。
さすがに2日連続で味わいたくなどない。
「とりあえずこの薄気味悪いところを早く抜けたいよ。」
そんな愚痴を叩きながら彼は相棒の足を急がせる。
「光が見えてきたわ、谷を抜けるわ。」
ミズハの言う通り、視線の先からは光が漏れていた。
「ふぅ………………。」
谷を抜け後ろを振り返る。
後ろの安全を確認すると思わず安堵のため息が溢れる。
「何事もなく通過できたなんて、今回は運が良かったわね。」
そう言ったミズハも深いため息をついていた。
「とは言ってもまだディガルド領内だからね、油断はできないさ。」
そう、ここはまだディガルドの領地。
ここでディガルドの部隊と出会ってしまう方がもっと厄介である。
「そうね、早くリアン村を目指しましょ。」
ミズハもそう感じたのだろう。
初めの予定ではリアン村に立ち寄るか考えていたところだったが、やはり寄るのが最善のようだ。
レッゲルが減っているわけではないが、肝心のパイロットが空腹では動けない。
「リアン村で飯食ったなんて言ったらケイト羨ましがるだろうな。」
ローグに残ったメンバーの中で一番リアン村の飯を絶賛しているのはケイトだ。
休憩ついでに飯を食べたなんて言ったら地団駄を踏んで悔しがるに違いない。
「さぁ、もうひとっ走り頼むぜ相棒。」
「グォォォォォン!!」
ライガーゼロは大きな雄叫びをあげるとリアン村へ向けて走り出した。
ビービービービー!!!!
走り出してどれぐらい経っただろうか。
ライガーゼロのレーダーが何かを捉えた。
「おい、マジかよ………。」
眼前のレーダーには数え切れないほどの赤い点が表示される。
『おびただしい数の生体反応なのですよ………。50……60……70……。』
「シュン、岩陰に隠れて。ディガルドの部隊よ。」
後ろのミズハの助言に頷くと静かに岩陰に身を潜める。
身を潜めてしばらくすると土埃をあげながら大量のバイオゾイドが通過して行った。
「メガラプトルまで……。」
通過した中にはもちろんメガラプトルもいた。
おそらくどこかを侵略しに行くに違いない。
だが、1人であれだけの部隊を相手になんかできない。
「くそ、俺1人じゃ戦えねぇ。」
ケイトのモルガに銃口を突きつけられたあの日を思い出す。
だが襲われているのをみすみす見逃すなんて耐えられない。
「奴らが向かう場所がある程度わかればオスカーに連絡をとって迎撃に迎えるわ。」
「そうか、その手があったか!」
部隊が通過するのを待って静かに後をつける。
「ミズハ、この先にある街や村は?」
「ちょっと待って、今調べてる。」
後部座席に座っているミズハは地図を広げてなにやら独り言を呟いている。
だがしばらくするとその独り言が終わり、えっ、と言う声をあげる。
「どうした、ミズハ。」
「この方向にあるのは…………リアン村よ。」
「え、リアン村だって………!?」
丘の向こう、土埃が上がっているのがブレードライガーのコックピットからも確認できた。
「なんとか間に合ったようだな。」
オスカーはひたいの汗を拭いながら静かにそう呟いた。
「リサです、オスカー聞こえますか??」
後方に待機している衛生班のリサから通信が入る。
偵察を担当しているレイがいないため、緊急の処置である。
また、今回は緊急の出撃だったため、識別コードはない。
「リサ、オスカーだ。あのバカとは連絡がついたか?」
「はい、どうやら
「なるほどな、それで今はどこに。」
「ディガルドの部隊の後ろです。抜けた先で見つけたので追ってきているらしいです。」
「そうか、それなら問題はなさそうだな。」
ゆっくりと息を吸い、呼吸を整える。
すると今度は別の声が聞こえた。
「それにしてもなんであいつら俺の村ばかり狙うんだ。」
後方からゆっくりと1体のゾイドが近づいてくる。
そのゾイドは解放戦団のゾイドにはいない黒のカラーリングを施したコマンドウルフだった。
「おそらくこの村の海底に眠るとされている古代遺産を狙っているんだろ。」
「ったくそんなつまらねぇことのために俺の村を襲うとはな。」
「アーバイン、それがディガルドのやり方だ。」
オスカーは黒いコマンドウルフに乗っているアーバインにそう言う。
「さあ、気を引きしめろ。くるぞ。」
オスカーがそう言うと愛機のブレードライガーは雄叫びをあげる。
「わかってる、ここは俺の村だ。」
その声に反応するように彼のコマンドウルフも雄叫びをあげた。
「喰らいやがれ!」
アーバインのコマンドウルフに搭載されたロングレンジライフルが火を噴く。
その弾丸はバイオラプターの口腔にまるで吸い込まれるようにして入っていく。
吸い込まれた弾丸はバイオラプターの口腔を見事に撃ち抜いた。
「グァァァァ………。」
たった一発の弾丸でバイオラプターは崩れ落ちた。
「流石だな。」
その光景を横目に見ながらオスカーはそう呟く。
実はアーバインのコマンドウルフには解放戦団独自の徹甲弾を積んでいない。
言いかえるのならばただの鉛玉ということである。
しかし彼はその「ただの鉛玉」で的確にバイオラプターを破壊していた。
「口腔内を撃ち抜いて奴を倒すとは考えたな。」
「なぁに、歴戦の勘ってやつだよ。口から何か飛ばす奴は大抵その部分がノーガードだからな。」
そんな言葉を吐きながら続けざまにもう1体破壊する。
「これだから傭兵は怖い。」
オスカーも皮肉を口にしながらレーザーブレードを展開する。
「いくぞ、相棒!!!」
ブレードライガーは軽快に走り出すと、バイオラプターの攻撃をかいくぐりながら肉薄していく。
「はぁぁぁぁ!!!」
レーザーブレードからまばゆい光を放ちながらバイオラプターの集団に突っ込む。
いつものごとく肉薄してきた獲物を迎撃しようと試みるバイオラプターだが、無論メタルziコーティングの武器を防げるはずもない。
瞬く間に十数体のバイオラプターが地に崩れ落ちる。
だがしかし。
「おいおい、こりゃ団体御一行様だな……。」
崩れたバイオラプターの死骸をを横目に迫り来る大量のバイオゾイドをみてそう呟く。
その中にはもちろんメガラプトルの姿だってある。
「各自後方支援を怠るな!コーティングのあるやつは俺についてこい!」
奴らの狙い。
それをこの場にいるオスカーはただ1人知っていた。
だからこそどんなに敵が多くても護らなければならない。
「渡してたまるか、
歯をくいしばる。
優秀な戦闘員が2人いない状況での戦闘。
さらには3番隊の隊士もヘルザ村での戦闘で戦えるのは半数ほど。
唯一の空戦戦力のレドラーもレーザーブレードの損傷で今日は参戦していなかった。
「どーしたオスカー。絶望的だって神頼みか?大丈夫だ、俺がいればなんとかなる。」
「そうだったな、アーバイン。期待してるぞ。」
「期待?俺は用心棒だ、積まれた金以上のことはしねぇ。」
アーバインはそんな冗談を言ってみせる。
そんなときディガルドの部隊後方から火の手が上がる。
「オスカー!」
その通信と同時に遠くで轟く雄叫び。
思わずニヤリとしてしまう。
「遅かったじゃねぇか、シュン。」
共和国にいた時からの信頼のおける部下が帰ってきた。
その思いが顔に出てしまったのかもしれない。
「とりあえず勝敗は五分五分ってとこだな……。」
オスカーはそう呟き大きく深呼吸をするとバイオラプターの群れに突っ込んだ。
「おいおい、なんだよこのバイオゾイドの量は………。」
その量は今まで見たバイオゾイド達の比ではない。
「いったい、リアン村になにがあるって言うのよ!」
思わずミズハもそう嘆いてしまう。
とりあえずオスカー達と合流しよう。
そうは思うだがこの荒波をかけ分けるのはかなりのリスクがある。
おそらくメガラプトルだっているはずだ。
結局のところ新しいコーティングを施した訳ではない。
ストライクレーザークローが撃てるのは一回のみ。
「大事につかわねぇとな。」
「シュン、後方支援の砲撃で突破口を開く、フルブーストで突っ込んでこい!」
そのオスカーの通信が入った途端、熱を帯びた弾丸が雨のように降り注ぐ。
あまりにも大群になりすぎたバイオラプター達は、なす術もなく崩れ落ちていく。
「ミズハ、突っ込むぞ。ベルト締めてしっかりつかまっててな。」
助走をつけてバイオラプターに突っ込む。
ダウンフォーススタビライザーが風を切り、イオンブースターが唸りをあげる。
しかしあの弾丸の雨をかいくぐった機体もいるようでシュンの前に立ちふさがろうとする。
「じゃぁぁまぁぁだぁぁぁぁぁ!!!」
爪を突き出し喉元めがけて飛び込む。
ザンッ!
「よし!」
ヘルアーマーを切り裂く感覚が久しぶりに伝わってきた。
だが、目の前の敵を倒しても目の前に立ち塞がるバイオゾイドは多い。
「こんなとこ突破なんて無理よ!」
みるみるうちに囲まれていくライガーゼロ。
だがこんなとこでやられるわけにはいかない。
そんな取り囲むバイオラプターの口腔を何かが突き抜ける。
「小僧!その自慢の爪はお飾りか?早く突っ込んでこい!」
初めて聞く声だった。
大量のバイオラプターのせいで、その声の主もわからない。
「そんなことわかってる!」
目の前のバイオラプターを体当たりで蹴散らし、再び前進する。
目の前にバイオラプターが立ち塞がるならその爪で引き裂く。
「グァァァァァ!!!」
しかし前ばかり見すぎていたシュンは横から飛び込んで来たバイオラプターに気がつかない。
「シュン!」
「くそ!!」
ミズハの声に反応して左を確認すると飛び込んで来たバイオラプターを確認できた。
しかし今更回避などできない。
しかしそんな不安を払拭するかのように口腔にロングレンジライフルが撃ち込まれる。
「さっきからバイオラプターの口を撃ち抜くなんてなんて実力だ。」
思わず呟いてしまう。
もうすぐバイオラプターの波を抜けられる。
そう確信した時、目の前に黒いコマンドウルフの姿が見えた。
「アーバイン!」
後ろのミズハが聞きなれない名称を口にする。
おそらくあのコマンドウルフのことなのだろうがそんなカスタム名称は聞いたことない。
「なんだ、アーバインって。」
「うちの村の用心棒よ。」
そこでようやくそれが人の名前だということがわかった。
そういえば前にレイやケイトからリアン村には用心棒がいると聞いたような気がする。
そして最後に立ち塞がったメガラプトルと対峙する。
「くそ…………。」
残念ながらメガラプトル相手には一筋縄ではいかない。
コーティング装備なので突っ込めばいけるかもしれないが、その確証はないのだ。
互いに睨み合う2機。
しかし均衡を破ったのはライガーゼロでもメガラプトルでもなかった。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!」
眩い光を放ちながら飛び込んで来たのはオスカーのブレードライガーだった。
後方からの攻撃に反応できず、そのレーザーブレードによって胴体から一刀両断されるメガラプトル。
頭領を倒されたバイオラプターたちは一瞬たじろぎ、後ずさりをする。
「シュン、今だ!」
「はい!」
一瞬の隙をついてバイオゾイドの大群を抜けた。
「はぁはぁはぁ………。」
進んだ距離は大したことないだろうが、それでもシュンにとってはとても長い時間に感じた。
「大丈夫か、シュン。」
ゆっくりと歩み寄るオスカーのブレードライガー。
「はい、なんとか。」
するとその反対側に今度はアーバインがやってくる。
「おい小僧、大丈夫か?」
「大丈夫よアーバイン。さっきはありがとね。」
シュンの代わりにミズハが答える。
「なんだ、ミズハ。お前も乗ってたのか。」
アーバインと呼ばれた男は驚いたような表情をみせる。
「しかしこの量………困ったな………。」
オスカーは目の前に溢れかえるバイオゾイドたちを見てそう言葉を漏らす。
「ああ、今までに見たことのない量のバイオゾイドだ。」
アーバインも同じようにそう言った。
やはりディガルドはバイオゾイドを大量に生産し、物量で押し寄せて来ていた。
シュンの予想していた通りだった。
「だがやるしかない。2人とも行くぞ。」
オスカーがそう言った時だった。
前列にいたバイオラプターが突如後退し、代わりにメガラプトルが姿を現した。
その数およそ15体。
「おいおい、冗談だろ。」
今度はこちらが一瞬たじろいでしまう。
「クァクァクァッ!!」
その隙をついて大量のバイオラプターと数体のメガラプトルが村に向かって走り出す。
「しまった!」
隣にいたアーバインは慌ててメガラプトルを追いかける。
「村に向かった奴らは俺がなんとかする。お前たちはそっちを。」
黒いコマンドウルフは村の方へと消えて行く。
「シュン、こっちは俺たちでなんとかするぞ。」
「はい、中佐。」
「コーティングの武器を持つ奴はアーバインに続け、ここは俺たちに、任せろ!」
敵は多いがなんとかしなければならない。
「シュン、リアン村を守って。」
後部座席のミズハがそう訴えてきた。
そうだ、リアン村は彼女の村。
目の前で失うところなんて見せたくない。
「行くぞ、ライガー!!」
脅威を増してくるディガルド、シュンも加勢するがその物量、ライガーゼロとメタルziの相性が悪いことなどから劣勢を極める。
そんな時、高空の彼方から真っ赤な何かが戦闘の最中に突っ込んできた。
その場の全員が凝視する中、その謎のゾイドは背中に背負った大型の槍によって次々とバイオゾイドを仕留めていく。
血しぶきが舞うその戦場に1つ残ったゾイドは真っ赤に染まった彼の『新しい相棒』だった!!
次回 ZOIDS EarTravelers
第13話 「紅い死神」
死神、初陣。