ZOIDS ~Era Travelers~   作:Raptor

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第13話 紅い死神

「行くぞ、ライガー!」

 

大気を震わせるかのような雄叫びをあげると、オスカーと共にメガラプトルに突っ込む。

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

先に接敵したブレードライガーのレーザーブレードがメガラプトルに肉薄する。

 

だが。

 

ガキンッ!!

 

なんとレーザーブレードはメガラプトルの爪によって防がれていた。

 

「くそ、こいつら爪に加工をしてきやがったのか。」

 

弾かれて後退したブレードライガー。

そんなことあるわけはないが、まるで苦虫を噛んだような表情をみせる。

 

「中佐!」

 

「おそらくこいつら、爪部分にメタルziに対抗するコーティングを施してやがる。」

 

確かによく見るといつもは鉛色に光っていた爪部分は鈍く金色に光っていた。

 

「他の装甲部分にはまだ加工を施してないみたいだがこれは厄介だな。」

 

15対2。

睨みをきかす両者だが、メタルziのコーティング武器が確実な術ではなくなった以上、この数の差は圧倒的だ。

動きが止まった彼らに向かって動き出したのはメガラプトル達だった。

 

「ぐ………、とりあえず数を減らすしかない!」

 

胸部のショックカノンを地面に向けて撃つと地面がえぐれ土埃が舞う。

オスカーのライガーは姿勢を低くするとレーザーブレードを展開した。

 

「今だ!」

 

土埃から飛び出してきたメガラプトルにタイミングを合わせるように跳び上がる。

意表を突かれたメガラプトルは防御することなく、その首を落とされた。

 

「いける、やはりコーティングは爪だけだな。」

 

これで14対2

 

「いこう、光の精霊。」

『もちろんなのですよ。』

 

メガラプトル達は僚機がやられたことで躍起だっているのか、今度はまとめて走り出してきた。

 

「先頭は俺が!」

 

シュンはライガーゼロを軽快に走り出させると、接敵した一番前のメガラプトルに飛びかかる。

 

「シュン、赤い水晶体を狙って。そこがメガラプトルの弱点よ。」

 

胸元に怪しく光る発光体。

おそらくそれに違いない。

 

「うおおおお!!」

 

バランスを崩し横倒しになったメガラプトルの胸元に向けてライガーは爪を立て振りかざす。

しかし一度では突き破ることはできない。

ならば何度でも。

そして痛烈な一撃が水晶体を突き破った。

必死に抵抗していたメガラプトルもついに断末魔の咆哮をあげ、力なく崩れ去った。

 

次の獲物に狙いを定め、再度飛びかかる。

しかし。

 

「ぐっ………。」

「きゃっ……。」

 

突如横からの衝撃。

飛びかかる無防備なライガーゼロに別のメガラプトルが突進してきたのだ。

 

視界をあげると目の前には五体のメガラプトル。

あたりを見回せばオスカーも囲まれている。

さすがに数が多すぎた。

 

しかし諦めるなんてことはしない。

 

「こうなったら一か八かストライクレーザークローで飛び込んでやる。」

 

自分1人ならまだしもミズハが乗っている。

何としてもこの包囲網は抜けなければならない。

 

「頼む光の精霊、力を貸してくれ。」

『今さら何を言ってるのですか。』

 

光の精霊は鼻で笑いながらそう言う。

 

『私にいい案があるのですよ。任せるのです。』

 

なんとも心強い。

その瞬間、頬のフィンが開き各部がまばゆい光を帯びる。

 

『シュン、私の言う通りに。』

 

光の精霊がそう付け足すとライガーゼロは走り出す。

 

まるで避ける様子のない獲物達。

メガラプトル達は散開しシュンの攻撃に備える。

目の前に立ちはだかるメガラプトルは爪にコーティングが施された機体だ。

こちらの攻撃を受け止める気なのだろう。

 

「構うもんか、貫いてやる。いくぞ光の精霊!!」

 

右爪を振り上げ飛び込む。

その瞬間、ライガーゼロの爪が黄色から赤に変わる。

 

ザンッ………。

 

メガラプトルに対して突き出されたライガーゼロの右爪はコーティングしてある爪、それすらも引き裂く。

 

『シュン、そのまま次なのですよ!』

「え、でもコーティングが。」

『いいから、あとはライガーに任せるのです!』

 

光の精霊に言いくるめられるようにそのまま次の獲物を狙い走りだす。

 

「ライガー、任せたぞ!」

 

もう、相棒を信じるしかない。

シュンの気持ちとは裏腹にライガーは楽しそうだった。

砂を蹴り上げ、勢いよく闊歩する。

たじろぐメガラプトルに爪を振り上げる。

 

ザンッ………。

 

超高熱の刃は鋼鉄の魔龍をいともたやすく切り裂いた。

 

「嘘だろ………、そんな手が。」

 

もちろん一撃目でコーティングはあっけなく剥がれていた。

その証拠に右爪はライガーゼロの本来の金色とコーティングの銀色が入り乱れている。

 

『単純な考えなのです。だって、コーティングしたのは右爪だけじゃないじゃないですか。』

 

左手で撃ったのだ。

確かに言われてみれば左右の爪にコーティングを施したのだから両方で2回ストライクレーザークローは撃てる。

わかっているが、前回のヘルザ村での戦闘は全て右爪だった。

 

「きっとシュンが右利きだからよ。」

「えっ?」

 

後部座席に座っているミズハはそう言った。

 

「シュンが右利きだから、おそらく無意識に右手で攻撃するようにコントロールしてたのかもね。逆にライガーの本能で動かしたから逆の爪を使ったんじゃないかしら。」

 

「そういうことか………。」

 

今まで操縦に関してそんなこと考えたこともなかった。

操縦には自信があったが、まだまだ未熟だということだろう。

 

『シュン、 色々と考え込むのは自由なのですけど追撃が来るので後でにしてほしいのですよ。』

 

「そうだな、一旦引くか。」

 

横に目を向けるとオスカーもなんとか包囲を抜け出したのを確認できた。

 

示し合わせたように後退する2人。

 

「シュン、そっちは何機だ?」

 

「こっちは3機です。でもコーティングは剥がれてしまいました。」

 

「俺も3機だ、ブレードを一本折られた。同じようなもんだな。」

 

オスカーのブレードライガーの左側レーザーブレードは根元から折れている。

お互いにほぼ武器は尽きた状態だ。

 

これで9対2。

 

先ほどに比べ数は減ったが、戦力的には先ほどと変わらないのが現実だった。

 

このままではやられる。

敵はメガラプトルだけでなくバイオラプターもいるのだ。

 

「どうする、シュン。」

 

オスカーからの通信。

声の感じからして彼も焦っているに違いない。

 

しかしこの状況、どうすると言われてもどうにもならない。

 

「何か策はないのか、光の精霊。」

『こっちも色々と考えているのですよ。』

 

光の精霊も焦っている。

だがそんなことを他所にメガラプトル達はジリジリとその距離を詰めて来た。

 

その時だった。

 

「ねえ、シュン。あれ、なにかしら!」

 

ミズハは不意にそんなことを言って空を指差す。

 

「ほら、あそこ。何か落ちてくるわ!」

 

ミズハの指差す先、そのには確かに何かが映っていた。

しかし残念ながらそれが何かまでは確認できない。

 

「ディガルドの新兵器か?」

 

頭をまずよぎったのはその可能性。

だがそれを確認する暇もなく。

 

「速い!?地面に着くぞ!」

 

凄まじい轟音と共に謎の飛行物体は地面に到達する。

着地の衝撃か、大量の砂埃が天高く舞い上がる。

 

「シュン、なんだあれは?」

「俺もわかりません。中佐もご存知ないのですか?」

「当たり前だ。」

 

敵か、味方か。

はたまた新たな勢力か?

 

思わず一歩ずつ後ずさりしてしまう。

 

「一体なんなんだ………。」

 

土煙の中、まだその姿は確認できない。

しかし。

まるでロケットブースターのような爆音と同時に、耳を塞ぎたくなるような断末魔が次々と聞こえてくる。

そう、あの土煙の中だ。

おそらく落ちてきた何かと土煙の中のバイオゾイド達が戦っているのだろう。

 

「シュン、前!」

 

後部座席のミズハは勢いよく前方を指差す。

土煙の中から飛び出してきたのは一体のメガラプトル。

迎撃しようと体勢を整えようとするが何かおかしい。

それもそのはず、メガラプトルはシュンの方に2、3歩歩くとまるでスライスされたパンのように真っ二つになりゆっくりと崩れ落ちた。

 

「まさか………メタルzi……。」

 

オスカーはそう呟く。

 

「え………。」

「メガラプトルをあれだけ綺麗に切断となるとおそらくコーティング武器ではない。本物のメタルziの武器だ。」

 

そうなると新たなる勢力だろうか。

シュン達が一抹の不安を背負う中、ゆっくりと土煙が晴れる。

 

「あれは………。」

 

さっきまで群れをなしていたバイオゾイド達は見るも無残な姿になっていた。

 

「あれだけのバイオゾイドをこの短時間で………。」

 

あれがメタルziの武器の強さなのだろうか。

そう思った時、残骸の中で動く影が1つ。

 

その影はゆっくり動き出すとシュン達の方に向かってきた。

だがそのシルエットはあまりにも小さい。

あんなモルガのような小型のゾイドがあの大量のバイオゾイドを倒したというのだろうか。

やはりメタルziの威力は半端ないのだろう。

 

ゆっくりと近づいて来たシルエットはついにその姿を見せた。

 

 

 

低い体高と重装甲を持ち、特に頭部装甲は他の部位の2倍以上の厚さによって強固な防御力を持ったそいつは、これを利用した突進攻撃も可能で、突撃部隊や特殊部隊で重宝される。この頭部装甲に守られたコクピットと姿勢の低さから、突撃用ゾイドとしては高い生存性を誇る。

汎用性が高く様々なバリエーションが存在すし、中央大陸戦争初期に開発されて以来、惑星Ziで最大の生産数を誇る。

 

しかしシュンは初見ではない。

解放戦団にも配備されている。

 

だが何かが違う。

 

「あのモルガ、背中についてるのは槍か…?」

 

まるでバイオゾイドの返り血を浴びたかのように真っ赤に染まったモルガ。

無論カラーリングではあるとは思うが、他のモルガにはない禍々しさを感じた。

そして目が釘付けになったのは背中の武器。

一般的にモルガは突撃とは言えど何も格闘武器をつけているわけではない。

ケイトのモルガがそうだったように大抵は砲撃用の火器を装備している。

 

だがその背中には矛とも槍とも言えるような格闘武器を装備していた。

鈍く銀色に輝くコーティングに酷似した煌めき。

おそらくあの武器がメタルziの武器に違いない。

 

そのモルガはさらにゆっくりと近づいてくると50メートル手前ほどで止まった。

 

「みんな、待たせたな。助けに来たぜ。」

 

彼はそういうと口角を上げてニヤリと笑った。

 

その聞き覚えのある声に思わずシュンもニヤリとしてしまった。

 

 







新しい愛機に乗って助太刀に来たケイト。

しかしリアン村での戦闘は苦しい戦いを強いられる。
そしてバイオゾイド達から天空の心臓を守るためにアーバインのコマンドウルフが被弾。
村の村長も戦闘によって命を落とした。

村を守ることはできたが大きな被害を出してしまった解放戦団はついにある「決断」を行う!!

次回 ZOIDS EarTravelers

第14話 「英断か躊躇か」

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