ZOIDS ~Era Travelers~   作:Raptor

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第8話 Operation : Claymore

 

その日はとても天気が良く、穏やかな日だった。

 

人は思い思いのことをしながらその時間を過ごしていた。

 

ゾイドの整備をする者、岩の上で陽に当たる者、はたまたトレーニングする者。

 

 

しかし彼の姿はどこにもなかった。

 

 

 

 

 

 

彼がいたのは1階の駐機場奥、オレンジ色の裸電球がいくつもいくつもぶら下がっている部屋だった。

 

「なあ、調子はどうだ?」

 

シュンは自分の膝丈ほどしかない木箱で作った簡素な椅子にに腰掛けながら目の前の眠っている戦友に声をかける。

 

無論返事はない。

 

彼、---スチュアートとは養成訓練時代の同期だった。

 

訓練生のトップで部隊をまとめていたスチュアートはシュンの入隊の経緯や事情を知っており、部屋の隅っこにいたシュンを仲間の輪の中に入れてくれていた。

 

「あの時は本当に世話になったな。」

 

あの時彼がいなければきっと軍をやめていただろうし、オスカーに出会って戦い方を教えてもらえることもなかっただろう。

 

「早く目を覚ましてくれ、お前に話したいことがいっぱいあるんだ。じゃあ、また来るからな。」

 

静かに立ち上がるとシュンは医務室を出ていった。

 

 

 

 

 

「あら、シュン。ちょうどよかったわ、これから作戦会議を行うから呼びに行こうと思ったのよ。」

 

医務室を少し出たところで淡い翠色の髪を揺らしながら走って来るレイと会った。

 

「ありがとう、隊長自ら走って呼びに来るなんて。」

 

「だってケイトに呼びに行かせたら絶対寄り道して帰ってこないもん。」

 

そう言ってふたりして笑いながら作戦会議を開いている部屋へと向かった。

 

知っての通り、シュンはレイの指揮する一番隊に所属となった。

 

隊員数はどちらかといえば少ない方でシュンを含め20人前後。

オスカー曰く少数精鋭の部隊ということである。

 

そんな一番隊に配属されたシュンは早速任務についていた。

 

「シュン、適当に座って。」

 

部屋に入るなりレイにそう促され近くにあった椅子に座る。

 

「みんなお待たせ、全員揃ってるわね。」

 

レイは部屋の中をぐるりと見渡し頷く。

 

「それじゃヘルザ村奪還作戦についての作戦会議を開始します。作戦名は『クレイモア』外部通信はもとより内部通信にもこの作戦コードを使って。」

 

レイはそう言いながら何や紙を配りだす。

 

「今配っている紙は今回のクレイモアの個人コードよ。作戦中はこの識別コードで連絡をとりあって。ちなみに私は『ホークアイ』各自仲間と自分の名前は把握しておいてね。」

 

一番後ろに座っていたシュンのところにもやっと紙が回ってきた。

 

ーーーええと俺のはっと………あった。

 

そこにはシュンの名前もしっかりと入っており、『フェイ』と書かれていた。

 

すぐ横にはケイトの名前も書いてあり、彼には「ラプター」という識別コードが付いていた。

 

 

「作戦概要を説明するわね。一番の目的は村内からのディガルドの排除、および村民の保護よ。作戦を実行するにあたって行うことは3つ。1つは村民が集められている施設の特定、これについては村民が集められていると思われるいくつかの施設をアサルトシーカーによって偵察、および特定を行なってもらう。2つ目はディガルドが占拠している大型施設の制圧。これについては副隊長のケイトから話があるわ。最後の3つ目はディガルドの援軍の撃退と村民の保護。村民の保護はグスタフによって行う。今確認できているだけでも村民は800人、おそらく保護には2体のグスタフを使っても少なくとも1時間はかかると考えられるわ。その間、おそらく近くの駐屯地よりやってくる援軍を村から20キロ以上のところで食い止めておいてほしいの。これには一番隊に加え、副団長の二番隊、団長の三番隊にも加わってもらう予定よ。ここまでで何か質問ある??」

 

レイは一気に話きり、隊士の顔を見る。

 

シュンはなんだか共和国に帰ったような気分になっていた。

 

こんなこと言えはしないが、所詮はレジスタンスに過ぎないと思っていたのだ。

作戦とは言っても名ばかりのものであってもないようなものなんかじゃないのかとタカを括っていたのである。

 

「思ってたのよりすげぇや。」

 

普段から前線に出ていた経験が少ないシュンは、予想外な本格的な作戦に少し興奮していた。

 

 

「質問はなさそうね。それじゃ次は振り分けは……………」

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、あっつ………。」

 

自分1人だけ異様な熱気に包まれた作戦とは会議を終え、部屋を出たシュンは額の汗を手の甲で拭う。

 

よく見れば他の隊士たちは意外と涼しい顔をして出てくる。

 

やっぱり経験がものを言うのかなぁと思ってしまう。

 

彼を見るまでは。

 

「いやぁ、あっちぃなぁ!!」

 

汗だくで出てきたのはもちろんケイトである。

 

「ケイトなんでそんなに汗かいてんの。」

 

シュンは苦笑いしながらそう言った。

 

「いやぁ、あの熱気には耐えられねぇよ。それにしても最初の作戦からシュンと組めるなんて嬉しいよ。」

 

ワシワシとタオルで頭を拭きながら子供みたいに無邪気に笑う。

 

「俺とケイトと一緒で心強いよ。実戦経験が少ないからちょっと心配でさ。」

 

軍人としては恥ずかしいことこの上ないが、これも自分の責任だ。

やはり経験不足というのは痛い。

 

「大丈夫だシュン。お前のことは俺が絶対に守ってやるからよ。」

 

「え、モルガでライガーを守るって?」

 

思わず吹出してしまった。

いくらケイトのモルガがあのような強さでも守るとなると話は変わってくる。

 

「うるさいなぁ!モルガだってお前ぐらいなら守れるっつうんだ。」

 

ケイトも笑いながら反論してくる。

 

同じ部隊になったからかわからないが、なんだか距離が近くなった気がする。

 

「まあ、作戦は明日からだ、今日はゆっくり休んどけよ。」

 

そうして2人は別れて自室への向かった。

 

 

シュンがもらった部屋はちょっとベッドが置いてあるので少し手狭だが、十分生活はできる広さであった。

 

「ふぅ。」

 

羽織っていた上着を脱いでベットに放り投げると、自分もベットに倒れこんだ。

 

そうして手に持っていた作戦の詳細が書かれた紙を見つめる。

やはり一回で作戦が頭に入ってこなかった。

 

入隊後初の実戦で失敗はしたくない。

そんな思いで彼はその紙を見ていたのである。

 

 

作戦の概要はこうだ。

 

レイが言っていた村人達の収容施設が特定できたら、村から10キロの位置に配置しておいたガンスナイパー隊による精密射撃によって占領されている村役場、火の見櫓、広場の三箇所を攻撃。さらにはケイト指揮するコマンドゾイド部隊は村の中へと侵入、残党を殲滅させる。なおその際、村民の収容施設が近くにある場合には上空のレイから連絡が入り作戦を変更する。

村内からディガルドを排除でき次第、輸送用のグスタフ2体を村に送り村民を安全な場所へと避難させる。

ここまでシュンの出番はない。

あるとすれば非常事態のみだ。

 

肝心なシュンの役割はレイが先ほど説明していたようにこの先だった。

 

グスタフでの輸送中におそらくやってくるだろうディガルドの援軍を村から離れたところで食い止める。

この作戦の中でも要の作戦である。

 

というのも、ヘルザ村の守りは昨日から手薄になっており最新の偵察報告ではバイオラプターが7機だという。

 

数は誤差があるだろう。

だが手薄になったというのはそういうことではない。

 

バイオメガラプトルの存在である。

 

シュンは一度も対峙したことはないが、先日ディーハルトを襲っていたやつだ。

 

大きさはバイオラプターの2倍以上、性能に至っては3倍とも聞いた。

前にオスカーが言っていたように爆炎の希少鉱石(イグニスストーン)の熱では破壊できず、メタルziの攻撃のみしか効かない大型バイオゾイドだ。

 

数日前にはおそらく部隊長であろうバイオメガラプトルが目撃されており、近くの駐屯地に待機しているのではないかと言われているのだ。

 

もしそれが事実であれば戦えるのはメタルziのコーティングが施された武器を持つゾイドのみ。

 

すなわちオスカーのブレードライガー、シュンのライガーゼロのみとなる。

 

そのバイオメガラプトルを食い止めるのがシュンの役目だった。

 

 

「結構大役だよなぁ………。」

 

 

もしも突破されて村への侵攻を許してしまえば輸送部隊が襲われ村民に甚大な被害が出る。

それだけは避けなければならない。

 

だが不安もある。

 

しかしそれを考えれば現実に起きそうな気がしたシュンは自分の奥底にねじ込んだ。

 

「ライガーに会ってくるか。」

 

シュンは上着を羽織らずにタンクトップのまま部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

「では、これよりオペレーションクレイモアを発令する。いいか、最優先事項は村民の保護だ。しかしそれと同じぐらいに俺は隊士全員の帰還を望んでいる。」

 

 

昨日の同じぐらい、この日も晴天だった。

 

オスカーのこの宣言により、ついに作戦は開始となった。

 

アジトの入り口からは一番隊に所属しているゾイドが次々と出撃していく。

 

その中にはもちろんシュンの姿もあった。

 

 

部隊編成は

ライガーゼロ

モルガキャノリーロクロウSP

モルガキャノリー2機

ガンスナイパー5機

プテラス

アサルトシーカー5機

マキシムホーン3機

である。

 

このうちコマンドゾイドのみ燃料の問題からグスタフでの輸送となっていた。

コマンドゾイドの輸送を行ったグスタフがそのまま村民保護に展開するという算段である。

 

 

「こちらホークアイ。ナイトに告ぐ、まもなく目標地点、展開を許可する。」

 

隊長のレイはそういった。

 

ナイトとは最初の任務に当たる部隊、すなわち偵察隊のことだ。

 

「了解。これよりナイト各士全機発進します。」

 

グスタフの側面甲板が開くとそこからアサルトシーカーが次々と発進していった。

 

「ホークアイより各士へ。ビショップは村より半径10キロのところで待機、ルークは村より西へ7キロの岩陰に待機。ナイトの報告にが入り次第作戦を展開せよ。」

 

 

「こちらビショップ隊、ラプター了解。」

 

「こちらルーク隊、フェイ了解しました。」

 

この先は各隊に別れて指定の場所で待機をする。

 

シュンは1人隊列を離れ岩陰へと向かう。

寂しくはなるが、一番隊のルークはシュンしかいない。

 

岩陰にライガーを止める。

 

「ここなら見つからなさそうだな。」

 

四方は岩に囲まれており、ぱっと見外から見えない。

ただ上からは丸見えだが。

 

「まあ、その可能性は低いだろ………。」

 

息を吐きシートベルトを外して身体を伸ばす。

作戦が第三段階に入るまではシュンの出番はない。

緊張感は捨てずに少しリラックスすることにした。

 

『油断は大敵なのですよ。まだ村にメガラプトルがいないと決まったわけではないのですよ。』

 

「わかってるよ、すぐ出撃できる準備はしてるさ。」

 

だが内心はものすごく緊張していた。

 

戦うのだ、あのディガルドと。

戦争をすると言っても過言ではない。

 

果たして戦えるのだろうか。

 

本当に自分のしていることは正しいのだろうか。

 

彼の中でまだモヤは晴れずにいた。

 

「光の精霊。」

 

『どうしたのですか、急に。』

 

「俺、まだどこかで迷ってることがあると思う。だから俺を最後まで導いてくれな。」

 

カノンは言っていた。

俺を護り、導くために彼女がいると。

 

『もちろんじゃないですか。』

 

光の精霊はなんだか照れ臭そうに言った。

 

光の精霊とそんな会話をしているとレイから再び通信が入る。

 

「こちらホークアイより各士へナイト2機がバイオラプターと交戦。なお、村民の収容施設は村役場と特定。」

 

その通信を聞いて慌ててシートベルトをしめる。

 

「作戦プランを変更します。ビショップは速やかに村役場以外の施設にいるバイオラプターに狙撃、ナイトのマキシムホーン各機とビショップのラプターは村内へ、アサルトシーカー隊の援護及び村内の制圧を。」

 

 

「こちらラプター、了解!メルカ、パーキンス、ミラ行くぞ!」

 

グスタフの側面甲板が開きケイトのモルガキャノリーとマキシムホーンが出撃して行く。

 

それと同時にガンスナイパーが狙撃を開始する。

 

リラックスしようと思った矢先にこれではなかなかそうもいかない。

そうだ、これが実戦なんだと改めて認識するのであった。

 

「ビショップ隊ガンナー1よりホークアイへ。視認できる全てのバイオラプターの殲滅を確認。」

 

「了解、ガンナー1からガンナー5はその位置に待機。援護要請があったなら速やかに援護できる準備を。」

 

「了解。」

 

そんな通信をよそに村の外れの方から火の手が上がる。

 

村に入ったケイトが交戦しているのだろうか。

 

「こちらラプター。あいつら厄介な事に村の中に何体もバイオラプターを隠していやがった。こいつらは俺がやる。ホークアイ指示を。」

 

通信越しに緊迫感が伝わってくる。

 

「こちらホークアイ。残存している敵の数は3体。ラプターにそちらを任せて残りは村役場の守りを固めて。回収班は速やかに村役場へと移動し、村民の確保を。」

 

「アサルト1からアサルト5了解。なお、アサルト3は被弾により戦闘不能。」

 

「こちらアンビュラー1、アンビュラー2と共に回収地点へ向かいます。」

 

そうしてグスタフも村へと向かっていった。

 

とりあえず作戦は終盤に入った。

 

レーダーや無線に耳を傾けるが今の所はメガラプトルが出たという情報はない。

 

と安心しきった時だった。

 

 

 

 

 

「こちらガンナー1、何者かにぐぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

目視はできないが火の手が上がっているのは見えた。

 

「嘘でしょ………。こちらホークアイ、バイオメガラプトルを確認、ルークは迎撃に向かってください。」

 

レイはシュンに向かってそう無線をとばす。

 

しかしそれだけでは終わらない。

 

「村内より新たな目標群を確認、数は7。収容施設に向かって進行中、ビショップは速やかに迎撃を。なお、ガンナー各士はその場から退避、態勢を立て直してください。」

 

火柱が村の方から上がっているのが見えた。

 

「いくぞ、光の精霊!!」

 

ライガーゼロを岩陰から発進させる。

 

岩陰から飛び出したシュンはその光景を見て愕然とした。

 

「嘘だろ、なんでこんなに早く援軍が………。」

 

それは村に向かって押し寄せてくる、バイオメガラプトルを先頭としたディガルドの援軍だった。

 

その数は30はくだらない。

 

まだ作戦は第ニ段階すら達成していない。

 

前述した通り、ここまではシュンの出番はなかったはずだった。

 

「フェイ、あと少しでラプターが収容施設の制圧を終える。今迎撃に出れるのは近くで待機してるあなただけよ。お願い、みんなを守って。」

 

上空のレイから連絡が入った。

 

シュンが作戦の第三段階で出撃をする前に出撃するのいう非常事態。

 

それは。

 

ディガルドが予想より早く援軍を送ってくるということだ。

 

「わかりました。俺がみんなを守ります。」

 

「二番隊と三番隊には連絡してあるから。」

 

短いやり取りをするとレイのプテラスはディガルドの援軍に向かって飛ぶ。

 

「こちらホークアイ。北東より新たな目標群接近、数40。うち一機はバイオメガラプトルと断定。」

 

シュンはライガーゼロを走らせ立ちふさがるようにして止まった。

 

「あれだけの数を1人でか………。」

 

弱気な発言をしているシュンをよそにライガーゼロはやる気十分だった。

その大群の前に立ち、シュンのライガーゼロは雄叫びをあげる。

 

『どうやらライガーはやる気みたいなのですよ。』

 

「みたいだな。ならやるしかねぇ!!」

 

スロットル全開で走り出す。

 

「フェイ!こちらガンナー、周りのバイオラプターは俺たちがなんとかする、お前はメガラプトルを!」

 

後ろではガンスナイパーとモルガキャノリーによる援護射撃が行われていた。

走っているシュンの横を144ミリ砲が掠めバイオラプターに直撃する。

その瞬間先頭のバイオメガラプトルは一度停止し、後ろに下がった。

 

「くそ、先にバイオラプターをやらなきゃいけないのか。」

 

小さくそう呟くと目の前のバイオラプターに狙いを定める。

 

『シュン、着地と同時に前転なのですよ。』

 

「前転!?」

 

そんなことできるなんて聞いたことがない。

 

『頭の中で思うだけでいいのです。あとはライガーがなんとかしてくれるのですよ。』

 

戦闘中にそんなことは考えてられないと思いながらも光の精霊の指示に従う。

 

「喰らえ!」

 

バイオラプターに肉薄し、爪で引き裂く。

 

そして。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

思い描いた通りにライガーが前転した。

 

『そうそう、その調子なのですよ。』

 

光の精霊は嬉しそうにそういう。

 

そのまま近くにいたやつに襲いかかり首を刎ねる。

 

「まだまだぁぁぁ!!」

 

屍を飛び越え右爪を振り上げる。

 

「ストライクレーザークロォォォォォ!!」

 

その一撃で右半身をえぐり取った。

 

崩れ落ちるバイオラプター。

 

「ここから先へは行かせない。」

 

ここにやってきた初日、オスカーのブレードライガーがやったようにバイオラプターを睨みつける。

 

戦うのは嫌だ。

だがそんなことは言ってはいられない。

 

まだモヤモヤするものがたくさんあるけれど、それでも一度は自分で決めた道だ。

 

「戦って戦って戦って戦って必ず見つけてやる、俺が本当に戦う意味を!!」

 

ライガーと共に雄叫びをあげる。

 

その咆哮に答えるかのように、後方からゆっくりと大型のバイオゾイドがやってくる。

 

バイオメガラプトルだ。

 

「見ない大型ゾイドだな。新入りか?」

 

突然の通信だった。

 

「え………。」

 

「なんだ、まさか人が乗っていることに驚いてるのか?」

 

バイオゾイドは無人機だとずっと思っていた。

 

倒した後に残るのはは骨のような残骸のみ、コックピットのかけらすら残ったのを見たことがない。

 

「まあ、これから死ぬやつにはそんなことは知る必要もないか。」

 

バイオメガラプトルのパイロットはそういうと、脚部のブースターを点火させ一気に間合いを詰めてくる。

 

「人が乗っていながら………あんな残虐な真似を………。」

 

たった一体のバイオラプターにやられた仲間は全てコックピットを攻撃されていた。

 

無人機が的確に相手を仕留めるためにやったことだ。

 

どこかで彼は都合よく解釈していたのかもしれない。

 

「お前を倒してやる。」

 

紙一重でバイオメガラプトルの攻撃をかわす。

 

「な、なに!?」

 

驚くバイオメガラプトルのパイロット。

 

しかしライガーゼロも無傷というわけではなく、左肩の装甲をかすめてしまった。

 

「次はこっちの番だな。行くぞライガー、光の精霊!」

 

ライガーを走らせ飛び上がる。

 

メタルziのコーティングが太陽光を反射し、煌めいた。

 

「遅い!!」

 

しかしバイオラプターの時のようにはいかず空振りに終わる。

 

そしてその隙を狙ったかのようにバイオメガラプトルは尻尾を鞭のように振り回しシュンのライガーゼロを捉えた。

 

「ぐっ………!」

 

体勢を崩したシュンに避けられるわけもなく、派手に吹っ飛ばされ岩に叩きつけられる。

 

「だ、大丈夫かライガー。」

 

激しい一撃だった。

ダメージがないとは言い難い。

 

「さすがは大型ゾイド。一撃ではくたばらないか。」

 

バイオメガラプトルは首をもたげて何かを吐き出そうとし始める。

 

真っ先に頭に浮かんだのは荷電粒子砲。

 

だが、何かが違う。

 

「だが、これで終わりだぁ!!!!」

 

口腔から打ち出されたのはバイオラプターのものよりも大きな火球だった。

もちろん速さも段違いである。

 

「ぐっ!」

 

慌てて避けるが完全にさけきれずにまたも吹き飛ばされる。

 

『シュン、しっかりするのですよ!!』

 

「わかってるって………。」

 

しかしその瞬間、シュンは絶望的な言葉を耳にする。

 

その絶望は昨日の晩にシュンが懸念していた不安ようそだった。

 

「こちらホークアイ、大変なことが起きたわ。北東より新たに3機のバイオメガラプトルを確認したわ。」

 

新たにバイオメガラプトルが3機。

 

そう、シュンが前日の夜に懸念した不安、それは。

 

 

バイオメガラプトルが1体ではなく複数体だったら。

 

 

「嘘だろ………。」

 

予想外に援軍が早すぎたせいで、オスカーは間に合わないだろう。

 

残っているメタルziのコーティング武器を持つのはシュンのライガーゼロのみ。

 

1機でこのザマだ、あと3機など相手にできるわけもない。

 

「くそったれが………。」

 

目の前で火球を吐こうとしているバイオメガラプトルに向かってそう呟く。

この距離なら避けられなくはないが、おそらく足はやられてしまうだろう。

 

それでも一か八か、飛びかかってやる。

 

そう思っていた時だった。

 

 

 

ザンッ……………。

 

 

一陣の風のような黒い影が通り過ぎ、砂を巻き上げた。

 

シュンはとっさにその影を追う。

 

だが、それよりも先に目の前の光景を疑った。

 

「な、なんでダメージを………。」

 

バイオメガラプトルの首はまるで刃物で切られたように根元から綺麗に落ちていた。

 

明らかに斬撃によるダメージだ。

 

だが、会敵からわずか5分足らず。

待機場所から緊急発進したオスカーが間に合うはずない。

 

「大丈夫か、新入り。」

 

その声は上空より。

バイオメガラプトルの首を切り落とした主からだった。

 

上空を見ると、そこには青い空には似合わないサンドイエローの何かが飛んでいた。

 

「あれは………。」

 

漆黒の翼を広げ、空戦ゾイドでは珍しい四つ脚を持ったそいつは中央大陸戦争時代、ゼネバス帝国軍が開発したドラゴン型戦闘機ゾイド。

 

可変翼による高い機動性とVTOL機能を持ち、レーザーブレードとランディングギアを兼ねるストライククローにより高空で優れた格闘能力を持つ。反面、パイロットに高い操縦技量を要求し、基本装備に火器を持たない純粋な格闘戦闘機ゾイド。

 

名を、レドラーという。

 

「あれはレドラー………。」

 

上空のレドラーを見ながらシュンは思う。

 

なぜレドラーが大型バイオゾイドを倒せたのだろうかと。

 

だが実はシュンは大きな勘違いをしていた。

 

作戦の第三段階通称「ルーク」に配属されたのは一番隊ではシュンだけだった。

しかしこの作戦にはバッカニアの二番隊とオスカーの三番隊も加わっている。

 

シュンは単なる援護だと思っていた。

 

「三番隊のヴァノッサだ。おっと作戦中はファルコンと呼ばなきゃいけなかったんだね。遅くなったけどもう安心しな、本隊の援護がもうくるから。」

 

そう、解放戦団内で最も主力の部隊は三番隊。

その事実はオスカーに聞かされていた。

 

「え、でもいくら援護がきてもメタルziのコーティング武器がないと………。」

 

「まったく、団長全然説明してないな………。大丈夫、安心して。」

 

ヴァノッサの乗ったレドラーは空中で翻すとバイオラプターの群れに向かって飛んだ。

 

よく見ると翼にはブースターキャノンが付いている。

 

「よし、今だ。」

 

バイオラプターの攻撃を避けながらヴァノッサのレドラーは身体を反転させ背面飛行を行う。

 

そして群れに飛び込む刹那、ブースターを噴射しレーザーブレードを展開。まばゆい光を放つ。

 

「もしかして………メタルziのコーティング………。」

 

ヴァノッサのレドラーはバイオラプター数体を切り倒し上空へ離脱した。

 

「主力である三番隊のゾイドにはすべてメタルziのコーティング武器が装備されてるんだよ。」

 

「はは、ははははは………。」

 

絶句とはまさにこのことだ。

 

「さあ、新入り、次行くぞ。」

 

「うん、その前に助けてくれてありがと。」

 

そうして2人は新たな目標群に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







初めて解放戦団として実戦に参加したシュン。
作戦はディガルドの予想外の反撃により難航していたが、ついにこちらにも援軍が。

だが、なかなか援軍は到着しない。

「やられた。」というオスカーの無線。

このままでは解放戦団も村民も全滅してしまう。

絶体絶命の刹那、謎の飛翔体がライガーゼロに吸い込まれるようにして入っていった。

雄叫びをあげるライガーゼロ。

この状況を打破できるのか。

次回 ZOIDS EarTravelers

第9話 「雄叫び」

それは反撃の合図。

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