ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第1021話 十二星座の戦士達

 乙女達が奮闘している頃、八幡は久しぶりにシャナとしてGGOにログインしていた。

その理由は他でもない、世界樹要塞に行く為である。

一人でブラックに乗り込んだシャナであったが、同行者が一人だけいた。

 

「やっぱり本体にも直接会いにいってやらないとな」

「そうですね、私としてもその方が嬉しいです」

 

 そう答えたのは自由に移動出来る方のフローリアである。

アメリカから帰ってきた後にキリトからフローリアが寂しがってると聞いていたシャナは、

行こう行こうと思っているうちに色々とイベント事が重なってしまい、

今日やっとフローリアに会いにいく事にしたと、まあそんな訳なのである。

 

「フローリア、当分拠点防衛イベントは起こらないんだよな?」

「はい、まだまだ余裕があります、この所はトラフィックスに人が流れていましたから」

「そうか、今回はその方が助かるわ、

さすがの俺も、仲間無しでイベントに巻きこまれるのは勘弁してほしいところだからな」

「ふふっ、そうですね」

 

 フローリアはニコニコと笑顔でそう言った。

シャナが会いに来てくれたのがよほど嬉しいのだろう。

そして世界樹要塞が見えてきた頃、フローリアはシャナに言った。

 

「それではあちらの私と統合しますね」

「別にこのまま中に入っちまえばいいんじゃないか?」

「いえ、それだと待つ楽しみが無くなっちゃいますから」

 

 フローリアはそう、実に人間臭い事を言うと、そのまま消えていった。

 

「ここも久しぶりだよなぁ………」

 

 シャナは世界樹要塞を見て感傷に浸りつつ、そのまま入り口から中に入った。

 

「マスター!」

「おっと」

 

 ブラックから降りた瞬間に、フローリアがシャナに抱きついてきた。

 

「記憶は共通のはずだろ、はしゃぎすぎだぞ、フローリア」

「だって嬉しいんですから仕方ないじゃないですか!」

 

 そう言ってフローリアはシャナに頬ずりをし、そのままシャナの腕にすがりついた。

 

「まあ別にいいけどな。さて、管理スペースでのんびりするか」

「はい!」

「あ、そうだ、フローリアは星座の事とか詳しいか?」

「一般常識レベルですが、分かりますよ」

「そうか、それじゃあちょっと相談に乗ってくれよ」

「はい、何なりと!」

 

 二人は管理スペースに移動し、シャナはフローリアにこう切り出した。

 

「うちが十狼からゾディアック・ウルヴズに名前を変えたのは知ってるよな?」

「はい、聞きました」

「でな、ゾディアックってのは要するに十二星座な訳だろ?」

「あっ、はい」

「そこに各メンバーを割り当てるつもりなんだが、

誰を何に割り当てればいいか、フローリアの意見も聞こうと思ってな」

「なるほど………それじゃあ確定な人から当てはめていきましょう」

「だな」

 

 そしてシャナは、フローリアからも見えるようにメンバーリストを表示させ、

シズカの名前の横のメモ欄に、おとめ座と記入した。

 

「これは確定だよな」

「ふふっ、ですね」

「それとこれだ」

 

 メンバーリストには十三人目の男、セバスの名があった。

シャナはそこに、へびつかい座と記入した。

 

「なるほど、そうなりますか」

「というかこれしかないって感じだけどな」

「そして俺はここだ」

 

 シャナはそう言いながら、自分の名前の所にいて座と記入した。

 

「しし座かと思ってましたけど違うんですね」

「いいかフローリア、主人公はペガサスからいて座になったんだ、そういうものなんだ」

「そうなんですか!覚えておきます!」

「さて、残りをどうこじつけるか………」

 

 リストに残っているのは、ベンケイ、シノン、銃士X、ロザリア、ピトフーイ、エム、

イコマ、ニャンゴロー、サトライザー、キリトである。

 

「俺が思うに、結局問題になるのは、キリトとサトライザーの扱いなんだよな」

「お二人とも強いですからね」

「そうすると片方がしし座で、もう片方は………う~む」

「おうし座とかですか?」

「それだ」

 

 シャナはキリトの名前の横に、おうし座と記入した。

 

「牛の二本の角を二刀流に見立てた。うちの特攻隊長だし猪突猛進してもらおう」

「それだとイノシシになっちゃいますね」

「ん、そうだな、牛突猛進と言っとくか」

「ふふっ、マスター、何ですかそれ」

「まあいいじゃないか、こういうのはノリで決めるのが一番だ」

「そうすると、サトライザーさんがしし座ですね」

「だな、あいつが最強みたいで気に入らないが、

実際あいつに勝てた奴は誰もいないからなぁ」

 

 シャナは悔しそうにそう言うと、サトライザーの名前の横に、しし座と記入した。

 

「あと困るのはピトとシノンか………」

 

 シャナはじっと目を瞑り、考え込んだ。

 

「少しでも狙撃のイメージがあるのはさそり座でしょうか」

「だな、あいつ、さそり座の女って感じがするし、それでいこう」

 

 とんだ風評被害ではあるが、シャナはシノンの名前の横にさそり座と記入した。

理由を聞いたシノンがシャナに詰め寄ってくるかもしれないが、

もちろん馬鹿正直にその事を説明するつもりはない。

 

「で、ピトは………うん、ふたご座だな」

「そうなんですか?」

「ああ、あいつは変態とシンガーという二つの顔があるからな」

「そこは変態が先に来ちゃうんですね………」

「当たり前だろ、あいつの本質はやはり変態だ」

「ま、まあ確かに………」

 

 どうやらピトフーイは、フローリアにも変態認定されているらしい。

まあおそらく本人はその事すら喜んでしまうだろうから、何の問題もないのだ。

シャナはピトフーイの名前の横に、ふたご座と記入した。

 

「段々埋まってきましたね」

「だな、順調順調」

 

 シャナは機嫌よくそう言った。残るは六人、

ベンケイ、銃士X、ロザリア、エム、イコマ、ニャンゴローである。

 

「ここからが難しいんだよな………」

「ですね………」

「まあニャンゴローはみずがめ座だな、あいつは氷の魔法が得意だし、

何となくイメージ的には水って感じがする」

「それはALOの話ですか?」

「ああ、まあそんな感じだな」

「こっちとは全然見た目も性格も違うんですよね?」

「だな、こんな感じだ」

 

 シャナはフローリアにいくつか動画を見せ、フローリアは驚いた顔をした。

 

「本当だ、まるで別人ですね」

「ははっ、そうだな」

 

 シャナはそう答えると、ニャンゴローの名前の横に、みずがめ座と記入した。

 

「あとはノリで行けそうだが………」

「ノリですか!?」

「おう、そうだな………ロザリアはてんびん座だな、

あいつはメンバーへの連絡係とか、情報収集が主な任務だし、

バランスを司るという意味では妥当だと思う」

「言われてみるとそんな感じがしますね」

「エムはかに座だな、あのどっしりとした四角い体型はいかにもカニっぽい」

「確かにそれ以外無い気がしてきました………」

「マックスはうお座だ、うちに入ってからのあいつは、

まさに水を得た魚のように、活躍しているからな」

「段々こじつけが厳しくなってきた気もしますが、

言われてみると確かにそうかもしれません」

「で、ベンケイがおひつじ座だ。ひつじは毛刈りをするだろ?

元ネタになったベンケイも刀狩りをしてたからな、うん、妥当だろう」

「マスター、それはさすがに苦しいです」

 

 さすがのフローリアも突っ込まざるを得なかったようだ。

 

「ふむ、ならこうしよう、羊のイラストは大体かわいい、

そして俺の妹であるベンケイもかわいい。だからおひつじ座で間違いない」

「ま、まあマスターがそれでいいなら」

 

 そこまで言われてしまうと、フローリアには否定する事が出来なかった。

 

「そして残るイコマはやぎ座だが、これは妥当と言っていいだろう、

何故ならヤギは頭がいい、なのでイコマにはピッタリだ」

「確かにそうですね、それはいいと思います」

 

 こうしてシャナのノリと勢いで、

ゾディアック・ウルヴズの星座の割り当てが全て決まった。

シャナはロザリアの名前の横にてんびん座、エムの名前の横にかに座、

銃士Xの名前の横にうお座、ベンケイの名前の横におひつじ座、

そしてイコマの名前の横にやぎ座と記入した。

 

「よし、出来た!」

「おめでとうございます、マスター!」

「もっともこっちで主に活動するのは来月の下旬のBoBの頃になっちまうんだよなぁ」

 

 この情報はまだ正式に発表はされていなかったが、

シャナはその事をジョジョから聞いて知っていた。

 

「そうなんですか………」

 

 フローリアが寂しそうにそう呟いたが、

そんなフローリアを安心させるようにシャナは言った。

 

「当分俺はここで落ちておくから、またちょこちょこ会いに来るさ、

だからそんな顔をするなって」

「本当ですか!?ありがとうございます、マスター!」

 

 フローリアはその名の通り、花のように微笑んだ。

 

「それじゃあまた来るわ」

「はい、お待ちしてますね!」

 

 シャナはフローリアに癒されつつ、再び日常へと戻っていった。




今日はとても穏やかな話となりました。
フローリアが寂しがっていたのは第859話ですね!

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