運命の渦   作:瓢鹿

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はい!4話です!毎回題名について悩んでいます。
この話自体のも、そうなんですけど、そういう所が苦手なんですよね……誰か僕にそんなセンスをください……

とりあえずどうぞ!


動き出した時間

隣の衛宮士郎と、登校する生徒達によって騒々しくなり始めた朝の通学路を歩く。

「この時間に登校するなんて何だか不思議な感じだな……」

隣で歩く衛宮が何やらしみじみ、と言った様子で呟いた。

「そう言えば、衛宮は毎朝早いもんな。噂になってるぞ、生徒会長とデキてるんじゃないかって」

教室でチラと聞こえたことがある。名前は知らんが、クラスの女子がキャーキャー言ってた。あと、ついでに腐海の女王も。

それを聞いた衛宮が、心底嫌そうな顔をしてげんなりと、

「その噂やっぱりあるんだな……」

「知ってたのかよ……」

「ああ……お前のクラスの海老名って女子がよく俺の所に来て、何だかよく分からんことを言って来るんだよ……」

何やらかしてんだあの女王。芯まで腐りきってんのな……

「何かすまん」

「いや、いいんだ……」

ホントうちのバカがすいません……

このどうしようもない空気を変えようと、衛宮が、

「そういえば、今朝のニュースって比企谷は見たか?」

「ああ、ガス漏れ事件か」

恐らくサーヴァントによる犯行だと、考えたあの事件。

そしてこれからも今回のような事件は度々起こるのだろう。

そんな、聖杯戦争の、ひいては魔術社会の「秘匿」という大切な掟を早速破るなんて、場違いな輩もいたもんだ。

考えてもみろよ。住宅街のド真ん中で中世の騎士みたいな格好をした成人が、人外の速度で剣とか使って戦うとかあまりにもシュールだろ。通行人とかいたら間違いなく俺は知らない人のフリをする。

どこの漫画の世界だって突っ込みたくもなる。

それを隠蔽してくれる聖堂教会には感謝を捧げたい。

ホントもう協会の人とかマジ社畜の鏡だからな。理不尽なほどのマスター同士の戦闘の爪痕を理不尽な上層部からの命令で必死に隠蔽して。

因みに、前回の話では未遠川でキャスターが怪魔化、切嗣がホテルを破壊、それに加えてあの大火災。

それらの全てをよくもまあ隠し切れたものだ。やり遂げた教会の方々に万雷の拍手で讃えたいくらい。

……話が逸れたな。

まあ、令呪の宿った、聖杯戦争に参加するマスターとしては無視出来ないところだが、対抗するサーヴァントがそもそもいないので、僕は悪くないな、と。あ、因みに令呪は包帯で隠してます。秘匿大事。バレるのダメ。絶対。

そこら辺は正義感の強いマスターがサーヴァント諸共頑張って自滅してくれるだろう。俺はそう祈ってる。

「比企谷?」

「すまん。ぼーっとしてた」

「朝だぞ?もう少しシャキッとしろよ、それと、そのせいか部活は暫く禁止だってさ」

爽やかに笑いかける衛宮。おい後半。マジか。かなりラッキーだ。今日は元々暫く休むと連絡するつもりだったから、これで雪ノ下に妙な悪口を言われなくて済む……あの人休む連絡をする度に、正確に人の傷口に塩を塗るような事ばかり言うからホント嫌い。女王、怖い。

それにシャキッとしろと言われてもなぁ……衛宮の家のように毎朝大勢と食事したり、その準備に追われたりとかしないからなぁ……

「寝覚めが悪かったんだよ……」

あながち嘘ではない。なんせ朝から昔の夢を見たんだから、気分が悪くならないことは無い。

「やる気が出ない……」

学校なくなれー、という念を込めてそう呟くと、衛宮は苦笑いを浮かべ、「たはは」と、可哀想なやつを見るような目で俺を見ていた。

歩いて数分もすると、俺たちの通う学校である総武高校がすぐ側までくる。

外観も、内装も、広さもこれといって普通で、強いて言えば、偏差値が高いのが自慢、というありふれた進学校だ。

偏差値が高くてもオツムの中は高校生で、朝から「っべー」とか、「それな」、ほかは……「やっはろー!」なんて、如何にも高校生らしい薄っぺらな会話が聞こえてくる。なんなら薄すぎて風に飛ばされるまである。いや、最後の挨拶は知ってる声だな。

肩を軽く小突かれて、そちらへ顔を向けると、俺の所属する奉仕部の同じ部員である由比ヶ浜結衣が立っていた。

「うす。なんか用か」

「何で、一回目で振り向かないし」

「人違いかと思ったからな」

ほら、良くあるじゃん。後ろから声掛けられて振り向いたら誰こいつ、とか。俺はそんな経験あるか覚えてないけど。まあ、大体振り向くと知らん奴。そもそも知らん奴の方が多いから。

単純に振り向くのが面倒だったという話です。

「まあ、それならいいかな……」

「今のは嘘だぞ。完璧に比企谷反応してたからな」

俺の完璧な言い訳が、間髪入れず放った衛宮の一言で水の泡となった。

「分かってたのに反応しないとか、ヒッキーマジキモイ!」

「反応しないのがキモイとか俺もう生きる価値ほぼないに等しいだろ……」

やだこの子超口悪い。全く、どこの下さんに影響されたのかしらん。後で文句言ってやる。

「あ、衛宮くん!やっはろー!」

「おう、由比ヶ浜。おはよう」

俺の言葉はスルーですかそうですか。

もう後は若い2人に任せますかね……

意を決して、ステルスヒッキーを使用!

影を薄くして、見合いの時の親ばりにすすす……と退散しようと、校門をくぐるその時、一つの違和感が俺の体を駆け抜けた。

心臓を、いや、身体がまるで甘ったるい重さに取り憑かれた様な。

――あまりにも空気が違いすぎる。

校門を境にした世界の隔たりができたのか……?

周囲をチラと、窺ってもこの状況に気付いた者はいない。

この学校に魔術師は片手の指ほどしかいない。家系の者はいてももう廃れてしまった所ばかりだ。そしてこの時期。

この場合、考えられるのは一つだ。

それは―――――

「何で先行くし!」

魔術結界だろう。精気を奪うタイプの。またしても聖杯戦争関連か。サーヴァント精気好きスギィ!

そう結論付けた所でまたしても肩を小突かれた。

訝しむ目つきで振り向くとフグのように頬を膨らませた由比ヶ浜。

「そもそも、一緒に行こうなんて言ってない」

やることが出来てしまったというのに。

不満を込めた目で見ると、膨らんだ頬も威勢と共に縮まった。なにそれ面白い。

「そういう訳じゃないけど……」

何か悪い事をしたような気分にさせられて、由比ヶ浜から目をそらす。

「怒ってねえよ。心配するぐらいならやるな。あと、俺はやることが出来たから先に行く」

何やら、凄く由比ヶ浜は怯えた様子を見せている。何、俺の不満げな目がそんなに怖かったの?

「衛宮、由比ヶ浜と一緒に行ってやってくれ」

「あ、ああ、って比企谷?」

衛宮の返事も聞かずに、一言残して、最も魔力の濃さを感じた場所へと全速力で駆け出した。

時計を見れば時間には多少の余裕、HRには間に合うはずだ……

誰もいなければ。

 

昇降口を抜け、階段を駆け抜けて、壊れた南京錠のかかった扉を開ける。

息切れすら怒らないのは日頃の鍛錬の賜物だろうか。こういう些細な事で恩恵を感じることが多々あるように思える。まあ、その為に鍛えてる訳では無いんだけど。

扉を開くと、そこには一人の女子生徒が立っていた。

俺はその後ろ姿を知っている。勿論向こうは、俺のことを知らない。一方通行の認知という訳である。

名前は、遠坂凛。

容姿端麗、成績優秀、品行方正な優等生。この学校では確か、雪ノ下と同等か、それ以上の秀才らしい。

それに加えて、彼女は魔術師。そして、それもこの冬木の地にて管理者の権限を持つ程である。実力については余り知らないけれど。用心するに越したことは無い程だとは思う。

それにしても、まさか土地の管理者がこんな狡い手を使うとは、余程サーヴァントに恵まれなかったのだろうか。もしくは世も末という事だろうか。

まあ、理由を問うよりも先に止めさせるのが先決だ。

 

深く目を閉じて、意識を集中させる。

―――全身の神経を反転させ、魔術回路を発現、魔力を血液と同様に全身の回路に満遍なく回るように巡らせる。

現れるのは、この世ならざる神秘の体現器官。血を重ね、織り成して生まれた叡智の結晶。

背中に刻まれた幾何学模様の魔術刻印までもがその出番を待ち焦がれる様に、熱く、熱く、滾るように、疼き出す。

―回る、回る、回る、回る。

音を上げて、唸りながら、さながら自動車のエンジンが回転数をより一層上げる様に、まわりはじめる。

まるで焼け付く様な熱さが身を廻り、やがて消える。

器官は今や常世に顕現し、神秘の再現をまだかまだかと待ち続ける。

反転して、現れた幾重もの回路は今やこの世の理と完全に同調し、神秘を示すことは思いのままと言っても過言ではない。

物体に干渉、人間に干渉、自然に干渉、時間に干渉、其れは確かな世界への干渉。

神秘を世界に示す為、理から外れた現象を生み出すために、この現れた回路から、魔力という人の理より外れた力を持って干渉する。

さあ、迎撃準備は万全だ。如何な敵をも砕いて見せよう。俺の力の全てをもってして。

……サーヴァントがいなければの話だが。

制服の内ポケットに忍ばせた冷たい金属の感触を確かめながら、問いかける。

 

「おい、そこで何してんだ」

声を掛けると、女子生徒がこちらを向く。振り向くと同時にはためく黒髪がとても美しく、流麗に見えたのは些か場違いだった感想かもしれない。

間違いなく、そこに居たのは―――――

 

「こっちがそれを聞きたいんだけどいいかしら?比企谷君?」

普段のそれとは違う、魔術師の瞳をした遠坂凛が立っていた。

彼女の手の甲にも緑の燐光を灯らせた幾何学模様が浮かび上がっていた。

そこは間違いなく戦場。

場所は学校であっても、漂う空気は戦場のそれだった。

それも当然だ。

何故なら、もう戦争は始まってしまっているのだから。

 

 




今、この話を書くためにfateを読み直したりしていますが、やっぱりzeroが一番好きですね!特に起源弾の設定とか燃えますよね!
お読み頂きありがとうございました!
次回をお楽しみに!

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