「だから迷子じゃないって言ってるだろ!」
買い物をしにお店へ入った瞬間、子供のような声が店を響かせた。店員が迷惑そうにしていたので興味本位で駆け寄ってみた。
「どうしたんですか?」
「この子、迷子じゃないって言うんですが保護者の方もいなくて......」
子供の方へ見やると帽子をかぶっていて表情は掴めなかったけれど小学生くらいの身長だった。こういう時は小さい子供の目線になって考えなさいと菫ばあちゃんも言っていたっけ。その言葉を思い出して、顔が見えるくらい腰を下ろすと小学生と思われていた顔から蔑むような目線を送ってきた。こっち見んなカス、みたいなたまに年齢とは逸脱している子供に出会ってしまったのである。
「あのぉ?お母さんとお父さんはいる?」
「あっ?」
「お母さんってわかる?君を産んでくれた人の事なんだけど、誰かわかるかな?」
「母親なんていねーし父親だっていねーよ?なんてったって神様だからな!はぁ、めんどくさいやつと出会っちまったなぁ」
そのセリフごとアンタに返すわ!と思いながら特に驚くことは無かった。なぜならもう神様を見ているし話もしているからだ。
「なんでここへ来たの?」
「あの狼野郎をとっちめるためさ!」
「えっ」
「ん?あっすまんすまん、君らには到底わからないよね、狼野郎も神様だから」
「知ってますけど?」
「またまたご冗談をー。強がってもいいことありませんよー?」
「強がっとーのはお前の方や、ちんちくりんが」
「なわけないじゃないですかー。俺神様だ......し?。────ムフッ!」
どういう経緯なのかいつの間にか狼さんが来ていた。ちんちくりんというあたり縁があるのだろうか。
「どうして貴様がここにいる!」
「もうちと、子供らしゅうできんのかお前は。それやから信用されへんねん。あのカード見せれば信用されるやんけ」
「はっその手があった!。おいそこの店員!」
「そこゆうな阿呆ぉ!」
神様はみんなこんなに人と触れ合ってもいいのかな......と思ってみたが逆にそれだと擬人化の意味無いよねって話にまとまった。
「いてぇじゃねぇか!この狼野郎!」
「あぁん?やる気かテメェ」
「ひぃやりませんごめんなさい何でもしますから!」
この子と狼さんの関係をいち早く知りたいと思った。
「じゃあさっさとカード渡せ」
「おいそこ......じゃない店員さん。このカード見ればわかるでしょ?」
「何ですかこれ......図書カードですね」
「えっ?」
「はっ?」
「あっはははは......」
「お前まさか落としたゆうんちゃうやろなぁ?え?」
「ま、まさかぁ。ほ、ほらこの通りポケットに......あれなんでないのおかしいなぁここにあったはずなんだけどなぁ......ほ、ほらぁあったぁ」
「ただの紙くずやんけ!」
「ち、違います!どこかに置いたんです!」
「それを落としたっちゅうんや!」
バシッと盛大に叩かれてさすがの子供も半泣き状態だった。ちょっと長かったので強制的に店を出た。
※※※※
「えっ、この子が恵比寿なんですか!?」
「そうや」
「おじいさんと思ったか!」
「思いました」
「思うやろ普通」
「なんで......?」
まさかの回答に思わず涙目を浮かべる恵比寿さんの子供?らしき神様を狼さんの部屋へと連れていった。
「なんでなんでなんで?」
「皆の思っとー恵比寿とはちゃうねん。試しに髭生やしてみよか?」
「はっ!?有り得ないから、マジ有り得ないから!」
子供の性格は複数あるものだったっけ......。
「よぉーしわかった。この世の中の恵比寿像とやらをお前に見せちゃろう」
狼さんはそう言うと、空中に手をかざした。すると、平たい画面がいくつも現れ、それぞれ神社のようなところだった。
「どこやったかなー。左か......右か......ほれほれ、あったわ」
画面に映る神社をあちこち探し回ったあと像らしき所を映し出した。
「あ!私の思ってる恵比寿だ!」
「はぁ?コイツただの爺さんじゃないか!どこが恵比寿だ!?俺と似てねぇじゃねぇか!」
「逆や!。この像がこの世の中の恵比寿像やねん!お前が変なだけや!」
二度見、三度見と恵比寿の子供らしき人......そういえば名前も聞いてなかったな......子供が言うただの爺さんを見つめたあと口がずっとぱくぱくしていた。
「俺は......恵比寿の子供とかじゃないから......違うからな!」
「わ、分かりましたから一旦落ち着きましょう?」
困惑する恵比寿さん......くんと読んだ方が正しいのか?。取り敢えず落ち着くよう促す。
「そういやぁ......」
「何ですか?」
「お前、神様が見えるんか?」
「私は水無月神奈と言います。よく分かりませんが神様が見えるのは確かです」
「ふーん」
「反応薄っ!」
「取り敢えず今擬人化やから呼ぶ時は恵比寿(えびす)じゃなくて恵比寿(えびことぶき)な。様つけてもいいぞ」
「コイツの事エビでええぞー。エビすけでもええがな」
「ふざけんなよっ!狼野郎!エビすけじゃないしせめて恵比様だし!」
「まぁまぁ、エビすけ様でいいじゃないですか」
「そうだな。って、様つければいいと思うなよ!」
「身長的にちっさいんやから様つけんでもええがな。こどもやし」
「子供言うな!」
楽しいやり取りが続いたのであった。
「終わりじゃないし!」
※※※※
「エビすけ様は、どんな神様ですか?」
「そんな園児に話しかけるような態度とらんでいいじゃん!」
現在、私は腰を下ろしてエビすけ様の目線と合わせている。それが気に食わないのか、エビすけ様君の眉間にはシワが寄せられている。
「怖い顔しないで。ほぉーら可愛い可愛い」
「子供扱いするなって言ってるだろ!」
「子供やん」
「そうだ。子供だ。────じゃないって!」
「ノリツッコミ下手やな、エビやから体と同じように考えも反っとるんか」
「殺すぞ狼野郎!」
「ちんちくりんが、はしたない言葉を使うなや。もうちと、無邪気になれんのか」
「神力(じんりき)使ってもいいのかなぁ?狼野郎」
「ここで使(つこ)うたらどうなるかれっきとした神様やったら分かるわな?」
「ごめんなさいごめんなさい申し訳ありませんでした!」
はっきり言うと会話が面白い。思わず口がほころんでいった。
「話......ずれてません?」
「ほんまやな」
「そうだな」
「・・・・・・」
「恵比寿っちゅうの」
「ちょっと待って!今の沈黙は何!?」
「黙れ」
「......すいませんしたー」
「恵比寿っちゅうのは漁業や商いの神や」
「他には?」
「終了や」
「もう終わりですか!?」
「俺の扱いひどいと思うんですけど!?」
メモが一枚もったいなくなってしまったので、仕方なくポケットへしまった。
「七福神の奴らはまとめて変神(へんじん)なんや。やから説明すんのがめんどくさいねん」
「よぉーしわかった。なら俺が直々に......」
「ちょっと黙ろか」
「俺に権利なし!?」
こうして、七福神の一人であるエビすけ様の話は終わった。エビすけ君も懲りたらしくとぼとぼと夜道を歩いていった......。
※※※※
「恵比寿っちゅうのはな────」
「へぇー、そうなんですか!」
後でたっぷり教えてもらいました。