これからも少しでも楽しんで頂けるように、精進したいと思います。
さて、GGO編以降へ向けての仕込みが満載の、大幅な寄り道となった、
この一連のエピソードの結末は、明日明後日の二話構成でお送りします。
というかこの流れ、218話から開始だったんですよね。
まあ本筋の話もちょこちょこあったとはいえ、決着までに50話近く使ってますね……
まったく斜め上な展開になったものです。
2018/06/15 句読点や細かい部分を修正
「ただいま」
「おかえり、八幡君」
「お兄ちゃん遅いよ、でもお帰り!話は聞いたよ、頑張ったみたいだね」
「おう小町、お兄ちゃん、京都でかなり頑張ったぞ、いくらでも褒めてくれ」
「そう言われると、何か褒めたくなくなるんだよね……」
「ひどい……」
「で、何で遅くなったの?」
「といっても、そこまで遅い訳じゃないけどね」
小町がそう言ってきたのを、明日奈は軽くフォローした。
そんな二人に、八幡は、詩乃に友達が出来た事を説明した。
「という訳で、せっかくだから、ちょっと遠出してきたと、まあそんな訳だ」
「シノのんに友達が?そっか、もう学校の方も、平気そう?」
「ああ、狙い通り、もう問題は無さそうだったな」
「お兄ちゃん、やっぱりえらい!」
「うん、えらい!」
八幡は、その言葉に少し照れながらも、こう言った。
「そっちはどうしても何とかしたかったし、まあ良かったよ」
「あのだらだらしてたお兄ちゃんがねぇ……小町は本当に嬉しいよ」
「まあ俺は、仲間の安全の為に動いてるだけで、
むしろ問題なのは、その仲間がどんどん増えてるって事なんだけどな」
「ああ~、確かにすごい増えてる気がする……」
「しかも女の子ばっかりって、一体何でなのよ、お兄ちゃん」
「お、おう……なんでだろうな……俺にもよく分からん」
そして食事をした後、久しぶりに明日奈と小町は一緒に寝る事になり、
八幡も、疲れがたまっていたのか、すぐに寝る事にした。
そして同じ頃、遼太郎の家では、とある男女の熱狂的な声が響いていた。
「斎藤、貴様!」
「許せ沖田、仕方なかったんだ……」
「局長、やめて下さい!」
「副長、自分も、自分も最期までお供します!」
そしてエルザは、家で一人、明かりもつけずに、八幡から渡されたDVDを鑑賞していた。
ちなみに以前は、ストレス解消の為、ほんのわずかな期間ではあったが、
エムこと阿僧祇豪志が、半同棲のような形で同じ部屋に暮らしていたのだが、
今はそんな事も無く、エルザの部屋は、隠し撮りをしたシャナの写真で埋め尽くされていた。
ちなみにそれもまたご褒美なのか、エムは以前と変わらず、エルザに忠誠を尽くしていた。
「はぁ、はぁ……このお土産の、破壊力はっ、んんっ、最っ高っ……よし、もう一回……」
エルザは、既にこのDVDを、何度も何度も繰り返し視聴していたが、
飽きる事もなく、紅潮した顔で、再び再生ボタンを押した。
「こんなに沢山のシャナの写真に囲まれながら、こんなシャナの姿を見られるなんて……
んんっ、攻防一体っっっ、あっ……シャ、シャナあぁぁっ!」
そしてエルザは、びくんびくんと痙攣しながら、
この日何度目かの、シャナの名前を呼んだ。
そして次の日、大量の土産をキットに積み込んだ後、
そのまま学校へと向かった八幡と明日奈は、
駐車場で、和人達に渡す為の荷物を下ろし、久しぶりの登校だった為、
途中で何度も声を掛けられながら、そのまま二人で教室へと向かった。
「よっ、久しぶりだな」
「ただいま!」
「八幡、明日奈!」
「二人とも、やっと戻って来たか」
「お帰りなさい、二人とも!」
そして明日奈は、里香と珪子に、頑張って選んだ、明日奈とお揃いの髪飾りを渡した。
「うわ、まさに京都って感じ、でもちょっと派手すぎない?」
「花火の時とかに、浴衣に合わせると良さそうですよね」
「あ~、確かにそれ、いいかも」
盛り上がる三人の横で、八幡は和人に、八ツ橋を二つ渡した。
「和人すまん、これ、小さい方は、レコンに渡すように、直葉に頼んでくれないか?
大きい方は、そっちの家族の分な。あとこれ、明日奈が選んだ直葉への土産だ」
「私達が今つけてるのとお揃いだからね」
明日奈がそう、横から説明をし、和人は頷いた。
「了解了解、で、そのあからさまに怪しい包みが、俺用の土産か?」
「おう、これだ」
そう言って八幡は、模造刀をスラリと鞘から抜いた。
「こ、これは……修学旅行の定番だけど、友達の前で買うのはちょっと恥ずかしくて、
それを気にしない勇気を持つ、一部の者しか手に入れられないという、あの……」
「そうだ、まあ模造刀なんで銘は入ってないが、好きな名前を付けてやってくれ」
「そ、そうか、よし、俺にとって一番大事な名前を、お前に与える!
今からお前の名前は、ダークリパルサー丸だ!」
その言葉を聞いた瞬間に、吹き出した里香は、
顔を真っ赤にして和人に駆け寄ると、その背中を思いっきり叩いた。
「痛っ、いきなり何するんだよ、里香!」
「あんたね、一番大事って言ってくれるのは嬉しいけど、
いきなり訳の分からないおかしなセリフを、人前で簡単に言うんじゃないわよ!」
「べ、別にいいじゃないかよ、俺の勝手だろ!」
そう言い争いを続ける二人の横で、明日奈がクラス全員に声を掛けた。
「ちょっとした物だけど、皆の分もお土産を買ってきたから、順番にもらってね!」
その言葉に、クラスメート達は大喜びし、嬉しそうに明日奈から、その土産を受け取った。
「明日奈、何を買ってきたんだ?」
「ん?ただのキーホルダーだけど」
そのキーホルダーは、八幡達と同じクラスだった事の証として、
後に八幡デザインの加工が加えられ、多くの者達にとっては、家宝となる事となった。
そして放課後、八幡と明日奈に加え、里香と珪子もキットに乗り込み、
五人はそのまま、雪乃達との待ち合わせの場所へと向かっていた。
これは、話を聞いた里香と珪子も、今日の集まりに参加する事にした為だった。
ちなみに和人は、バイクを置いていく訳にもいかず、
嬉しそうにダークリパルサー丸を背負ったまま、一人で帰っていった。
そして八幡は、明日奈達を送り届けた後、ソレイユへと向かった。
お土産は昨日のうちに渡してしまったが、倉エージェンシーに乗り込んだ時にどうするか、
陽乃とアルゴを交え、クラディールこと倉景時の弟の、朝景と話をする為だった。
朝景は、確かに野心的な顔付きをしていたが、信義は守る男のようで、
事前に話を聞いていたのだろう、八幡に、いきなり頭を下げた。
「比企谷さん、相手をするだけでも気持ち悪かったでしょうに、
SAOでは、うちの馬鹿が、本当にお手数をお掛けしました。
本当に申し訳ありませんでした!」
その朝景の言葉に、八幡は我慢出来ず、ぷっと吹き出した。
そして朝景も、それにつられて吹き出した。そして二人は、そのまま笑い始めた。
「あはははは、随分ストレートに言いますね、倉さん。
やっぱりクラディール……あっと、お兄さんの事が嫌いですか?」
「あいつを兄と呼ぶ事は、私にとっては、苦痛以外の何物でもないですから、
あいつの事は、これからはクラディールって呼ぶ事にしましょう。
クラディールの思考回路って、本当に気持ち悪いんですよね」
「あ、やっぱりご家族でも、そう思うんですね」
「はい、あの肥大した自尊心は、僕にはまったく理解出来ません。
うちの親も、多分そう思っているとは思うんですが、
いつかはまともになるんじゃないかって、どこかで期待してるんですかねぇ……」
「でも、さすがにそれを待っている訳にはいかないし、そうなるとも思えないですよね」
その言葉に、朝景は、とても申し訳なさそうな顔で答えた。
「はい、私も話を聞いて、改めて調査させたんですが、
うちに所属している女性達からの、うちへの評判は、
地に落ちていると言っても、過言ではないレベルまで悪化してました。
僕ももうこれ以上、黙ってる訳にはいきません」
「そこまでですか……」
「なので、僕がこの事を解決するまで、しばらくクラディールからの連絡には、
一切耳を貸さないで無視するようにと、各マネージャー達に言い含めてあります」
「分かりました、明日必ず決着をつけましょう」
「はい、必ず」
「ところで、あいつにラフコフのマークは見せてみましたか?」
八幡は、ふとその事を思い出し、朝景にそう尋ねた。
「はい、こっそり机の上に置いて、反応を見てみたんですが、
それからクラディールの奴、妙に周囲を警戒するようなそぶりを見せるようになりましたね」
「警戒……ですか」
(って事は、直接連絡を取り合ってるとかじゃないみたいだな……
まあ機会があったら、確認してみる事にするか)
八幡は、その朝景の説明から、そう推理した。
そして四人は、綿密に計画を立て、明日どうするかの話し合いを始めた。
明日奈は結局同行させない事となった。やはりあの変態の視界に明日奈を入れる事は、
八幡には、まったく許容出来なかったのであろう。
そして八幡は、事前に用意してあった封筒を取り出し、朝景に見せた。
「明日俺は、あいつにこれを渡すつもりですが、朝景さんはどう思いますか?」
「これは……海外のビジネススクールの案内と、入学申し込み票ですか?」
「他にも脅す為の資料をいくつか入れますけどね。
まあ、そうはならないだろうとは思うんですが、
あいつが黙ってこれを持って立ち去るなら、そのままにしてもいいかなと。
まあ、真人間に戻る、最後のチャンスって奴ですね」
「……そうですね、あの馬鹿にもそれくらいのチャンスはやってもいいかもしれませんね」
「まあそれを生かせるかどうかは、あいつ次第って事で」
「分かりました、まあ僕は、生かせないだろうと思いますが、それでお願いします」
そして四人は、どういう順番で当日の話を進めるかを何度もシミュレーションし、
それに関して、いくつかの仕掛けを準備する事にした。
「出来ればこの仕掛けが、無駄になってくれればいいんですけどね……」
「まあ、それならそれで、父さんには悪いけど、仕方ないんじゃないですかね」
「まああいつが、そこまで愚かじゃない事を祈りましょう」
そして次の日八幡は、陽乃と共に、倉エージェンシーの事務所を訪れた。
「八幡君、正直どんな結末になると思ってる?」
「まあ……あの馬鹿がどう変わってるか、見てみない事には何ともですかね」
「まあ、それはそうよね」
「それじゃ行きましょう」
「油断しないでね」
「はい」
そして二人は、待っていた朝景と合流し、社長室へと向かった。
その途中、廊下で何か作業をしていたアルゴを見付け、
八幡は、アルゴに確認するように声を掛けた。
「どうだ?」
「こっちは完了だ、後はモニターと同期されるだけだゾ」
「オーケーだ、それじゃあ一緒に社長室へ向かうか」
「了解ダ」
そして社長室へと着いた四人は、そのドアをノックした。
本年は本当にありがとうございました、それでは良いお年を!