歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜 作:YURYI*
今日は初めて生徒会の活動に参加させてもらう。
授業が終わったら迎えに行くから待っていてと絵里先輩に言われたはいいけど…
「来ないなぁ…」
クラスのみんながいなくなってから30分。外からは、部活動をする生徒たちの声がする。
うーん、約束忘れちゃったのかな?
まぁ、かといって何もすることがないので、おとなしく自分の席に座っている。さみしいなぁ…なんてね。
「ごめんなさい!っはぁ…はっ先生に捕まっちゃって」
いきなり教室のドアが開いて現れたのは絵里先輩だった。
約束…忘れられてなかった。それだけで嬉しい気持ちになる。
それに、急いできてくれたのがその様子からわかる。
「そんなに急いで来なくても大丈夫でしたよ?」
「ダメよ!授業が終わってから、かなり時間が経っているのよ?急ぐに決まってるじゃない。ほんとにいてくれてよかった…」
そういって絵里先輩は私の手を取って立たせる。そのままぎゅっと私の手を握ると歩き始めた。
「遅れてしまって本当にごめんなさい」
「大丈夫ですよ。それに、絵里先輩こそ大丈夫ですか?」
「ふふっ心配されるようなことは何もないわよ」
歩きながら横顔を盗み見ると、絵里先輩は眉を八の字に下げていた。そんなに気にしなくてもいいのに。
「走ってきてくれただけで、ちゃんときてくれただけで嬉しいですよ」
「そ、そう。もう、みはねには敵わないわね」
何がだろう?よくわからないけどもう気にしていないようだ。
絵里先輩はニコニコとしながら話しはじめた。まぁ、さっきの先生に捕まったといっていたことだけど。いつも生徒会長ってだけで色々な先生から頼られているらしい。
いつも歩いている廊下なのに、絵里先輩と一緒にいるだけで全然違く見える。絵里先輩の笑顔が輝いていると同時に、周りの世界もキラキラと綺麗に輝いて見える。私の心もポカポカとあたたかい気持ちになる。それに、ときどき私の鼻腔をくすぐる絵里先輩の優しい匂いにひどく安心する。
いつかこの気持ちの正体に気づく時が来るのかな?
そうこうしているうちに生徒会室についたようだ。
絵里先輩は慣れたようにドアを開けて私に入るように促す。私が中に入るとそれに続いて絵里先輩も中に入った。
「えりちおそい!って…」
「希ごめんなさい。先生に捕まっちゃってて」
「そ、その子は…?」
絵里先輩の謝罪はスルーされ視線は私のほうを向いたまま動かない。
「あ、今日から生徒会に入ることになった一年の桜みはねです」
慣れてきたばかりの笑顔を向ける。
「ほら、希。見つめてないで自己紹介」
「ご、ごめんなぁ。ウチは東條希!えりちと同じ三年生で生徒会の副会長やで」
希先輩は少しだけわざとらしい関西弁で自己紹介をしてくれた。その後すぐにこっちまできて私に手を出して来る。私は迷うことなくその手を取る。
「希先輩。よろしくお願いします!」
「よろしくなぁ!みはねちゃん♪」
ぎゅーっと抱きしめられる。
あたたかいしやわらかい。って何を考えているんだろう。
隣にいる絵里先輩は、さっきからずっと私の左手を握ったまま離してくれない。それに抱きしめられている今は刺さるような視線を向けられている。
「希。そろそろ仕事しましょう」
「そんなこと言ってるけど、えりちなんかみはねちゃんの手ずっと握ってるやん」
「わ、わかってるわよ」
「あぁ、いつものかっこいい会長さんはどこへ行ってしもたんやろか。デレデレしちゃって」
希先輩はわざと目を細めて絵里先輩のほうを見る。絵里先輩はより繋がっている手に力を込めてくる。
ふふっなんだかかわいい。
「そ、それは!希も同じでしょう!」
口喧嘩とも言えないような言い合いを始める二人が微笑ましくて、とても仲がいいのがわかって思わず笑みがこぼれる。
「仲いいんですね?」
「まぁ、そうね。もう、みはねに笑われちゃったじゃない」
「えりちのせいやけどなぁ。ほら、書類溜まっとるよ?」
結局私は簡単な書類を分ける仕事を与えられ、絵里先輩と希先輩は大量の書類の処理をしている。絵里先輩は集中しているのか黙々と作業を進めている。それに対して希先輩はちょくちょく私にいたずらをしてくる。いきなりほっぺをつんつんしてきたり、耳元に息を吹きかけてきたり。話しかけてくれるのは嬉しいが、スキンシップが少しばかり多くて恥ずかしい。
一時間ほど経って私の仕事は終わろうとしていた。それよりも、さっきから疑問に思っていることがある。
「希先輩」
「ん?みはねちゃんどうしたん?」
「生徒会って他に人いないんですか?」
さっきからずっと不思議に思っていた。コの字型のテーブルに椅子はあるが他に生徒が来ることはない。
「あぁ、一応いるんよ。でも、みんな部活入っとるし、忙しいからなぁ。それに、仕事はウチとえりちで終わらせられるし」
希先輩は絵里先輩のほうを見ながら穏やかに笑う。
でも、二人だけでこの量を終わらせるのはとても大変だと思う。
「でもそれって…」
思ったことを口にしようとしたら、希先輩にほっぺたをムギュッとつままれる。
「みはねちゃんが手伝ってくれるんやし、問題ないやん?」
そう言って微笑まれてしまえばもう何もいうことはできない。なんだろう、希先輩って何考えてるのかわからない。でも、とても優しいことだけはわかる。
絵里先輩のほうを見ると絵里先輩もこっちを見ていた。
「あ、そや。ウチ今日は用事があるんやった。えりち、残りは任せちゃってもええ?」
「ええ、大丈夫よ」
「ほな、えりちとみはねちゃんまたな!」
その返事を聞くと希先輩はカバンを持ってドアのところで手をぶんぶん振ったあと帰ってしまった。残りといっても希先輩の分の仕事はもうおわっているようだった。
*
〜希〜
いきなりすぎただろうか?
まぁ、問題ないやろ。それよりも、みはねちゃんを連れてきたときのえりちのあの顔。あんな顔なかなか珍しい。普段クラスにいるときなんか冷たいくらいの表情してるのに。まぁ、ウチといるときは普通に笑ってくれるけど。
それにしても、あからさまにやきもち妬きすぎやろ。ウチがちょーっとみはねちゃんにちょっかいかけるだけで羨ましそうな顔しちゃって…
まぁ、えりちのことだから仕事中に話しかけるなんてできないんやろうな。ってことで二人きりの時間を作ってあげた。
本当にえりちは世話がやけるんやから…なんて。本音を言うならウチもみはねちゃんともっと話したかったんやけどね。
ま、今回はえりちに譲ってあげる♪
携帯でえりちにメッセージを送って、空を見上げる。
真っ赤な夕焼けがウチを照らしていた。
*
〜絵里〜
希が帰ってしまってすぐ、私の携帯にメッセージが届いた。
【みはねちゃんと仲良くなぁ♪】
希…
周りに気を使いすぎる彼女はきっと私のことに気づいていたのだろう。だって、私だってみはねともっと話したい。もっとみはねのことを知りたいの。
でも、こんなの送られてきちゃったら変に意識しちゃうじゃない!
はぁ…仕事はまだまだ終わってないし、集中することにしましょう。
しばらく時間が経ったあと、みはねがおずおずといった様子で話しかけてきた。
「えっと、もう外真っ暗ですよ…?」
その声にはっとして外を見る。陽は完全に沈んでいて月が姿を見せていた。私としたことが、大失態だわ。
時計の針はもう19時をすぎていた。下校時刻を過ぎているため、部活動をしている生徒もいない。学院内はとても静かだった。
「ほ、ほんとね。もう帰らないと怒られてしまうわ…」
微かに声が震える。実は、私は暗いところが得意ではない。いや、大の苦手だ。暗所恐怖症といえば伝わるかしら?
そう、とにかく暗いところがダメなの。
普段は暗くなる前に仕事は終わらせていたが、今日は集中していたため時間のことを考えていなかった。
「絵里先輩、暗いのこわいんですか?」
な、なんでそんなに鋭いのよ!?
「ま、まさか。そんなことないわよ」
「はぁ…心配なので家まで送りますよ。暗いし、変な人とかいたら大変ですし、ね?」
「い、いいわよ!だい「ほら、置いていっちゃいますよ」
そういって電気を消そうとするみはね。
真っ暗の中に取り残されると思うと嫌で、みはねのところまで急いで走っていく。何も言わずに手を繋いで歩いてくれる。
私の方が年上なのに…と思いながらも、みはねとまだ一緒に居られると思うと少し嬉しかった。
「送ってくれてありがとう」
暗いのが怖かったはずなのに、優しく話しかけてくれるみはねに安心したのか不思議と帰り道が短く感じた。
「いえいえ。私のこと気にせず家の中入ってください」
もう、この子はどこまで優しいのよ。お言葉に甘えて家の鍵を開ける。
「ただいまーってきゃあ!?」
ドアを開けた瞬間前から衝撃を受けた。
「お姉ちゃん!遅いし連絡ないから心配したよ!」
「あ、亜里沙…ごめんなさい」
妹の亜里沙が飛び出してきたようだ。そういえば、連絡入れるのすっかり忘れてたわ。
「絵里先輩、大丈夫ですか?」
みはね、まだいてくれたのね。
亜里沙は私からひょっこりと顔を出すと、目を輝かせてみはねを見た。
「お、お姉ちゃん!この人は…?」
亜里沙も希と同じような反応をするのね。まぁ、私も人のこと言えないんだけど。
「桜みはねです。一年生なんだけど、生徒会で絵里先輩のお世話になってます」
みはねはにっこりと笑った。
「っていっても今日から入ったのよ。みはね、妹の亜里沙よ」
「お姉ちゃんの妹の亜里沙です!みはねさんよろしくお願いします」
「うん。よろしくね、亜里沙ちゃん」
亜里沙は私から離れるとみはねにハグをする。
最初はびっくりしていたみはねだが、笑顔で亜里沙の頭をなでていた。
もともと人懐っこい性格をしている亜里沙だけど、こんなにすぐ抱きつくなんて初めてかもしれない。
「ほ、ほら亜里沙。もう家に入るわよ。みはね、送ってくれて本当にありがとう。気をつけて帰ってね」
亜里沙をみはねから無理やり引き離す。亜里沙は不満そうな顔をしていたが、嫌なものはしょうがない。
希も亜里沙もなんでそんな簡単に…はぁ、そんなこと考えてもしょうがないわよね。
みはねに手をふってドアを閉める。
その日の夕飯の亜里沙の話題はみはねのことばかり。
希の時もそうだったけど、なぜだか心にもやがかかったように苦しい。
この気持ちは…
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