歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜 作:YURYI*
とある金曜日。
今日も無事部活が終わり、みんなが部室に戻っていく。
そんな背中を見つめほっと息をついているのもつかの間、まきりんぱなの三人が…主に凛が、すごい勢いで詰め寄ってきた。
「みはねちゃん!日曜日ひま!?ひまだよね!?」
眩しいくらいの笑顔。日曜日がひまかと聞かれているが、なんのことだかさっぱりだ。
「はい?」
「ひまだって!よかったにゃ!」
いや、ちょっと、ちがう。
「今のは疑問形だったでしょ」
「凛ちゃん。落ち着いて」
この三人ってなかなかバランス取れてるよなぁ。
なんてことを考えながら、会話の行方を見守る。いや、私も会話に入らないといけないんだろうけど…
「凛は主語が抜けてるのよ。まったく…」
「みはねちゃん。日曜日に私たち遊園地に行こうと思ってるんだけどね。予定が合えば、みはねちゃんも一緒にどうかなぁ…って」
なるほど。それで日曜日ひま?ってことだったのか。
最初から花陽が説明してくれてたらよかったのに…って、凛のあの様子じゃ無理か。
「大丈夫だよ。誘ってくれてありがとう!」
学校で一緒にいることは多かったけど、学校外で一緒にどこか行くってことはほとんどなかったから嬉しいな。
「やったにゃ!みはねちゃんと遊園地♪」
そう言って抱きついてくる凛のさらさらな髪をなでる。ぐりぐりと頭を押し付けてくる様子は本当に猫のようでかわいらしい。
「真姫ちゃんよかったね?」
花陽も喜んでくれているのか笑顔で真姫にそう問いかけるが。
「べ、べつに。私はどっちでもよかったけど」
なんて、照れているのかなんともツンデレキャラのようなセリフを言ってそっぽを向いてしまう。
そんな二人の様子を見つめていると、凛が耳元に口を寄せてきた。
「一番最初にみはねちゃんを誘いたいって言ったの、実は真姫ちゃんなんだよ」
もちろん凛たちもそのつもりだったんだけどね、と言ってから離れる。目と目が合うと凛はにこりと微笑んだ。
わかってるよ。真姫だけじゃなくて、二人も誘うつもりでいてくれてたこと。こんなに優しくされると、少しくらいは自惚れてもいいんじゃないかなって思っちゃう。
それにしても、遊園地楽しみだな。
***
本日、快晴!
待ちに待った遊園地当日。見事なまでに雲ひとつない空を見上げ深呼吸をする。緩んでしまう顔をがんばって引き締めながら、待ち合わせの場所に急ぐ。
集合時間まであと30分あるのでちょっと休憩してよう、と思ったのもつかの間、3人で待ち合わせしてからきたのか私を見つけると小走りで駆け寄ってきた。
あ、嘘。
「みっはねちゃーん!」
凛だけはかなり全力ダッシュだった。つい先日も、こんなことあったような…
止まることを知らない凛は、そのまま手を広げて私のところまでくる。覚悟を決めて、私も両手を広げて受け止める準備をする。
上手くすっぽりと入った凛を一回転しながら受け止めた。
「凛、危ないよ?」
「ごめんなさい。嬉しくてつい」
そういってぎゅうっと力を込める凛にキュンとする。
まったく、ほんとにかわいいんだから。
「それにしても、3人とも早いね?」
まだ約束の時間まで20分もあるのに。
「それはね、真姫ちゃんが…」
「みはねのほうが早いじゃない!それより、もう行きましょ」
花陽が話そうとするのを押しのけて、真姫はなぜか頬を赤く染めながら遊園地を指差す。
あぁ、きっと、真姫は友達と遊園地なんて来たことなかったのかもなぁ。そもそも友達と遊ぶことなんて、勉強の方が忙しいからなかったのかもしれない。
「真姫、今日は遊園地…楽しもうね!」
「しょ、しょうがないわね」
それぞれチケットを買って中に入る。
「う、わぁ…」
過去の自分は来たことがあったんだろうか?
おもしろそうな乗り物がたくさんある。わぁ…あれはどんな乗り物なんだろう。
真姫も隣で目を輝かせているようだった。
そんな私たちの様子を見て、凛と花陽が微笑んだ。
「みはねちゃんも、真姫ちゃんも、ちっちゃい子みたいだにゃ」
「そうだね。なんだか私たちがお姉さんになった気分かも」
なんだか恥ずかしい。まさかこんなにはしゃいじゃうなんて。
きっと、初めての遊園地。
最初は凛の希望でジェットコースターに乗ることに。運がいいことに、一番前に乗ることができるみたいだ。
「みはねちゃん!凛と一番前乗るにゃ!」
花陽と真姫に目で聞くと、二人とも前に乗るのは怖いみたいでものすごく頷いていた。
凛にいいよ、と返事をして先に乗り込み手を差し出す。
「ほら、気をつけて乗ってね?」
「ありがとにゃ!」
手を貸したのも意味がなかったのか、凛はバランスを崩してこちらに倒れてきた。
「わわっ」
「凛!ちょ、危ない」
ほっぺたに柔らかい感触。
瞬間、凛がぐいっと私を押しのけて隣に座った。
何が起きたのか、よくわからなかった。
でも、凛が照れた顔をして、自分の唇に手を持っていくから、私のほっぺに当たったのは凛の唇だったということに気づく。
「ご、ごめんなさい」
「え?いや、うん。怪我とかなかった?」
「大丈夫にゃ」
凛を見るとバッチリ目が合ってしまった。慌てて二人して前を向く。
もう一度隣を見ると、凛が顔を真っ赤にさせて俯いていた。
キスくらいしたことあるはずなのに、不意打ちってだけでここまで変わるものなのか。
ジェットコースターが動き出してから、そんなことを冷静に考えてしまうくらいに私は動揺していた。
キスの感触、そして何よりその後の凛の照れた顔。
なんだかどうしようもなく嬉しくなって、自分がだらしない顔をしていることを自覚する。
よし、ジェットコースターに集中しよう。
感想は、わー!きゃー!ゔぇぇえ!!!って感じかな。
まぁ、叫んでいたのは真姫と花陽です。
最初にちょっとした事故があったものの、私と凛は落ちる時に手を繋いで手を上にあげちゃったり、思ってたより怖くなくてかなり楽しめた。
「なんで、二人はあんなに元気なのよ」
「こ、怖かったね…」
ベンチでぐったりしている真姫と花陽に飲み物を渡す。
花陽はまだ涙目で、小動物みたいにプルプル震えている。
「あんなのへっちゃらだよ」
花陽の頭をなでると、花陽は俯いて飲み物を飲み始めた。
「よし、じゃあ次は花陽の乗りたいの行こっか」
何乗りたい?と顔を覗き込む。
「じゃあ、メリーゴーランドに乗りたいです」
「いいね!かよちんにぴったりにゃ!」
いつの間にか隣に来ていた凛が花陽と私の手を引っ張って歩き出す。
後ろを向くと、真姫はまだベンチに座っていて。
「ほら、真姫も行くよ!」
「わ、わかってるわよ」
メリーゴーランドには、主に小さい子達が並んでいた。
「私ね、小さい頃からメリーゴーランド大好きなんだぁ」
「花陽らしいね」
「えへへ、ありがとう。本当のお姫様になれるんじゃないか、なんて思ってたのかも」
ほんわかと笑う花陽は、すっごくかわいい。
「じゃあ、私が花陽の王子様に立候補するよ」
順番がくると、花陽の手を引いて二人で一緒に乗れる馬車に向かう。
花陽を先に乗らせて、後から自分も座った。
「花陽、手繋いでてもいい?」
「うん!…ふふ、なんだか照れるね」
甘い雰囲気のまま、メリーゴーランドはゆっくりと動き出した。
凛はノリノリで馬に乗っている。対する真姫は少し恥ずかしそうに周りをキョロキョロ見ている。
「みっはねちゃーん!かよちんは渡さないにゃー!」
「ちょっと凛!恥ずかしいから叫ばないで!」
「凛、花陽姫は私のものだから。奪おうとか思っちゃダメだよ?」
そう言って、繋いでいる手を見えるように上にあげた。そして、花陽の手の甲にキスをする。
「み、みみ、みはねちゃん!?」
「私が王子じゃ…ダメ、かな?」
「そんなことない!幸せすぎて泣きそうなくらいだよっ」
目を潤ませて微笑む花陽は、やっぱりお姫様みたいにかわいくて、きれいで。普段は絶対にしないくらいくっつかれて、心臓がはねた。
花陽の左目からこぼれた涙を人差し指ですくう。
それ以上涙が出なかったことにホッとした。
「ごめんね」
「ごめんねよりも…」
「うん。みはねちゃん、ありがとう」
メリーゴーランドを降りると、凛と真姫が待っていた。
「いつまで手、繋いでるのよ」
真姫は呆れた顔をして私を見る。
花陽は恥ずかしくなってしまったのか、手を離して凛のところへ行ってしまった。
残念なんて思いつつ、それが花陽のかわいさか、とすぐに思ってしまう。幸せボケな頭を振って、真姫ににこりと笑顔を向ける。
案の定、ぽかんとした真姫。そんな真姫の手を奪って、ぎゅっと握れば真っ赤に染まる頬。
「赤くなった」
なんて言えば、うるさい、と呟いて顔が背けられてしまった。
「次はね、真姫の乗りたいのにしようかなって思います」
「そう。でも、私は遠慮しておくわ」
「なんで?」
「みはねとなら、なんでもいいもの」
そんな事を平然と言ってのける真姫に、今度は私の顔が赤くなって。
「赤くなった」
さっきの私と同じセリフを真似て、くすりと微笑む真姫にドキッとしてキュンてして、無性にくっつきたくなって。
すりすりと真姫の肩におでこを擦りつけるようにすれば、柔らかい表情で頭をなでられた。
「真姫って、たまにずるい」
「そう?」
「…そう。ねぇ、あれに乗ろう?」
そう言って一際目立つ大きな観覧車を指差せば、どこから話を聞いていたのか凛が花陽の手を取って、大はしゃぎで観覧車へ駆けて行った。
凛のはしゃぎっぷりに、二人で笑いあう。
「私たちも行くわよ」
真姫に手を引かれてあっという間に観覧車の中。
当たり前に二人きりの空間。
少しドキドキするのは、私だけじゃないって、さっきから繋がれたままの真姫の手からドキドキが伝わる。
そのことにホッとして、嬉しくて。
いつの間にやらドキドキはワクワクに変わっていた。
「今日は、正直妬いてたわ。さっきまでは、ね」
突然そう呟いた真姫に、こてんと首を傾げればまた笑われて、少しむっとする。
「怒らないの」
「怒ってないもん」
「はいはい。それで、話の続き。今日ずっと、みはねは凛と花陽のこと甘やかしてたじゃない?」
繋がれていた手がいつの間にか指同士が絡まって、さらに密着していた。
「う、ん…?そうかもしれない」
「だからね、私のことも構いなさいよって思ってたわ」
「ごめんね…?」
でも順番に甘やかして行くつもりだったんだよ、とちょこっとだけ抗議をすれば、わかってると言われてしまった。
「でもね、私気づいちゃったのよ」
「なにが?」
「甘やかされるより、甘やかすほうがいいなって」
そんな事を耳元で囁かれた。くすぐったいよって言えば、かわいいわねって返されて。
これから先は、真姫に甘やかされるんだなって身をもって理解した。
それが、真姫の優しさなのもわかったから。手を繋いだのはそのまま、立ち上がって真姫の真正面へ。
「どうしたの?」
「どうもしないけど、ありがとう」
そのまま真姫のおでこにキスを一つ落とす。
目を丸くして固まっている真姫に、にいっとイタズラが成功した子供のような笑顔を向ければ。お返しにと言わんばかりに抱き寄せられた。がたんと観覧車が揺れて、真姫の腕にすっぽりと私が収まれば、耳元で囁かれる。
「結局、甘やかそうとするんだから」
そんなことないよ、と言葉ではなく抱きつくことで伝えれば、真姫もおでこにキスをくれた。
これでもかってくらい幸せになって、ちょっぴり切なくなった。
「みはね」
その気持ちをわかってか、真姫が優しく本当に優しく私の名前を呼ぶから、顔を上げることはせず真姫の胸元に顔をすり寄せた。
そんな私の髪を柔らかくなでられて。大好きが広がって、落ち着きすぎて眠くなってきた頃、私たちは地上に帰ってきた。
「おっそいにゃー!」
「凛が、先に行っちゃうからでしょ」
あくびをしながら凛と真姫のやりとりを聞く。
「みはねちゃん、眠いの?」
花陽の問いかけにこくりと頷けば、笑い声が三つ。
「帰りましょ」
真姫にまた手を引かれる。
真姫とは反対側に花陽がいて、その手を取れば、優しく微笑んでくれた。
「そうだ!今日はみんなでお泊まり会しよう!」
背中の衝撃とともに、凛がそんな提案をすれば、全員が賛成して。
みんなで真姫の家に帰ることになった。
遊園地デートは楽しくて幸せだった。
小さな幸せがいっぱいになれば、それはもう言葉じゃ表せないくらい大きな幸せで。
ありがとう。大好き。
そっと微笑めば、それに気づいた三人も微笑んでくれた。
今回は本編ではなく、サイドストーリー的な感じ…?です。
Green Greensさんからのリクエスト!ありがとうございます!
いろいろと書き直したりしていたら遅くなってしまいました…すみません。
またお待ちしてます!