歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜 作:YURYI*
学院祭当日。
私は朝から憂鬱な気分だ。いや、朝からというか昨日からかな?
昨日の雨のせいで制服はいまだに乾く気配を見せないし。今日1日は学院祭にもかかわらず、ジャージで過ごすことになりそうだ。
今日は多少の雨は降っているが、このくらいなら何とかライブはできるだろう。
「頭痛い…」
ズキズキと痛む頭を抱えて顔を歪める。昨日は帰ってから一睡もしていない。それが原因だろうか…?
あんなことがあって、のんきに寝られるわけがない。
だって、私は…私はもしかしたら…
それ以上考えてはいけないと警報がなっているかのように頭ががんがんと痛む。
穂乃果は大丈夫かな。あんなに濡れていたし、風邪ひいたりしていないといいんだけど。
学院祭が始まってから、私はずっと自分の部屋にこもってそんなことをずっと考えている。考えて何かが変わるわけでもないのにね。
「みんなのとこ、行かなきゃだよね…」
頭ではわかっているが、正直今はみんなに会いたくない。
昨日、穂乃果に言われたことが頭から離れないからだ。なにも考えないようにしてもなかなか頭から離れてくれない。
みんなもそう思っていたら…と考えると怖くなる。
でも、私にも仕事があるから行くしかない。
「あら、みはね」
「っ!?…え…あ、こんなところでなにやってるの?」
突然かけられた声に振り向くと、目の前には絵里ちゃんがいた。
ーーー本当は私なんかに名前呼ばれたくないのかも。
いつもどおりに名前を呼ぼうとしたが、そんなことを思ってしまって名前を口にすることができなかった。私ってどれだけ臆病なんだ…
「なにって…それはみはねもでしょ。早くみんなのところに行きましょう?」
「う、うん…」
手を差し出されたが、気がつかなかったふりをして歩きだした。
*
みんなはもう衣装に着替え終わっているようだった。あとは絵里ちゃんが着替え終わればあとは時間になるのを待つのみだ。
「私も着替えてきちゃうわね」
絵里ちゃんは衣装を手に取ると着替えに行ってしまった。
なんだか遅れてきたこともあって気まずい。いや、それだけじゃないのはわかっているが。
とにかく、みんなの顔を見ることができない。
どうしよう、どうしよう…
「なにやってるのよ。この超キュートなにこにーを見て感想とかないわけ?」
部屋の入り口で立ち尽くすことしかできない私を見かねてかにこが話しかけてきてくれた。
今はその優しさが少しだけこわい。
「と、とってもかわいい…です」
うまく会話ができない。
もう何を言ったらいいのかも分からなくなってくる。敬語になっちゃったし。
「みはね?大丈夫ですか?」
どう考えてもいつもと違う様子の私に海未ちゃんが優しく声をかけてくれる。
海未ちゃんはそっと私の方に手を置こうとしたが、それがわかった瞬間に思わず手を払いのけてしまった。
「…っ。だ、大丈夫です。先に、屋上で待って…ます!」
いたたまれなくなって、後ろを向いたままそれだけ言って部屋を出ていった。
触られるのが…怖かった。
みんなが悪いわけじゃない。そんなことは絶対にない。
私が悪いんだ。みんなは普通に接してくれているのに…優しくしてくれているのに…
その優しさが信じられなくなっている自分がどう考えても悪い。
*
雨はまだぱらついているけど、お客さんは来てくれている。亜里沙や穂乃果の妹の雪穂ちゃんもいた。
ステージをぼんやりと眺めていると、時間になったようだ。
雨が降っていることを感じさせないような笑顔。そんなμ'sのみんなを見つめる。
(あれ?穂乃果…少しふらついてる…)
一瞬穂乃果がふらついた気がしたが、普通に曲が始まったので頭の中からその考えがすぐに消える。
最初の曲の「No brand girls」が終わった。
μ'sメンバーは拍手と歓声に包まれる。
結構ダンスが激しめだし内心ハラハラしていたが、何事も起きず終わったので安心した。
しかし、ホッとしているのもつかの間、突然穂乃果が力尽きたように倒れた。
周りがどよめき始める。
メンバーからも不安が感じとられる。
みんなのそんな顔を見た途端、さっきまで動く気配すらなかった足が勝手に動いた。
走ってステージまで行きステージ上に飛び乗る。
「み、みはね!」
絵里ちゃんが切羽詰まった顔で私を呼ぶ。
とりあえず穂乃果を保健室に連れて行こう。
「私が保健室まで運ぶので、お客さんを…お願い、します」
そう絵里ちゃんに告げて、穂乃果を抱き上げる。
体、熱い…やっぱ風邪をひいてしまったのか。ごめんね。
私は罪悪感でいっぱいだった。
穂乃果は親に迎えに来てもらって車で病院に連れて行かれた。
*
私と絵里ちゃんは校内放送で理事長に呼び出された。
今回のことはすぐに理事長の耳にも届いたらしい。
絵里ちゃんと理事長が話しているのをぼんやりと聞く。実際あまり頭に入っていないのだが、ラブライブへの出場を辞退という言葉だけははっきりと聞こえた。
全部私のせい…みんなに会わせる顔がない…
私は、みんなといるべきではない。
そんなことだけが頭の中でぐるぐる回っていた。
気がつくといつの間にか絵里ちゃんに手を引かれて部室まで来ていた。
ドアの向こうではみんなが不安そうな顔で待っていた。
絵里ちゃんがラブライブ出場を辞退するということをみんなに伝えた。
みんな悔しそうだったが、最後はランキングからμ'sの名前を部長であるにこが削除した。その顔は悔しさとともに悲しさが滲み出ていた。
「みはね。さっきから何だまりこくってるのよ」
「に、あ、えと…」
にこちゃんがこっちを見ながら怪訝そうな顔をする。
「言いたいこととかないわけ?」
「え、あ、ごめんなさい。…矢澤先輩」
「はぁ!?何その呼び方」
名前で呼ぶことも、タメ口で話すこともできず。敬語で先輩呼びになってしまった。
「さっきから様子が変よ?みはね」
絵里ちゃんがそう言って手を伸ばしてくる。
とっさに体を引いてしまう。
「え、あ、絢瀬先輩。大丈夫…です」
絵里ちゃんがとても悲しそうな顔をする。そんな顔してごめんなさいなんて言わないで。悪いのは絵里ちゃんじゃない。なんでいつもみたいに絵里ちゃんって呼べないの?なんで、いつもみたいに接することができないの?
私が悪いのに涙が出てきそうになってしまう。今泣いたらみんなに余計嫌われる。
「ご、ごめっ…なさい。私、しばらく部活…こないようにしますね…っ」
私は部室から、みんなから逃げるように飛び出した。
*
〜真姫〜
なによあれ。いきなりにこちゃんや絵里を先輩呼びにして敬語まで使っちゃってよそよそしいし。
それに…何かに怯えているような表情。
「どうしよう…。みはねに嫌われちゃったのかしら…」
今にも泣き出しそうな絵里に同情する。
そりゃあ、本気で好きな人にあんな反応されたら誰でも傷つくわよね。
「なによあの態度。言いたいことあるならちゃんと言えっての!」
にこちゃんは机に自分の拳を思い切り叩きつける。
口調は怒っているけど、表情は悲しそうで…
「でも、本当にどうしたのでしょうか?」
「みはねちゃん、泣いてたにゃ」
そう、みはねは泣いていた。
そんなのを見てみんな黙っているはずがないわよね。
もちろん…私も。
「あっ…」
ことりが何かを思い出したといった感じで口を開く。
「昨日も様子がおかしかったと思う…」
それに…と、ことりは続ける。
「そういえば、みいちゃんって今日みたいな雨の日に学院の前で倒れてたんだよね。お母さんが倒れているのに気づいてうちに連れてきたんだ…」
ことりはとても優しいけど悲しい顔をして続ける。
「初めて会った時、自分がここにいると迷惑になるって思っててね。記憶がないのとかも結構気にしてて、なのに周りのことばっかだし…」
「みはねなら、自分のせいでこんなことになったとか思ってそうやね?…それだけだとも思えんけどな」
希の言う通り、他にも何かある気がする。
「ぐすっ。とりあえず、明日話を聞きましょう」
絵里はまだ立ち直れてないみたいね。
「あの…明日みはねを部室まで連れてくるの私に任せてくれる?」
普段ならこういうことは隅でみんなの様子を見ている私だけど、今回はなぜか勝手に前に出ていた。
「真姫…。はい、お願いしますね」
「えぇ」
穂乃果の事もだけど、みはねのことも私たちにとっては大事な仲間…いや、仲間以上だし。
絶対になんとかして見せるんだから!
閲覧ありがとうございました。
みはねがどんどん追い込まれていく…笑
次は真姫ちゃん視点になるかも…?
次回もよろしくお願いします!