【完結】東方袖引記 目指せコミュ障脱却!   作:月見肉団子

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しばらく不定期になるやもしれません。努力致しますのでゆったりお待ち下さい


睨み合いだよ 袖引ちゃん

 さて、お山の中腹。今日も元気にはだけております。

 ……夏が近いとは言え、この気温。まだ半裸になるには適しておりません。いえ、半裸では無いと強硬に主張しますけどね!

 さて、そんな原因を作った天狗様方のお二方。長い黒髪のしゅっとされた方と、ちょっと羨ましいようなそうでないような体つきの、髪に癖があるお二人様。只今動揺中でございます。

 

 もうすぐ夏だというのに、怖気のよだつというか、鳥肌が立ったそんな出来事の後。

 

 

 私、韮塚 袖引 困っております。

 

 

「去れ、それは私のものだ」

 

 そんな、いつもにこやかに接して下さる射命丸様から想像出来ないような、冷淡な声がぴりりと響き、馬乗りになっている天狗様方から動揺が伝わってきました。

 私の上の天狗さんが狼狽しつつ、ぼそりと漏らします。

 

「な、なんでアンタがここに……」

「……いつの間にか随分と出世したようで。貴様、誰に向かって口を聞いているか、分かっているな?」

「ぐっ……申し訳ありません! ですが、こいつは侵入者で……」

「先程、私のものだと言ったはずだが?」

「っ……そんなはず……」

「なにか?」

 

 という言い合いが、馬乗りになったままで進行されております。話の主題は私の筈なのに、私は蚊帳の外。流石にこの剣幕に飛び込む勇気は無く、ただ案山子のように押し黙るしかありませんでした。

 そんな中、もう一方の確か凛瑚さんと呼ばれていた方が声を上げました。

 

「射命丸様。こいつは侵入者であってそれを懲らしめる……」

「ふむ、上司の決定に異存があると」

「……いえ、差し出がましい事をして申し訳ございません」

「貴女のそういう所嫌いじゃないわ」

 

 そんな言い合いを強引にねじ伏せるような形で、射命丸様が制し、天狗のお二人様は沈黙。馬乗りされたまま続けれた議論は馬乗りのまま終わってしまいました。

 なるべく息すら目立たないようにしておりましたが、そろそろ恐怖も緩み、身じろぎを一つ。すると、やっとこさ私の存在を認知したのか、円佳と呼ばれていた天狗様は、あ、という声を挟みつつ、ひょいと退いてくださいました。

 

 よいしょと起き上がると、乱れた髪やら服の裾。破かれてしまった所を慌てて隠します。それと同時にすすす、と射命丸様の方へ寄りつつ、彼女達から距離をとりました。

 

「あ……」

 

 残念そうに伸ばされる手。私からは魔の手としか言いようがありませんでしたが。

 そんな魔の手から逃れた私。そそくさと射命丸様の後ろへと回ります。そんな姿を見た彼女達は、二人で視線を交わし合い。きっ、と視線を投げつけつつ翼を広げ何処かに飛んで行ってしまいました。

 

「着せ替えごっこできると思ったのにー!!!」

 

 えぇ、あれです。最後に聞こえてきた声は空耳か何かでしょう。流石に誇り高き天狗様がそんな事をおっしゃる筈が……

 といった所で、頭にポンと手が置かれよしよしと撫でられました。

 

「怖かったですね」

 

 その一言だけ。射命丸様はその一言だけ発し、頭を撫でつけて下さいます。何者かに守られている安心感。そんな温かい気持ちが頭を通して全身に広がりました。

 こんなことは慣れっこなはずなんです。けれど、何故かぽろり、ぽろりと涙が出て、本当に死ぬんじゃないか、本当に恐ろしい事をされるんじゃないかという恐怖が今頃になって湧き出てきて、ぐすり、と鼻をすすりました。

 

「怖かった……本当に、怖かったよぉ」

「はいはい、もう大丈夫ですよ」

 

 まぁ、彼女たちの思惑どうであれ。私が味わったものは、死の一言を想起させるには充分すぎる位に恐ろしいものでございました。そんな中助けて下さった射命丸様は、仏様か何かの様に見えてしまう。

 だからこそ、みっともないというか、情けない姿を晒してしまった訳です。それに、正確な歳は分かりませんが、彼女が遥か上に年齢を置いているのは事実。そんな年長者のような風格もあったからこそ、私の涙はこうもぽろぽろ落ちていくのでしょう。

 子供のように泣いたのも、人前で涙を見せたのもいつ頃ぶりか。

 

 

 さて、泣き付き、抱きつき、そろそろ落ち着いたそんな頃。

 

 私、赤面しております。えぇ、もう真っ赤です。今なら天狗のお面にですら勝ててしまうこと間違い無し。あぁぁあ、と声漏らし、頭を抱えております。

 まさか、まさか、とんでもない恐怖あったとは言え、射命丸様に、抱きつくまでしてしまった行為の数々。情けないやら、恥ずかしいやらで頭は一杯一杯。重くなった頭落とさぬように、精一杯頭抱えてうずくまっております。

 本来ならば、天狗様なんてまさしく雲の上の存在。私なんぞの低級に抱きつかれてしまったあかつきには、嫌悪感も凄まじい事でしょう。そんな想像をし、顔が真っ青となり、ぱっと離れました。

 そして、すぐさま自分が今まで何をしていたのかと、顔を真っ赤に、とくるくる塗り替わる百面相をさらしておりました。

 

 

「いやー、珍しい姿でしたね。眼福でした」

 

 カメラがあったら撮っていましたよー、と楽しそうに話す射命丸様。目が実にキラキラしているというか、爛々としているというか、まさしく楽しそうでいいですね。といった表情。

 

「あぁ、もう、本当にすいませんでした! 違うんです。あれは違うんです!」

「はいはい、分かってますよ。この件は秘密ですね」

 

 あぁ、もう恥ずかしい。恥ずかしいったらありゃしない。と、赤らめつつも、あわわと手をぱたぱた。

 そんな慌てた私に、片目を閉じて応じるという、茶目っ気のある仕草で答える射命丸様。お優しいと実感するかしないかはともかくとして、平伏せんばかりに謝り倒した甲斐がございました。

 そんな射命丸様から一言。

 

「そもそも広めたりなんて絶対しませんけどね」

「ひぃっ!?」

 

 やっぱり怒っている様子。ぼそりと呟いたようなその言葉には、確かな感情が籠っており、こちらを見る目も先程の天狗さんの目を彷彿とさせるようなもので背筋が凍ります。

 そんな視線に耐えられず、そそくさと、慌てて身の回りのもの集めぺこりとお辞儀。

 

「この度は失礼いたしました! では、これにて!」

「あ、ちょっと、そんな格好で帰るんですか?」

 

 え? と見下ろせば、隙間風が入り込んできそうな私の格好。先程の惨事をすっかり忘れ、泣きべそをかいていた私は、正しく粗忽者なんて言葉が良く似合うことでしょう。

 

「韮塚さん、流石にその恰好は扇情的すぎません?」

「こ、これは……わ、忘れていたわけではなく」

「……まぁ、痴女だろうと私的にはおいしいネタが増えるだけですし」

「違います! 違うんです……」

「ふむ、人里に住む小さき妖怪。その実態は……おっと」

 

 あまりにも、あんまりです。私が悪いのは承知しておりますが、ここまで言われてしまうのでしょうか。痴女だなんてあんまりです。そんな事を思いつつも、相手が相手なだけに、何も言い出すことが出来ません。

 黙ってはらはらと涙を流しておりますれば、射命丸様も気づかれた様で、やり過ぎました? なんて首を傾げる仕草。

 

「あのー、ひょっとして……私?」

「……いいです。もう私なんて何でもいいんです。ふふふ、このまま帰って痴女と呼ばれるのも面白いかもしれませんね。いいんです、いいんです」

「ちょ、ちょっと冗談ですって! というかまた襲われますよ? いいんですか?」

 

 自暴自棄になりつつ帰路につこうと思っておりましたが、襲われるという単語で足がピタリと止まる。悲しいかな先程の動転といいますか、驚天動地な事件はしっかりはっきりと私の印象に残っております。若干、私の言動が怪しい事になっているのもそのせいです。そうに違いありません。

 

 さて、足縫い付けられ、服は繕いようがなく、進退窮まった私。ぐぬぬと頭を捻ります。このまま下山して、不本意ながら痴女のそしりを受けるか。あるいは、このまま山で暮らすのか。

 

「あのー」

 

 ふむ、どちらも困ったものです。痴女なんて称号を頂くのは不本意すぎますし、かと言ってここで暮らすなんて恐ろし過ぎて想像すらしたくありません。

 

「あのー聞いてます?」

 

 ……本当にどうしましょう。困りました。恥じらい捨てて帰りましょうか? いえ、でもそれはあまりにも……

 

「おっほん」

「ふぇっ!?」

 

 気が付くと、射命丸様が近寄って来ていて、大きく咳払い。これには私もびっくり仰天。思わずしりもちをペタリとついてしまいます。

 射命丸様の視線気にしつつ、立ち上がりますと。天狗様はにこにこ顔で話掛けて来ました。

 

「ふむ、眼福眼福……違った。私、韮塚さんの家まで送りましょうか?」

「はい? 送る? 誰を?」

「貴女を」

「へぇ、それはすごい……へ?」

 

 いきなりなありがたい提案に、思わず固まる私。まさしく天から降って沸いたような幸運について行けず、ぽかんと口を開くばかり。そんな私を見て警戒したと取ったのか、慌てて訂正する射命丸様。

 

「いやいや、あのはしたない二人みたいにいきなりとって食べようとなんてしませんとも! 私は清く正しい新聞記者。きっちりかっちり、紳士淑女的に送って差し上げますとも!」

「へ、あ、はい。……あ」

 

 違うんです! と言わんとしましたが、あまりの剣幕に思わず頷いてしまう私。それを了承ととったのか射命丸様は目をキラキラ輝かせます。そして、私の腕をがしっと掴みました。

 

「ふむ、やはり韮塚さんは話が分かるお方。いいでしょういいでしょう。今回は特別ですからね?」

 

 ひょいと、宙に浮く感覚があったかと思うと、いつの間にか射命丸様の腕の中。

 あんまりにも一瞬過ぎて、何が起きたのか全く把握出来ておりません。とにかく思ったのは、やはり天狗様は力がお強いなーとぼんやりと考える事位。

 つかまってて下さいね、の一言と共に強い風と浮遊感。いつの間にか空の旅へひとっとびでございました。

 

「しっかし、軽いですねー。大丈夫です? ちゃんと食べてます?」

「へ? あぁ、ちゃんと食べ……いや、そうでなく!」

「なになに、どうしました? ひょっとして夕飯がまだ決まっていないとか」

「まぁ、夕飯は決まってませんが……うん? えーと」

「まぁまぁ、落ち着いて決めましょうよ」

「そ、そうですね……えーと」

「さて! そろそろ人里ですよ!」

「え、嘘? はやっ!?」

 

 ジタバタする時間も無く、瞬きの間位の時間で人里の上空へ到達しておりました。速さに驚くあまり、つい素が出てしまう私。なんといいますか、今回はみっともない姿ばかり晒している気がします。

 ううう、と唸っていると、いつの間にか私の家の上空へ。ぱさりと屋根に降りて、するりと窓から中へ。確かに、そこまで強固な戸締りをしている覚えはありませんが、あまりの手口の素早さに、思わず、ん? と首を捻る私。

 気のせいですよね。うんうん、気のせいの筈です。

 

 さて、忍び寄る恐怖的なものを感じていると、優しく部屋に降ろされ、そのまま着替えを持ってきて下さる射命丸様。

 はい、どうぞとポンと渡され。ありがとうございますと返す私。早く服が着たかったが為に、感謝の気持ちが……という訳にもいきません。

 

「あの……なんで射命丸様は私の服の場所を?」

 

 流石に疑問に思い、恐る恐る聞いてみる私。背中にじわりじわりと嫌なものが這ってきている様な、そんな感じが致します。

 まぁ、衣装箪笥なんて一つしかありませんし、それを見つけたといった所でしょう。えぇ、間違えありません。

 

 そんな普通の答えを期待して、視線を送りました。

 いつの間にか陽は傾いていて、薄暗い影が忍び寄る部屋の中。射命丸様はクスリと笑い、何処からか取り出した手帳で口元を隠しました。その姿は何処か妖艶で、今までの軽い態度とは一線を画した「何か」がそこにいきなり現れた。そんな感覚を受けてしまいます。

 

「ふふふ、天狗は何でもお見通しなのですよ?」

 

 紛れもなく彼女は妖怪で、私というちっぽけな存在を見透かしてくるような、強大な力を持つ一つの個体。その事実を、まざまざと見せつけられたような、そんな一瞬。

 射命丸様は言葉を続けます。

 

「韮塚さん、きっと貴女はもう一度山に来る事でしょう。……まぁ、その時は麓だけで過ごす事です。天狗の領域には踏み込まぬよう、気を付けて下さい」

「え……?」

 

 思わぬ言葉に、思わぬ単語。また、あそこに行くとはどういう事なのでしょうか。そんな唐突な言葉に目を白黒させていると、射命丸様は窓に足を掛け、出立の姿勢。

 

「あ、そうそう。転んだ時も思いましたが、もう少し自分に頓着したほうがいいですよ? 今、どんな格好だか分かってます?」

「え……はっ!?」

「ではでは、お元気でー」

 

 慌てて胸元隠しつつ、ばさりと翼広げ飛んでいく射命丸様を見送りました。

 夕焼けに浮かぶ黒い点はあっという間に見えなくなり、ほっと溜息を一つ。そして、今日あった事を反芻していると、顔が青ざめたり、赤くなったり。

 

 襲われた事はともかくとして、射命丸様の前で泣きじゃくってしまった事や、色々と子供の様な事を言ったりしたり、と最終的に恥ずかしさが勝っていきました。

 そうなれば、やる事は一つ。布団引っ張り出して潜るだけです。がばっと、潜り込み、あーとか、うーとか叫んでいたらいつの間にか次の日に。

 

 なんて言うのが一回目の妖怪の山来訪でした。まぁ、あまりいい事なく、恥ずかしさばかり募る出来事でございましたね。と思い出すばかり。今でも赤面してしまいます。

 

 まぁ、いい事悪い事あるのもまた人生。なんて清濁やら、お茶やら飲み込みつつ、話は再び市へと戻ります。

 

 季節同じくして、時代は山の神様いらっしゃった異変から、そろそろ一回りな頃。再び私は戻ってまいりました。

 お蕎麦屋で一服し、再び陣地へと舞い戻る私。とは言え、そろそろいい感じに物も捌けて来て、そろそろ店じまいかなーなんて思い浮かべておりました。

 ぽつぽつ流れる人達を見つつ、ぼんやりしておりますと、声が掛かります。

 

「こんにちは。お店やってるんですね」

 

 声が掛かり振り向けば、最近見知ったお顔がそこに。

 いらっしゃったのは、緑の髪に特徴的な巫女衣装。お山の方の巫女さんこと、東風谷早苗さんが小さく手を振っておりました。

 

「おや、こんにちは。お買い物ですか?」

「そんなところです。バザーやってると聞いたのでこっちまで来てみました」

「ばざー?」

「あぁ……えーと、市って意味ですよ」

 

 なるほどなーと納得しつつ、見世物勧める私。ちなみに早苗さんは時折買い出しに来ていて、その際に家に遊びに来る事もしばしば。色々とお裾分けやらもして下さり、最近急激に仲良くなっております。

 そんな早苗さん、しげしげと端材で作った手ぬぐいやらを眺め。いいですねーこれとか楽しそうにしております。

 何と言いますか、物を眺める姿がとても似合っており、いつまでも眺めていたい程に微笑ましい。

 その中でも、やたらと気にかけていたのは、早苗さんが遊びに来た際に見せてもらった、しゅしゅ、と呼ばれるもの。

 髪留めの一種だそうで、割と簡単に作れてしまうものでしたので、ちょこちょこ作って持ってきておりました。人気を博し、売れ残っているのはあと一つ。といった状況で、早苗さんも作ったんですねー、とか言いつつも手にもって眺めておりました。

 

「これ、他にも色ありませんか?」

「えーと、すいません。それはもう残り一個でして……」

 

 売れ残っていたのは、藍染めの端材でつくったもので、緑を基調とする早苗さんには少し似合いづらい物。早苗さんもうーんと首を傾げております。

 いつもお世話になっている分、要望も叶えてあげたい所。

 

「あの、家に戻れば材料はまだありますので、一旦家に──」

「いえ、売り物として残っているのがこれなら、きっとこれはこれで運があったんです!」

 

 うんうんと頷くと、早苗さんは、たもとから財布を取り出そうしました。そんな時に再びかかる声一つ。

 

「やっと、見つけた! おーい、袖引ちゃん!」

 

 いきなりな声に、ぱっと振り向けばこれまた見知った影二つ。日傘を差した咲夜さんに、ぱたぱたと元気そうに特徴的な翼動かす妹様。フラン様がいらっしゃいました。 

 おーい、と言いながら、とてとて寄って来る姿に、和んでおりますと早苗さんがこそっと耳打ち。

 

「あの子、レミリアさんの妹さんですよね……? こんな所にいていいんですか?」

「へ? ……あ、そう言えば」

 

 愛くるしさに忘れておりましたが、フラン様は強大な力を持つ吸血鬼の一族。確かにこんなところで力を振るわれたら大惨事は必須でしょう。しかし、最近までずっと訓練を積み、時折私の店にも顔を出せる程に行動範囲が伸びたフラン様。

 まぁ、本当に色々とありましたが、今なら安心を持ってこう言えます。

 

「きっと大丈夫ですよ。最近は力の制御だいぶお上手ですから」

「うーん、でも……」

「ちょっと、そこの人間と何こそこそ話してるの?」

 

 いつの間にか、フラン様にすっと距離を詰められ、腕をぐいぐいと引っ張られました。

 相も変わらず私を引っ張るなんて役割を取られている様なそうで無いような。

 この光景に早苗さんも、そして、追ってきた咲夜さんも苦笑しつつも挨拶を交わします。どうやらお二人は面識があったようで、お互いに軽く会釈をしつつ挨拶しておりました。

 

「あはは……こんにちは」

「こんにちは、早苗さん」

 

 因みにフランさんは、私に抱きついたまま早苗さんは眼中にない、とばかりに私に話かけておりました。

 そんな態度ですので、私含め、三人で顔を見合わせて苦笑い。すぐにぐいぐいと引っ張られて、引き戻されましたが。

 

「妹様は本当に袖引さんが好きですね」

「当たり前じゃない。なんの為に探したと思ってるのよ」

「それもそうでしたね」

 

 聞けば、私を探すために人里を歩き回っただとか。そこまでして頂くのはありがたいのですが、そこまで探すものでもないと思うのですが……

 因みに早苗さんは苦笑いしつつ、どう話しに入ろうものかと考えている様子。そんな様子を見て、私は先程のしゅしゅを使うことに。

 

「そうでした、早苗さんそのしゅしゅですが──」

「なにこれ?」

 

 一旦地面に置かれたしゅしゅに水を向けますと、なんとフラン様が拾い上げ、しげしげと眺めてしまいました。

 あ、と声を漏らした早苗さん。しかしながら、そこは幻想郷在住の女の子。伸ばした手が降ろされる。なんてことにはなりませんでした。

 

「それは私のものです。今から買うんです」

「何? まだ買ってないならいいじゃない。霊夢の偽物さん?」

「れ、霊夢さんの偽物……その言葉は聞き捨てなりませんね!」

「ちょ、ちょっと……」

 

 言い合いが激しくなる。というか、確実に衝突の結末が見える言葉のぶつけ合い。

 それを止めたかったのですが、一度火がついた彼女達を止める事など到底不可能。次第にぼやから大火事になるまで眺めるしか他ありませんでした。

 

「ふん、所詮日傘なしに外を歩けない。へなちょこ種族さんめ」

「い、言ったわね……いいわ。その挑戦受けようじゃない」

「いいですよ? でも肌が貧弱なんですから日焼けを心配してくださいね?」

「偽物にはちょうどいいハンデじゃない?」

「ふ、ふふふ……いいでしょう。この私の本気をお見せしましょう!」

 

「「弾幕ごっこで勝負です(よ)」」

 

 

 あの……お話を聞いてください……。

 

 ちらりと咲夜さんの方を見ると、何かしら、と首を傾げる咲夜さん。この状況をなんとも思わない彼女もまた、立派な幻想郷在住の女の子でございました。

 

 

 さて、火花バチバチと散らし、しのぎを削ろうとする弾幕ごっこが始まろうとしておりますが、一旦ここらで一区切り。

 山の思い出話終えても、一息つかせぬままに次の事が舞い込んでくる今日この頃。とっても騒がしくも素敵ですね。……えぇ、忙しいとも言えてしまいますが。

 

 まぁ、気を落とさず、残機落とさず。本日も私の周りは元気に溢れております。

 

 といったところで次回に持ち越し。

 

 ではでは、()()続きお楽しみ下さる事を願っております。

 


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