昔書いていたものに手を加え出してみました。
良ければ感想等待ってます!
さわりは分かりにくいと思いますが一応fateと俺ガイルのクロスオーバーです。
今でも思い出す。
あたり一面に燃え盛る炎。
あたり一面に漂う死臭。
あたり一面にこだまする怨嗟の声、苦悶の声、懇願の声。
燃え盛る炎は着々と逃げ道を奪ってゆき、漂う死臭は嫌がおうにも死人が出たという現実を突きつけ、こだまする声は、己の幸運さ、非道さ、無力さを知らしめる。
何も罪など犯していないはずのおれたちが、一方的に蹂躙されつくされ、死体の山を積み重ねる。
そこに残るものは虚無であって、
幼いころから達観していた俺は周囲から浮き省かれることが多く、自身もまたそれをよしとしていた。
周りと違うものを徹底的にない者に、排斥しようと出る自分と同じ年の子供を見てはこの世界に辟易していた。
それは世界の摂理であって、不変である。
俺はそんな人が、社会があまり好きとは言えなかった。半ば世界を諦めていた。
それでもそんな俺が好きだと言える人たちがいた。
家族だ。
こんな俺の思いを受け止め、理解し、優しく思いやってくれた。
そんな家族の存在は俺にとっては救いであり、呪いであった。
この世界のどこかに家族のように俺を認め、思ってくれる人がいるはずだと、そう理想を抱かせ、俺の世界に対する諦めを許容しなかった。
そんなある日突如俺の住んでいた地域で大規模な原因不明の火災が起きた。
あたり一面に燃え盛る炎。
あたり一面に漂う死臭。
あたり一面にこだまする怨嗟の声、苦悶の声、懇願の声。
燃え盛る炎は着々と逃げ道を奪ってゆき、漂う死臭は嫌がおうにも死人が出たという現実を突きつけ、こだまする声は、己の幸運さ、非道さ、無力さを知らしめる。
それらは確実に俺の心と体を削っていった。
歩いて歩いて歩いて歩いて。
自身の形容しがたい感情と決して向き合わず助けを求めて歩き続けた。けれどもやはり俺以外に生存者はいなく、聞こえてくる声が諦めろとささやいてるような気がした。
何も罪など犯していないはずのおれたちが、一方的に蹂躙されつくされ、死体の山を積み重ねる。
それは蹂躙であって、救済などではない。
だのに俺は安堵してしまった。こんな俺を大事にしてくれた家族を失ったのに。
理由は一つ、確かなものがあった。
これで俺はもう頑張らなくていいんだと、もう何もわからない者へ手を伸ばすことなんてしなくていいだと、もうあきらめていいだと、思ってしまったのだった。
人間大事なのは心の持ちようで、それを動力としてい端さえある。
心が折れれば、体も自然と進むことを諦めた。
日は勢いを増して、あたりを貪り続ける。
声は発するものが減る代わりに、より大きく、近くに聞こえる。
足の力が抜け、背中から地面に倒れこんだ。
それを見ればただただ黒煙が空を覆い、星の一つすら見えない。
何一つ見えない中でも市が近づいてくるのだけはわかった。明確な足音が聞こえ、だんだんと姿かたちをつっ食ってゆく。
今目を閉じれば永遠に眠ることができそうで―――
深い闇を見た。
それは安寧への入口。強要されることなく、許容され、何も持たずにただひたすら堕ちていく。
延々と続く底の見えない安寧の陥穽。
ただぽっかりと底の見えない大きな口を開けて堕ちてくるものを待ち望み、その開いた口からこの世の悪を吐き出す。
そんな化け物を見た。
そんなものがこの先に待ち受けるものだと知ってあきらめるのが急に怖くなった。
ぽつぽつと頬を何やらが打った。
閉じかけていた瞼に力を入れれば黒い空から大粒の雨が降り出してきたのが見える。
雨は、無遠慮に盛り続ける炎の勢いを目に見えてとはいえずとも、着実に殺していく。
それでもやはり俺のところへと炎の魔の手が向かってくるのは避けられないものであった。
幼い心ながらに迫る死を受け入れ、空を仰ぎ見る。
――諦めるな――
そう聞こえた気がした。
しかし、やはり耳を傍立てても、聞こえてくるのは雨の音といまだ燃え続ける炎が焦がす音のみ。
空耳だったのか。諦めるなと言われても既に心が折れている。
既に体が負けている。
このどうしようもない状況を覆すには奇跡に頼るしかなかった。
奇跡というものはこの世界に好かれているものにしか起こらない気まぐれだと思う。
ましてや嫌われている者に対してなんて論外だ。片方が嫌いであればもう片方もそれに便乗して嫌いあうのが常識だと思っていた。
それなのに、どうやら俺は嫌われてはいなかったらしい。
不意に頬を打つ雨が止んだ。
だがそれは誤解で、下半身部分を打つ雨はいまだ止むことを知らず降りつづけている。
――何かが雨を遮っている?
霞む視界で暗い何かが声を発した。
「大丈夫かい」
何もかもを救ってしまいそうな優しさを含んだ声がした。
そう言って男は俺の安否を確かめた。
既に多量の煙を吸い込んでしまって、のどを痛めていた俺は首の動きで生きているというサインを送った。
「僕が今助けるからね」
頬を水滴が打った。
それは雨なんかじゃなかった。
「生きててくれてありがとう......」
その全身を黒で包んだ男は今まさに死に体であった俺に感謝をした。
その感謝が一体どんなものを内包しているのかはわからなかったけど、救われたことだけは理解できた。
あと、間違いなく奇跡が起きたということも。
そこで俺の意識はいったん途切れた。
再び目を開けたとき目に入ったのは清潔感を漂わせる白い天井。知らない天井だった。
「ここはどこだ......?」
状況を整理する。
俺は確か......
火事が起きて、みんな死んで、――俺だけが助かったのか。
本来大勢がけがをした場合は同じ病室をあてがわれるはずだ。
しかし、俺の病室は個室。俺の体にはこれといった大けがはなく、こんな個室に入れられるほど大事に至ってはない。
ならば考えられる理由は一つ。
俺しか生きていたものがいない。
俺以外皆死んだということだ。
家族がいない。
大切なものを失った。
襲ってくるのは耐えがたい喪失感。
どうして
どうして
どうして
どうして
いくら問い続けても答えはない。
愚か答える者すらいない。
当然もう俺しかいないのだから。
俺の疑問に常に一緒に考え、答えてくれた家族がいないのだから。
その不変の事実が俺の弱く脆い心を貫いた。
目頭が熱くなる。
目から涙が止まらない。
拭っても拭っても拭っても、涙は止まることを知らず流れ続ける。
この涙はまるであの日の空のようにとめどなく流れた。
胸に飛来するこの痛み、虚無。
そうか。俺は失ったことが悲しくて泣いてるんだな――
この言いようのない胸の痛みを忘れないために、声をだして泣いた。
泣き続け泣き続け、泣き続けた。
いくら泣いても心の痛みは消えない。
心の穴はふさがらない。
いまだ流れ続ける涙を俺は拭うことをやめた。
読んで頂きありがとうございました!