問題児たちとロクデナシの魔王が異世界から来るそうですよ?   作:慢性睡眠不足

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およそ一ヶ月ぶりの更新になります。

なかなか執筆が進まず、当初の予定より更新のペースが落ちてますが、なんとか続けていくつもりです。

では、波乱のペルセウス戦の開幕となります。


魔王の蹂躙と英雄の降臨

「 ギフトゲーム名 ”FAIRYTALE in PERSEUS ”

 

 ・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜 久遠 飛鳥 春日部 耀 空鳴 京一郎

 

 ・”ノーネーム”ゲームマスター ジン=ラッセル

 

 ・”ペルセウス”ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

 

 

 

 ・クリア条件 ホスト側 ゲームマスターの打倒

 

 ・敗北条件 プレイヤー側のゲームマスターによる降伏

       プレイヤー側のゲームマスターの失格

       プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

 

 

 ・舞台詳細、ルール

  *ホスト側ゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない

  *ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない

  *プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿()()()()()()()()()()()

  *姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦権を失う

  *失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行することはできる

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、”ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

 

 

”ペルセウス”印

 

 

 

 

 

 用意された”契約書類”に承諾した直後、京一郎達はある宮殿の門前へと転移していた。”ペルセウス”本拠でもあるこの白亜の宮殿は、すでに箱庭から切り離され、未知の空域に浮かぶゲーム盤と化している。

 

「姿を見られれば失格、か。つまりペルセウスを暗殺しろってことか?」

 

 書類の文面を確認した十六夜が、ゲームの内容を端的にまとめる。

 

 今回のギフトゲームはギリシャ神話に出てくるペルセウスの伝説の一部を模したものらしい。とはいえ”ペルセウス”側も準備万端でプレイヤー達を待ち構えているはずである。

 また京一郎が奪っていた不可視のギフトも、騎士達と共にすでに”ペルセウス”側へと返却されているため、この場には存在しない。

 当然だが、伝説通りとはいかないだろう。

 

「……こちらのゲームマスターはジン君だけね」

 

「……ふむ? どうやらそのようだな。とりあえず形だけでもコミュニティを立ち上げておくべきだったか?」

 

 同じくルールを確認した飛鳥が、そう呟きながら京一郎をちらりと見やる。対する京一郎も、文面を確認しつつ軽い後悔を口にした。

 

 まだ京一郎は自分のコミュニティを立ち上げていないため、どうやらゲームマスターとは見なされなかったらしい。

 ゲームマスターが失格した時点でプレイヤー側は敗北する。そのため唯一のゲームマスターであるジンを、ルイオスの待つ最奥へと無事に送り届ける必要があった。

 

 それを知った参加者達は、攻略のために三つの役割へと分かれた。

 

 ジンに同行して最奥に潜むルイオスを打倒する役目には十六夜が、索敵と二人の護衛には感覚に優れる耀が当てられた。

 残る飛鳥と京一郎は、周囲の目を引き付ける囮と露払いの役に決定する。

 

 先日の一件で、ルイオスにギフトが通用しなかった飛鳥はともかく、このゲームの仕掛け人とも言える京一郎が失格覚悟の囮役を引き受けてくれるののだろうか。

 その点をひそかに心配した黒ウサギだったが、当の本人はあっさりとその役を承諾する。

 

「要は見つからずとも、派手に騒ぎを起こせばよいのだろう? ならばやりようはある」

 

 その際に聞いた言葉の意味を黒ウサギが知ったのは、ゲーム開始後間もなくのことだった。

 

 

 

 

 

 舞台である白亜の宮殿は五階層から成り立っていた。ルイオスの待つ最奥はその最上階にあたり、そこにたどり着くためには、階段を使わねばならない。

 逆に防衛側はそこを押さえておけば侵入を防ぐことが可能だ。そのためゲーム開始を知った”ペルセウス”の騎士達は、速やかにその要所の封鎖にかかった。

 

 さらに準備期間を利用して、すでに宮殿内はゲーム専用へと造り変えられており、各所には侵入者を迎えるための罠や仕掛けも大量に設置されている。

 

 自身の手を煩わせることを嫌ったルイオスが積極的に迎撃設備の増設を推進したこともあって、今やこの宮殿は侵入者を阻む鉄壁の要塞と化していた。

 

 最奥の玉座に座るルイオスもまた、その全身に秘蔵の武具やギフトを装備している。その中には翼が生えたブーツや”蛇殺し”のギフトが付加された大鎌ハルペーといった英雄ゆかりの武具の他、別の神話に登場する太陽神の力を秘めた光弓などといったものも含まれている。、

 源流である神話に限らず、とにかく強力なギフトによって全身を固めたルイオスは、いまや過剰ともいえるほどの防護を得ていた。

 

 ――最もこれらの出番が来るなどとは、欠片も思っていなかったが。

 

 白夜叉からは甘く見るな、と一応の忠告は受けていたものの、所詮相手はノーネームである。地の利は”ペルセウス”側にあり、ましてや勝利条件は敵を見つけるだけとくれば、負ける事を考えるほうが難しい。

 

 むしろこれだけの条件を揃えられているにもかかわらず、すぐに決着をつけられない部下達の不甲斐なさに、彼は憤っていたほどだ。

 

 この若き英雄は、自身の勝利を全く疑っていなかったのである。

 

 だがルイオスは知らなかった。彼が敵に回したのは、世界屈指の最凶問題児軍団とロクデナシの魔王であることを。

 

 

 

 ルイオスの予想とは裏腹に、”ペルセウス”の騎士達は苦戦していた。門の破壊と共になだれ込んできた異形の軍勢に対し、当初は互角以上の戦いを繰り広げていた英雄の騎士達だが、現在は思わぬ事態によって大混乱に陥っている。

 

「おい、やめろ!! 一体どうした!?」

 

 激戦区の一つである正面の階段前広間、その防衛に当たっていた騎士の1人が突然叫びを上げた。その視線の先には、つい先程まで共に肩を並べて戦っていたはずの僚友の姿がある。

 

 しかし生命力に長けた鬼を相手に奮戦していたはずの彼は、今やその剣先を隣の仲間へと向けている。その兜の下の顔は、今自分達を攻め立てているもの達と同じ、異形のそれへと変化していた。

 

「や、やめ……!?」

 

 信じられないとおののく騎士を躊躇なく叩きのめした後、その鬼は今度は敵として侵攻側へと加わった。

 

「……随分とえげつない事を考えるわね」

 

 その様子を遠目に見ていた飛鳥が、顔をしかめて小さく呟いた。広間の中央に持ち込んだ水樹を操って鬼の攻勢を支援しながらも、彼女の視線はほつんと床に突き立てられた神剣へと向けられている。

 

 その誰も居ないはずの場所から、返事があった。

 

「はは。奪ったギフトを含めての人質の全面返還だぞ? それもゲーム開始前とくれば、裏がないほうがおかしいだろう?」

 

 その笑い混じりの声は間違いなく京一郎のものだ。それを聞いた飛鳥の姿もまた、防衛に当たっている”ペルセウス”の騎士達からは見えていない。

 

 京一郎も飛鳥も、不可視のギフトでその姿を隠していたためである。故にまだ二人とも発見を免れており、当然ながら挑戦権も失っていない。

 いや二人だけではない。未だに誰一人として、プレイヤー側から失格者は出ていなかった。

 

 ゲーム開始からまもなくした頃、京一郎が何処からか手に入れてきた人数分の不可視のギフト。さらには罠の位置まで記した宮殿内の詳細な見取り図までもが付いていたことに、ノーネームの面々は訝しがったが、その理由がこれだった。

 

「……獅子身中の虫を使っての、同士討ち。あまり好みではないわね」

 

 その答えをやや複雑な顔で飛鳥が呟く。

 

 現在ペルセウスに反旗を翻している元騎士達の多くは、京一郎に囚われていた者達だ。異界で捕らえられた彼らは、石にされる前にその身を一度鬼へと変えられていた。

 

 すぐに元に戻した京一郎だが、その支配権は手放さずに保持していた。その後、石像としたその騎士達を白夜叉の元へと持ち込んだのである。

 

 その彼らは取引によってギフト共々”ペルセウス”へと返還された。そしてゲーム開始直後、京一郎の意思によって再び鬼へと戻った彼らは、真の主の思惑通りに、隠していた牙をかつての仲間達へ剥いたのである。

 

 それは鬼達だけではない。京一郎は奪ったギフトもまた鬼へと変えていた。同じく返還されたそれらも、今再び鬼の姿を取り戻し、元より引き継いだ能力を生かして激戦に加わっていた。

 

 仲間がいきなり鬼となって襲ってくる。使っていたギフトが突然、異形と化して徘徊を始める。

 

 それはこの場所だけで起きている事ではなかった。床に突き立てられた神剣が宮殿内の支配領域を広げるに従ってその変化は広がり、今や同様の事象は宮殿内の彼方此方で発生している。

 その混乱を利用して、今頃は姿を隠したジン達が最奥を目指しているはずだ。

 

 今もまた騎士の1人が鬼へと変わり、仲間へと切りかかっていく。その様を見て、飛鳥は密かに戦慄した。

 

(もしあの時、彼の提案に従って春日部さんを鬼にしていたら、今頃は……)

 

 彼女が思い返していたのは、ガルド戦の一幕だった。もし耀を救うために京一郎からの提案を受けていたとしたら、今頃彼女はあそこで暴れている騎士と同じような事になっていたかもしれない。

 

 眼前で繰り広げられる光景を見て、改めて飛鳥は実感する。今でこそ共闘しているものの、この魔王は決して無条件に頼れる味方ではないのだと……。

 

 一方、そんな共闘者の考えを知らない京一郎もまた、ある不満を抱えていた。

 

「……いささか期待はずれだな」

 

 倒された騎士を鬼へと変えてこちらの戦力を増強しつつ、京一郎は嘆息する。

 

 あれだけコケにした上、さらに準備期間までくれてやったのに、残念ながら”ペルセウス”はこちらを侮ったらしい。

 ギリシャ神話つながりで、神の二、三体でも呼んでくるか、あるいは白夜叉と和解して参戦を要請するか。そんな展開をも予想していた京一郎は、密かにこのゲームを楽しみにしていたのだ。

 

 しかし蓋を開けてみれば、ただ守りを固めて防衛設備を強化しただけ。ゲーム開始後、鬼へと変えた騎士よりそれを聞き出した時には、失望と落胆に思わず肩を落としていたほどである。

 

「やれやれ仕方がない。後は隷属させたとかいう魔王に期待でもするか」

 

 とりあえずは未だ抵抗を続ける騎士達を、全て叩き潰しておこう。早々に勝負を決めるべく、京一郎はさらなる戦力の追加に勤しみ始めた。

 

 

 

 広間の戦いがさらに激しさを増す頃、ジン達潜入組は無事最奥へと到達していた。

 

 宮殿内に仕掛けられた罠などは、京一郎のもらたした見取り図を利用して突破し、各所を巡回していた不可視の騎士達は、同じ不可視のギフトでやり過ごすか、感覚に優れた耀の手によって排除されていった。

 

 最も大抵の場合は、混乱する騎士達の横をただすり抜けるだけでよかった。拡大する宮殿内の騒ぎと、発生と同時に増設した防衛設備を片っ端から壊し始めた鬼達への対応に追われた彼らには、姿を隠してコソコソ進むもの達にまで気を回す余裕などなかったのだ。

 

 最後に立ちはだかった側近には多少手を焼いたものの、耀の機転によって撃破に成功している。

 

「皆さん……」

 

 1人の欠けもなくたどり着いた最上階は闘技場のように天井が開けた簡素な造りとなっていた。その場所に姿を現した三人の無事を認めた黒ウサギが安堵のため息をつく。

 

 他方、若きゲームマスターは、全く役に立たなかった防衛設備と失格者0で最上階へと至らせた不甲斐ない部下達を罵りつつ、渋々ながらも挑戦者達を迎える。

 

「――なにはともあれ、ようこそ最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。……あれ、この台詞を言うのって初めてだったかも」

 

 一応、ゲームマスターらしい態度を取るルイオス。だが彼には自らの手で挑戦者を下すつもりは全く無かった。

 彼の敗北は、”ペルセウス”の敗北であり、わざわざ名無し相手にそんなリスクを負うのは馬鹿らしい。

 故にルイオスは、躊躇なく切り札の行使を選択する。

 

「こい、”アルゴールの魔王”!!」

 

 首元から下げていたギフトを高く掲げて封印を解くと、獰猛な表情でルイオスは叫ぶ。それに応えるかのように、甲高い女の声が響き、次の瞬間には褐色の光が世界を染め上げた。

 

「ra……RA、GREEEEEEYAAAAAAaaaaaaaa!!!」

 

「星霊・アルゴール……! 白夜叉様と同じく、星霊の悪魔……!!」

 

 現れたのは、全身を拘束され、灰色の髪をばらばらに振り乱した女だった。言語化できない叫びをあげるその魔王の名を、黒ウサギは戦慄と共に口にする。

 

 空に浮かぶ雲を石と変えて降らし、閉ざされた世界すら、一瞬で灰と塗り替える一個の星の名を背負う大悪魔。

 それこそが、箱庭最強種の一角にも数えられる”星霊”にして、”ペルセウス”最大最強の切り札であった。

 

「今頃は君らのお仲間も部下も全員石になっているだろうさ。ま、無能にはいい体罰かな」

 

「そ、そんな……」

 

 不敵に笑うルイオスの言葉に、黒ウサギは未だ宮殿内で戦っているはずの飛鳥を案じる。

 

 ……なお同じく戦っているはずのもう1人については、なぜかその対象からはずれていたようだが。

 

 黒ウサギや十六夜が石化していないのは、彼の遊び心によるものだろう。本拠を舞台にしたゲームで、ようやく現れた始めての挑戦者。すぐに終わらせてはもったいない。

 

 だが数多のギフトで身を固め、世界を石化する”星霊”の力をもってしても、規格外の問題児を相手にするには不足していたらしい。

 

「ハッ、いいぜいいぜいいなオイ!! いい感じに盛り上がってきたぞ……!」

 

「GYAAAAAAaaaaaaaa!!!」

 

「ば、馬鹿な……」

 

 白夜叉相手に引き下がった分を取り戻すかのように、大いに魔王を蹂躙する十六夜の姿に、ルイオスは驚愕の叫びを上げる。

 まるで自らの慢心のツケを払わされるかのように、ルイオスは追い詰められていった。

 

 光弓より放つ矢の郡れはただの一喝によって消し飛ばされ、切り札である”星霊”アルゴールは、力によってねじ伏せられて悲鳴をあげている。

 

 高速移動を使っての背後からの奇襲も、魔物化した宮殿も力ずくで打ち破られた。ついには世界を灰に変えた石化のギフトすら打ち砕かれる様を見せ付けられ、ルイオスの戦意はガリガリと削られていく。

 

「……すごい」

 

「そんな、星霊のギフトを無効化――いや、破壊した!?」

 

「あ、あり得ません。あれだけの身体能力を持ちながら、ギフトを破壊するなんて!?」

 

 信じられないのは観戦していた黒ウサギ達も同じだった。

 

 天地を砕く恩恵を宿しながら、星霊のギフトすらも破壊する力。奇跡をその宿しながらも、奇跡を破壊するという矛盾を両立させる十六夜のギフト、《正体不明(コードアンノウン)》。

 そのありえない存在を前に、ルイオスは完全に戦意を喪失していた。

 

「さあ、続けようぜゲームマスター。”星霊”の力はこんなものじゃないだろ?」

 

「いえ。残念ですが、これ以上のものは出てこないと思いますよ」

 

 戦意旺盛な十六夜は続行を望むが、星霊を拘束付き出なければ支配できない未熟な若者には、これ以上の手は存在しない。

 黒ウサギの指摘に否定の言葉を返せないゲームマスターの姿に、その場の誰もが勝敗の決定を疑わなかった。

 

 だが星霊を従えた英雄を、ただの名無しが打ち破る事態をルイオスが予測できなかったように、その後の展開もまた予知できたものはいなかった。

 

 ――やれやれ、情け無いことだ。……仕方が無い。英雄というものがどういうものか、それを見せてやるとしよう

 

 不意に聞き覚えの無い声が、ルイオスの耳に響いた。同時にその頭上に輝く光の玉が突然現れ、

訝しげに反応するルイオスの中に吸い込まれていく。

 そして次の瞬間、まぶしいばかりの光が全員の視界を染め上げた。

 

「……何、一体?」

 

「わ、分かりません!? こんなことは初めてです!」

 

 戦闘からジンを護衛していた耀が疑問の声を上げる。だが黒ウサギでさえもその答えを持ってはない。

 

 やがて光は唐突に消えた。叩き伏せられた元魔王も、訝しげに周囲を確認する仲間達にも変わりがなかったが、唯一ほぼ敗北が確定していたはずの若者の姿だけがその場から消えていた。

 

「……まさか逃げたの?」

 

「……いえ、違います?! 上です!」

 

 思わず内の疑念をもらした耀の言葉を否定するように、叫んだのは黒ウサギだ。誰よりも早くルイオスの居場所を特定した彼女は同時に、その変化をも感じ取っていた。

 

「はは、見つかってしまったか。乙女よ」

 

 黒ウサギの言葉通り、確かに再びブーツより翼を生やして空に舞い上がったゲームマスターの姿があった。

 

 その姿かたちこそ先程まで呆然としていたはずのルイオスと同じだが、今上空で黒ウサギ達を見下ろす彼からは、俗な軽薄さは消え失せている。

 それどころか堂々たる態度で笑う今の彼は、まさに物語の英雄そのものだった。

 

「ルイオスさん? ……いえ。あなたは、一体?」

 

 黒ウサギの問いかけに、変貌した若き英雄は高らかに名乗りを上げる。

 

「乙女に問われたからには名乗らなければならないな。――我が名はペルセウス。逆縁に従い、英雄としてこの場に参上した」

 

「ぺ、ペルセウス?」

 

 英雄の名を呟く下界の面々の様子を楽しげに眺めつつ、空に座す英雄は強敵を求めて問いかける。

 

「さて。私の倒すべき相手は、何処にいるのか?」

 

 

 

 ペルセウス。ギリシャ神話では蛇妖メデューサを討ち、さらに囚われの王女アンドロメダを怪物の手から救い出した英雄である。

 

 現在”ノーネーム”の挑戦を受けている”ペルセウス”は、遥かな昔に箱庭へと招かれた騎士の末裔だ。長き時の果てにギリシャの神話郡から離れて、今はサウザント・アイズの保護下に入っているとはいえ、その伝説は子孫にも引き継がれている。

 

 しかし黒ウサギ達に対して名乗りを上げたその男は、古の伝説ではない英雄として、確かに存在していた。

 

「オイオイオイオイ。随分楽しそうな展開になってきたじゃねえか!」

 

 突然の英雄の変化に、十六夜は獰猛な顔で笑う。親の七光りと拘束付きの元魔王には失望させられたが、この思わぬ展開に、彼の期待は再び膨らみつつあった。

 

 だがペルセウスと名乗った男は、下からの挑発的な視線や困惑の声を全く気に留めていない。それどころか何かを探すように周囲を見回した後で、深くため息をついた。

 

「……ふむ、我が武勲を称えるべき乙女はいる。だがやはり倒すべき我が敵の姿は見当たらない。さて、どうしたものか?」

 

 先程まで散々に叩きのめされた十六夜を下に見たうえでの発言である。当然ながら十六夜は不快な感情を見せ、その前言を撤回させるべく強引に戦いを再開しようとする。

 

 だがそれよりも早く、ペルセウスは倒すべき敵を得るための行動を起こしていた。

 

「――いや、ちょうどよい。あれを使うとしよう」

 

 その視線を先にあったのは、十六夜に叩き伏せられたアルゴールだった。拘束された魔王を見たペルセウスは、一つ頷くと倒れ付した”星霊”へと光を放つ。

 

「Ra? ra……LA!? ……GYAAAAAA、アアアアアアアア!!」

 

 その光と受けると同時に、アルゴールもまた全身より眩い光を放出した。やがて光が収まった後に現れたその姿に、今度こそ黒ウサギ達は絶句する。

 

 光を受けた魔王の体には、先程までの戦いの痕跡が存在しなかった。いやそれどころか全身を拘束していたベルト類が全て消え、不協和音だった叫びも明瞭なものへと変化している。

 

 なにより魔王が全身から発する力は、先程までとは桁違いに増大している。動作一つにすら見るものに威を与えるその女は、しかし長き虜囚からの解放を喜ぶがごとく、世界に叫びを響かせる。

 

「グ、ラァ。……ラ、ララララアアアアアアァァァァァァァァ!!」

 

 

 かつて箱庭を蹂躙し、その果てに英雄に打ち倒された魔王。そして今もなお箱庭の三大問題児の一角を占める”星の大悪魔”アルゴールが、長き時を経て今ここに開放された。

 

 

 




という訳でさっくりとルイオス戦までが終了。次回からは彼を乗っ取ったペルセウスとの対決を予定です。

原作にはない準備期間によって万全の準備が整ったため、難度自体は跳ね上がっていたのですが、京一郎の悪辣な仕込みによって、原作よりも簡単に突破されてしまいました。
まあ、どんなに守りを固めたところで、内と外から崩されてしまえば、こうなるのは当然なのですが。

そんな風に好き勝手する京一郎を罰するべく、ついに英雄ペルセウスが降臨。

この『ペルセウス』はカンピオーネ!に登場したあの英雄と同じ、はっきり言えば単に同じ名乗りをした別の英雄です。

とはいえせっかくのクロスオーバーなのだからと、かなりのご都合主義と強引な理屈によって登場となりました。

一応、ギリシャ神話体系から外に出たとか、準備期間を利用して手に入れた武具の幾つかが彼に由来する太陽神由来のものだったとか最低限の要素だけは揃えておきました。
とはいえかなり無理のある登場なのは、ご容赦ください。

あとついでとばかりに十六夜にボコボコにされたアルゴールさんも封印が解かれて完全解放。

光の英雄+開放された箱庭三大問題児の一角という、どう考えても最初のボスとしてはおかしいレベルですが、でもこれぐらいじゃないと神殺しの参入には釣り合わないでしょう。

というわけで今回でイージーモードは終了。次回からはハードモードに突入します。

とはいえまたしばらく投稿期間が空きます。なんとか月末までに上げる予定ですが、とりあえず次回は気長にお待ちください。





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