問題児たちとロクデナシの魔王が異世界から来るそうですよ?   作:慢性睡眠不足

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というわけで連続での投稿です。

前回に負けず劣らず今回もひどい内容ですが……。


魔王の提案とウサギの苦労

「それが、狙いか。この魔王様は……」

 

 京一郎の言葉に真っ先に反応したのは今まで黙っていた十六夜だ。その方向へと視線を向けた自称・魔王は、躊躇いもなくそれを肯定する。

 

「まあ、そうだな。昨日は不完全燃焼で、今日のは簡単すぎた。せっかく遊戯の世界に来たというのに、これではつまらん。仕方ないので少々骨を折ることにしたのだ」

 

 そこで一度、言葉を切った京一郎は、意味ありげに十六夜へと笑いかける。

 

「それは十六夜も同じであろう?」

 

 返答こそしなかったものの、十六夜は舌打ちと共に苦い表情を見せた。図星を突いて満足そうに笑う京一郎は、今度はルイオスへと向きなおる。

 

「ああ、ゲームはそちらで用意してもらってかまわんぞ。こっちからは件の吸血鬼を出してやろう。なんなら、わたしも従属してやってもよい。あと、そこの騎士の石像もついでだ。提案を受けるならば、すぐに全部返してやる」

 

「……へえ。いいのかな? 随分こっちが有利に見えるけど」

 

「ならば、そこの白夜叉にも一枚噛んでもらおうか。まさか今更知らぬ振りをすることもあるまい。……ああ、他に協力を頼んでも良いぞ? 正直、それぐらいでなければお主など相手にもならん」

 

 自分に有利な条件を提示され、訝しむルイオスに京一郎はあっさりとその意図を明かした。完全に下に見られた屈辱によって顔を歪ませる英雄を押しやり、慌てた黒ウサギが口を挟む。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!? いくら何でも、それでは……」

 

「それとついでに”ノーネーム”の連中も参加させようか。参加条件としては、そこの愛玩動物でも賭けさせれば問題はなかろう?」

 

「大有りです!! というか黒ウサギを勝手に賭けないでください!!」

 

「えっ、マジで? なら受ける、受ける! 今更断っても、もう逃がさないよ」

 

 勝手に進む話を最初は不満そうに聞いていたルイオスだが、京一郎の持ち出したその条件にはあっさりと食いついた。

 

 反対に青くなったのは”ノーネーム”、それも黒ウサギだ。しかし彼女たちに口を挟ませる隙もなく、京一郎の言葉は続いていく。

 

「うむ。こちらが勝ったら”ペルセウス”の旗印と名前の両方に、あとは今後の全面的な協力でも約束してもらおうか。どうせなら一切合財全部をよこせと言いたいが、流石にそれだとそこの階層支配者も黙ってはおらぬだろうしな……」

 

「当たり前だ、戯け者が。……いや、すでにこの提案の時点でどうかしておるのか……」

 

「はは、褒め言葉として受け取っておこう」

 

 黒ウサギの抗議を意にも介さず、京一郎は話を強引に進めていく。確認を求められた白夜叉が呆れた声を返すが、もはや誰の目にも話を止めることは不可能だった。

 

「勝った者が総取りというわけだ。分かりやすいであろう?」

 

「は、話を聞いてくださいー!!」

 

 黒ウサギの絶叫をよそに、”ペルセウス”とのゲームの開催は決まった。

 

 

 

 

 問題のゲームは、京一郎の言葉通り”ペルセウス”側が用意することになった。”ノーネーム”にその力はなく、かといってあくまでも部外者の白夜叉が主導することについては、ルイオス側が強硬に反対した。

 

 元々”ノーネーム”に肩入れしている上、同じコミュニティとはいえ双女神の顔に泥を塗ったばかりの”ペルセウス”としては、白夜叉にゲームの主催を許すわけにはいかなかったのだ。

 なんとかゲームの主催権を勝ち取った”ペルセウス”だが、かわりに開催するゲームは、白夜叉の監督と認可を受けるという条件がつけられる。

 

 最初は渋ったルイオスだが、広く告知まで済ませていたゲームを一方的に取りやめたことから、そもそもの主催者としての資質を疑われたため、最終的には諦めて受け入れざるを得なかったようだ。

 

 流石にこれ以上、双女神の機嫌を損ねる危険を冒す気はなかったらしい。

   

 しかしそれでもまだまだ”ペルセウス”に有利な条件である。そのせいかルイオスの機嫌はすぐに直り、別れ際には黒ウサギに対して意味ありげに笑って見せる余裕すら取り戻していた。

 

 彼の頭の中では、すでにこの愛玩動物は首輪をはめられ、飼育所のベットに置かれている未来でも描かれているのだろう。

 

 まるで所有物を預けるような視線で見送るルイオスの姿がなくなった頃になって、ようやく黒ウサギは重く平坦な口調で京一郎へと話しかける。

 

「……さて、京一郎様。何か申し開きすることは?」

 

「はは、そうだのう。……これでお主達もコソコソせず、堂々と胸をはって仲間を取り戻せるというもの。うむ、礼には及ばんぞ」

 

「違うでしょうが、このお馬鹿様!! どーするんですか!? 負けたら再興どころか、ノーネーム一巻の終りですよ!!」

 

 帰ってきた答えに、黒ウサギは今の今まで溜め込んだ怒りを爆発させた。その矛先は当然、さんざん引っ掻き回してくれた京一郎へと向いている。

 

「何、勝てばよいのだ。勝てば。簡単な話ではないか」

 

 しかしその対象から返ってきた答えは非常に簡潔だった。

 

「……いや、確かにそうでしょうけど」

 

 絶句した黒ウサギに代わり、会話を引き継いだのは飛鳥である。慰めるように苦労性の少女の肩を叩きつつ、きつい視線で京一郎への責めを代行する。

 

「そもそもあの騎士達を現行犯で捕らえたのだから、別に黒ウサギを持ち出してまでゲームをする必要はなかったんじゃない?」

 

「ははは、その他大勢の名無しの言葉など誰が信じるのだ? 白夜叉も下手な介入のせいで頼りにはできんぞ。切り捨てられればそれまでよ。……それに向こうも次は下手を打たぬはず。適当にのらくらしつつ、隙を見て”ノーネーム”ごと潰せれば、吸血鬼だけではなく、そこの苦労ウサギも手に入るしな」

 

「く、苦労ウサギって。誰のせいだと……」

 

「少なくとも私ではないはずよ。あと建前は分かったけど、本音はやっぱり……」

 

「そろそろ歯ごたえのある遊戯がやりたくなった」

 

 全く取り繕う気のない京一郎の言葉に飛鳥と黒ウサギはそろってため息をついた。それを見た京一郎は快活に笑い飛ばす。

 

「どうせ黒ウサギも何だかんだと因縁をつけてゲームに持ち込もうとしたのだろう。手間が省けたと思っておけばよいのだ」

 

「……貞操まで賭ける気はなかったのですが」

 

「何、虎子を得るならば虎穴に入れ、というやつよ。……まあ、どうしてもというなら参加を止めれば良い。最もそうなればあの吸血鬼とは二度と、再会は叶わぬだろうが……」

 

 黒ウサギが賭け金にされたのは、それが”ノーネーム”の参加条件だからだ。逆にレティシアさえ諦めれば、不利な勝負に出る必要はなく、黒ウサギもまた貞操の危機に怯えずにすむ。

 

 しかしそれはかつての仲間を諦めるということに他ならない。例え京一郎がゲームに勝利しても、レティシアについては頓着せず、”ペルセウス”側へ引き渡すと宣言している。無論、適正な価格とやらと引き換えにだ。

 

「機会はやった。取り戻したくば自分達でどうにかするのだな」

 

 それが京一郎の言葉だった。突き放された女子達に代わり、今度は十六夜が会話を引き継ぐ。

 

「おいおい。昼間は堂々とサボった癖に随分言うじゃねえか」

 

「はは。そういう十六夜こそ、昨日の言葉を精々嘘にしないよう頑張るがよい。年下の少年に無理をさせたくせに、自分は出来ませんでしたなどと、あのガルドとかいった虎皮にも劣るぞ」

 

「やはは。随分言ってくれるじゃねえか。……それならあの坊ちゃんを仕留めるのは競争だぜ。遅れても文句は言うなよ?」

 

「ほほう? では、お手並み拝見といこうか。無論、着いてこれればだが……」

 

 少女二人とは違って勝負に不安を抱いていないせいか、十六夜は京一郎と不穏な会話を始めた。数日後には共闘するとはとても思えないその雰囲気に、慌てた黒ウサギが介入する。

 

「ちょっと待ってください!? 何でいきなり仲間割れを始めるのですか!」

 

 対する十六夜の答えは非常にシンプルだった。

 

「しょうがねえだろ。どんなゲームにしろ、結局はあのルイオスって奴が相手なんだから」

 

「わざわざ白夜叉の協力を得られるよう提案したのに、それを蹴り飛ばしたしな。……全く小物なら小物らしく、素直に強者にすがり付けばよいものを」

 

 京一郎もまたあっさりと心の内を明かした。黒ウサギとしては絶対避けたい事態だが、この青年にとってはそれが最善だったらしい。

 

 つくづく狂っている。そんな思いを抱えつつも、非力な身では彼らに頼るしかない。そんな余裕綽々な二人に対し、黒ウサギはせめてもの忠告を送る。

 

「待ってください、お二人とも。”ペルセウス”を甘く見てはいけませんよ」

 

「へぇ? ああ見えて実はあの坊ちゃん、結構強いのか?」

 

 真顔で告げられた言葉に、十六夜が興味深げに反応する。もしやあの白夜叉と同じように、あの小物然とした顔の下にとてつもない実力を隠しているのか。それを期待したのだ。

 

 しかし次の言葉で、黒ウサギはあっさりとその期待を否定した。

 

「いえ、ルイオス様ご自身はたいして強くありません。ですが彼の持つギフトが問題です。……”ペルセウス”は魔王を隷属させているのです」

 

「魔王って……」

 

「へえ、魔王か。それはまた楽しませてくれそうじゃねえか」

 

「はは。それならばそうと早く言え、黒ウサギよ。そうすればその魔王とやらも手に入れられたのだがな。やれやれ、なんとも惜しいことだ……」

 

 自分の懸念を伝える黒ウサギだが、期待通りの反応を見せてくれたのは飛鳥だけだった。他の二人に至っては、逆に食いついてくる始末である。

 

「いえ、多分こうなるとは思ってましたけどね。……ええ、本当に。こういう予想だけは、裏切りませんよね、お二人共」

 

 戦意高揚が出来ただけマシと、彼女は諦めてため息をつく。最も、間もなく直面する問題だけは絶対に避けられないだろうが。

 

 ――はたして本拠に残っている仲間達へ、この事態をどう説明したものか。

 

 問題児達も頼りに成らないこの難問に大いに悩む黒ウサギ。遠くに見えてきたノーネームの門へと進む彼女の足取りもまた、自然と重くなっていた。

 

 

 

 黒ウサギの報告を聞いて、当初は絶句した少年リーダー、ジン=ラッセルだったが、すぐにゲームの参加を決断した。

 

 問題のゲームの開催は四日後であり、その頃には耀の怪我も癒えている。また仲間の奪還のために十六夜へゲームの参加を要請したのは彼であり、なにより気まぐれな京一郎を戦力として期待できるということが後押しになった。

 

 相手にも時間を与えることは気になるが、それでも現状の”ノーネーム”が望める最大戦力でゲームに挑めるのだ。

 

 気まぐれな鬼札には頼れないと昼間思い知らされたばかりのリーダーとしては、この機会を逃したくなかったのだろう。

 

「……そんな訳で、今回だけは見逃します。ですが次からは相応の対応を取らせてもらいます。いいですね、京一郎さん?」

 

「ふむ? まあ、一応気に留めて置こう。最もその内に忘れるかもしれんが……」

 

 しかしだからといって、好き勝手にやられるのを許すわけにはいかない。そのため京一郎には黒ウサギと共にしっかりと釘を刺し、ついでに今後しばらくは子供達による監視をつけることを承諾させた。

 

 そのせいか、黒ウサギたちがゲームの準備に追われる中にあっても、京一郎は監視役の子供を連れて、外へ中へと好き勝手に過ごしていた。

 

「一昨日は、あのお兄ちゃん、ずっと通りでぶらぶらしていたよ。あと何度かお菓子を買ってくれた。おいしかった」

 

「昨日は外に出たの。それで途中で一角獣さんを見つけて、あちこり乗り回していたの。私も乗せてもらったけど、楽しかったの」

 

「今日は廃墟のところで、ずっと寝てたみたいです。果報は寝て待てとか言ってたけど、あれってどういう意味なんだろう?」

 

「私達が忙しく準備に追われている間にも、元凶である京一郎様は随分とのんきな日常を過ごされていたようですねえ。ええ、本当に……」

 

 ”ペルセウス”とのゲームを明日に控えた夜。ここ数日見かけなかった京一郎の行動を監視役の子供達から聞きだした黒ウサギは、とてもとても素敵な笑顔を浮かべた。

 

 この三日間というもの、彼女達は非常に多忙だった。”ノーネーム”の屋敷の中を引っ掻き回しては少しでもゲームに使えそうなものを探し、また白夜叉からリークされた断片的な情報を元に問題となるゲームを推察し、様々な状況を想定してはその対策を練る。

 

 そんなふうに彼女達が奮闘している一方で、今回の元凶がのん気な日々を過ごしていたと聞かされれば、怒りの一つや二つ、覚えてもおかしくはないだろう。

 

「……気持ちは分かるけど、落ち着いて黒ウサギ。すごい顔になってる」

 

 怯える子供達を見かねたのか、耀が黒ウサギをなだめにかかる。

 

 ここ数日は怪我の回復に専念していたため、彼女もまたゲームの準備にはあまり係わっていない。

 とはいえ京一郎とは違ってその負い目をちゃんと感じていた耀は、せめてもの埋め合わせとばかりに、やや不安定な黒ウサギに付き合っていた。

 

「――大丈夫。私がいる。それに飛鳥もみんなもいるから。安心して」

 

 不器用な口調ながらも、耀は黒ウサギを励した。レティシアや”ペルセウス”の一件で苦労性の少女が思いつめすぎないように心配しているのだ。

 

 飛鳥やジン、十六夜といって他の仲間達も、忙しい中よく黒ウサギのフォローを行っている。

 

 今まで”ノーネーム”を支えてきたのも、問題児達をここ箱庭に招待したのも、全ては黒ウサギの力なのだ。彼女がいなくなれば、このコミュニティが持たないことは、全員が知っていた。

 

 ――そして例え自分の身を危うくしても、かつての仲間を取り戻したい。そう彼女が願っていることも。

 

「うう、耀様。ありがとうございます」

 

「まかせて。黒ウサギの仲間は、絶対取り戻して見せる」

 

 かくしていくつかの不安抱えつつも、仲間との絆を支えにして、”ノーネーム”は”ペルセウス”とのゲームの日を迎えた。

 

 

 




とりあえずここまで。

京一郎のやらかしのせいで、次から一気にペルセウスとのゲームに入ります。ペットする賭け金も大幅に増量。報酬もたんまりですが、それ以上にリスクが上昇。

問題のゲームは原作と基本同じものを用意するつもりですが、準備期間がある分、原作よりも難度は上がる予定です。

まあ、魔王を味方にしているのだから、これぐらいの障害はあって当然だよね。完全に味方と言い切れないところにが、非常に厄介ですが。



次回の投稿は一応来週の予定です。また少し遅れるかもしれませんが……
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