歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜   作:YURYI*

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55.もうわからない

 

 

 

 

目がさめる。ゆっくりとまぶだ開けるとそこは真っ暗な空間。

 

「ここは…」

 

たしか、自分の部屋で考え事をしていた。考えても考えてもわからなくなって、嫌になった。そうだ。自分はわからなくなって逃げ出したいと思ってしまったんだ。

 

「誰?」

 

人の気配を感じ振り返ると、自分自身の姿があった。

鏡に映っているのかと思ったら、そうでもないようだ。

 

「ここは、夢の中?だよね」

 

「さあ?」

 

なんだかそっけない返事にむっとする。

 

「…かわってあげる」

 

「へ?」

 

「だから、かわってあげるよ。だって私はあなただから。私も桜みはね」

 

…かわるって、そういうことだよね。

でも、それもいいかもしれない。今の私にはみんなとうまく付き合える気がしない。

どうせ夢なら、いっそこのまま……

 

 

 

 

 

 

"助けて"

 

 

私はまた、暗闇に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

二重人格というものを知っているだろうか。

そう、私は桜みはねのもう一つの人格。

μ'sのマネージャーであるみはねと同じで違う存在。やはり同じ存在ではない。

別にこの体を乗っ取ろうと思っているわけではない。ただ、もう一人が壊れる前に、なんとかしないとって思ったの。

 

もう一人は過去を知らないぶん、あまりにも脆すぎる。

 

 

 

これからどうしよう。明日は学校もあるだろうし。隠し通せるとは思わないけど。

少しくらいはこの子を休ませてあげないと。

だから、今は彼女が出て来たくなるまで時間を作らないと。まぁ、そもそも、今さら戻ることなんてできないし。

 

 

「そろそろ朝がくる」

 

外を見るとさっきまでいた月がいなくなっていた。うっすらと太陽の光が見える。

 

「どうしようかな」

 

時間がくるまで屋上ででも寝ていようかな。

まだ少し暗い廊下を歩くとなんとも心寂しい気持ちになる。

彼女はいつもこんな中一人でいたのか。

屋上は少しだけ肌寒かったが空気が気持ちいい。あ、あのはしごから上に登れるのかな。あそこで寝てよう。

 

おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

***

 

〜絵里〜

 

 

まったく、A-RISEの綺羅ツバサはなんなのよ!見えないと思っていたかもしれないけどはっきり見えていた。みはねと、キス、してた…わよね。

思い出すたびに胸がぎゅうっと痛くなる。忘れたくて何度もクッションに顔を埋めるが息が苦しくなるばかりで意味がない。

 

「みはね…」

 

あなたはあの時なにを思ったの。

うれしかった?嫌だった?もし、うれしいと思っていたら…そんなの嫌よ。

 

「す、き…」

 

この気持ちを伝えたくて、大好きな声が聞きたくてどうしようもなくなる。

どうしよう、今電話かけたら迷惑かな。

一度だけ、そう思って通話ボタンを押す。

いつも以上にコール音がながく響いて聞こえる。…出ない。やっぱり寝てるのかしら。

 

UTXからの帰り道、私たちがなにを話しかけても反応は薄くて。とても不安になった。

ちらりと覗き見た顔が、今まで見たことないくらいに怖くて、悲しそうで。穂乃果といろいろあった時の顔に似ていた気がする。

なぜそんな顔をするのか理由が知りたくなった。でも、聞くことなんてできなくて。あなたのことになると臆病になってしまうみたい。だって、あなたを好きになる前はこんなじゃなかったもの。

 

「はぁ…もう寝ましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は朝練がなかったためみはねと会うことができなかった。放課後の練習まで待つしかないわね…

 

「えーりちっ。ここ、しわ寄ってるよ」

 

そう言って希が私の眉間のしわを指でぐりぐりとほぐす。

 

「気になるじゃない」

 

「あぁ、みはねのこと?」

 

「そう。ちょっと様子おかしかったし」

 

「せやね。まぁ、放課後になればわかるんちゃう?」

 

そう、きっと私が気にし過ぎなだけ。

その後も早く終わってほしいと願いながら授業を受けた。

昼休みが始まるチャイムが鳴った。

お昼どうしようかな、とお弁当を出そうとした時。

 

「エリーっ!ちょっといい?」

 

呼ばれた方を向くときれいな赤毛の美人な後輩の姿。真姫の顔は今まで見たことないくらいに焦っていた。

周りからの視線もあったため急いで廊下に出る。

 

「どうしたの?」

 

急いできたのか少し息が上がっている真姫は息が整うのも待っていられないとばかりに言い放つ。

 

「み、はねがっ…いないの!」

 

みはねがいない。はっきりそう言った。

 

「どういうこと?」

 

「朝から教室にみはねの姿がなくて。先生も知らないみたいで。さっき、みはねの部屋に行ったけどいなかったから」

 

普段の真姫からは考えられないほどに焦っている様子。これは、ただ事じゃないわね。

 

「わかったわ。あまりおおごとにしたくないから、私と真姫で手分けして探しましょう」

 

「そうね。学校にいればいいんだけど…」

 

「見つけたら連絡しましょう」

 

みはね、どこに行っちゃったのよ。このまま見つからなかったらどうしよう。普段から儚げな存在で、少しでも触れてしまえば壊れちゃいそうで。いなくなっちゃいそうと思うことは多かった。でも、今まで黙ってどこかに行くことはなかったし…

よけいに不安がつのってくる。

 

みはねが行きそうな場所なんてわからない。だって、みはねは自分のこと全然教えてくれないから。まぁ、記憶がないから教えられることがないのかもしれないけど…

 

だめね、私今かなり動揺してる。

 

「ここにはいないわよね」

 

ついたのはみはねの部屋。ここは真姫がすでに確認済みだ。

今まで一度も入ったことがないのもあってか手が勝手にドアを開ける。

 

「なに、これ…」

 

そこはとても人が住んでいるようには見えなかった。あまり部室と変わらない。いや、部室よりもものが少ない。

長机とソファが置いてあるだけ。

中に入ると空気が冷たかった。いや、もしかしたら物理的に冷たいだけではなく心細さからきているのもしれない。そう思ってしまうほどにさみしい空間だ。

いつも、ここに一人でいたの?

ふと、みはねがうちに泊まりにきたときのことを思い出す。ご飯を食べるときはほんとうにおいしそうに食べて、ベッドに入ったときは幸せですと言わんばかりの顔で私にくっついてくる。

それに、ときどき悲しそうに笑う。

夜は涙で頰を濡らしている時もある。

 

なんで話してくれないのよ。さみしいって一言くれたらずっといっしょにいたのに。それとも、そこまで心を許してくれてなかったの?まだ、ずっとそばにいてほしいって思えるほどの仲じゃない?

 

「う、うぅ…なんで。なんでなのっ」

 

今は泣いている場合ではない。頭ではわかっているが涙は止まってくれそうにもなかった。私が泣いている時に、優しく涙を拭って抱きしめてくれるみはねが今はいない。

探さなきゃ。その一心で走り出す。

 

たどり着いたのは、私たちμ'sの練習場所である屋上だった。

 

「あっ」

 

背後からぶわりと大きな風がおきた。

今、みはねの匂いがした…気がする。

振り向いてみると、普段なら気がつかないような場所にさらに上へといけるはしごがあった。

 

「確認、したほうがいいわよね…」

 

私は妙な胸騒ぎとともにはしごに手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

…ごめんなさい!!!
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