【完結】東方袖引記 目指せコミュ障脱却!   作:月見肉団子

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お月様だよ 袖引ちゃん

 さて、時は早朝。朝焼けが滲み出る中でお月様が隠れるのを忘れ、青く澄んだ空の中にぷかりと浮かんでおります。

 いささか早く起きてしまったな、なんて事を思いながら外へと踏み出します。夏とは言え早朝はまだ過ごしやすい空気。そんな朝の空気をすぅ、と吸い込み目を覚ましていきます。

 葉の上に朝露が乗り、薄明かりの中でキラリと光りました。そんな薄明かりの下、私はぐっと背伸び。

 

 朝が来るという事は何とも素晴らしいですね。煌めく星も良いものですが、やはり朝というのものは格別です。

 

 そんな事を思いながら、思い出しておりますのはあの夜の事。終わらぬ月が昇り、私もちょっとずつ気づき始めたそんな頃。竹林の中で大変色んな事が起きました。えぇ、本当に色んなことが。

 

 もし、現状と過去を繋げる分岐点があるとしたら、ここなのかもしれません。私の事、昔の事。まだまだ気づくのは先ではございますが、私は妖怪であって、人間でもあった過去があり、そして……

 まだ私は決めかねております。どうするべきなのか、本当にこれで良いのかと。確かに、確かに私はあの時も、あの時も。けれど、それは──

 

 ひぐらしが遠くから聞こえ、まだ夏は続くのだと教えてくれます。

 どんどんと明るくなっていく空に向かって、どこか寂しそうな声が早朝の空気に響いておりました。

 

 結局私は……

 

 

 

 さて、そんなこんなで始まりますは新しい一日。悩むことも考えることもひとまず置きまして、まずはご挨拶。

 

 私、韮塚 袖引 朝を迎えております。

 

 

 さて、朝餉を終えて、今日一日の計画を立てますかといった所。とはいえ、やる事なんぞ決まっておらず、特には予定もございません。けれど何となく商売する気にもならずに、ぼーっとしております。

 困ったことにそういう日に限って誰かがやって来ることも無く、誰かに会う気分にもなれません。ざわざわとした街の雑踏にも馴染めそうになく、とりあえず静かな所に行きたいと思い当たりました。

 

 静かな場所といいますと、この幻想郷にはそれなりにございますが今回の目的地は迷いの竹林。朝の考え事が影響したのか、清涼な竹林さんに足を運んでみたくなりました。もしかすると影狼さんや、妹紅さんに会うかもしれませんし、その時は思い出話にしゃれ込むのも悪くありません。

 

 ともかく、何となく停滞した空気を変えたいのもありまして、のろのろとではありますが出立の準備整え、てくてくと歩き出しました。

 

 さて、季節は夏。蝉の声もけたたましく、木々は青々と揺れております。広がっていくような青空には大きな雲がゆっくりとたなびき私の歩く速度に合わせてくれているみたいです。

 ぼんやりと雲流れて、私も流れる。ぼんやりと空見て歩けば、天には天狗様の姿。……天狗様? 

 はっ、と気が付くももう遅い様で、こちらに気が付いたのか黒い影がだんだんと大きくなり、姿もはっきりとして参ります。

 

 こういった経験上、あまりいい事ではないといいますか、えぇ、天狗様は正直苦手といいますか。しかしながら今更隠れる訳にもいかず、通り過ぎる事を祈りつつ平然を装い歩いておりました。

 まぁ、そんな努力虚しく、近くに誰かのやって来た気配。そして掛けられた言葉は、私をずっこけさせるものでした。

 

「そんな、からくりみたいな動きをして何してるんです?」

「な、なんのことでしょう?」

 

 聞こえてきたのは聞きなれた声。天狗様にして唯一の恩人こと、射命丸様でございました。しかしながらからくりは酷くありませんかね? 私、これでも必死に平静を装っていたのですが……

 さて、若干いじけつつも射命丸様と向き合います。何となく誰にも会いたくないな、と思っていた矢先に射命丸様。もちろん普段でしたらいいのですよ。ただ何といいますか──

 

「今は会いたくなかった。みたいな顔してますねぇ」

「そそそそ、そんな事ある訳ないじゃないですか!?」

 

 神通力か、はたまたさとりの妖怪か。射命丸様は何故かにっこりとした顔で此方を覗き込みそんな事をおっしゃられました。肯定しようものなら、塵となって消えてしまいそうなそんな問い。手をぶんぶんと振って否定します。

 しかしながら恐ろしい洞察力でございます。まさかまさか、こちらの考えが透けて見えているのでは無いかと勘ぐってしまう程でございます。

 

「で、その隠したい程のネタって何でしょう!? 私、とても興味があるんですけど!」

「む、ありませんよ。そんなもの」

「いやいや、そんな表情で歩いてるんです。何かあるんでしょ? 話してみて下さいな、きっと後悔はしませんよ?」

「すいません、ちょっと今日はもう……」

「まぁまぁ、お話しましょうよ─しましょうよー」

「もうっ!! お断りですっ!!」

「おや、つれない態度ですねぇ。まぁいいです。で、本題はあの夜の異変について調べているんですけども。袖引さん何か知りませんか?」

 

 邪険に扱おうがお構い無しな射命丸様。のらりくらりと、私の怒る限界点を見極めてギリギリのところをついては離れついては離れを繰り返し、私を弄んでおります。この御方は烏天狗の筈でございますが、どうにもこうにも様子を見ているとキツツキか何かだと思ってしまいそう。

 しかもしかも、私の事を突っつくの止めたと思いきや、今度は永夜の異変の事を聞いてくる始末。なんなのでしょうか、本当に心を読んでいるのでしょうか?

 

 そんな事を考え、一瞬黙りこくってしまい、しまったと思ったときにはもう遅い。そこを見逃す天狗様ではございませんでした。

 

「おやおや、心当たりがありそうですね? さささ、先ほどのお話は多めに見ますから、今回はお話してくださいな。大丈夫です! 清く正しくを信条とするこの私。雑な記事には絶対にしませんよ?」

「あーもう、分かりました!! 分かりましたから!!」

 

 ずずい、と迫られてしまえば逃げることも、もう出来ぬ。どちらにせよ、もうこの天狗様に捕まった時点で逃げる事はほぼ不可能。裸にひん剥かれるよりはだいぶマシだと思いましょう。

 ニヤリ、とほくそ笑んだように見えたのは嘘かまことか。天狗様は手帳を取り出し、きらりと目を輝かせておりました。

 

 さて、そんな事からお話に。天狗様に乗せられて、お話するのは終わらない夜の異変。話す事がたくさんあるこの異変でございますが、何から話したものやら。出来れば簡潔にお話してしまいたい。ですが、そうは許してはくれなそうでございます。

 腰を据えて、とはいかずともそれなりにじっくりに話す事になりそうです。

 

 

 あの日は確か、今と同じ様に竹林にいらっしゃる、妹紅さんに用があって出掛けていたはずでございます。

 

 

 

 

 夏の日差しも和らぐ夕焼け時。橙色の光を背負い、ただいま滑空中でございます。

 山間部に明かりも消えかけ、もうすぐ月が登る頃。薄着はためかせ飛ぶのはなかなか心地のよいものです。まぁ、私が失敗した。という理由さえなければですが。

 

 

 昼間、妹紅さんの家に遊びに行ったのですが、お財布を忘れてしまった事に気づき、ただいま人里から引きかえしております。

 和らぐ日差しに心地よさ感じつつも、やってしまった、とちょっぴり後悔。ついでだからと何か持って行っておゆはんでもご一緒しましょうか。と色々と物色しつつ空から物探し。

 そんな事をしておりましたら見つけたのは馴染みの屋台。普段使っている財布こそありませんが、たもとにちょっとお金は入ってますし、鰻でも持っていきましょうか、とふわふわ近寄ります。

 

「あ、いらっしゃい。丁度良かったわ。今から開店なの」

「おぉ、それは良かったです。鰻二人ぶん下さいな」

「はーい」

 

 下ごしらえを終えた鰻をとすとすと刺し、手際よく鰻を焼いていきました。焼き上がるまで世間話。それなりにお話しまして、すっかり日も落ちる。みすてぃあさんに、熱々の鰻抱えまして別れを告げます。

 お客さん求める為に移動すると、屋台を押していくみすてぃあさんをしっかりと見送ってから、さて、私もと空を飛ぼうとして。

 

 ──ふと、空を見上げました。

 

 どさっ、と荷物が落ちる様な音が、私の近くから聞こえていたような気がします。

 

「あ……」

 

 大きな大きな満月が、浮かんでおりました。大きな、大きな、満月

 思わずてを、伸ばしまし

 ようかいは、よるのいきもの。つきの力も、とうぜん、かんけい……

 

 

 

 

 あの、つき、つよ……

 

 

 

 

 

「──分かりました。貴方を封じましょう」

「……ありがとうございます。巫女様」

「けれど、貴女はしっかりと──」

 

 

 

 

「……はっ!?」

 

 どれほどの時間が経ったのでしょうか。ズキズキとする頭痛が、意識をしっかりとさせていきました。

 どこかの夢。いつか誰かが……そんな泡沫のようなものを見ていた様な気さえしてきます。 

 

 頭上にある大きな月を見て、吸い込まれるような気分になって。それから……?

 

 周りを見渡すと、落としてしまった鰻さん。もったいない事をしたなと思いつつひろいあげると、まだほんのりと暖かい。時間はそれほど経ってはいないようです。

 

 もう一度、月を見上げます。しかし、もう何も起こりません。

 ただいつもよりも大きく、何処か懐かしさを感じさせる月。それがお空に当然の様な顔つきで居座っていたのです。

 

 あと、もう一つ気になる事が。

 

 何故か、いつもよりも調子が良いといいますか、何となく身体が滾ってます。あの月のお蔭なのでしょうか? 

 今ならそれなりの妖怪と相対しても、何とか相手に出来てしまう位には力が滾っているような気がするんです。

 しかも、これ、妖気でない別の力が混ざっている様な? いうならば神秘に近い……何かが?

 

 しばらく体の具合を確かめましたが、恐ろしいくらいに調子が良い。

 まぁ、何故かなんて、考えても恐らくは答えは出ない事でしょう。ともかくとして、この月は危険ですね。私がそうであった様に、他の妖怪もまた取り込まれてしまうかもしれません。

 とは言ったものの。この異常事態の首謀者が誰なのかも分かりません。近くまで来ている事ですし、妹紅さんの助言やら意見を聞こうと、竹林を目指します。

 

 しかし、本当にこの夜は快適といいますか、いつもの倍くらいの速さで飛んでいるのではないでしょうか? ぎゅんぎゅんと竹林が近づき、直ぐに到着してしまいました。

 ふわりと着地し、竹林に踏み込もうとしました。すると、竹林からは拒絶の意識のようなものを感じ取り、足が止まります。ざわり、と竹林がざわめきました。

 

「……まさか、これって」

 

 まさか、まさかとは思いますが、異変の首謀者がいるのってこちらだったりするのでしょうか? だとすると……いやいや、妹紅さんやら、影狼さんが起こす筈はありません。……たぶん。

 

 ともかくとして、影狼さんやら妹紅さんが巻き込まれている可能性は高くなってまいりました。こうしてはおれません。とっとと踏み入って二人を探さねば。

 と、息巻き踏み込んだのは迷いの竹林。しかしながら、私は迷うことはありません。どうにもこうにも暗かろうが、異変が起きていようが、道に関しては強いのです。

 

 道は強い月あかりが照らし、時折竹の影たちが踊ります。青白い光の下、まずは影狼さんの所に会いに行く事にしました。

 妹紅さんよりも影狼さんなのは、妹紅さんは単独でもお強いですし、何より私よりも歳を経ています。まぁ、これに関しては影狼さんも似たような物ですので何とも言えません。 

 

 ただ、やっぱり戦闘力やら性格やらを考慮すると影狼さんを助けにいった方が良いと判断しました。

 

 さて、そんな感じであっという間につきますは影狼さんの家。まだ数回しかいった事の無い家でございますが難なく辿り着きます。

 辿り着き、早速コンコンと玄関を叩きます。

 

 

「影狼さん。韮塚なんですけど、入っていいですか?」

 

 そんな呼び掛けに応えたのは何故か困惑と、驚きが入り混じった声。

 

「袖ちゃん!? なんで!? あ、待って待って今はダメだから! ──きゃ!?」

「影狼さん!? どうしました!? 入りますからね!?」

 

 奥からどたんどたんと聞こえ、更には悲鳴が。こんな異常事態の夜にそんな状況。待っていろなんて言葉聞く訳も無く。慌てて、家に転がり込みます。

 履物ほっぽり出し、どたどたと廊下踏みしめ、気配のする部屋に飛び込みました。

 

「影狼さん、大丈夫ですかっ!? ……え?」

「あいたたた……あ、袖、ちゃん……」

 

 

 そこにいらっしゃったのは、あられもない姿の影狼さん。蝋燭の頼りない火と、月光が白く、すべすべしてそうな肌と、ちょっぴり目立つアレが私の目に飛び込んできたのでした。

 

「あ、れ?」

 

 思わず首を捻ります。確か影狼さんは危機的状況にあったのでは? いえ、確かに危機的状況ではあるのですが、こういったものはあまりにも予想外といいますか。

 そういった感じでお互い凍り付いていたものの、先に解凍されたのは影狼さん。はっ、と近くにあった布を掴み身体を隠します。そして、顔を赤く染め、ぷるぷると震え出しました。

 そして、ついにいつまでも固まっている私に、物を投げつけてきたのでした。

 

「……とりあえず、出てけーー!!」

「あ、はい! すいませんでしたっ!!」

 

 そういった訳で、今泉宅から風よりも早く飛び出した私。なんだかすごい物を見た気がするのですが……あんなになるのですね……

 そんな感じで自分のと比べつつ、落胆したりなんだか納得したりとしていると、不機嫌な感じの顔浮かべ外に出てきた影狼さん。彼女はとりあえずと、中へ通してくださいました。

 

「で、なんでダメだって言ってるのに入って来たの? 言ったじゃんダメだって」

「あの、その……すいませんでした。心配のあまり」

 

 正座です、正座しております。中に迎え入れられ、先ほどとは別の部屋に通され、正座の一言。

 こちらもやってしまった手前、即座に正座へと移行いたしました。慣れとは恐ろしいものでございますね。本当に……

 

 まぁ、自虐さておき。影狼さんは、よほど恥ずかしかったのか、ちくちくと正座中の私を攻撃しております。

 

「ふーん、そんなにも袖ちゃんは私の体毛が心配?」

「違います! 外が、満月がっ」

「へー、満月だったら私の裸覗いて良いんだ」

「あ……うぅぅ」

 

 しばらくそんなやり取りが続いた後に、影狼さん、はーとため息一つ。

 いつも余裕のある態度をみせる影狼さんが、顔を赤くしつつも私の額をこつん、と小突きました。そして、腕組みしながらもそっぽを向いて、こんな言葉を投げかけて来ました。

 

「誰だって恥ずかしいものはあるんだから、気をつけてよね。特に満月の日は家来るの禁止だからねっ!」

「はい……すいません」

「で、やっぱりあの月って異変なの?」

 

 不承不承ながらも、やってしまった事は水に流してくれるようで、異変の話にさらっと切り変えてくれる影狼さん。そんな彼女にありがたみを感じつつ、話題に乗っかります。

 おそらくは、なんて返すと、やっぱりか。と返ってきます。

 

「私もどうもおかしいと思ったんだよねー。妙に竹林が騒がしいし」

「やっぱり影狼さんも、満月の影響受けてます?」

「ん? まぁそうねーそれなりに元気はあるわ」

「やはり、この月は危険ですね……人里は大丈夫でしょうか」

 

 おそらくは上白沢様もいらっしゃいますし、大丈夫なはず。とりあえずは一刻も早くこの異変を解決せねばなりません。

 そんな決意を固めておりますと、影狼さんから意外な質問が飛んで参りました。

 

「ねぇ、何でそこまでして人間の味方なの? 別にこのくらいどうでも良くない?」

「……え?」

「いや、だってさ。これ私達が元気になる異変じゃない? 袖ちゃんが必死になる理由が分からないんだけど」

 

 ……確かに、そうですね。確かに、これは私たちにとって非常に有利といいますか、利点のある異変です。私も何故か力がみなぎってきておりますし。そこまで止めるべきではないはずです。

 真っ先に人里が出てきたのも、どうしてなのでしょうか。確かに人間様は好きですが、あくまで妖怪観点での話の筈。思えば萃香さんの時もルーミアさんの時もそうでした。何故私は人をそこまでして守りたがるのでしょうか?

 ルーミアさんと言えば、確か、封印が、と言っていたよう、な。

 

 

 

 

「──だから、どうか私を封印してくださいませんか?」

「……あなたは人間を恨んでいるの?」

「いいえ、違います。私は……私は、愛しているから。愛していたからこそ……」

 

 

 どこかで見た、どこかで……そんな光景が脳裏を過り、激しい頭痛が私を襲います。

 

「私、は……」

「ちょっと、袖ちゃん!?」

 

 景色が揺らぎ、焦る声が聞こえたようなしたまま、私の意識は闇の彼方へと消えていきました。

 

 

 

「ごめんね、絶対に戻ってくるから」

「袖様。袖様。またねー」

 

 みーんみーんと蝉が鳴き、うるさいくらいに暑い夏の光景。手狭な祠に供えられた布の切れ端。うだるような暑さなのに、なぜか心地よい。

 

 時代がまだ幕府から天皇のご治世になったと騒がれていた頃。

 誰か、がそこにいたのです。

 

 それは実感のない影法師。身に覚えのない映像だとでも言いましょうか。

 本を読む時に感じる様な、自分ではない誰かと一体化しているような感じです。

 けれど、そんな言葉では表せられないくらいに、懐かしさを覚えていたりだとか。まさしく、夢の様なふわりとした感覚が、私を包むのです。 

 

 

 蝉の声、人々の声、強い日差しと、どこまでも続くような長い道の途中。どこか懐かしさがこみあげて来ます。

 

 

 

 道の近くには小さな村のようなもの。人たちがこぞって移動していく姿が見えておりました。

 

 その光景。その光景と、道の端にある小さな祠と、供えられた布の欠片達。そんな布を、腕を下ろしたまま握りしめる誰か。

 それはとても悲しくて、胸が引き裂けそうなくらいに胸が痛い光景でした。

 

 

 

「おーい、そろそろ起きなよ、朝だよ? 夜だけど」

 

 

 こぽこぽと水に沈んだ様な意識が、ぺちぺちと頬を叩かれる優しい衝撃によって、浮上していきます。その夢は、はっきりとしていて、けれど何処か霞が掛かっていて……

 その続きが見たく、ごろんと寝返り一つ。

 

「……あと、ちょっと」

「よーし、元気だね。押しかけて来ていきなり倒れた時はびっくりしたけど。もう、心配もなさそうね」

「影狼さん……? ……なんでここに?」

「ここは私の家です!」

 

 まったく……なんて言いつつも熱は無いかとか、そんな気を掛けてくれる素振りを見せて下さる影狼さん。そんな彼女に感謝しつつも、先ほどの夢について思いを馳せました。

 萃香さんの時に見た記憶の反芻ではなく、何処か知らないはずなのになぜか懐かしいという光景。

 残っているのはズキズキする頭痛と、先程から継続している謎の力のみなぎり方。

 

 

 そんな状況が怖くなり、つい近くにいた影狼さんに質問してしまいました。

 

 

「影狼さん……私は誰ですか?」

 

 

 

 さて、そんな恐怖と共に一旦お開き。さて、謎の夢に、謎の月。分からない事だらけな今回の異変。でもいずれは太陽が昇り、全て明かされることになります。……そこに真っ黒い影ができるとしても。

 さてさて、まだまだ夏の夜長は始まったばかりにございます。みなぎる力に、謎の光景。そして、そんな事を気にしている余裕すらなくなる私の未来とはっ!?

 

 語るの恥ずかし、聞かれるの恥ずかしな私の物語。次回に持ち越しでございます。

 

 

 

 

 ではでは、次回も()()続きお楽しみ下さる事を、願っております。

 

 




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