音ノ木坂学院に通っていた桜内梨子は内浦に引っ越すことになった。そこで母からアルバイトをやってみない?と提案をされる。これは桜内梨子が働く…そんな物語。

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桜内梨子のバイト記録

「梨子、今日バイトの面接でしょ?早く準備しなさい」

「はーい」

 

 私、桜内梨子。十六歳。昨年度まで東京にある国立音ノ木坂学院に通っていたのだけど…。家族の都合で内浦にある浦の星女学院に転校することになっちゃった。友達と離れ離れになるのは寂しいけど、また新しい友達を作るために頑張らなきゃ!

 

「全く…あなたもう高校二年生になるのよ?少しは自覚を持ちなさい」

 

 母は高校生のうちに社会を学びなさいと言うことでアルバイトをしてみないと提案をされた。私自身お金が欲しかった、お小遣いじゃ足りないということで特に断る理由はなかった。何に使うかは…恥ずかしくて言えないけど…。

 今回と言っても初めてなんだけど母が紹介してくれた職場に行くことになった。母が言うにアルバイト…社会を学ぶにとっておきの場所らしい。忙しいのが玉に瑕とぼそっと言っていたけど…。私自身その場所に憧れを持っていて最初からその場所にしようと思っていた。

 

「履歴書持った…身だしなみは…うん大丈夫。靴は…綺麗にした。服も…清楚っと。母さんこれで大丈夫かな?」

 そういうと母は「バッチリよ!」と右手の親指をたてグッとした。

 

「はぁ…緊張するなぁ…」

「大丈夫よ。あそこの店長さん優しいからきっと採用してくれるはずよ」

「そうかな…ほら面接とかって第一印象が大事でしょ?地味な私じゃダメじゃないかな…」

 母は私の隣にそっと座り肩に抱き寄せた。

「自分の事をそういう風に言わないの。自分に自信を持って。梨子だったら必ず受かるんだから」

「うん…ありがと…」

「…そろそろ行かないと本格的に間に合わないよ?」

 

 母がそう言うとはっと時計を見る。面接の時間は14時。ここから十分程度だから…

「いけない!もう行かなきゃ!」

「頑張ってきなさいよ?」

「もちろん!」

 

 靴を履きドアノブに手をかける。潮の匂いが私の鼻を、身体を包み込む。東京とは違った匂い。引っ越してきたばかりだけど私はこの匂いが好き。

「お母さん行ってきます」

「行ってらっしゃい!」

 私は面接の場所まで走っていった。

 

「…どのように成長するのか楽しみね」

 

 そう言い残し、家の中に戻った。

 

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「まだかな…まだかな…」

「梨子?少しは落ち着きなさい」

「お母さんだって…」

 

 あの面接から一週間。自分の中で少し心残りはあるものの無事に終わった。そして今日店長から面接の結果が電話で知らされるのです。私はとても待っていられず家の廊下を行ったり来たりしていた。電話自体はリビングの方に置いてあるけど…。

 

 prrrrr

 

「っ!電話」

 

 母の方に顔を向けるとコクリと首を振った。私は携帯に恐る恐る手を伸ばし着信に出た。そう…電話先の確認もせずに…。

 

「…もしもし、桜内です」

「梨子?面接の結果はどうだ?」

 

 ずっこけた…な、なんで父が今掛けてくるのよ!こんな時に…。確かに今日面接の結果は知らされるけど別に今掛けなくても良くない?

 

「はぁ…」

「おいおい…父親にため息はな…」

「…うるさーい!もうお父さんなんて知らない!」

「梨子?なんで怒ってるんだ理由をお…」

 

 何かを言っている最中に電話を切った。母を見るとくすくす笑っていた。

 

「何で笑ってるの!」

「だって…梨子ってお父さんのことが好きなのにそんなこと言っちゃって~このこの~」

「そんなことない!」

 

 顔が熱い…きっとこれも父のせいだわ…。でも落ち着いた。まあたまには父も役に立つじゃない。今回だけは感謝するわ。…ありがとう。

 

 

 

 prrrrr

 

 

 

「今度こそきたわね。電話先は…大丈夫」

 

 自分に大丈夫と言い聞かせるようにも言った。でもやっぱり緊張するなぁ…。鳴り響くコール音。それを止めるように私は携帯に表示されている『電話に出る』を横にフリックした。

 

「もしもし」

「あ、桜内さんの携帯の方でしょうか?」

「はいそうです」

「この度は我が社のアルバイト募集にご応募いただきありがとう御座います」

「…」

「先日行った面接試験の結果を通達します」

 

 私は携帯をギュッと強く握る。店長から言い渡された言葉は……

 

 

 

 

 

「合格です」

 

 

 

 

 

 その言葉を聞くと嬉しくなった。それを見かねた母も同時に喜びを表現していた。

 

「ありがとうございます!」

「今度…そうですね、三日後のこの時間空いていますか?」

「はい!空いてます」

「ではその日、印鑑と銀行の通帳。ボールペン等を忘れずに持ってきて下さい。その日に面接のときに言った親の承諾書を渡すので忘れずに渡して下さいね。その日は書類を書くだけなので服装は自由で結構ですよ」

「分かりました!」

「何か聞きそびれたことはあるかい?」

「いえ、大丈夫です」

「では、三日後忘れずにきて下さいね」

 

 ありがとうございます…そう言い終わらぬうちに電話が切れた。携帯を置くと私は手を握りしめ思いっきり母に飛び込んだ。

 

「やったよお母さん…私大丈夫だった」

「だから言ったでしょ?大丈夫だって」

 

 えへへ…と笑うと母は頭をゴリゴリした。

 

「い、痛いってお母さん…」

「ここからが本番だよ。ここからが大変なんだから」

「うん!」

 

 早速三日後の準備をした。だって…ワクワクしていて落ち着いていられないんだもん!しかしここで重要なことに気づく。そう、あの3つの中で一番重要だと思われるもの。

 

「ねぇお母さん…」

「ん?どうしたの梨子。今日はごちそうよ!」

「いや…そうじゃなくて…」

「もじもじして一体どうしたのよ…言ってみなさい」

 

 きっとあるよね…あるはず…。

 

「…銀行の通帳ってある?」

 

 しーんとする部屋。母は私ににっこりと笑い…告げられた言葉は

 

「あるわけないでしょ?自分で作りなさい」

 

 逆ギレだった。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 

「というわけで銀行の通帳を作りたいのですが…」

 

 何故か私はどけ座をしている。それは何故か…『人にものを頼むときは誠心誠意でしょ?』と言われ私は仕方なくしているのである…。

 

「よろしい、なら早速作りに行きましょ?」

「え?今…?」

「そう今よ。何か不都合があるのかしら?」

 

 不都合…あるにはある…。私の趣味の本を見ることができない。ただこれだけ…これだけ何だけどこれが問題。母や父、ましてや友達に見つかってはいけないような本。事実引っ越すときもどれだけ隠すのに必死になったのか今も覚えているぐらい。やっぱりこれ言わない方が…いや趣味の時間が取られるのは嫌だ。よし…

 

「あるんだけ…」

「じゃあ私行かないけど?」

「ごめんなさい行きますから許してください」

「準備してきなさい」

「はい」

 

 怖かった。ただそれだけで準備を開始した。と言っても着替えるだけなんだけど…。準備を終えた私は母にこう言われた。

「あなたの身分証明書自分で持っていきなさいよ。私は手助けをするだけなんだから」

「わかったわ」

 私は最寄りの銀行へと足を運んだ。

 

 

 

 

 銀行の中は少しひんやりとしていた。私はふと思ったことをそのまま口に出してしまった。

「そういえば私、銀行の中に入るの初めてかも」

「そう?でも確かに連れて行ったのは物心ついていないときかな。でも慣れておきなさいよ。どうせ何度も足を運ぶことになるんだから」

「どうして?お金を引き出すならATMとかが良いんじゃ?」

「高校生はお金をあまり使わないほうがいいの。ちゃんとお金の管理が学べる高校生のうちに金銭感覚を身に着けておくのよ」

「そんなふうに考えていたのね」

「そうよ、私の娘なんだからしっかりしなさいよ」

 

 私はコクリと頷く。

 

「まずは整理券をとってきなさい。話はそこからよ」

 受付近くにある整理券発注の紙を一枚取る。

「お母さん取ってきたよ。番号は26番」

「ありがとう。26番ということは…もうすぐね」

 

 そういうと番号が26番を表示した。

 

「さ、梨子行くわよ」

「うん…」

 

 私は窓口の方にいくと対面で座れる仕組みになっていた。それに感心していると、窓口の女性…それも結構な美人さんが笑っていた。これには母も笑っており恥ずかしくてすぐに席に座った。

 

「先程は失礼致しました。本日のご用件は何でしょうか?」

「銀行の通帳を作りに来ました。お願いできますか?」

「はい。できますよ。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「桜内梨子です」

「本日身分証明書…保険証などはお持ちでしょうか?」

「はい持っています」

「では拝見してもよろしいでしょうか?」

 

 私はそっと渡す。だって他人に私の顔写真を見せるのってなんか恥ずかしい…。

 

「ありがとうございます。こちらはお返ししますね」

「はい」

「それでは…人に知られにくい暗証番号4桁をこちらの書類に書いて下さい。あ、誕生日とかわかりやすいものはおすすめできませんよ?」

 

 書類を渡される…暗証番号4桁か結構迷うわね…。

「お母さん?どんなのがいいの?」

「梨子。私も考えちゃうとお金盗んじゃうわよ。こういうのは自分で考えるの」

「お母様のいう通り、しっかり自分で考えて下さいね?」

「うーん…」

 

 誕生日はだめ…私の名前とか?

桜内梨子…さくらうちりこ…さくらうち…さくら…396?

 

「っ!そうだ」

 

 決めた。なら数字は

 

 

『0396』

 

 

これしかない。

 

 

 

「ありがとうございます。少々お待ち下さい」

 そう女性は言うと後ろのデスクに行った。

「なんだかこれだけで疲れたわ」

「あなたこれだけで疲れていたらアルバイトなんてできないわよ?」

「…」

「彼女の方が疲れているのだから少しは見習いなさい」

「はーい」

「できました」

 

 いつの間にか女性はこちらに戻っていた。

 

「こちらが通帳になります。そしてこれがキャッシュカードです」

 カード…まさかクレジットカードの一種!?そんなカード私には荷が重いよ!

「こちらはお金を引き出す際に必要なカードなので大切に持っていて下さいね」

「そんなわけないか…」

「ん?」

「なんでもないですよ」

「では二点お渡し致しました」

「ありがとうございました!」

「アルバイト…頑張って下さいね」

「はい!」

 

 私達は気持ちよく銀行を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 

 約束の日が来た。私はこの日をずっと待っていた。

「通帳よし…印鑑よし…ボールペンも持ったしokかな?」

 三回ぐらい確認した。初出勤?は失敗しないようにしないと…。

 

「梨子?そろそろ時間よー」

「はーい」

 

 靴を履いて鏡をチェック…うん、大丈夫!

 

「梨子、頑張ってくるのよ?」

「今日は書類を書くだけだって…じゃあ行ってくるね」

「行ってらっしゃい」

「行ってきます!」

 

 私はドアを勢い良く開け職場に向かった。

 

 こうして私は夢のアルバイト生活、記念すべき第一歩を踏んだのであった。

 

 

 

 それは同時に厳しい現実になる壁とも知らずに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「梨子。社会はそんなに甘くないのよ…まぁ今日はその一歩。しっかりやりなさい」

 

 母の声はポツリと呟いたのであった。




皆様、新年あけましておめでとうございます。
今年も1年よろしくお願い致します。

さて、小説の方はどうだったでしょうか?
つい勢いで書いてしまったのですが読みにくかったですかね?
やはりアルバイトのシーンを入れたかったなぁという思いがあります。じゃあやれって話になりますが…まぁ勢い任せでねぇ…?書くのであればみんなを出演させたいと思っているので導入部分だけでも楽しんで頂ければなと思います。
今回だけで終わるかもしれないし続けるかもしれない…。
続きは書きたいけど…もう少し待っててください。

では、今年一発目の作品の後書きを終わらせていただきます。
閲覧ありがとうございました!感想などお待ちしております!

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