歳神様は狼さん!   作:イニシャルY.Y

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7、歳神様と凧揚げ

「みなさんこんにちわ、僕は水無月さんのクラスメイトで美術部部長を務める田中裕之(たなかやすひろ)です。突然ですが今まで読んだ中で、なにかお気付きになりませんでしたか?............そう、水雲神社は分かったけど僕らは高校生なのか中学生なのかが分からないという所です。」

新たに紙を出し、続きを読んでいく。

「本来なら一話目で出なくてはいけない高校名なのですが作者はなんと、考えてなかったと容疑を否認していました。なので代わりに、この田中裕之が言わせていただきます。ヒロインは水雲(みずも)高校一年生という設定で、私はそのクラスメイトです。............はい、一年生が美術部の部長なのはなんで?という疑問は置いておきましょう。以上で裕之の情報コーナーパートワンを終わります!。今回は私が初登場となります!。そして次回は............多分あります!」

 

※※※※

 

「なんやその絵は!?」

夏帆ちゃんの描いた絵は驚いた本人の顔だった。

「ムフフムフムフ......」

興奮が隠しきれないまま不気味に笑う夏帆ちゃん......。

「恥ずかしいやないか!」

慌ててその紙を破ろうとしたけれど、興奮した夏帆ちゃんは止まらない。破るのが無理なら、と狼さんが手を夏帆ちゃんに翳すと、夏帆ちゃんは抑えられていた鼻血を大量に噴出して倒れた。

「......誰も見ることありませんし、別にいいじゃないですか?」

「個人的な問題なんや、絶対にやめてくれ」

しばらく夏帆ちゃんを寝かせるらしく、毛布を被せた。気を取り直してということで『凧作り』が再開された。

「流石に汚い絵を飛ばすわけには行かないから一応水雲高校の美術部部長を連れてきましたよ」

「よろしくお願いします!田中裕之と言います!」

その途端、狼さんは訝しそうな目で見つめてきた。

「1年やんなぁ?なんで部長なん?」

誰もが一度は口にする疑問、それは一年のくせになんで部長なの?である。私も近くで何回も聞いたけれど答えはわからない。

「企業秘密ということで......」

いつも彼はその質問に対してだけ企業秘密と答える。

「企業秘密ゆうても、企業自体がないがな」

あっさりと揚げ足を取られたので裕之君の表情に焦りを感じ始めた。彼なりの深いわけがあるのであまり追求する人はいない。

「なるほどなぁ」

悪戯する子供のように狼さんの顔がにやけた。どうやら神力で分かったらしい。

「ま、あんま聞かんとくわ」

人の過去をいちいち聞くような面倒な事はしないらしく、絵の続きに入った。裕之君は、深くため息をついて気を入れ直し、作業へと入った。

みんな下絵を完成させると、部長のチェックが始まった。その頃には夏帆ちゃんも起きていたので三人で部長を見つめた。しばらくすると、目を凝らしていた裕之君の説明が始まった。

「狼さんは合格です。少し聞きたいのですが、絵の人物は誰ですか?」

「知らん」

「えっ?」

「正確にゆうとな、記憶は忘れたんやけど体が覚えてるだけや。まぁ、要するに感覚で描いたもんやな」

それを聞いて、裕之君は再び凧の絵を見つめた。

「凄いですね......」

裕之君と同様に、私も狼さんがこんなに絵が上手いなんて初めて知った。見た目からして、絵心がなさそうな顔をしているのに......。

「じゃあ次は神奈の絵やなぁ」

今の心を読んだのかニヤリと笑いながら痛い視線をついてきた。

「神奈さんの絵も悪くは無いですね。物を簡単に表現して可愛らしいです。色の塗り方に適当感を出しているのもいいです。ただ、少し水が多かったりムラが多いのが悪いところですね」

「絵の具の使い方教えたろかぁ?」

「いいです!これはこれで私はいいんですよ!別に教えて欲しくもないです!」

そんな二人のやり取りに裕之君は、笑みを浮かべていた。

「仲がいいんですね」

「ちゃうわ!よく喋るだけや!」

「えっ!?あっ、いや私もですよ!」

反射的に本当の事を言ってしまいそうになって、思わず口を塞いだ。運が良かったのか誰にも気付かなかった。

「藍村さんは『ある意味』芸術的ですね。本人の許可無く、さらに人が嫌がる行為を何事もなく成し遂げるなんてその無神経な態度は尊敬できますよ」

狼さんの心を代弁したかのように夏帆ちゃんを蔑んだ。流石に猛反省しているらしく下を俯いて泣いていた......ように見えた。

「絵自体は素晴らしいですがね。」

まさにムチとアメ、逆もありなんだなぁとこの時は思った。夏帆ちゃんのメンタルは単純すぎるのでころっと切り替わった。

「イケメンの絵は上手いのよー!」

俯いていたのが嘘のように晴れやかになり、その後数十秒にもわたる自慢話が始まった......そして終わった。

「最後は裕之やな」

「えっ、僕ですか?描いてないですよ?ずっと話聞いてましたから」

「じゃあ一分やるから簡単なやつでも描いてくれ」

短い時間でという課題に少し驚いた裕之君だったけれど思いの外すぐに描き始めた。描く姿勢には迷いがなくぶっつけ本番でスラスラと描いていった。

「こんなもんですか?」

描き終わった裕之君が描いた紙を両手に持って上げる。その絵に映し出されていたのは軽い口付けを交わす男女だった。

「絵は上手いな、やけど......」

「凄い上手ですけど......」

「────俺が神奈とキスするわけない!」

「────私が狼さんとキ......キ......キス......なんて!」

「そ、そうですか......?お似合いですけど......」

夏帆ちゃんはそっちのけで凧を完成させてました。

 

※※※※

 

「話がずれたせいで本題まで長引いてしまったわ」

「裕之君があんなこと書くからいけないんですよ!」

「......僕が悪いことになってる............」

完成した凧を神力の風で揚げながら狼さんが歴史を語り出した。

「本当のことやないけど伝説っぽい事があるんや。聞くか?」

「長引きそうなのでそこはいいです」

「ほな、まずは凧についてやな。もう体で覚え込んどるやろからどんな材料ややり方があるのかは省くわ。凧の別名は 紙鳶、ハタ、イカともいうんや。平安時だ 」

「なんでイカなんですか!?」

「ちょっと黙っとれぇい!」

気になったらすぐ聞く私に向かってデコピンし、静まり返ったらまた説明が再開された。

「平安時代にはもう凧揚げは伝わっとったんや。今もよく見かけるやろうけど凧が六角形やったり長方形やったり奴|やっこ|が手を広げとる形やったり色々地方によって違うんや。じゃあ質問受け付けるで」

「なんで別名にイカがあるんですか!」

「自主学や。自分から調べてみると案外面白いで」

「腹筋見せてください!」

「ほれっ」

夏帆ちゃんが鼻血を出して倒れてしまった。

「好きな人はいますか?」

「俺は神様や。じゃあしょうもない質問ばっかやから先いくで」

呆れた顔をして手を腰に当てた狼さんは少し見下す様な目線だった。

「凧を安定させるために尻尾|しっぽ|言|ゆ|うて重りを付けるんや。これによって横ずれと真上に制御できやすくなるで。凧につけてるひらひら浮いてるんが尻尾や。わかったか!」

「は、はい!」

「そして、江戸時代に大凧が流行って屋根が壊れたり農作物に被害が出て金がかかって禁止令も出たんや。明治になったら電柱増えたから凧揚げする人も減ったんやけど正月とかに子供らはよく凧揚げをしとるわ」

「以上ですか?」

「終わりや」

「だいぶ要約したんじゃないですか?」

「そうやな、だいぶ困るしな」

まるで誰かの心を代弁したかのようなそんな一言でした。凧揚げの糸が絡んで大変なことになったのは内緒にしておこう......。

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