FGO マシュズ・リポート ~うちのマスターがこんなに変~   作:葉川柚介

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第二部最終章の記録 瞬瞬必生

 長く、苦しい戦いでした……。

 

 人理保障機関カルデアとして、人類史焼却事件を乗り越え、時間神殿ソロモンにて人類悪を倒して世界を救った私たちですが、それで終わりではありません。

 次々に発生する亜種特異点。カルデア襲撃からの地球白紙化事件。かつて特異点探索を担うはずだったAチームがクリプターを名乗り、地球各地に根を張った異聞帯。

 それらを解決して最後の決戦の地であるカルデアに舞い戻ろうとした際に発覚した決着をつけるべきオーディールコール。

 

 ……カルデア襲撃で失われた職員の皆さんの思いと、カルデア襲撃に利用されながらも今では私たちを見守ってくださるゴルドルフ新所長たちとともに歩み続け、ついに最後の戦いの時が訪れようとしています。

 

「なんだか……なんだかものすごく見覚えのある光景です、先輩! 異聞帯で切除したり切除済みだったりした空想樹が!」

 

 南極に張られた結界のようなバリアのような排斥時空を乗り越え、カルデア基地のあった場所の大穴から全ての始まりであった炎上特異点Fへのレイシフトを刊行。

 そこで始まりの特異点での出来事を繰り返していたオルガマリー所長との再会を経てなんとかカルデアスの内部へと突入を果たすことができました。

 

「じゃあこっちのルートを通るわよ。こっちならシャドウサーヴァントとの接触をスキップできるから大幅な短縮になるわ。……それから、礼装を変更して。乱数調整で次のバトルが有利にできるから」

 

 オルガマリー所長の導きは完璧でした。先輩がRTAと評するほどに。だからこそ、最速かつ最小の消耗で辿り着けたと言っていいでしょう。

 

――その先に待つのが、全ての終わり、ゲームオーバーに近い物だったとしても。

 

 

「これまでの工程(たび)は楽しかったですか? それではおかえりを。それを誰も否定しません。誰もが理解するでしょう。それこそが生物の必然。あなたたちのあるべき姿です」

 

 しかし、マリス・カルデアスには狙いがありました。

 

 この地球の、人のあるべき道筋たる汎人類史。それを取り戻すことこそが私たちカルデアの目的。

 ……その私たちが、先輩たちと一緒に歩んできた道のりそのものが異聞帯の一つであると。

 カルデアスの停止に伴う勝利こそ、記憶も記録も消えてなくなることなのだという事実に、私たちは打ちのめされます。

 

 

「あなたたちの人理って、醜くありませんか? まるでデコボコで、石ころだらけの道です。人理という道を、きれいに舗装しなおすということです」

 

 

 先輩が。

 その程度の理由で、全ての元凶を殴りに行くのをやめる理由がないという確信があったから。

 たとえその先が避けようのない終わりであったとしても、見据えた光に向かって走る人。それが、私の先輩ですから。

 だから、私たちはここまで来れました。この先へも、進んでいくことができます。

 

 

 だから、これが終わりです。

 私の残してきた記録の最後であり、その「終わり」を記したものになります。

 

 

◇◆◇

 

 

 戦いが、始まります。

 カルデア式の英霊召喚が封じられても、それすなわちカルデアスがかつて召喚した英霊ならば呼べるということの裏返し。

 異星の使徒であったことを自ら看破し、ライヘンバッハの再現のように自らを絶ったホームズさんが再び召喚に応じてくれて、事件の全貌を明らかにしてくれました。

 疑似宇宙モデル、マリス・カルデアス。「根源の渦」のコピーであり、「解析」のビースト。

 

 先輩が言っていました。

 戦いの場で何より恐ろしいのは「未知」であると。こうげきのしょうたいがつかめないのであれば戦いようもない。

 反面、その正体さえ分かってしまえばやりようはある、とも。

 

 そして、人類悪(ビースト)は全てにとっての敵。

 それによって歪められた歴史を歩んでいたというのなら、必ず応報しなければならないのだと。

 

 かつて、異聞帯で敵対したサーヴァントの皆さんが、ホームズさんと同じように私たちの声に応じて、空想樹との戦いに参加してくれています。

 たとえその結末が、世界を終わりに導くものだとしても。

 

 皆さんが、力を貸してくれています。

 空想樹からの必殺を期した恒星級攻撃を、「カルデアの者」を名乗って見続けてくれていたソロモン王が防いでくれました。

 

 行きましょう、先輩。

 これまで歩んできた道のその先へ、今度もまた、全速力で!

 

 空想樹、7基。

 世界への反逆を為す異聞帯のサーヴァントのみなさんと、流星のように参じてくれた汎人類史のサーヴァントのみなさんとともに。

 伐採を開始します!

 

 

◇◆◇

 

 

「あの空想樹は、オロチ・フロストレルム……! ロシア異聞帯の空想樹です!」

 

 宇宙のような異常空間に聳える、かつて切除したはずのロシア異聞帯空想樹、オロチ。それを再び伐採するための戦いが、この場で繰り広げられています。

 ロシア異聞帯でも力を貸してくれたベオウルフさんにビリーさん、日本の新宿に発生した亜種特異点でも力を貸してくれたスイーパーさんが力を貸してくれました。

 

「やれやれ、中々頑丈じゃねえか。骨が折れるぜ」

「みたいだねえ。僕たちは邪魔が入らないように手伝う方が向いてるかな」

「そうらしい。……じゃあ、ちょっとあっちのアタランテちゃんの方の守りをね?」

「やめとけ。いつぞやみたいにオリオンと一緒にアルテミスから100tハンマーで殴られるぞ」

 

 スイーパーさんは相変わらず女性サーヴァントを見るや否や恐ろしい勢いで口説きに行こうとしますが決めるときは決めてくれるので!

 

「……なるほど。私がここに呼ばれた理由は倅の後始末のためか」

「あ、あの。十兵衛さんはロシア異聞帯でとても助けになってくれましたので!」

 

 下総の亜種特異点でも遭遇した柳生但馬守宗矩さんがオロチ討伐の場に召喚された理由を察してものすごい剣気を放っていますが、どうか抑えていただけないでしょうか!

 ロシア異聞帯で武蔵さんと一緒に手助けしてくれた、ラブリー眼帯をつけた柳生十兵衛さんは連鎖召喚されたというシベリア柳生を名乗る一派に襲撃されるきっかけにもなったのですが、今はシベリア柳生の皆さんも一緒に戦ってくれているのでむしろ良かったと思うんです。

 

「ふむ、あちらではイヴァン雷帝も宝具を使っているようだ。それだけの巨体を取り回せる空間もあることだし、僕も出し惜しみはなしで行こう。――王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)、ショーターーーーーーイム!!!」

「アヴィケブロンさん!? 普段の宝具のゴーレムとはデザインが違いませんか!?」

 

 

◇◆◇

 

 

 次の空想樹はソンブレロ・アポカリプス。氷雪に閉ざされた北欧異聞帯にあった空想樹です。

 かの地の出会いと別れもまた、忘れがたいものとして強く私たちの中に刻まれています。

 

「ワルキューレ、全個体同期。並列分散リンク、アクセス開始!」

「その身に刻むがいい! ニーベルン・ヴァレスティ!!」

「レナス姉さま! 抜け駆けしないでください!」

 

 あちらでは大神オーディンに造られた戦乙女であるワルキューレさんたちが、一糸乱れぬ攻撃で空想樹を攻撃してくれているのが見えます。

 1人やたら巨大な槍を突き刺しているのは、きっとレナスさんでしょう。北欧異聞帯ではカルデアのそれと似た英霊召喚の力を駆使して大変力になってくれただけに、今回もこうして駆けつけてくれたのはとても頼もしいです!

 

「ふふ、誇らしいものだな。当方に、我が愛。そして魔剣使いジークフリートとクリームヒルト。我らの魔剣合わされば、いかなる竜も大樹も伐り倒せよう」

「はい。貴方と私たちとなら、必ずや」

「……共に行こう。力を貸してくれるか、クリームヒルト」

「ええ、まあ。良いのだけど。そのつもりなのだけれど。……これもしかして私たちもあっちと同じ『枠』として扱われるヤツかしら!? ……ああもう! とにかく行くわよ! 流離魔剣・聖妃失墜(バルムンク・クリームヒルト)!」

「ゲッタートマホゥゥウク!!」

「……いやちょっと何!? あの赤い変なのは!?」

「どうやら、当方たちの因子を辿って自力で召喚されたある種の竜のようだ。頼もしいな」

「ビーム出してるんだけど!」

「私もビームを出してすまない……」

「そうだったわねぇ!!」

 

 あっちでは、シグルドさんたちご夫婦も戦ってくれているようです。

 ……全体的に赤く、腕の部分に丸鋸のようなパーツのついたロボットも一緒に空想樹を攻撃しているようですが、なんなのでしょうねアレは。

 あっ、3機の戦闘機に分離して空想樹の反撃を避けて、今度は右手がドリルになっている青いロボに合体しました!

 

 

◇◆◇

 

 

「魂ィィィィーーーーーー!!!」

 

「うむ、さすが朕。空想樹のシステムで我が英傑を英霊登録するシステムは正常稼働中であるな」

「まさかあれは、呂布さんですか!? 白い装甲のロボットみたいになっていますが! 空想樹に突撃するあのスピード、殺人的な加速なのでは!?」

 

 メイオール・エタニティの伐採現場には、中国異聞帯の王であった始皇帝さんをはじめとする中国の英雄、好漢のみなさんが大挙していました。どうやら始皇帝さんが英霊召喚システムを取り込んで再現したことによるものだそうです。

 味方としては頼もしいことこの上ないのですが、「なぜそんなことを、始皇帝さんがしていたのか」を考えるとイヤな予感しかしません。

 と、ともあれとりあえず私たちも伐採に協力しましょう!

 

「難儀。火尖鎗だけでは足りないとあらば他の宝貝(パオペエ)……じゃなかった、宝具も使わざるを得ない」

「哪吒……さん、ですよね? ちょっと雰囲気が変わったような気もしますが!」

 

 中国異聞帯でも協力してくださった哪吒さんが、多数の宝具で空想樹を攻撃しています。

 ロケットパンチのように両腕から飛ぶブレスレットのようなものなど多々ありますがどれもすさまじい威力です。

 ……かつて私たちが出会った少女の姿ではなく少年型ロボット的な雰囲気が漂ってもいますが、元はそういう生まれだったとも聞いたのでその辺の霊基再臨なのでしょうか!

 

 

◇◆◇

 

 

「インドで、俺は医師としての職務を果たすのに精いっぱいだった。……だが、今は違う!」ギュッ

 

 異聞帯の時から思っていましたが、アスクレピオスさんと並ぶ医師であるバーサーカーの先生が力を込めたときにどこからともなく聞こえてくるギュッという音は一体なんなのでしょう。

 ともあれ、こちらはインドの英霊の皆さんが大集合です。異聞帯で出会ったアルジュナさんやアシュヴァッターマンさんたちはもちろんのこと、パールヴァティーさんにカーマさん、ドゥルガーさんたちがまさしく神話のような勢いの破壊力で空想樹を攻撃しています。

 

「あー、霊基に刻まれた嫌な思い出が……。なんかこう、概念になりかけたような気がするっス。ヤンデレ僧侶剣士に愛され過ぎて宇宙空間に二人っきりにされて考えるのをやめることになるのとどっちがマシかって話くらいっスよ!?」

 

 異聞帯においてユガの繰り返しを破綻させるために体を張ってくれたガネーシャさんがキレていらっしゃいました。その節は、本当にお世話になったと思っています。

 

「フン、(オレ)のいない世界などさぞや退屈だったことだろうよ。……それを為した元凶たるこの独活の大木に思い知らせてやろうではないか、神手ずからの一撃(ゴッドハンドスマッシュ)を!!」

 

 あぁっ! インドラ神が青いロボット?を着込むように乗り込んで、さらにその青いロボットが赤いロボットを着込むように乗り込んで、空想樹に貫き手を叩き込みました!

 あのシークエンスだと、ものすごい厚着をしたみたいで動きづらくならないんでしょうか。神の力は不思議です。

 

 

◇◆◇

 

 

 ギリシャ異聞帯。極めて過酷な異聞帯でした。

 神話にその姿を記された神々が大挙する星間都市山脈。

 多くの戦いを、多くの英霊の皆さんの力を借りて乗り越えていった、過酷な旅でした。

 

「かつては敵として対峙したが、今度は力を貸そう、カルデア。終焉の大木馬(トロイア・イポス)、オデュッセウス、出るぞ!」

「……オデュッセウスさんも気合が入っているのでしょうか。木馬が普段の機体とは違って、独特の怪音を出しながら空を飛んでいるのですが!?」

 

 だからこそ、かつて敵として立ちはだかった方も力を貸してもらえると頼もしいです。オデュッセウスさんが宝具で思いっきりオールレンジ攻撃をしていますが、ギリシャ神話は奥が深いですね。

 

「うちのアルゴノーツもそうだが、一時的にとはいえカルデアのメンバーになるヤツらもすさまじいな。見ろ、あっちではポセイドンが首回りにあるプロペラで竜巻起こして空想樹ごと巻き上げてるぞ」

「ポセイドンさんまで!? 異聞帯で見た時とはだいぶ姿が違うような気がしますね。どことなく、ついさっき別の異聞帯でも見たような……?」

 

 

「ぺポ!」

「あっ、あなたは、セイヴァーさん! ……いえ、いまはライダーさんの方でしょうか? 来てくださったんですね!」

 

 そして、かつて北米特異点でもお見かけしたセイヴァーさんがライダーの霊基で駆けつけてくれました。時間神殿でも使っていたロボットのようなアーマーに乗って戦うだけでなく、ストームボーダーをキャプチャーして一体化されたときはどうなることかとヒヤヒヤしたのも、いまではいい思い出です。

 

「え? また新しいマシンを持ってきてくれたのですか? お友達と一緒に……ってもしかしてアレですか!? ストームボーダー並みの巨大戦車のような何かが!?」

 

 ライダーさんのお友達というのでどういうことなのかと思っていたら、要塞のような巨大兵器が現れました! 空想樹に体当たりするわそのまま回転するわレーザーやらミサイルやらを叩き込むやら、とんでもない兵器なのでは!?

 

 

◇◆◇

 

 

 き、気を取り直してブリテン異聞帯の空想樹、セイファート・ライムライトの伐採現場です。

 忘れようにも忘れられない、世界そのものに牙をむかれるような気分だったあの異聞帯。ですがだからこそ、そこで出会った方たちに力になっていただけると頼もしいです。

 

『敵は多いですね、若き日の私よ。……ですが、大したことはありません。今夜は若き日の私と私でダブルセイバーですから』

「……私はセイバーではないのですが」

「お母さまに似てるセイバーがまた増えた!? ……でもなんなの『セイバー』って書かれた仮面」

 

 ……出会った方たちですよね? 全体的な雰囲気はランサーのアルトリアさんに似ていますが、バーヴァン・シーさんの言う通り顔に「セイバー」と書かれた仮面をつけた推定アルトリアさんは一体。

 いや、強いのですけれど。ものすごく強いのですけれど。なんかふわっと手を振るっただけで辺り一面爆発していますし、まさしくサーヴァント召喚のごとくランサーのアルトリアさんや水着のアルトリアさんや謎のヒロインXさんを召喚しているのですが。まるでマスターのようです。

 

「なんだかわけがわからないことになってるね、あっち。まあ僕たちは僕たちでやっていこうか」

『うんまあそれはいいんだけど、ここどこ? 雰囲気からして、いつぞや昔のアメリカで会った人たちの最終決戦て感じ? 最近は現代日本に近い所に行きつくことが多かったのに宇宙とは、SFなんだかファンタジーなんだか。どこにあるやらIS学園……』

 

 あちらにはメリュジーヌさんと、ロボット……というかサイズが人間くらいなのでパワードスーツでしょうか? そんな感じの方がいます。あっ、ロケットパンチで空想樹をへし折りました。

 メリュジーヌさんは竜種なのでとても強力なのは周知のとおりなのですが、一緒にいる推定パワードスーツの人も負けず劣らずです。

 先輩が言うところのスーパーロボット的な見た目でメリュジーヌさんと外見的な共通点はないに等しいのですが、不思議とベースが同じような印象を抱きます。

 

 

◇◆◇

 

 

 なんでしょう、南米特異点の空想樹クェーサー・ジェネシスまで何とか辿り着いたわけですが、戦闘とはまた別の理由による疲労がものすごく降り積もっている気がします。

 そんな私と比べて先輩はまだまだ元気なので、ファーストサーヴァントとしては不甲斐ないばかりです。

 人類史焼却のときも地球白紙化のときも、会う人会うサーヴァントことごとくに「これでお前とも縁ができた!」と言っていたのがここまでの力になっているのだろうとは思いますが。

 

「またお世話になりますねコヤンさん。……ほう、斧と弓と槍とダガーと剣を組み合わせたエネルギー砲ですか。不思議と馴染みます」

「こちらはロッドとパイルバンカーとダガーとサーベルと羽ペンを合体させたボンバーですね。暴れたくなってきます」

「ファングとビームガンと盾とクローとドリルを縦につなげると投槍になる、と。空想樹も貫けそうです」

「我が社の製品ラインナップにそんなものはないはずなのですが!?」

 

 ああっ、ディノスのみなさんがコヤンスカヤさんのところから次々に武器を取っては合体させて使っています! なぜわざわざ合体させる必要が!? ところどころ、ただ上に乗せてるだけにしか見えないパーツもあるのですが!

 

 

「さあ、息を合わせて。ルチャのタッグは心を一つにすることこそが奥義デース」

「そういうことなら、私たち二人で一人はぴったりですね!」

 

 遠くの方では、何がどうなっているのかケツァル・コアトルさんとククルカンさんが空想樹に対してプロレス技をかけているのが見えます。

 肩車状態になったお二人が、それぞれ空想樹を下敷きにするのと同時に頭上で複雑な形にクラッチしているので、おそらく単独で技を繰り出すのより十倍は威力が上がっているでしょう。先輩がそう言っているのできっとそうなのだと思います。

 ……ルチャの奥深さは、私などでは理解しきれないもののようですね。

 

 

『ゲム! ギル! ガン! ゴー! グフォ!!』

「あの声は……まさか、カマソッソさんですか!? どう見ても巨大なロボットですが!」

 

 南米異聞帯もまた人知を越えた領域にあったのだな、と改めて身に染みます。

 おそらく声からしてカマソッソさんが操っているだろう、赤いエナジーが迸る黒いボディーのスーパーロボットが叫びながら空想樹を殴り続け、組み合わせた両手をねじ込んで何やらコアらしきものを引きずり出しています。あの呪文のような叫びはどんな意味があるのでしょう。

 あ、光輝く巨大なハンマーを持ち出しました。触れる端から空想樹が光になって消滅しています。

 もしかすると、かつてカマソッソさんが王としてORTと戦ったときはあのような戦いだったのかもしれません。

 

 

◇◆◇

 

 

 7つの異聞帯に根差した7つの空想樹の伐採は英霊の皆さんの力を借りて何とか進んでくることができましたが、なんとここにきて新たな空想樹、M・スペクトラムが新たに生えてきました。

 時間神殿の時も似たようなことがあったので覚悟していたとはいえ、ここまでで戦力を使い果たしてしまった今、私たちは勝つことができるのでしょうか……!

 

「そんな時に頼れる後輩、それが私、BBちゃんです! ……ええ、今回ばかりは素直に頼ってくれてかまいません。それが電脳魔たる私たちの存在証明。――人の夢の為に生まれた。この拳、この命はその為のものですから」

「BBさん! なぜ急に拳系に!?」

 

 M・スペクトラムが司るのは編纂時における余剰時空の剪定閲覧だと、ダ・ヴィンチちゃんたちカルデアチームの解析で明らかになりました。

 異聞帯以外の微小特異点も数限りなく乗り越えてきたことが、私たちの力になるんです!

 

「直接の伐採は頼光様たちがになってくれていますので、お父様のおっしゃる通りキャスターであるわたしたちは支援を担うのが良いようです」

「そう、ですね。少しでもお力になれるよう、がんばりましょう!」

 

「……いや、あの。香っち、その本何? 本持ってるのはよくあることだけど、妙に光ってるし」

「いくぞムラサキシキブゥ! 心の力を込めろォ! ブルァアアアア!!」

 

「そのV字の使い魔(?)はもっと何!?」

 

 あちらは、日本の平安時代に起源をもつサーヴァントの皆さんです。

 小野小町さんをはじめとする文学史に名を残す方々は支援に徹しているようですが、紫式部さんと一緒にいる……なんなんでしょう。V字、としか表現しようのない使い魔らしきナニカが、全身から巨大なVの字型の光線を放っています。ものすごい威力で地形ごと破壊する勢いで空想樹にダメージを与えています。

 

 

「ふはははははは! 良い、許す! 此度はファラオたる我が威光、存分に浴するがよい! ニトクリス! 大神殿を攻撃型要塞形態で使うぞ!」

「たっ、大変ですマスター! オジマンディアスさんのピラミッドが垂直に立ち上がって、腕やら足やらが生えて人型になりました!?」

 

 とんでもない巨大さです。空想樹にも匹敵するサイズで、胸から出したビームでものすごい勢いで伐採しています。さすがオジマンディアスさん、とっても「王の墓所(キングピラミッダー)」って感じです。あんな切り札まで持っていようとは。

 

「いい顔になったな、マシュ。自分のハンドルを自分で握ってる顔だ」

「ブンドリオさん! 来てくれたんですね!」

「ああ、ゲストも一緒にな」

「ペポペポィ」

「星のライダーさんこちらにも来てくれたんですか!? それに、ノワールのライダーさんも!」

「――!」

「え。選ぶ、んですか? 乗る方を。というかこの2機、どちらも伝説のマシンだったのでは!」

 

 かつてユニヴァースに迷い込んだ先輩が出会ったという、星々を股にかける大レースであるビッグバングランプリに参加していたブンドリオさんたちと、そのレースコースとなった星の住人でもあったという星のライダーさんがまた来てくれました。

 しかも、野生の伝説のマシンに乗っていいなんて……感激です!

 なお、最終的にはノワールのライダーさんが2機の伝説マシンを合体させて空想樹をど真ん中から貫いてくれました。

 

 

「ライブも盛り上がってきたじゃない。そろそろ私たちの出番にふさわしいわね。一人一人がスーパースター、9人揃ってオールスターよ!」

「9人の究極の吸血鬼(エリザベート)の力、見せてやるわ!」

 

 ……増えましたね、エリザベートさん。みなぎるエリザ粒子の輝きに照らされながら、皆さん揃ってポーズを決めていらっしゃいます。

 頼もしさと同じだけの、何が起きるのかわからない不安を覚えるのはなぜでしょう。

 というか、これで全てが終わる戦いのはずなのにまだ増える予感がして仕方ないのもなぜなのでしょうか。

 

 

「やれやれ、探偵は探偵らしく、推理を披露して仕事を終えてしまったようだねェ。それなら、私はマスターのためにもうひと働きするとしようか」

「モリアーティさん! 霊基が新しくなったんですね。黒と金のお洋服、とても素敵だと思います」

「……あれェ!? なんだいこれ!? 全く心当たりがないんだが!」

「先輩によると、『最初に会ったのが1999年の特異点だしモリアーティだしという事実から影響を受けたんじゃないの?』とのことです。……あとなぜでしょう。無性にモリアーティさんが後輩に見えてきました」

 

 亜種特異点も不可思議な世界でしたから、そういうこともあるのでしょう。心なしか、モリアーティさんの声がだんだん茨木童子さんの声に似てきているような。

 あちらでは新宿とセイレムで力を貸してくれた探偵のキャスターさんが、相棒である魔導書のアル・アジフさんと一緒に巨大なロボットに乗って空想樹へ昇華パンチをねじ込んでいるのが見えますし、こうして振り返ると何もかもが大変でしたね……。

 

 

「クリスマスはちょっと過ぎた気もしますが、そんなの関係ありません! マスターさんには、プレゼントが必要なんです! 今、絶対に!」

「よくぞ言った。それでこそ我が弟子。行くぞ、サンタたちよ!」

「任せろ。必ずやマスターに勝利という名のプレゼントを届けよう」

「それ、普通のサンタ業より得意デース!」

「クリスマスにはシャケを食え!!!」

「サーモン? いいわよね。クリスマスの時期においしくなるし」

 

 あちらではサンタサーヴァントの皆さんが揃っています。カルデアの歩みそのものに等しいサンタサーヴァントの歴史がこうして目の前に居並ぶと、とても感慨深いです。

 ……いえ待ってください、途中に何か違うものが混じっていませんでしたか!?

 

 

「気にしている場合じゃないでしょう、マシュ・キリエライト! ……早く行きなさい。物語の結末は、もうすぐそこよ」

「はい、所長! ……オルガマリー所長!? なぜここに!? さっき冬木の特異点で別れて、今はカルデアスに取り込まれかけているはずでは!?」

「そこはほら、ユニヴァースで会ったノワールのライダーみたいなものよ。本体は本体として、サーヴァントとしての形が今のこの私、みたいな。時間神殿の時と同じね」

「な、なるほど……?」

「だから、今度も同じ。ここは任せて先に行きなさい。――信じているわ。貴方たちが見せてくれた、人間の無限の可能性を!」\ムゲンシンカ!/

 

 そして、最後に。

 そういえばこれまでもなんだかんだと力を貸してくれていたオルガマリー所長が殿を引き受けてくれました。

 白く、虹色に透き通るクリスタルのようなその姿。まさしく全てを宿し、なんにでもなれるという可能性の具現のようなその姿は、とても美しいものだと思いました。

 

 

◇◆◇

 

 

◇◆◇

 

 

 空想樹の伐採は、たくさんの英霊の皆さんの力を借りて成し遂げることができました。

 私たち自身が決めたことです。

 願ったことであり、果たすべき責任。

 その先に何があろうとも、必ず走りきらなければならないという決意が、先輩を支えていました。

 

 でも。

 だとしても。

 走り切ったその先に待つのが「終わり」だと言われて、挫けずにいられる道理は、ありませんでした。

 

 この空間がなんなのかはわかりません。でも、目の前にいる先輩の姿だけははっきりと見えます。

 膝をつき、蹲り。一歩も動けない、立ち上がれないとばかりのその姿。

 

 覚悟はありました。戦わなければ生き残れない、と。

 その中で失ったものは数多く。だからこそ失いたくない記憶がたくさん積み重なりました。

 その全てが失われると、なかったことになるという事実がついに目の前に現れてしまえば、大切だからこその重さが先輩の足をすくませることになるのは当然のことです。

 

 人間という生き物であればこそ、越えられない壁。

 それを理解しているからこそ、マリス・カルデアスはこの期に及んでなお余裕を保ち、先輩に事実を突きつけ、手の届かない彼方へと遠ざかろうとします。

 手を伸ばしても、伸ばし切れない。そうなるだろうという確信と余裕。

 どんなに抗い、喉元まで迫ろうとも最後の一線は越えられないという人間を解析して得た結論。

 

 

 そんなもので、先輩の根幹を知りえる訳がないんです。

 

 

――勝手にまとめるな……! 俺も、みんなも、瞬間瞬間を必死に生きてるんだ! みんなバラバラで当たり前だ! それを、ムチャクチャとか言うな!!

 

 

 それが。それこそが、先輩の辿り着いた「答え」なのだと、私は思います。

 正しく理解し、先を考え、行動を選ぶ。

 それこそが正しい選択なのだと思います。でも、今を、この瞬間の積み重ねこそがそれになるのだと、私たちは信じてきました。

 正しいか正しくないかではなく、信じること。前に進むこと。それが人類史の誇りなのだと、先輩の言葉を、私は信じて、戦い抜くんです!!

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 最後の一撃は、切なくて。

 全ての異聞帯の記録をまとめあげたマリス・カルデアスに、全ての歴史と異聞帯で出会った方たちの力を借りて、マリス・カルデアスが展開した障壁を貫いて決着をつけました。

 

 

「私は、マシュ・キリエライト。カルデアの一員で、先輩のファーストサーヴァントで! シールダー・パラディーン、希望築く人理の盾(ロード・カルデアス)として! 行きます! 重閃爆剣(レイプルーフ・キリエライト)!!!」

 

 

 ……どういうわけか皆さんの宝具を合わせて障壁を貫いた跡が「型月」と読める形になっていたような気もしますが、偶然って恐ろしいですね!

 

 

◇◆◇

 

 

 ある日、ある時。

 快晴の空が広がる、東京駅前で。

 

「あ、あの……! あなたは、もしかして……? い、いえすみません。――知っている方のような気がして、つい声をかけてしまいました」

 

「ええ、お会いしたことはないはずです。ですが、なぜか。私自身作った覚えがないのですが、49話のエピソードに分けてデータ化された謎の記録がありまして。その中に書かれた『先輩』が、貴方なのではないかという気がして……」

 

 

「――はい。よろしければ、一緒にこの記録を、読んでいただけませんか?」

 

 

「私が書いたらしきこの、マシュズ・リポートを」

 

 

 

 

「……あと、いつの間にか持っていたこの眼玉から∞マークが生えたようなモノがなんなのか、ご存じないですか? たまに動くんです。よくわからないんですが、なぜかとても大切なもののような気がして……」

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