歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜   作:YURYI*

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アニメ二期
46.真姫ちゃん


 

 

 

 

 

 

〜真姫〜

 

 

 

穂乃果が生徒会長になって数日、放課後の屋上では二年生三人とみはねの姿がなかなか見られなくなった。見られなくなったと言っても練習が終わる十分前くらいには必ずくるのだけど…

べ、べつに寂しいわけじゃないわよ?

新生徒会が始まってから仕事を覚えたりとか大変なのもわかる。それに、海未やことりはそれなりに仕事ができるみたいだけど、生徒会長の穂乃果があの様子じゃなかなか仕事が終わらないのもわかる気がするし。でも、でも…それだと生徒会のメンバーであるみはねも部活に来れないじゃない!

 

ドカッ

 

「わぁっ真姫ちゃんごめんね!」

 

「いや、今のは私が悪いわ」

 

「真姫。練習中はちゃんと集中しましょうね?」

 

練習中にもかかわらずこんなことを考えてしまうのはあの人のせいだ。それに加えて花陽とぶつかって絵里に注意されてしまうのもあの人のせい。

部活に来れないならまだいいのだけど、昼休みの時間も二年生の負担を減らそうとみはね一人でずっと書類と向き合っているせいで音楽室の二人きりで過ごす時間がなくなってしまった。一度みはねにわざわざ一人で昼休みにやる必要はないのでは?という質問をしたら、どうしてもみんなに負担をかけたくないらしく、苦笑いでみんなには内緒にしててと言われてしまった。

そして何より私の機嫌を悪くさせるのは終わる十分前に来た二年生たちだ。

 

「遅れちゃってごめんねー」

 

「穂乃果のせいで思った以上に時間がかかってしまいました」

 

「生徒会ってやっぱり大変〜」

 

「遅れてごめんなさい。明日は普通にこれると思うので」

 

三人ともなぜかとても笑顔なのだ。

みはねだけは疲れ切った顔をしているのに。

どんなわけがあるのかしらね。気になる。

 

 

「ねぇ、エリー。今日一緒に帰らない?」

 

「真姫が誘うなんて珍しいわね。もちろんいいわよ」

 

絵里と二人きりで帰るなんてもしかしたら初めてかもしれない。

 

 

 

「で、今日はどうしたの?」

 

絵里はやっぱり気づいていたみたい。

 

「実は、みはねのこととかで聞きたいことがあって…」

 

「ふふっみはねとの時間が減って寂しいのね」

 

「べ、べつにそんなんじゃないわよ!」

 

ムキになって叫んでしまい、しまったと思った時にはもう遅かった。隣で絵里の笑い声がより大きくなった。はぁ、何やってんのよ私。

 

「それで、聞きたいって生徒会のこと?」

 

「うん」

 

そうねぇ、と少し考えたそぶりをすると絵里は手を引いて公園に行きましょうと言って歩き出した。

公園のベンチにつくと二人並んで座った。

 

 

「生徒会でのみはねはすごく頼りになるのよ。ほら、仕事とかすぐ終わらせてくれちゃうし」

 

「それはわかるわよ。かなり努力もしているもの」

 

「あら、その様子だと真姫はお昼休みのこと知ってるのね」

 

驚いた顔でそう言われた。

絵里が知ってるのはなんとなく予想がついたけど。

 

「まぁ、ね。私が気になってるのは練習に来た三人がなんであんなに嬉しそうなのかよ!」

 

「やっと練習に来れたからじゃない?」

 

絵里はくすくすと笑っている。この様子からじゃ絶対違うわね。

 

「本当のこと言って」

 

睨みつけると肩をすくめて冗談よと笑った。

 

「仕事をしているみはねがとってもかっこいいからかしらね。ほんとに、誰が見ても百人中百人がかっこいいって見惚れると思うわ。それに、教えてくれる時の距離感が…ね」

 

そういうことか。でも、それなのに絵里も希も一緒に仕事していてよく平気だったわね。

 

「私や希は慣れちゃったっていうのもあるけど、影で周りの人の何倍も努力しているのを知っているからかしらね。それに、みはねったら自分から近づいてきて照れちゃうから」

 

絵里は私が質問するよりも先に答えてくれた。理由はわかったし仕方がないのもわかったけど、やっぱり二人の時間がとられてしまったようで悔しい。

 

「そんなの、我慢するしかないじゃない」

 

聞こえないように呟いた言葉は、もしかしたら隣にいる絵里に聞こえてしまったかもしれない。

 

「あ、そうそう。かわいい真姫ちゃんにいいこと教えてあげるわよ?」

 

「か、かわいいってなによ…」

 

「あら?教えてほしくないのかしら?」

 

「べ、別に聞かないなんて言ってない!」

 

絵里って意外とSっ気がかるのかしら?さっきからいいように遊ばれてる気がする。

 

「私、お昼休みにたまにみはねの手伝いをしに行くのよ。って言ってもご飯を食べないみはねに無理やり食べさせたり、ほんとにちょっとだけ書類の整理をやるくらいしかないのだけど」

 

絵里はみはねとの時間があるのね。と考えてしまっている時点で私は相当独占欲が強いみたい。

 

「それで?」

 

「毎回みはねは口癖のように早く終わらせないとって言うのよね」

 

「は?それだけ?」

 

「ふふっちゃんと続きがあるわよ」

 

やっぱり私のことバカにしてるの?

 

「理由を聞いたのよ。そしたら、早く部活に行かせてあげたいし自分も早く行きたいって」

 

絵里は一呼吸を置くとまた口を開く。

 

「『みんなとの時間を大切にしたいから。そのために真姫ちゃんに悪いことしちゃってるけど、早く真姫ちゃんとも二人きりで過ごしたい』って」

 

そ、それって…みはねも私と同じ気持ちってこと…?

 

「あ…え…」

 

「真姫はみはねに愛されてるわね。ってこの話秘密だったんだ。でも、私の前で他の子の話をあんな顔でするのが悪いわよね」

 

やっぱりなぜか楽しそうに笑う絵里。そんな絵里の優しさも嬉しかった。普通なら怒ってもいいところなのに。

 

「エリー。ありがとう」

 

「どういたしまして。頑張りなさいよ?そのかわり私も頑張るから応援してほしいかな?」

 

「うん。エリーも頑張れ」

 

 

 

絵里ともちょっぴり距離が近づいた今日。

明日はみはねともっと一緒に居られますように、というらしくないことを考えながら家に帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近…っというか、生徒会が新しく始まってから忙しくてしょうがない。今さらになって絵里と希すごさがわかって、この前出会い頭にお礼を言ったらびっくりされてしまった。

海未とことりは飲み込みも早いし頑張ってくれているけど、穂乃果がどうしても…はぁ。

なぜか丁寧に教えているのに覚えようとしてくれない。それどころかわざとわからないふりまでしてくる。海未にもきつく怒られてるみたいだけど、まぁ、穂乃果の仕事くらいなら私でもカバーできるし…

最近は大切なお昼休みの時間を使って仕事をしているおかげで落ち着いてきた。

 

 

「真姫ちゃん!」

 

「な、なによ」

 

「今日は一緒に音楽室に行こう!」

 

「し、仕事は「終わった!」

 

なかば強引に真姫ちゃんの手を取って音楽室に行った。

音楽室に入るなりドアの鍵をちゃんと閉めて後ろから真姫ちゃんに抱きつく。

ふわりと真姫ちゃんの香りがして、なんだかひどく安心する。もうずっと二人きりの時間なんて取れてなかったし。

 

「な、なによいきなり」

 

「やっと二人きりになれたから嬉しくて」

 

バカね。なんて言いながらこっちに向き直って抱きしめてくれた。

 

「真姫ちゃん寂しかった?」

 

「べつに」

 

「そっか」

 

「はぁ…寂しかったわよ。当たり前じゃない!その、す…き、だから!」

 

「ま、真姫ちゃん…」

 

いつもはない素直な言葉に涙が出そうになる。

 

「あのさ、今さらだけど真姫って呼んでいいわよ」

 

「え、真姫ちゃんを呼び捨てに!?」

 

「そ、そんなに驚くことじゃないでしょ!呼ばなかったらもう二度と音楽室に入れてあげない」

 

なんて理不尽な。てか、音楽室に入れないとかどこで真姫ちゃんと二人っきりになれっていうんだ。

 

「それはやだな。大好きな真姫との時間がなくなっちゃうじゃん?」

 

「な、ちょっと!いきなり呼ぶのやめてくれる!?」

 

「なんで怒られるの!?」

 

もうやだ。顔を髪色と同じくらいに赤くさせちゃって、照れてますって言ってるようなもんじゃないか。

 

「みはね」

 

小さく名前を呼ばれて顔を覗いてみれば、なんだかとても物足りなさそうな顔をしている。これは、お許しをもらえたってことだよね。

 

「真姫。好き」

 

私よりもすこし背の高い彼女に少しだけ背伸びをしてキスをする。

 

「ん。今まで寂しい思いさせたんだから、今日はなんでも言うこと聞いてもらうわよ」

 

「うん。もちろんそのつもりだよ」

 

そう答えると真姫は当然とでも言いたげに笑いピアノの椅子に座った。

私もいつも通りピアノの椅子に横向きに軽く座る。

 

「じゃあ、今日は歌ってもらおうかしら」

 

「え、私が…歌うの…?」

 

私たぶん下手だと思うんだけど。今まで歌とか歌ったことないし。

 

「何にしようかしら?やっぱ最初は愛してるばんざーい!かしらね」

 

いつもならそんなに笑わないのに今日は顔が緩みっぱなしの真姫。その心からの笑顔にやられてしまった私は歌わないなんて選択肢はもうなくて。

 

「はぁ…愛してるばんざーい♪ここでーよかったー♪」

 

歌い始めると私の声と真姫のピアノの音が交わっていく。歌うってこんなに気持ちのいいものなのか。完全にこの音楽室は私と真姫の二人だけの世界が出来上がっていた。

いつの間にか真姫の歌声も合わさっていて、私もより感情がこもる。愛してる。みんなのこと、真姫のこと。

いつの間にか歌は終わっていて静かになる。

 

「あの…真姫…?」

 

目をつぶったまま動かない真姫に声をかける。

 

「あ、あの」

 

「もう………だ…」

 

小さく口が動いた。が、何を言っていたのか私のもとまで届かない。

 

「ん…?」

 

いきなりこっちを向いて肩を掴まれる。

 

「私以外の前で歌っちゃダメだから!」

 

え…?ちょっと話が見えてこない。まさか、人前で歌っちゃいけないほど音痴だったのかな。

 

「う、うん。ごめんなさい」

 

「ほんと、なんで今まで気づかなかったのかしら」

 

「へ?」

 

「だーかーら!私が認めてるんだから素直に受け取りなさいよ!」

 

「あ、ありがとう…?」

 

「歌上手いのを知っているのは私だけ…ふふっ嬉しい」

 

普段はなかなか見せてくれない緩みきった顔で、なにやらブツブツ呟いている真姫。

 

「どうしたの?」

 

「なんでもないわよ!とにかく、私の前でしか歌っちゃいけないんだからね!」

 

「?…は、はい」

 

 

その後もいろいろと歌わさせられた。

結構二人ともノリノリで楽しんでしまったせいであっという間にお昼休みは終わってしまった。

 

 

 

 

 

「このことは私とあなたの秘密よ?絶対だからね?」

 

午後の授業が始まっても教室に入る前に耳元で囁かれた時のことが忘れられない。

なにあれ、なにあの表情。なにあの声。真姫って大人っぽすぎっていうか…

この赤くなった顔どうしてくれるんだ…ばか…

 

 

真姫を見ると、授業に集中しているようで見られていることに気づかない。

 

「真姫があんな楽しそうにピアノを弾く姿を一番近くで見れるのは、私だけ…」

 

こっちを向いた真姫に微笑みかけると、真姫も小さく笑ってくれた。

 

 

 

小さな幸せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





今回は真姫ちゃんのお話でした。

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