その37 ヴィオの愛倉学園 ~あの名探偵は実在したっ!?~
初日を終え、私はエリート科の敷地内に存在する女子寮へとやってきました。
今日から此処が私の家です。
三階建ての古風な雰囲気のある西洋風な作りの建物。玄関から入り、声を掛けたけど、誰も出てきません。皆さんの留守なのでしょうか?
疑問に思って居間の方に入ると、食事用なのか大きな長方形のテーブルがあり、その上座的なところで、一人の女生徒がこちらを背にする形で座っているのが見えました。
「いらっしゃい。君が噂の転入生だね」
女の子が背を向けたまま言いました。黒いロングの髪をうなじの辺りで纏めている事以外は特徴としてあげる事が出来ない様な、そんな後ろ姿です。でも、振り返らなくても私の事が解るみたいです。すごい。
「ヴィオです! よろしくお願いします!」
「僕はサヤ。この女子寮の寮長をしている者です。だから僕の言う事を聞かない悪い子には、酷いお仕置きをする権利があるんですよ」
「あははっ、気を付けます」
「それではさっそく一つ要求するね? ………脱げっ」
「………へ?」
「脱げっ、そして胸を晒せっ。解り易く言ってオープン・ザ・おっぱい」
余計意味が解りません。
「そ、そんな命令、聞けるわけないじゃないですかっ!?」
「僕の言う事に逆らうの?」
当然だと即答しようとした時、………ビチャリッ、と足元に赤い液体が流れ込んできました。赤い液体はどうやらテーブルの下から流れて来ている様ですが、その正体はテーブルクロスに阻まれ、確認する事はできません。
「先程も、新入生が一人………ね?」
その一言に戦慄した私は、怖くなって何も言えなくなってしまいました。
逆らったら私どうなっちゃうんでしょう!? 新入生は一体どんな目に遭わされたと言うのでしょうっ!? と、ともかくここは言う事を聞かないと!!
怯えて震える手を伸ばし、私は胸元のタイやボタンを手間取りながら外していく。左右のシャツを掴み、恥ずかしさに勝る恐怖に突き動かされ、一気に開け―――!
「………お義姉さん? 寝ているサヤのテーブル下でなにをやってるんですか?」
バサァッ! ←(テーブルクロスがオープン。血糊を持った女性が登場)
「おおぉっとっ!? ウィセっち! ネタバレするのはいけないとお姉さん思うよ~~!?」
「寝ている妹で腹話術しながら新入寮者をからかう人がそれを言いますか?」
…………。
なんか色々騙されましたっ!? Σ(ーД-)
その38 ヴィオの愛倉学園 ~平凡な自己紹介の中に既にネタがっ!?~
寮生が全員揃い、改めて自己紹介となりました。
「先程はお義姉さんが失礼を………、私はウィセです。学園の風紀委員長をしています。こっちで未だに寝ているのはサヤ。部屋は一階の103号室です」
「よ、よろしくお願いします」
「私はサヤの姉っ!! 名は名乗らん! お前も私を姉と呼べ! 何しろ私は本当に寮長だからな! そして脱げっ!」
ビシリッと指を突きつけるお姉さんは、私が反応する前にウィセさんからハリセンを頭に受けて机に突っ伏しました。部屋はサヤちゃんと同じく一階の101号室だそうです。
「クロンです。私はサヤさんと同じ一年生です。部屋は二階の203号室です」
明らかに小学生な方に丁寧なお辞儀をされてしまったのですが、本当に一年生でしょうか? もう本当、色んな意味で。
「僕はカノンです。『おねえさん』同様三年生です。部屋は三階の端305号室です」
とってもお姉さんな美少女が丁寧にご挨拶してくれました! なんて美しい方でしょうっ!? 何だか二つ名でも持っていそうな雰囲気のある美人さんです!
「それと最後に、その端で蹲って必死に存在感を消そうとしているのがラビットです」
ウィセさんの紹介で部屋の隅に視線を送ってやっと気付きました。何だか建物と一体化した薄い気配の女性が、カーディガンを頭から被って震えていらっしゃいました。怯えた目でこちらを見る仕草が名前の通り兎っぽいですが、暗がりにいる所為でむしろ自縛例の類に見えますよっ!?
「と、ともかく、これからもよろしくお願いしますっ!」
必死になってお辞儀する私に、皆さん温かい拍手で迎え入れてくださいました。
良かったです、どうやら今度は恙無く終えられそうです。
「…………」
「くししっ! カノン、お前三年間騙し通せそうだな?」
「突っ込まれたら困るんだけど、突っ込まれないのはかなりに苦しいですよ? お姉さん………」
あれ? カノンさん、なんで床に突っ伏してるんだろう?
その39 ヴィオの愛倉学園 ~24時間労働もへっちゃら!~
寮生活初めての朝、朝食は全員で食事をとる事になり、投稿は皆好きな時間帯に出るらしいです。
ウィセさんカノンさんは朝が早く、ラビットさんに至ってはいつの間に居なくなったのかも解りません。そんな訳で登校は、車椅子のサヤちゃんと、そのお姉ちゃんの三人一緒になりました。
「それにしてもサヤちゃん、朝もぐっすりですね? サヤちゃんっていつも寝てばかりなんですか?」
「ああ、サヤは二年前から寝たきりよ」
「へ?」
「交通事故でね、意識を失って以来、ずっと植物状態まま」
「そ、そんなっ!? でもそれならなんで学園に登校を? 病院にいた方が良いんじゃ?」
「それで二年間も目を覚まさなかったから、こっちから行動してるの。こうやって色んなところに連れ出して、面白おかしくやっていれば、その内サヤの方から目を覚ますんじゃないかな? って思ってね………」
ま、まさかこの二人にそんな重い設定がっ!? お姉さんの破天荒な所は、妹のためにやっていた事だったんですねっ!?
「―――って、何を話を盛ってるんですか? サヤが昼間寝ているのは単純に夜型だからと言うだけでしょう?」
「ウィセっち朝から昇降口前で風紀委員のお仕事ご苦労様ぁ~~♪ そして私は嘘は言っていない! サヤが夜型になったのは二年前からだし、寝てる内は何をしても起きないので病気と言って差し支えな~~いっ!」
「その病気の原因は、お義姉さんが夜中遅くまでサヤを遊びに付き合わせているからですけどね………」
「…………」
また私騙されたっ!?
ん? でも、あれ? 夜中遅くまで遊びに付き合わさてるから、サヤちゃんは夜型になってるんだよね?
「え? じゃあこの人なんで元気なの?」
「ん? 何がだ?」←(目の下にクマすら存在しない。お肌もつやつやのお姉さん)
ご希望だったサヤちゃんをちょっとだけ登場。
何だかブーイングの予感がする………。