歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜   作:YURYI*

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34.おちる

 

 

 

 

 

 

今日はことりちゃん以外のみんなで屋上に集まることになった。

私はその様子をみんなの輪から少し外れたところで見ていた。

 

「ライブ?」

 

高坂先輩のその問いに、絵里が笑顔で答える。

 

「そう。みんなで話したの、ことりがいなくなる前に全員でライブをやろうって」

 

それに希もつづく。

 

「来たらことりちゃんにも言うつもりよ」

 

「思いっきり賑やかなのにして、門出を祝うにゃ!」

 

笑顔ではしゃぐ凛の後ろからにこがチョップをお見舞いする。

 

「はしゃぎすぎないの」

 

「にこちゃんなにすんのー!」

 

屋上に笑顔が溢れる。

みんな、暗い空気を少しでも明るくしようとしてくれているんだ。

でも、高坂先輩の顔に笑顔はない。

そんな様子に海未ちゃんは心配そうな顔をする。

 

「まだ落ち込んでいるのですか?」

 

「明るくいきましょう!これが9人の最後のライブになるんだから」

 

絵里がなるべく明るくしようと声をかけるが、高坂先輩は何か考え込むような顔をしている。そんな様子にみんなの視線が集まる。

私もその様子を見守る。

 

私はなにも言わない。見守るだけ。と何度も心の中で唱え続ける。

そんな中、突然高坂先輩が口を開く。

 

「私がもう少し周りを見ていれば、こんなことにはならなかった」

 

「そんなに自分を責めなくてもーーー」

 

「自分がなにもしなければこんなことにはならなかった!」

 

花陽が声をかけるが、それを否定するように言葉を続ける。

 

「あんたねぇ!」

 

「そうやって、全部自分のせいにするのは傲慢よ」

 

「でも!」

 

「それをここで言ってなんになるの?なにも始まらないし、誰もいい思いもしない」

 

確かに絵里の言う通りだと思う。それはここにいるみんなも思っていることで。

そもそも高坂先輩のせいだけじゃないし、今この場で言っても空気が悪くなるだけ。

 

「ラブライブだって、まだ次があるわ」

 

「そっ!今度こそ出場するんだから落ち込んでる暇なんてないわよ〜」

 

真姫ちゃん、にこと場の空気を沈めないように明るめの声で話す。

 

「出場してどうするの?」

 

その空気を壊すかのような声。表情。

 

「もう学校は存続できたんだから、出たってしょうがないよ」

 

「穂乃果ちゃん…」

 

高坂先輩の言葉で花陽の目に涙がたまる。

私は、やっぱりなにも言わない。

大好きな人たちが悲しい顔をしているのはものすごく嫌だけど、こればっかりは私が出る幕ではない…と思う。

 

「それに無理だよ。A-RISEみたいになんて、いくら練習したってなれっこない」

 

その言葉を聞いたにこが拳を握りしめる。

 

「あんたそれ、本気で言ってる…?」

 

絞り出すように静かに声を出す。

 

「本気だったら許さないわよ」

 

高坂先輩はそれに答えない。

 

「許さないって言ってるでしょ!」

 

にこが高坂先輩に向かってくってかかろうとする。

 

「だめ!」

 

私は一瞬動きかけたが、真姫ちゃんか真正面からにこを押さえ込んでくれた。

しかし、真姫ちゃんよりもだいぶ小柄なにこが押している。

真姫ちゃんもおさえるのが辛そうだ。

 

「離しなさいよ!にこはね、本気だと思ったから、本気でアイドルやりたいんだって思ったからμ'sに入ったのよ!ここに賭けようって思ったのよ!それを、こんなことくらいで諦めるの!?こんなことくらいで、やる気をなくすの!?」

 

怒鳴るにこ。いつもは練習で賑わっているこの屋上は何処へやら。今日はあまりの空気の悪さに息が詰まりそうになる程だ。

 

とうとう花陽は泣き出してしまう。

 

「じゃあ穂乃果はどうすればいいと思うの?どうしたいの?」

 

そんな中、冷静に絵里が高坂先輩に聞く。

ちょっとの沈黙。

 

「答えて」

 

高坂先輩の目がだんだんと虚ろになっていく。

 

「やめます」

 

みんなの息を飲む声。

 

「私…スクールアイドル、やめます」

 

みんなはなにも言わずに驚いた表情で固まる。

そんなみんなの様子に、もう言うことはないとでもいうかのように屋上のドアに向かっていく。

みんなはその様子を目で追うことしかできない。

そんな中、海未ちゃんが動いた。

高坂先輩のことを追いかけて腕を掴む。

そのまま振り向いた高坂先輩の方をめがけて右手が振りかざされる。

それは…だめだよ。海未ちゃん。

 

 

屋上に乾いた音が響く。

 

 

 

 

右頬が痛い…

 

「みはね…!?」

 

「みはねちゃん…!」

 

よかった。高坂先輩はなにもないみたいだ。

なんとなく予感がしていた私はギリギリのところで高坂先輩と海未ちゃんの間に入ったのだ。

それよりも、かなりの力で叩いたんだろうな。音もすごかったし。ははっ何より痛い。

 

「高坂先輩、大丈夫…ですか?」

 

私の問いに答えてくれなかった。それだけ驚いたのだろう。

 

「あなたがそんな人だとは思いませんでした…」

 

「最低です…あなたは、あなたは最低ですっ!!!」

 

その言葉を聞いた高坂先輩は屋上を飛び出して行ってしまった。

今回は追いかけないほうがいい…かな…

 

「海未ちゃん手見せて」

 

「な、なんでですか?そんなことより…」

 

「いいから見せて。ほら、出して」

 

半ば強引に手をとる。

 

「ほら、やっぱり…。赤くなっちゃってるじゃん。痛かったでしょ?大丈夫?」

 

「だ、大丈夫…ですよ。そんなことより!すみません…。みはねこそ痛かったでしょう?」

 

あぁ、泣きそうな顔してる…

 

「大丈夫、ほら、赤くなってるだけ。保健室行こっか?」

 

「は、い…」

 

絵里たちに目でごめんねと謝ってから、海未ちゃんの手を取って屋上を出る。

 

 

「なーんか、海未ちゃんと手繋いだの初めてかも」

 

「…」

 

「なんで黙っちゃうのさ。返事してくれないと悲しいな?」

 

「なんで、なんでそんなに優しいんですか?私、は…穂乃果のことを…それに」

 

なんでこの子はこんなに自分を責めているんだろう。

 

「私のことは、自分からあたりに行ったようなもんだから気にしないでね。高坂先輩のことは…高坂先輩自身が自分に嘘ついていたのが…みたいな感じなのかなって思ってたんだけど…」

 

「そう…です」

 

「海未ちゃんは優しいね」

 

繋いでいる手に少し力を込める。

海未ちゃんもそれに応えるかのようにぎゅってしてくれた。

 

「ほら、保健室に着きましたよ」

 

あいにく保健の先生は不在だった。

海未ちゃんを先に保健室に入れてから自分も入る。

ドアを閉めて、ついでに鍵も閉めた。

 

「さ、ふたりきりだよ。海未ちゃん」

 

「な、なにがですか?」

 

え、これだけ言ったら伝わると思っていたんだけど…

 

「ほら、おいで」

 

両手を広げてみる。

 

「なに、やってるんですか?」

 

ちょ、本当にわかってない?

待って待ってこういう時は誰かに甘えたいものじゃないの?てか、甘えてほしいんだけど…

なんだか、恥ずかしいやら虚しいやらでとりあえず手をおろす。

 

「…手、冷やそうか」

 

私は頭も…か。あはは…

海未ちゃんに背を向けてカチャカチャと何か手を冷やせるもの…と探していると、背中に柔らかい温もり。

一瞬思考が止まる。

えーと、今私はどんな状況なんだ?

もしかして、もしかすると…

 

「みはね…」

 

背後からくぐもった海未ちゃんの声が聞こえる。

それと同時にお腹に腕が回されてぎゅっと力が込められる。

 

「う、み…ちゃん…?」

 

あまりの急激な展開に頭がついていけない。

やばい…顔が熱い。

と、どうしようかと考えていたらそのまま後ろに引っ張られる。

 

「っとと、なになに?」

 

海未ちゃんはなにも言わないまま私の背中に顔を埋めている。

 

「…っ」

 

後ろに行きすぎてふたりしてベットに倒れこんでしまった。

私の下敷きになってしまった海未ちゃんが心配になって見てみると、私の制服の裾をつかんだまま今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「う、海未ちゃん!?どーしたの?」

 

なにも答えてくれないし。

本当にどうしたんだろう。でも、なにも答えてくれない。

自分でも恥ずかしいけど、わたわたすることしかできない。

すると、とうとう海未ちゃんのかわいい顔がゆがんでぽろぽろと泣き出してしまった。

海未ちゃんは顔を見られたくないのか片手で口元を覆ってしまう。

 

「…だめ。見せて」

 

言ってからはっとした。私はなにを言ってるんだろう。

ぶんぶんと頭を振って理性を保つ。

理性?そうか、あまりにも海未ちゃんがかわいいから、泣き顔までもきれいだから…

って、いくら自分の彼女だからってそんなことしていいはずない。

でも、キスくらいなら…いや、相手はまだまだそんなの知らない純粋な子だよ?

だめに決まってるじゃないか。

自問自答をぐるぐると繰り返しているといきなり抱きつかれた。

あぁ、なんで私は自分の記憶はないのにこういう気持ちは覚えてるんだろう。

そのまま胸にぐりぐりと頭を押し付けられる。

 

ーーーかっ…かわいいっ!

 

海未ちゃんは顔を上げその潤んだ瞳で見上げてきた。

 

「こうしてても…いいですか?」

 

か、かかかかかかかわ…

なんだこの破壊力。

頭の中でパキパキと何かが崩れていく。

我慢しろ、私…

なんとかこらえてそのまま押し倒すというような真似をしなかった私を褒めてほしい。

…やっぱ無理。ちょっとだけ。

まだ涙が溢れ出ている目元に顔を寄せて、ちゅっと涙を吸う。

 

「なっ!?み、みはね…?」

 

その瞬間、真っ赤に染まる顔。

なんだかいけないことをしている気分になり、ごめんねと言って顔を離す。

 

「や、嫌ですっやめないでください!」

 

私の首に手を回して海未ちゃんと私の顔がぐっと近くなる。

 

「え…っと」

 

「私、私は今までこんなこと思ったことなくて、どうしたらいいのかわからないんです。私も…みはねのこ、恋人です!もっと…みはね、あなたに触れて欲しい…!もっと恋人らしいことしたいんです。わがままですみません…」

 

触れてほしい。恋人らしいことがしたい。

 

「その言葉…ほんとう?」

 

その問いにこくりと首を縦に振られる。

…っやばい、もう我慢できない。

海未ちゃんの腰に手を回して体を密着させ、

そっと、優しく、目の前にあるきれいな唇に自分の唇を重ねる。

一回、二回とその柔らかな感触を、海未ちゃんの味を確かめるかのように繰り返す。

 

「んっ…みはね、好きです」

 

キスの間にそんなこと言われたら、止まんなくなっちゃうじゃん。

なんだかいつものことだけど、本当に余裕がない。

気持ちばかりがもっともっとと焦ってしまう。

 

「ねぇ海未ちゃん。あーんってして?」

 

「え、あ、あーん…?」

 

少し口を開いた海未ちゃんに自分も口を開いて重ねる。

ここまできたらもう止めることなんてできなくて自分の舌を押し込んだ。

一瞬海未ちゃんの体が固まる。

そんなのおかまいなしに口の中にある海未ちゃんのを探しだす。

見つけた。

絡め取ろうとすると、海未ちゃんは顔ごと後ろに逃げようとする。

そんなことさせないと頭の後ろに手をやって固定してしまう。

 

「んっんぅ…みはね…」

 

キスがどんどん深くなっていく。

それにつれて、さっきまで逃げようとしてた海未ちゃんが私の制服をくしゃくしゃになるほど掴んで密着してくる。

あ、やばい。やりすぎたーーー

やっと理性が戻ってきた時にはもう手遅れだった。ゆっくりと顔を離すと、目の前には顔を赤くした海未ちゃん。

 

「ご、ごめん。やりすぎちゃった」

 

「だ、だだ大丈夫ですっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、戻ってきた保健の先生によって鍵をかけていたことを思い出した。

保健の先生はものすごくお怒りのようで。

海未ちゃんは真っ赤のまま固まっていて何も言わないし…私が言い訳をして説得することになった。

なんとか笑顔で保健室を送り出さるという状況にし……ん?何があったか知りたいって?めんどくさいなぁ…

まったく面白くないよ?

 

 

「保健室に鍵かけてまで何してたの!」

 

海未ちゃんフリーズ中。

 

「あはは…」

 

「もう!ってあら?みはねちゃんそのほっぺたどうしたの?」

 

「いや、それが…海未ちゃんにひっぱたかれちゃって…ははっ」

 

なんで名前知ってるんだろう?

ま、今はそんなことどうでもいいか。

 

「それで、冷やそうと思ってきたんですけど先生がいなくて…」

 

ちょっとかっこよく笑顔を決めてみる。これは絵里の真似。なんてね。

 

「っご、ごめんなさいね。少し用事があって…」

 

「いえ、先生…こんなの恥ずかしくて…鍵閉めちゃって。ごめんなさい…

その…悪いことした後にこんなお願い悪いとは思ってるんですけど…」

 

「り、理由はわかったわ!なぁに?」

 

わかってくれた?生徒会の力ってすごいんだなぁ…

なんか先生の顔が赤いけど、いいか。

 

「先生に…冷やしてほしいなって…」

 

今度はことりちゃんの真似をして先生を少し見上げるようにする。

なんとかなって!おねがい!

 

「も、もう…しょうがないわね」

 

先生が私のほっぺに触れる。

先生ちょろいな…この学校の先生ってみんながみんな優しいよね。

ってか、

 

「先生の手…冷たくて気持ちいい」

 

あー、いい感じにひやっとしてて気持ちいいです。思わず先生の手を掴んでしまう。

 

「みはねちゃんは本当にかわいいわねぇ」

 

その後はちゃんと氷で冷やしてもらいました。これだけ…だよ?ほら、面白くもなんともなかったでしょ?

 

 

で、復活した海未ちゃんが、今日はことりちゃんの家に寄りたいと言ったのでそこまで送ることになった。

 

「ありがとうございました」

 

「いいえ。このくらいならいつでも」

 

まぁ、ことりちゃんとか絵里とかいろんな人のこと送ってるし。

 

「あと…嬉しかったです」

 

「ん?なにーーーんっ!?」

 

「ん。キス…です」

 

何が?と言おうとしたらキスをされてしまった。

不意打ちはずるいよ。

しかもその後、手で唇を触って顔を赤くさせるから…!

もう、なんてかわいいのでしょう。

 

「そ、そんな赤い顔してたらことりちゃんに何か言われちゃうからね!?ちゃんと冷ましてから入るんだよ!?…じゃあ、私は帰るね。それと…私も嬉しかった」

 

「…っ!はい!気をつけて」

 

その言葉を背に受けながら振り返らずに手を振る。

今絶対顔赤くなってるから見せられない…

 

「かわいすぎだよ。ばかぁ!!!」

 

 

そのまま私は学校までダッシュした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

あぁ…テスト終わってテンション上がってたのに、今度はテスト返しでテンションが急降下しています…笑
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