ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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2018/03/01 句読点や細かい部分を修正


第207話 同窓会ぃ?

「ねぇヒッキー、ゆきのん、なんかね、

知り合いの伝手で集めた同窓会っぽいのをやるみたいなんだけど、来る?」

 

 久しぶりに三人で集まった席で、唐突に結衣がそう言い出した。

 

「ぽいって、学年全体から適当に集めるのか?俺は行かないぞ」

「私も行かないわよ」

「即答!?」

 

 当然八幡と雪乃がそんなイベントに興味がある訳もなく、二人はそう即答した。

 

「ええ~?たまにはいいじゃ~ん。ヒッキーはさ、

もう隼人君や戸部っちとも仲良くなったんでしょ?あ、彩ちゃんも来るってよ!」

「やっぱり行く」

「やった!」

 

 八幡は、明日奈を救い出した時の、あの病院での葉山や戸部との交流を思い出し、

久しぶりに話もしたいなと思い、行く事に決めた。

もっとも実際は、戸塚の参加が行く理由の九十九%を占めていた事は間違いない。

 

「ゆきのん、駄目?」

 

 結衣のその、上目遣いでのお願いを受け、雪乃もしぶしぶと参加を承諾した。

 

「はぁ……仕方ないわね、少しだけよ」

「やった、それじゃあ明日ね!優美子も来るから、

もし迷惑じゃ無かったら、ヒッキーの車で行かない?」

「明日だと!?それを最初に言えよ……」

「それはまた、唐突な話ね……」

「ごめんね、あたしも聞いたのが今朝だったんだぁ。

で、今日中に人数が分からないと予約がとれないって話でさぁ……

えっと、もしかして、用事とかあったりした?」

 

 結衣はかなり恐縮した様子で二人に問いかけた。

 

「私は別に問題ないわ。八幡君は?」

「俺は……」

 

 実は前日、GGOで、こんな会話があった。

 

「あ、いたいた、シャナ、シズ~」

「ピトか、偶然だな」

「ピト、どうしたの?」

「えっと、実はね、今日は仕事の最終日でね、さっき東京に帰ってきたんだけど、

おみやげを買ってきたからさ、もし良かったら、明日時間があるならそこで渡すから、

是非二人に食べて欲しいなって思って」

 

 二人はそのピトフーイの心遣いに喜び、有難く受け取る事にしたのだが、

生憎その日は、明日奈は両親と久々に食事に行く予定があった為、

八幡が一人で受け取りにいく事になったのだった。

 

(まあ、おみやげを受け取って少し話すだけなら、時間的にも問題は無いか)

 

 そう考えた八幡は結衣に、俺も問題ないと答えた。

 

「良かったぁ、それじゃ、明日の待ち合わせ場所が決まったら連絡するね!」

「おう」

「ええ、分かったわ」

 

 こうして八幡は、同窓会っぽい集まりに参加する事となったのであった。

そして次の日八幡は、ピトフーイに指定された場所に行き、おみやげを受け取っていた。

 

「わざわざすまないな」

「ううん、気にしないで。シャナはこれから時間はあるの?」

「いや、実はな……」

 

 八幡は、急遽同窓会っぽい集まりに参加する事になった事をピトフーイに告げた。

 

「そうなんだ~、いいなぁ、私も行きたいなぁ」

「お前は別に同窓生じゃないだろ」

「そうだけどね~」

「まあ今回の集まりは、適当に横の繋がりで声を掛けた集まりみたいだから、

そんな厳密に、同窓生ばかりじゃない可能性もあるけどな」

「ふ~ん」

 

 八幡は、そういう理由で急いで行かなくてはならないとピトフーイに謝り、

ピトフーイはそれを見送った。

その際に、ピトフーイがこう呟いた事には八幡は気付かなかった。

 

「今シャナは、来ちゃ駄目って命令してこなかったな。これって前フリかなぁ?」

 

 そして三人との待ち合わせ場所に着いた八幡は、困り果てていた。

前日に明日奈に、助手席に誰かを乗せる許可は得たのだが、

その助手席に誰が乗るかで、三人が火花を散らしていたからだった。

 

「ここはやはり、副団長の私が乗るべきじゃないかしら」

「いやいや、ここはやっぱり誘ったあたしが!」

「二人は八幡との付き合いが長いんだから、今日はあーしに譲ってくれてもいいんじゃ?」

「……お前ら、別にそんな事はどうでも良くないか?」

「「「良くない!!!」」」

「お、おう、すまん……」

 

 困り果てた八幡は明日奈に連絡し、意見を聞く事にした。

明日奈の答えは、とてもシンプルかつ公平なものだった。

それをそのまま採用し、八幡は三人にこう宣言した。

 

「よしお前ら、明日奈の審判が下った。ジャンケンで決めろ」

「ジャンケン……」

「まあ、それが一番公平よね」

「あーし、ここぞという時はジャンケンで負けた事が無いんだよね」

「あら、それは私に対する挑戦かしら」

「ここはあたしも引かないよ!最初はぐー!ジャ~ンケ~ン!」

「「「ポン!」」」

 

 そのジャンケンの結果、勝者が誰になったかと言うと……

 

「ふふん、さすがあーし、勝負強い!」

「くっ……この私とした事が……」

「優美子がこんなにジャンケンが強いなんて……」

「よしお前ら、決まったのならさっさと行くぞ」

「「「は~い」」」

 

 そのピッタリ合った返事を聞き、八幡は、呆れたように言った。

 

「お前ら本当に、仲良しだよな……」

 

 そして車が発車し、優美子はとても嬉しそうに八幡に話し掛けた。

 

「こんな機会はもう二度と訪れないかもしれないから、勝てて良かったわ」

「まあ、確かにそうかもしれないけどね」

「でもあんたが同窓会に来るなんて、なんか珍しいよね。こういうの嫌いだよね?」

「まあ、話したいと思える奴もいなかったしな」

 

 八幡はその問いに頷くと、続けて今日参加する事に決めた理由をシンプルに言った。

 

「まあ今日は、戸塚が来るからな」

 

 それを聞いた優美子は、昔の事を思い出し、納得した。

 

「あ~……すごい納得したわ。あんた昔から、戸塚の事大好きだもんね」

「まあ正直、今は昔ほど盲目的に戸塚戸塚って言ってる訳じゃないがな。

戸塚同様に、今じゃ葉山も戸部も大事な友達だ」

「あんた……本当に変わったよね」

 

 優美子は感心したように八幡に言った。

 

「まあ、あーしも変わったけどね。まさかあーしが、こうしてあんたの隣に座ってるなんて、

高校の時は思いもしなかったし」

「確かにあの頃のお前は、俺の事大嫌いだっただろうしな」

「最初は確かにね。でも途中からは、嫌いなりにちゃんとあんたの事は認めてたけどね」

「そうか……まあ、お互い変わったって事だな」

「いい方にね」

「本当にいいのかどうかは分からないけどな」

「いいんだって。少なくともあーしは今の方がいい」

 

 そんな二人の弾む会話とは対照的に、雪乃と結衣はひそひそと会話をしていた。

 

「ゆきのん、なんかあの二人、いい感じなんですけど……」

「仕方ないわ、私達は負け犬なのよ。

ここは大人しく二人の会話を邪魔しないようにしましょう」

 

 そんなひそひそ声で会話をする二人の声が聞こえたのか、呆れたように八幡が言った。

 

「お前ら、馬鹿な事を言ってないで会話に加われよ。大体雪乃は昔から極端なんだよ」

「え?いいの?優美子は?」

「別に席順以外で勝負はしてないっしょ」

「やった!ゆきのん、会話に参加してもいいって!」

 

 それを聞いた雪乃は、コホン、と一つ咳払いをすると、優美子に言った。

 

「そう、敵に塩を送ろうなんてね。まあここは有難く受ける事にするわ」

「あんたのそういうとこ、すごく面倒臭い……」

「ははっ」

 

 突然八幡が笑い出し、釣られて他の三人も笑い始めた。

 

「本当に高校の時は、こんな日が来るなんて思いもしなかったよ」

「そうね、まあ私達はともかく、あの優美子がね」

「うん、多分これが、今日の一番のサプライズになるんじゃないかな?」

「あ~……まあ、確かにそうかも」

 

 こうして三人は、会場に着くまで、昔の思い出話に花を咲かせたのだった。

そして会場に着くと、そこでは葉山と戸部が待ち構えていた。

 

「ヒキタニ君!」

「比企谷、久しぶり」

「おお、二人とも元気そうだな。あ~……明日奈の時は、その……本当にありがとな」

「いいっていいって、あれは俺らにとっても輝ける青春の一ページっしょ!」

「はは、まあそれには同意だな。あの時の事は本当にいい思い出だよ」

 

 この三人の会話を聞き、優美子は首を傾げながら会話に加わった。

 

「何?どういう事?」

「優美子、久しぶり」

「うん、隼人も元気そうだね」

「あれ、優美子には言ってなかったっけ?俺と隼人君とヒキタニ君の華麗な活躍の事!」

「それは知らないかも。っていうか、あんた達三人が仲良くなった理由も、

今思えば詳しく聞いてなかった気がする」

「そういえばあたしも知らないかも?」

「私も詳しくは聞いてないわね」

 

 雪乃と結衣もその話は初耳だったようで、興味深そうに会話に参加してきた。

 

「それな!ヒキタニ君、俺が説明してもいい?」

 

 八幡が頷いた為、戸部が代表して、三人に当時の事を説明した。

 

「……ってな訳で、最後に俺達は三人で、勝ちどきを上げたっしょ!」

「そんな事があったんだ……それで今、こんなに三人は仲がいいんだね」

「すごいすご~い!」

「そう、あの須郷をね……ここは素直に賞賛しておくわ」

「それよりも俺は、あの優美子が、

今はヒキタニ君にベッタリな事が信じられないんですけど」

 

 突然戸部が優美子にそう言った。

優美子は口をパクパクさせると、頬を赤らめながら、ただ下を向いていた。

その優美子らしくない仕草は葉山と戸部を驚かせたが、

八幡は平然と優美子に近寄り、そのまま優しい言葉を掛けた。

 

「強気な方がお前には似合ってるぞ。今日はせっかくの同窓会なんだ。

昔みたいに格好いいお前の姿を皆に見せてやろうぜ」

「う、うん、そうだね、ありがと」

 

 優美子はその八幡の言葉にぱっと顔を上げ、嬉しそうにそうお礼を言った。

それを見た葉山と戸部は、更なる衝撃を受けた。

 

「うっわ、ヒキタニ君、マジリスペクトだわ!」

「すごいな比企谷、まさかあの優美子がこうなるとはね……」

「べ、別にいいでしょ!あーしだって、昔とは違うし!」

「まあまあ、それじゃそろそろ会場に入ろうぜ」

「その前に、海老名さんは今日はいないのか?」

 

 八幡は、着いた時から気になっていた事を戸部に尋ねた。

戸部は気まずそうな顔でそれに答えた。

 

「いや~、姫菜の奴、今日はすごく大事なイベントがあるらしくってさ、

何かの即売会とか何とか……」

「オーケー、もう言わなくていい。それで分かった、それなら仕方ない」

 

 戸部はその八幡の言葉を受け、ニカっと微笑むと、気を取り直して奥へと案内し始めた。

 

「こっちこっち、今日は貸切りっしょ!」

 

 そして戸部の案内で皆、会場へと移動を始めた。

会場は熱気でざわついていたが、一行が中に入ると、その喧騒がピタリと止まった。




嵐の前の静けさ
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