歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜 作:YURYI*
どうしましょう。
やっとまたみんなそろってライブができた。それは嬉しいわ。でも、でも…生徒会の引き継ぎのことをすっかり忘れてた。まだ次の生徒会のメンバー決まってないじゃない。
生徒会はその時のメンバーで次のメンバーを決めることができる。まぁ、拒否られてしまったらそこで終わりなのだけど…
そのため何かインパクトを残す必要があるわけだ。
ちなみに去年は必要なメンバーが揃ったため何も行われなかったわ。
「はぁ…」
「えりち?どうかしたん?」
「あぁ…希。それがね…」
次期生徒会メンバーのことを忘れてしまっていたことを正直に話す。
「それはやってもうたな。あ、そや」
「ん?」
「インパクト残すなら、ウチにいい考えがあるよ」
「え、生徒会で劇…?」
「そうなの。もちろんみはねも参加よ。ちなみに希のアイディアだから」
「一応私も生徒会の一員だし参加はするよ」
「ならよかった。でな、実はもう何をやるかは決まってるんよ」
そう。みはねが来るまでの1時間ほどで大体のことは決まってしまった。もちろん理事長の許可もちゃんと取ってある。
「私たちで、ロミオとジュリエットをやりましょう!」
***
え…ロミオとジュリエット。確かこの前読んだような…ってあれ!?
しかも私はどっちもやらなきゃいけないとか…ちょっと。
「公演は二日間やるつもりなの。それで、みはねにはロミオとジュリエットのどっちの役もやってほしいの」
そんなキラキラな目で見られたら断れるわけがない。わかっててやってるのかな。いや、ポンコツだしわかってないな。
「はぁ…まぁ、うん」
押しに弱い自分がたまに恨めしい。
「ありがとう!」
「たーだーし、条件があります!」
「なんや?」
ふっふっふ。私だけがこんなのフェアじゃないもんね。
「1日目は私がロミオ、希がジュリエット。2日目は私がジュリエット、絵里がロミオね。生徒会長には目立ってもらわないとだし」
これで納得できるっちゃできるかな。
「ウチが…ジュリエット…!?」
「私がみはねのロミオ…!」
みはねのってなに…?
最後はバシッとかっこよく決めてもらったほうが生徒会に対しての関心もできるし、μ'sの人気も上がるはずだし。
「はい決定。じゃ、演劇部のみんなに協力してもらえるよう明日から行動開始だね」
***
「1週間でロミオとジュリエット!?間に合うの…?」
さすがの演劇部の部長さんでも驚きだったようだ。演劇部でも難しいというのに、素人の私たちができるのだろうか。今ごろになって不安になってきた…
でも、こんなところでやめるなんてできないよね。
「間に合わせるんです。部長さんの力を借りなければなりませんが。私も会長たちもあなたを頼りにしてるんです」
「そ、そんな言われちゃったらやらないわけにはいかないな。ビシバシ指導するからよろしくね。みはねちゃん、みんな」
「ありがとうございます!」
「それで、ロミオとジュリエットといえばキスシーン。そこが一番難しいし重要だと思うからがんばってね」
キスシーン…あるのか。
「キ、キキキキキスキス…キ、ス…」
希が壊れた機械のようになってしまった。
の、希さん?大丈夫ですか?
「あの、本当にキスするわけじゃないし。大丈夫だよ?」
「やって、みはねとキスシーン…」
希顔真っ赤。そういうかわいい顔、他の人には見せたくないんだけどなぁ。
「大丈夫だよ。私がリードするからね」
希の頭をポンポンとなでる。
なんか絵里がムッとしてる…それに周りのみんながざわざわしてる。
頭なでてるだけなのに…
ま、いいや。気にしたらきりないもんね。
「それじゃ、確か台本はあったような気がするから今日はそれ読んどいてね。明日から練習するからさ」
「了解です」
「わかったわ」
「じゃ、今日は解散やね」
演劇部、生徒会のメンバーが順々に帰っていく。すぐに私と絵里と希だけになった。
「ねぇみはね。今日泊まっていかない?いや、むしろ泊まってほしいのだけど」
「ん?なんで?」
「なんでもいいじゃない」
なんでもよくはないよ。まぁ、ひさしぶりだしいいかな。
「わかった。じゃ、希を家まで送ってからになるけど」
「ちょ、ウチは一人で帰れるから大丈夫よ?」
もう暗くなってきてるんだからダメに決まってんでしょ。
なに?ばかなの?希が変な人に絡まれたりとかしたらほんと嫌なんだけど。
「無理!一緒に帰るよ」
希の手をとって歩き出す。
途中で絵里が反対側の腕に抱きついてきて、周りから見たらめっちゃおかしいでしょ!って感じになったが。両手に華とはまさにこのことだなぁ。幸せ。
そんなこんなで歩き慣れた道を歩いていく。
「なんや、緊張してきたわぁ」
「ほんとね。初めてのことばかりだし」
「生徒会最後のかっこいいところ…ちゃんと見てるからね?」
みはねもでしょ、なんて言われながら3人で笑いあう。
私はこの時間が好きだったりする。
隣には絵里と希がいて、たまににこもいて。
いつもひだまりみたいにあったかくて、優しくて。
でも、生徒会が終わったらこんな時間も減っちゃうのかな…
楽しい時間はあっという間で希の家についてしまい希とばいばいをする。今度は絵里と二人きりになる。
「なんだか久しぶりね。みはねと二人きりなの」
「そうだねー。最近忙しかったもんね」
「えぇ。劇も頑張らなくちゃね」
絵里はいくら忙しくても弱音を吐かずによくやっていると思う。
それが強みでもあり弱みでもあると思うんだけど…
「絵里は一人じゃないからね」
絵里の手を取り指同士を絡める。
「みはねがいるから私は頑張れるの。それに、みんなもいるわ」
照れてるのかこっちは見てくれないけど、ふわりと優しい笑みを浮かべたその横顔は赤く染まっていた。
きれい…だ…
これからも一番近くでこの笑顔を見ていられたらな。なんて気持ちになって私も少し照れてしまった。
*
「で、なんで今日はお呼ばれしたの?」
「な、なんのことかしら」
絵里は私の質問に答えずに目をそらす。
夕飯も食べてお風呂も終わりあとは自由時間。
何回も絵里の部屋にはきているため今更緊張なんかしないけど、髪をおろしている絵里の姿にはドキドキしっぱなし。
にもかかわらず、はぐらかそうとする彼女に少々苛立ち無理やりこっちを向かせて目と目を合わせる。
顔が近いのはこの際どうでもいい。心臓がうるさいのも…まぁ、うん。とにかく理由を聞かせてもらいたい。隠し事なんかされたら私だって拗ねるんだからね!
「はーやーくー」
「ちょ、近いわよ!?」
顔を赤くしてそらそうとするがそうはさせない。まったく、素直に言えばいいものを…
「早く言わないとちゅーしちゃうぞ?」
「…っ!?そ、それは…」
「あ、やっぱ素直じゃない子にはするのやめよう。うん」
さっきまでの期待の眼差しは私の一言で絶望の眼差しに変わった。
顔が赤いのはそのまま少しだけ目に涙がたまっている。
は、破壊力が…!
でもここで折れるわけにはいかない。
顔から手を離そうとすると絵里に手を添えられて離れられなくなってしまった。
「やだ」
あ、あああああ…
なに今のやだ。かわいすぎなんですけど。
ここはいったん引くべきか…
「えーりっ。手を離してください」
「いやよ。離したら…」
「絵里さーん。私、素直じゃない子はきらいだよ」
その言葉に手を離すことはなかったが、目をよりうるませてショックを受けたような顔をしている。
そんな傷ついた顔しないでよ。
泣かせたくないのに泣かせたくなる。
こんな矛盾してる感情絶対おかしい。
ああ、もう私の負け。降参。
愛しの彼女に触れるだけのキスをして抱き寄せた。
「ごめん嘘。素直じゃないから絵里のこときらいとか絶対ありえない。だから…泣かないで」
絵里のきれいでサラサラな金色をすくようになでる。
「最近、私のことなかなかかまってくれなくて…さみしかったの」
ぽつりと絵里が呟いた。
「そっか。さみしい思いさせちゃってたんだね…ごめん」
「私のほうこそこんなにわがままでごめんなさい。それだけみはねのこと大好きなの」
こんなわがままだったらむしろ嬉しいに決まってる。それに、絵里の頼みとかわがままのうちに入らないしね。
もっともっと自分に素直になって欲しいって思ってるんだよ。私のこともっと頼ってほしい。希にはかなわないかもしれないけど、絵里のこと、支えたい。
「絵里大好き。愛してる」
「はじめて、愛してるなんて言われたわ。私も…愛してる」
やっぱり絵里の笑顔はきれいで、その姿を独り占めしたくて、いつもより強めに抱きしめた。
この気持ちが少しでも伝わればいいのに。
これからちょこっとだけ絵里と希中心のお話になります。
ロミジュリは漫画で絵里と希がやってたので。