【完結】東方袖引記 目指せコミュ障脱却!   作:月見肉団子

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ご依頼だよ 袖引ちゃん

 紅かった霧は既に晴れ、青々とした空が広がっております。

 それに対し、私の心はグルグルと、とぐろを巻き、くだを巻く。曇天のように重く、暗い。そんな空気を抱えつつも、お洋服を召したお客様について参りました。

 蝉はうるさい程に大声を上げ鳴き喚く、夏の頃

 

 

 私、韮塚 袖引 依頼されております。

 

 

 心に色々と抱えつつも、先生様のお家から帰宅し、荷物や心を整理し一心地、なんて洒落込もうと画策しておりましたが、何やら見慣れぬ服装の訪問者様がいらっしゃりました。

 青と白の仕事着の様なものを御召しになり、銀髪を揺らし、ガラガラと戸を開け、お仕事のご依頼をなさった訪問者様。

 何となく空虚な心持ちだった為、その依頼を二つ返事でお受けいたしました。

 

 右腕も漸く動くようになり、早く勘を取り戻さねばなんて心もあったのかもしれません。

 いずれにせよ、私はお客様とのご依頼をお聞きする事と相成りました。

 

 話をお聞き致しますと、何やらあるお屋敷に住んでいらっしゃるお方で、めいど? というお女中にあたる、ご職業のお方。

 お名前は十六夜 咲夜様と名乗っておいででした。

 

 お互いに自己紹介を済ませつつ、何故このような寂れた店を? なんて質問を致しました。

 すると、十六夜様は、腕の良い服屋は無いか、と霧雨店に聞いた所、此処を紹介されたとの事。

 上白沢様がおっしゃっていたように、私が守護についていた事は知られていない事に感謝しつつ、霧雨店の名前が挙がったことに驚きました。

 袖振り合うのも多少の縁、なんて言うお言葉もございますが、普段からお世話になっているお方からのご紹介を頂いてしまい、色々と込み上げる物がございました。

 人間様との距離間について思うところがございました故、手放しで喜べない状態でありましたが、やはり嬉しい物は嬉しい物。

 

 此方に信を置き、紹介をして頂いた霧雨店様の為にも、この依頼は完遂せねばなりません。

 

 感謝しつつも、十六夜様のご依頼に耳を傾けます。

 十六夜様がお勤めになっているお屋敷ですが、めいど様が大量に勤めていらっしゃり、その責任者にあたるのが十六夜様だそうです。

 そして、その大量にいらっしゃるめいど様のお洋服が、大量にボロボロになってしまった様で、買い替える、あるいは手直ししてしまいたいという事で霧雨店に相談したところ、此方を紹介して頂いたという流れだそうです。聞いた所、妖怪であることも伝わっており、仕事もしやすい。店主には頭があがりません。

 

 ともかく、此方に至った流れを、なるほどなるほど、と理解しつつも、仕事の内容を頭でグツグツと煮詰めていきます。元々こういった事に適正があったのか筋道立てる作業は得意でございます。……得意ですからね?

 

 何はともあれ、採寸しないことには始まりません。十六夜様にその事を伝えると。あぁ、と得心がいったようで、うんうんと頷き、呟くように仰いました。

 

「それもそうね、じゃあついてきて下さいな」

 

 なんて了承して下さり、ガラガラと再び戸を開け表へと出て行かれる十六夜様。私もそれに伴って、ぱっぱっぱっ、と仕事道具を手早くまとめ、腰を落ち着ける暇すらなかった我が家を尻目に表へと踏み出しました。

 

 戸から一歩踏み出すと、薄暗い場所にいた為か、ギラギラと照りつけるお天道様が目にグサグサ突き刺さる。目をやられぬように左手でひさしを作りつつ外に出ると十六夜様も同じ仕草。

 暑いですね、なんて話しつつもテキパキと戸締りを済ませ、いざ行かんまだ見ぬお屋敷へ、とばかりに少しでも沈んだ感情を引きあげつつも、十六夜様に準備完了の意を伝えます。

 

「お待たせしました」

「そう? なら行こうかしら」

 

 その言葉と共に十六夜様はふわりと飛び上がりました。……飛び上がりました。

 飛んだ事に驚き固まっておりますと、十六夜様は振り返り、飛ばないの? と言いたげな視線を此方に向けておられました。しまった、と慌てて飛び上がり、十六夜様の近くへ。めいどと言う職業とやらは飛ばねば出来ない過酷なご職業なのかと内心震えつつも、十六夜様に追従します。

 

 ついこの間、右腕を置き忘れてきた辺りを通り抜け、どんどん人里から離れていきます。

 

 時折、魔理沙さんの様に人里に住むことを好まずに自由気ままに居を構える方がいらっしゃいます。

 当然ながら、人里から離れて生活する方たちに、妖怪達は遠慮する義理などございません。実力の無い者が人里の外に住んでしまえばあっという間に妖怪達の腹の中。

 故に、外に居を構える方々は一癖も二癖もある方が大半でございます。

 今回もそんな癖のあるお方なのだろうなぁ、なんて思いつつも、十六夜様の後ろをふいー、と飛行しております。

 

 道中、沈んだ心を溶かすように夏の爽やかな風が頬を撫でていきました。風が青々とした木々の上を走り抜け、木々がざわめきます。

 蝉の声が近くから、遠くから、とさまざまな方向から聞こえ、夏だという事をこれでもかと知らせておりました。

 

 ふと、十六夜様に対しては悪癖が鳴りを潜めていることに気が付きます。人間様相手には誰かれ構わず発動するこの憎たらしい悪癖。

 いつもでしたら、そろそろ腹の虫の如くぎゃあぎゃあと騒ぎ出し、多大な迷惑をおかけする頃合いなのですが、とんと反応がございません。

 妖怪になってからというもの、ずっとお付き合いしてきたこの悪癖がついに夏の暑さでくたばったか、と少しワクワクいたしますが、この程度でくたばる物なら私とて苦労はしてこなかったでしょう。

 おそらくは十六夜様が理知的であり、更には私に対して子供扱いするような視線をこれぽっちも向けて来ない事に由来するのでしょう。

 普段私に接する方たちは、多少なりとも子供に向ける様な視線交じりに私と接してくださいます。これは決して悪い事ではございません。人間様は多少の差はあれど基本見た目で判断するもの。これは私も理解しているつもりです。

 故に、見た目の件で軽んじられる事が無い限りは、憎たらしい悪癖とて騒ぎ出しません。

 しかし、その逆は実に珍しい。紹介があったとはいえ、初のお客様である十六夜様。大抵初のお客様である方達はこちらを見くびったり、態度が軟化するものでございますが、十六夜様がこちらに向けてくださる視線や態度には、見た目が子供である事を前提とした態度が一切無く、一介の商人として扱って下さいます。

 その扱いが実に心地よく、少し嬉しくもあります。だからこそ悪癖も鳴りを潜めているのでしょう。

 

 そんな考え事をしている内に幻想郷の湖の中では一番有名といって過言ではない、霧の湖周辺までやって参りました。霧の、と聞いて何かが脳裏を掠めたところで、十六夜様が口を開きました。

 

「もうすぐ着きますわ。こんなところまで来てもらって悪いわね」

 

 本当に悪いと思っているような表情でそんな事を仰ってくださいます。本人の人徳なのか、はたまた同じ労働者としての気遣いなのかは、未熟者の私には判別できませんがそんな気遣いを頂いて悪い気分になる訳がございません。

 脳裏に掠った何かをぽいっと放り出し、最大級の丁寧さで返答致しました。

 

「いえいえ、とんでもありません! お客様のためなら例え火の中、水の中、悪魔の館にだって参りますとも!」

 

 そんな、お決まりの様な文句に十六夜様はクスリと笑って下さいました。白く細い指を口にあてがい微笑む姿は非常に様になっており、十六夜様の名前にもございます月すらも魅了してしまう。そんな魅力をお持ちでありました。

 そんな素敵な笑顔のまま、十六夜様は返答してくださいました。

 

「そう、なら良かったわ」

 

 そんな和気藹々とした、雰囲気のまま湖の畔を飛んでいきますと、見えてくるのは大きなお屋敷。

 そのお屋敷は何と言いますか、非常に真っ赤、いえ、深紅と言うべきお館でありました。

 

 あっ、と、頭に電撃が走った気分でした。

 そう、この時点でようやく私は気が付きました。気がついてしまいました。一週間程前に起きた異変の黒幕が住まう館が、霧の湖周辺にあったということを。

 異変が終了した数日後に上白沢様から聞いていた事をすっかりと忘れ、何も考えぬままここまでやってきてしまいました。

 沈んだ気分とか、人間様との距離感など地平の彼方へとすっ飛んでいき、これはまずいぞ、とばかりに押しつぶされそうな焦燥が胸をジリジリと焦がしていきます。

 暑さでかく汗とは、また違った汗が背中や頬をダラダラと濡らしていき、すでに身体中汗まみれ。私の早とちりであれと願っておりましたがどうやら徒労に終わる様子。

 つい、先ほど十六夜様に啖呵を切ってしまったばかりに逃げるに逃げるという選択肢も取れず、どんどんと目に優しくない館に近づいていきました。

 

 じたばたとする時間も無く、目の前へと辿り着き、先に十六夜様が降り立ちました。

 何をされてしまうのか、なんて不安を抱えつつも、私もそれに続き降り立ちます。不安からかやたら地面がうねり、私を飲み込もうとしているのかと錯覚してしまう程。

 先程の沈んだ気分はどこへやら、まずは生きて帰ることが出来るのか、なんて考えで頭がいっぱいとなりました。

 

 そんな考えのままぎこちなく地面に降り立ちますと、出迎えてくださいますのは何やら緑色の中華服をお召しになさった女性のお方。

 紅い髪を腰まで伸ばし、スラリと伸びた手足は適度に筋肉がついており、健康的な美を誇っておられます。そして何よりも、立っていらっしゃるお姿が美しく芯がすっと一本通っているような印象を受けました。

 その美しいお方がふにゃっと微笑みつつ手をひらひらと振り、十六夜様に挨拶しました。

 

「お帰りなさい、咲夜さん! ……そちらの方は?」

 

 興味深そうな視線がこちらに向けられ思わずビクリとしてしまいます。そんなビクビクとした私の様子を気に留めることなく十六夜様は答えました。

 

「こちらは袖引さん。メイド服の仕立てに呼んだの」

「あぁ、この前手酷くやられてましたからね」

 

 なるほど、なんて言いつつも門を開けてくださいます。

 そして、こちらに向き直り、深くお辞儀をしてくださいました。

 

「ようこそ、紅魔館へ。私は紅美鈴。歓迎いたしますよ、ご客人」

 

 ニコッと、爽やかな笑顔を此方に向けてくださる美鈴様。こんな丁寧に挨拶をされてしまったら(わたくし)も返さねば不義理というもの。緊張で跳ね回る心臓を抑えつけつつ、きっちりお辞儀。

 

「ご丁寧にありがとうございます。私は、韮塚袖引と申します」

 

 お辞儀を返し頭を上げると、紅様は驚いた様な表情を少し浮かべ、その後、微笑んでくださいました。

 

「はい、よろしくお願いしますね、袖引さん!!」

 

 ふっ、どうです? なんて内心で自慢している余裕すら無いままに、紅様と挨拶を交わしつつも、十六夜様に導かれ、紅い館の敷地へと入っていきます。

 暖かい歓迎を受けていても、入る場所は変わりません。異変の黒幕の居城へ踏み入れる私の脈拍は最高潮。バクバクと心の臓が元気に跳ね回り、今にも口から飛び出さんばかり。

 笑みを浮かべる余裕すら無くなり、ギギギとぎごちないで十六夜様にやっとの思いでついていきます。

 必死に記憶の端を漁り、上白沢様との会話を思い出します。確か、首謀者は吸血鬼であらせられた筈です。その方は500年生きられていらっしゃるとかなんとか。

 私の倍以上生きられているお方。しかも、あの霊夢さんと互角以上にやり合ったなんて噂もございます。

 さぞかし威厳もたっぷりな事であると思われます。そんな方に、私の様なちんけな妖怪が粗相をしてしまった暁には、この館の染みの一つになるのでしょうね。この真っ赤なお館にはさぞかし良く映えることでしょう。

 

 そら恐ろしい想像をしつつ、私の背丈の三倍はあろうかという大きな扉を潜ると、やはりと言うか、何というか眼前には真っ赤な景色が広がっておりました。

 階段も、敷物も、天井すらも紅いのです。私、これには面食らってしまい、しばし反応する事が出来ませんでした。

 私が呆然としている間に何処かに置いたのか、いつの間にか十六夜様がぶら下げていた荷物は消えており、此方へ、と案内してくださいます。

 口をあんぐり開けたまま付いていきますと、衣装箪笥がずらりと並ぶ部屋へと通されました。

 

 そのまま、十六夜様は衣装箪笥から何かを取り出し、私に手渡しました。私の片手にぎりぎり収まるくらいかそうで無いかぐらいのそれは、上質な布地で出来ているようで手触りが良く、手の内でこねくりまわしたい衝動に駆られます。 

 そんな衝動を抑えつつ目を凝らして見てみると、それは私が商売道具にしている物。

 

「服……?」

 

 あまりにその服が小さかった為、思わず呟いてしまいました。

 その声はしっかりと聞こえていたようで、十六夜様が頷き返答しました。

 

「そう、それをあなたに作って欲しいの」

 

 美しい相貌が私をしっかりと捉えました。それはまるでこれ位ならばお手の物でしょ? と言いたげに見える視線であり、そんな眼差しに耐えることが出来ず、少し身じろぎしてしまいます。

 万全の状態であれば、苦労する事もきっと無かったのでしょうが、今回ばかりは事情が違います。

 先週食物となった右腕は強引に生やしており、物を触っていても、何重にも巻いた包帯の上から触っているような感覚が続き、万全の状態とは言えません。

 重ねて、いままで殆ど作る機会がなかった超小型のお洋服。思わず、何故依頼を受けてしまったのかと後悔してしまいました。感傷に浸り、気軽に依頼を受けた自分を気の行くまで殴ってしまいたいばかりでした。

 

 まぁ、そんな事をしていても始まりません。どういった物を作るかを見させて頂きましたら、次は実際に採寸あるのみです。その事を十六夜様に伝えようと口を開きかけた瞬間に、ガチャリと扉が開きました。

 扉から覗いたのは、私の顔の高さ程にある愛らしいお顔。青みがかかった銀髪を揺らし、ひょこっと顔だけをおだししておりました。そんな可愛らしいお方が口を開きます。

 

「さくやー、こっちにいるって来たんだけど」

「あら、お嬢様。今日はお早いですね」

「霊夢は、これくらいの時間には起きてると言うからね、たまには人間を真似してみたの」

 

 十六夜様は少し驚いたような表情を浮かべたかと思うと、いつの間にか扉を開けており、可愛らしい少女の傍らに立ちました。

 先ほどもありましたが、もしかして十六夜様は瞬間移動能力をお持ちなのでしょうか? なんて呑気な事を考えている暇はございませんでした。

 部屋に入った少女は、私を見ると面白そうに笑い、切れ長の目をすっと細めました。

 その瞬間、背骨を掴まれたような悪寒が身体中を這いずります。生存本能が警鐘を鳴らし、今すぐ逃げよ、と警告してきます。

 しかし、息は上がり、足は竦み、目は霞む。どうにか意識を持っていかれない様に、気を()()締め、倒れぬ様にするのが精一杯。

 紅い内装も、手に持つ小さな服も目に入りません。目に入るのはただただ、目の前の方の双眸のみ。紅く、赤く、眼前が紅色一色に染まります。

 紅い血溜まりから手が伸び、私を引きずり込んでいく。そんな感覚が私を襲い、どんどんと息苦しくなっていきます。ゴポゴポと溺れる様な感覚の中、藁を引き寄せる様な感覚で必死に意識を繋ぎ留めます。

 永劫にも似た長い時間の後、突然ふっと身体が軽くなりました。私は解放されるや否や、ぜえぜえと息を膝に手をつき空気を求め喘ぐ私。荒い息を吐いておりますと、頭の上から楽しそうな声が掛かりました。

 

「あら、気絶しないのね、気絶したら朝ごはんにでもしようと思っていたのだけど」

 

 息を整えつつ見上げると、艶めかしく舌なめずりをする少女の姿。妖艶にニタリと笑いながら唇を湿らす姿はやたらと様になっており、何年も生きてきた威厳を感じさせます。

 そのまま固まっていると、フッと楽しそうに笑い、十六夜様に振り向きます。

 

「耐えられるなんて中々ね。……で、こいつ誰かしら?」

 

 知らないで朝食にされかけた、という恐怖を味わいつつ、会話の行方を見守っておりますと、こんな事は日常茶飯事、とばかりに平然としていらっしゃる十六夜様が返しました。

 

「この方は、人里に住まう呉服屋で、今回は妖精メイドの採寸の為に招きました」

「あぁ、なるほど、で、名前は?」

 

 十六夜様の返答を聞き納得したように頷くと、再度こちらに紅い目を向けてきました。それに追従し十六夜様もこちらを向きまして、合計四つの瞳が私を見つめていらっしゃいます。自己紹介をしろという事なのでしょう。

 こちらの状態と言えば、先ほどの威圧から完全に立ち直っておらず、息も絶え絶えの状態。そんな中ではまともな返答なんて出来るはずもありません。……出来ませんよね? 

 故にこうなったのは必然と言うか、仕方のない事だったのです。

 

「私は、……あれ? 誰でしたっけ?」

「えっ?」

「お嬢様……」

 

 えぇ、あまりの緊張感に一瞬記憶が飛んでいたというか、意識が混濁していたのです。

 口に出して、ようやく記憶が里帰り。しかし、口に出した言葉はもう帰ってきません。質問を下さった方は固まり、十六夜様はあーあ、とでも言いたげなあきれ顔。

 取り繕うにも一瞬だけとは言え我を忘れていたのもまた事実。嘘でしたとも言えず訂正する機を逸します。

 どうしたものかと悩んでいると、次の会話が始まっておりました。

 先程から、お嬢様と呼ばれ続けていらっしゃるお方が、十六夜様の視線に困った様な表情を見せます。

 

「あー強く威圧しすぎたわね……咲夜、そんな目で睨まないで頂戴」

「ですが、袖引さんがおかしくなったのはお嬢様の責任ですよ」

「うっ……うー、わかったわよ! パチェのとこに連れて行きなさい!」

「かしこまりました」

 

 そんな、会話が繰り広げられた後、十六夜様がこちらへ向かってきました。

 さすがに、記憶の混濁も一瞬だけでしたし、お客様相手に迷惑はかけられぬと辞退するべし、努力をしようと思いましたが、いまここで、直りました、なんてほざこうものなら目の前のお嬢様とやらの怒りを買い、壁の染み。なんて事になりかねません。

 本日何回目かの、何て事をしてしまったのでしょう、と言う念に駆られながらも、十六夜様に従い、ついていく他ありませんでした。

 不都合な事にお嬢様な少女も暇を持て余していたのか、私たちについて来てしまいました。

 

 十六夜様に従い、カツンカツンと階段を下り、地下へ下っていきます。階段を降りきるとまたしても大きな扉が私を出迎えました。

 慣れている手つきで十六夜様がギギギと扉を開け放つとそこは本の海。

 どうしたものか、なんて考えている内に、知識溢れる場所へとご到着。これから起きるであろう事に私、不安で胸が一杯でございます。

 

 蝋燭がユラユラと揺れ部屋を照らしていますが明かりは十分とは言えず中々に薄暗い。そんな夕闇を思い出すような薄暗い空間に、私は足を踏み入れました。

 

 

 

 さて、私にとって非常に刺激的な出張は、まだまだ続く事と相成りました。

 目に入るのは大量の本、出会ったのは知識深い魔女様と、その方に仕える司書様でございました。

 

 果たして、無事に帰る事が出来るのでしょうか? 

 なんて、興味を引く文言を呟いて見せても、所詮は思い出話。出来ない訳がありません。

 いつもよりちょっぴり刺激的な日常をお見せするだけなのです。

 

 長くなりましたので、ここにて一旦お開きとさせて頂きます。 

 

 ではでは、次回も()()続きお楽しみ下さる事を、願っております。


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