歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜   作:YURYI*

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66.リーダー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、なんで一緒じゃないの」

 

「お母さんから許可が下りたのに、どうしてなの」

 

「少しでも、離れるのは寂しいです」

 

そう駄々をこねる穂乃果たち二年生を、無理矢理に沖縄に送り出した。彼女たちは、これから修学旅行でしばらく学校を留守にするのだ。

一週間ほど前、わがままを言ったことりに、理事長は呆れたように特例を出した。

 

「みはねちゃんも、一緒に沖縄に行ってもいいわよ…?」

 

それを断ったのは私。

もちろん、一緒に行きたいとも思った。でも、それよりも何よりも、学校に残る他のメンバーのことを考えたら、行くに行けなかったのだ。

それに、穂乃果たちが修学旅行から帰ってきたらライブがある。絵里がどこからか受けてきた、ファッションショーでのライブが。

そのことを考えると、やはり私は残って万全の状態に準備をするべきだと思う。

 

それに

 

「みはね、こっちの資料まとめておいたわ」

 

「ありがとう、絵里」

 

私まで居なくなったら、生徒会の仕事が大変なことになってしまう。

 

 

 

 

 

 

「もー!最近ずーっとみはねちゃん練習きてないにゃ!」

 

放課後、生徒会を少しだけ抜けさせてもらって部室に来ると、凛は駄々っ子のように座りながら手足をばたつかせた。

 

「ご、ごめんね?」

 

さすがに危ないのでやめさせる。

そんな捨てられた子犬のような顔をされても、すごく困る。

 

「それに、ずっと4人で練習だよ!?」

 

「り、凛ちゃん、二年生が修学旅行なんだから仕方ないよ。それに、絵里ちゃんたちは生徒会の手伝いをしてるし…」

 

花陽のフォローも虚しく、凛はほっぺたを膨らませてそっぽを向く。

 

「そうよ。気合いが入らないのはわかるけど、やることはやっておかなきゃ」

 

「絵里!」

 

「今日も生徒会?」

 

真姫は、すぐさま問いかける。なんだかんだ、寂しいのだろう。

 

「絵里たちは、練習に出てもいいよ?私だけでも、なんとかなるし」

 

「ダメよ。こういう時こそ頼ってほしいわ」

 

絵里は、取りに来た資料を私の頭に軽く乗せる。むしろ、頼りすぎてて申し訳ないなんて言ったら、本気で叩かれてしまいそうだ。

 

「そうやで。みはねはすぐ無理するから、ウチらが見張っとかないとなぁ」

 

希と絵里は、目を合わせると呆れたようにため息をついた。真姫はそれを見てくすりと笑うと、今度は凛に視線を向ける。

 

「どちらにせよ、みはねが来ないと駄々をこねる子がここにいるもの」

 

私の制服の袖を掴んで離さない。ちっちゃい子みたいだ。

 

「また凛たちだけで練習…」

 

凛は、ほんの少しだけ涙目だ。

うちの末っ子は、本当にかわいすぎる。

 

「穂乃果たちが帰ってきた次の日にライブなんだから、練習しないと、ね?凛」

 

「早く、仕事終わらせてね」

 

下から見上げてくる凛があまりにもかわいくて、ついつい頭をなでてしまった。

 

「ん、了解。怪我しないように気をつけるんだよ。真姫、花陽、よろしくね」

 

「ちょっと!なんで私には頼まないのよ!?」

 

にこは、なにが気に入らないのか声を荒げる。

 

「うるさいよ、にこ」

 

「はぁ!?なんなのよほんと!」

 

まだぶつぶつ呟いているにこの肩に手を置く。

 

「元気なのはいいことだけど、怪我しないようにね」

 

私はそのまま部室を出た。

早く、仕事終わらせなきゃ。

 

生徒会室に戻るなり、絵里と希は話し始める。

 

「ほんと、みはねは強いわね」

 

「誰も敵わないんちゃう?」

 

なにが言いたいのかさっぱりだ。

 

 

「あ、そうだった。あのこと、穂乃果たちに連絡しとかないとよね」

 

「絵里に任せるよ」

 

 

絵里は生徒会室に戻るなり、穂乃果に電話をかける。

 

「あ、もしもし穂乃果?忙しい中ごめんなさい」

 

希はどこかに行ってしまったようで姿が見えない。

私も電話の邪魔になるし、自分の仕事に戻ろうとすると、絵里に腕を引っ張られた。

 

なに、と口パクで聞いてみるが、答える気はないらしい。

一旦私から目を逸らしたかと思えば、嫌な笑顔でこちらを見つめてくる。

 

「えぇ。私たちも同じ意見よ」

 

ばーか。

一瞬眉をひそめた。反応しちゃってかわいーの。

 

「…わかったわ。えぇ、そうね」

 

それでも何事もなかったかのように電話する絵里に、次の攻撃。

 

ばーか、ばーか。エリーチカ。

 

むっとした顔になるが、すぐ元の顔に戻った。

悪口はバカしか言ってないんだけど。

 

「………」

 

私の口パクを、はじめこそは気にしていないふりをしていたが、だんだんと不機嫌そうに眉間にシワが寄ってくる。

 

「…いえ、なんでもないわ」

 

穂乃果との話は終わったのだろうか。そろそろ切りそうだ。

絵里が電話を切ってしまう前に、携帯を奪い取る。

 

「もしもし穂乃果?」

 

『みはねちゃん!?』

 

「うん。って、あ!」

 

絵里に携帯を奪い返されてぶつりと切られる。

 

「あぁ…」

 

「エリーチカは、悪口ではないのだけど…?」

 

不機嫌な顔をした絵里と目があう。

片手でまた後で連絡するね、と穂乃果にメッセージを飛ばしてから、にこりと笑顔を向ける。

 

「悪口で言ったんじゃないし。悪口言われたって思う絵里が悪いんじゃない?」

 

私のこと無視するからじゃん。

 

「いや、無視したわけじゃないわよ?」

 

言葉に出てしまっていたみたいだ。

 

「じゃあ、なに」

 

「そばにいてほしかったの」

 

気づいてよ、と上目遣いで見てくるからずるい。

 

 

「なにやってるん?怒られたいの?」

 

戻ってきた希が訝しげな目でこちらを見ている。

よく考えたら、最近ずっと一緒じゃん。って言ったら、拗ねちゃうかな。

 

 

 

***

 

 

 

 

「えぇー!?凛には無理だよ!」

 

私たちが考えていたのは、穂乃果達がいない間だけでも仮にリーダーを作ろうって話だ。

今、昨日まとまった意見を伝えたわけだが…

 

「なんで凛なの?他の人でも…」

 

そう。みんなの意見は凛で一致した。

そしてそのことを伝えたら、こんなにも反発されてしまったのだ。

 

「みんな凛がいいって言ってるんだよ?」

 

「みはねちゃん…でも…凛には無理だよ」

 

でも、なんで、無理、そんな言葉ばかりが凛の口から出てくる。

なんでそんなに、自分に自信がないのか。

いつもとちがう様子の凛に、なんて言葉をかければいいのか。うまく出てこない。

 

「あ、ほら!一年生から選ぶなら真姫ちゃんとか!歌もうまいしリーダーっぽいし!真姫ちゃんで決まり!」

 

いつもの元気な笑顔とはちがう、繕った笑顔。名指しされた真姫は、すごく怒った顔をしている。

 

「みんな、凛がいいって言ってるのよ」

 

ぴしゃりと言い放つ。

凛はすごく困った顔をした。

 

「意外ね。凛なら調子よく引き受けると思ってたのに」

 

あまり会話に参加しなかったにこは、ちらりと凛を見て不思議そうな顔をした。

 

「凛ちゃん、結構引っ込み思案なところあるから…」

 

「特に、自分のことに関してはね」

 

黙り込んでしまった凛の代わりに、凛のことをよく理解している2人が答える。

うーん。

 

「いきなり言われて戸惑うのはわかるけど、みんな凛が適任だと考えているのよ。その言葉…ちょっとだけでも信じてみない?」

 

「み、みはねちゃんっ」

 

助けを求めるかのような瞳で制服の裾を掴まれる。

甘やかすのは簡単だけど、ずっとそれでは意味がない。そう思うから。

 

「う、えっと。凛なら大丈夫だよ」

 

そう言って頭を撫でると、ぎゅっと抱きついてきた。

 

「2人がそこまで言うなら、やってみる…」

 

私に顔を埋めたままぽそりと呟く。

ホッとはしたものの、不安が消えるわけではない。

 

「さぁ!そろそろ雨も止みそうだし、放課後の練習を始めて!」

 

絵里が声をかける中、花陽の肩を叩く。

 

「どうしたの?」

 

「何かあったら、誰にでもいいから相談してね?穂乃果でもいいし」

 

 

「うん、わかってるよ」

 

少しだけ頼もしい笑顔を向けられる。

それにちょっと驚きながらも花陽たちの背中を見送った。

 

 

 

 

今なんで、胸がチクチク痛いんだろう。

 

 

 

 

 

 






お久しぶりです。読んでいただきありがとうございます。
なかなか、うまくいかないもので。
短いですが…
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