異界の魔法少女   作:【時己之千龍】龍時

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第2章 九天の書
第01話 目覚めた場所


 

 龍燕は目を覚ました。しかし、落ちてからどのくらいの時間が経ったのかはわからない。

 

「ここは……、アリシアは!」

 

 見回すとアリシアは手元にいた。龍燕はすぐに禁術である蘇生術の呪文を唱え始める。

 

「聖なる光りよ、散りし魂に今再び命の火を燈せ」

 

 アリシアの体を龍燕の掌から出た紅の炎が包み込む。そしてその炎がアリシアの胸の上に集まり、溶け込んだ。

 

「術式終了……」

 

 いつの間にか額に出た汗を龍燕は拭い、それからアリシアを見つめた。

 

「う……ぅん」

「アリシア!」

「…お兄ちゃん、だれ?」

 

 目を覚ましたアリシアは首をかしげながら言った。

 

「俺は灼煉院龍燕だ」

「シエン…お兄ちゃん?お母さんは何処?…わぁ?!」

 

 起き上がろうとしたアリシアはバランスを崩し、顔から倒れそうになったのを龍燕が支えた。

 

「大丈夫か?」

「…うん、でも……動きにくい」

 

 蘇生したばかりだからか身体が追いついていないようだった。それを知らないアリシアは頭に?を浮かばせていた。

 

「俺は、プレシアに君を届ける事が任務だ」

「お母さんに?ここは何処なの?」

「すまん。目が覚めたら既にここだった。多分遺跡の中だと思うが」

 

 周囲は人工の石造りの空間。見た感じが遺跡かなと思うほどに古かった。

 

「遺跡?……あれは?」

 

 アリシアは何かを見つけ、指を指した。そこには本が一冊あった。

 

「本…みたいだな?」

 

 その本は鎖で止められて、祭壇のようなところに置かれていた。

 そこに近づくとその本は光り始め、宙に浮いた。

 

「何が起こったんだ?」

「あれ浮いてるよ?本が浮いてるよ?!」

 

 アリシアは混乱していた。

 

『起動します』

 

 本は機械音を鳴らした。

 

『我が主の名を教えて下さい』

「主?」

『はい』

「……灼煉院龍燕だ」

『認証終了……』

 

 本を縛っていた鎖が弾け飛び、頁がめくられた。

 

『これより一番、起動します』

 

 一頁が開き、文字が埋められると光りの球が現れた。

 

『末永く、よろしくお願いします。我が主』

 

 光りの球は人型となった。

 

「お前の名は?」

「まだ私も、本もありません」

「そうか……本の名は九天(クテン)、お前の名は神威(カムイ)でいいかな?」

「神威。ありがとうございます」

 

 光りを放っていた人型は光りが治まり、30cm程の少女に変わった。

 

「九天の書、機能…正常。改めて、末永く宜しくお願いします、(アルジ)龍燕」

 

 後ろで見ていたアリシアはきょとんとした表情で見ていた。

 

「姿が小さいな」

 

 龍燕は神威の姿を見て言う。

 

「主に負担を掛けないために消費を最低限に抑えた姿です」

「そうか。消費する力は精神力か?」

「はい」

 

 神威は頷いた。

 

「ところで、ここは何処だかわからないか?」

「少しお待ち下さい……ここの遺跡の名はわかりませんでしたが、近くに都市があるようです」

 

 都市?と言った感じにアリシアは首を傾げる。

 

「転移可能範囲ですが、行きますか?」

「転移出来るのか?」

「はい。私が起動したと同時に基本的な機能は使えます。一ヶ月から二ヶ月程で『空間転移』が使用可能になると思われます」

「空間転移?」

「はい。空間転移は異界へ転移する技です。しかしあまりに広範囲な転移となると使用する精神力も増え、充填までに時間が掛かります。また充填は一定量ずつしか溜まりません」

「ああ、わかった」

 

 そのあと、アリシアと少し話してから先程神威が見つけた都市の近くに転移した。都市に転移して見られた際に面倒なことが起こるかもしれないためその近くへ転移したのだ。

 

「結構広い都市だが発展はあまりしてないみたいだな」

 

 龍燕は都市に入り、最初に声出した感想だった。

 辺りを見ると屋台があちらこちらに開かれ、活気に満ち溢れているかと思えば、喧嘩を賭け事にしている輩(ヤカラ)もいる。

 

「都市より町、とかに見えるな」

 

 龍燕は悩んだ。町に着いたがお金がない。お金がなければ最低でも食事ができない。……等と考えているととある話しが耳に止まった。

 

「とうとう来たな」

「ああ、今回こそ勝つぜ」

「ダメダメ、魔法を使う奴にゃ勝てねぇよ」

「大丈夫だ。魔法なら日々鍛練を続けてるから何とかなるさ。賞金は頂きだ」

 

 賞金?

 龍燕は会話をしていたその二人組に声を掛ける。

 

「少し、話しいいか?」

「ああン?なんだお前は」

「賞金がどうとか言っていたが」

「んん?ああ大会の事か?」

「その大会に出るにはどうすればいい?」

 

 二人は爆笑し始めた。

 

「馬鹿言っちゃ駄目だな。大会は歳に制限はないがお前なんかじゃ一回戦落ちだろうよ」

「……なら出れる資格があるか試してくれるか?」

「試し?」

 

 二人組は首を傾げた。

 

「ここでもあるかはわからないが、『腕相撲』はどうだ?」

「腕相撲か。まぁ俺にゃ勝てねぇと思うがな」

 

 男は龍燕を嘲笑った。そしてもう一人の男が道のど真ん中に、店から借りたテーブルを置いたことでなんだなんだと人が集まって来た。

 

「今からこいつを試すんだ!」

 

 龍燕の相手をする男が集まった人達に叫んだ。周りにいた人達は凄く盛り上がった。

 

「龍燕お兄ちゃん。大丈夫なの?」

 

 アリシアは心配そうな顔で龍燕に言う。そんなアリシアの頭を龍燕は撫でる。

 

「大丈夫だ。少し待っててな」

 

 アリシアは頷いた。

 

「さぁて盛り上がったところで始めようか」

 

 男はご機嫌に言った。

 

「ああ」

 

 男と龍燕はテーブルに着き、手を取り合う。

 

「さてお互いにいいな?……始め!」

 

 決着は一瞬だった。

 

「な…え?」

 

 男の手の甲が一瞬でテーブルに着き、盛り上がっていた周りが一気に静まり返った。

 

「お…、おめぇ……一体何もんだ?」

「龍燕だ。灼煉院龍燕」

「シエン、か」

 

 周りにいた人達は皆バラバラに散って行く。

 

「そうか」

 

 龍燕は男から出場方法を教わり、会場へと向かった。

 

 

 

 

 受付をどうにか済ませ、前金を手に入れた。

 

「お金は一様入ったな」

 

 ただ……、通貨の価値観があまりわからなかった。前金で貰ったのは千ドラクマだった。わかるのは硬貨一枚で一ドラクマと言う辺りだった。

 

「何か食べるか?」

「うん。お腹ペコペコだよ」

 

 念のためこのドラクマは使わない事にした。話しによれば、大会開始後は無料で部屋の貸し出しや食事も出来るそうだ。

 大会までは三日。三日くらいなら武己に入っている食料で余裕に過ごせる。また、大会で得た賞金を旅で必要なものに回せば何とかなる。

 

「とりあえず一旦町から離れよう」

「うん」

 

 アリシアは頷くと龍燕の手を握った。

 

 

 

 

 

 

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