「なっ……」
「戦争?どういう事だよ……」
「まじかよ、俺シャナと戦うの嫌なんだけど……」
そしてシャナが、今回の戦争のルールについて説明を開始した。
「さて、ここからは普通に話させてもらう。
今回俺は、戦争を始めるにあたってザスカーの担当者に連絡をとった。
そして作ってもらったのがこれだ」
ちなみにそれはアルゴが用意した物であるが、
どうやらシャナは、ザスカーに作ってもらった事にしたらしい。
それはシンプルな白い旗と赤い旗だった。
「さて、俺の名前は何だ?シャナだ。そう、遮那王のシャナだ。
つまりこれは源氏の白旗と平家の赤旗をイメージして作られている。要するにそういう事だ」
そしてシャナがコンソールを操作した瞬間、GGO全体にアナウンスが流れた。
『ただいまから臨時イベント、GGO源平合戦が開始されます』
「おいおいまじかよ、シャナの奴運営を動かしやがった……」
「というか噂が本当だったら、
シャナはとっくにハラスメントで処分されてるんじゃないのか?」
「くそっ、何がなんだかさっぱりだ」
「確実に言えるのは、俺達は人数だけは多いが、別に正義でも何でもないってこった!」
そして再びシャナが話し始めた。
「さて、皆にはこれからこの街の東と西に走ってもらう事になる。
もっともイベントに参加する気がない奴は、そのまま無視してもらって結構だ。
ちなみに今回のイベントはスコードロン専用なので、個人で参加したい奴は、
臨時のスコードロンでも組んで参加してくれ。
さて、今この街の東には源氏の白旗、西には平家の赤旗が用意されている。
俺が嫌いな奴は遠慮なく平家の旗を取ってくれ。ちなみに旗をとったら、
旗持ちプレイヤーは毎日必ず一度以上戦闘をしないと失格になるからな。
ちなみに今日は戦闘をしなくてもセーフだ」
「おい、どうするよ……」
「スコードロンで会議の召集だ、ちょっと行ってくるわ」
「うちは中立だし、ルール次第かな」
そんなプレイヤーを横目に、一部のプレイヤー達が、
戦争だ戦争だと叫びながら西へと走り出した。気の早い事である。
「各スコードロンで一人、その旗を持つ係を決めてもらう。
そのプレイヤーの頭の上に、白か赤どちらかの旗が自動で表示される。
そいつが死んだらそのスコードロンは敗北だ、もう戦争への参加を継続する事は出来ない。
頑張って旗持ちプレイヤーを守ってくれ。ちなみに旗持ちプレイヤーが戦場にいない場合、
そのスコードロンは他のスコードロンのプレイヤーに攻撃する事は出来ない。
だが攻撃はされるから、その点は注意してくれ。
旗を持たないプレイヤーも、一度死んだらそこで失格になるからな。
イベントに参加していないプレイヤーは、イベント期間中は、
イベント参加中のプレイヤーには一切手出し出来ないから注意してくれ」
このシャナの説明で、要はシャナは関係なく、
スコードロン単位で戦うだけのイベントだと、プレイヤー達はそう考えた。
だが次の説明で、その考えは完全に否定された。
「期間は一週間、最初の六日はフィールド戦だ。そして最後の一日は拠点攻略戦だ。
俺が旧首都の砦に立てこもるので、それを攻略してもらう事になる。
もちろん俺の味方には、最終日に一緒に砦に篭ってもらう事になるんだけどな。
ちなみに敵スコードロンの旗持ちを倒す度に、そのスコードロンの旗に星が一つ追加される。
最後まで生き残ったスコードロンには、その星の数に応じてボーナスが支払われる。
そして俺の旗にかけられた星の数は、通常の百倍に設定させてもらった。
我こそはと思うスコードロンの奴らは、俺に挑んでこい。
そいつには、GGOでの最強プレイヤーの称号が与えられるかもしれないな、
特にお前だ、なんちゃってBoB優勝者って言われるのはもう嫌だよな、なぁ?ゼクシード」
そのシャナの言葉にゼクシードは顔を真っ赤にして答えた。
「いいだろう、その挑発に乗ってやるぜ、後でほえ面かくなよ」
ちなみに群集はゼクシードにはあまり興味が無いらしく、
もしかしたらゲット出来るかもしれない百倍の報酬に興味を抱いていた。
「まじかよ、いくらになるかは分からないが、星一つで千円とかケチな事は言わないよな?」
「シャナがああ言ってるんだ、心置きなく敵対させてもらおうぜ」
この最後のシャナの言葉で、現在のお互いの戦力比は百倍にまで膨れ上がった。
「さて、主なルールはそのくらいだ。細かいルールは旗に書いてあるから、
後は各自でそれを見ておいてくれ。残り期限はあと一時間、
今は午後八時なので九時まで待つ。九時になった瞬間に開戦だ。
今ログインしていない友人達にも、その間にこの事を伝えてくれ。
もっとも外部の主だった動画サイトでも、この映像は流れているがな」
そしてシャナの映像はそこで途切れた。と思った直後にまたシャナがモニターに現れた。
「一つ言い忘れていた、この戦争の模様は、
各自の持つ旗によって映像として記録されている。録画機能付きの旗とか優れ物だよな。
それを毎日ソレイユの運営するサイトにて公開する予定だ。
イベントに参加しない者達も、それを見て楽しんでくれ」
「ソレイユ?今ソレイユって言ったか?」
「シャナのバックはソレイユなのか?」
「それじゃあ資金的なバックアップもあるだろうし、
本当に賞金の額がとんでもない事になるんじゃないのか?」
そして今度こそシャナはモニターから姿を消し、
代わりにそのモニターには、現在の白軍と赤軍の参加スコードロン数が表示された。
現在の参加数は白軍が一、赤軍が百二十である。白軍の一はシャナ達である為、
今のところは全てのスコードロンがシャナ達の敵に回った事を意味する。
「どっちに付くか決断しないといけないとは言ってもな……」
「そんなの赤に決まってるだろ、どう考えても数が違いすぎるぜ」
「この数相手ならシャナが負けても仕方ないって事で、シャナの名声も別に下がらないしな」
「むしろこれはシャナからの俺達へのボーナスと言うべきなんじゃないのか?」
そういった意見が大勢を占め、源氏軍の勢力はずっと一のまま、
平家軍の勢力だけがどんどん増加していった。
「こうも思惑通りにいくと、逆に心配になっちまうな、
あいつらは自分の頭で考えるって事が出来ないのか?」
「まあいいんじゃないか?ちゃんと選択の自由は与えた訳だし、
その結果どうなろうとあいつらの自己責任だ。問答無用で敵に認定した訳でもないしな」
薄塩たらこはそう主張し、闇風もそれに頷いた。
「そうそう、どちらに付こうとあいつらの好きにさせればいいさ、
例えその結果、どんな情けない目に合おうともな」
そしてまもなく九時になろうかというタイミングでシャナが言った。
「そろそろ時間だな、戦力比はどのくらいになった?」
「八対二百十一だな」
「俺達、たらこ、闇風、ダイン、エヴァを除いたら三組か、
誰だか分かったら世界樹要塞へご招待だ。もちろんピンチになっていたら助ける」
そして九時になり、公式のアナウンスが全プレイヤーに届くよう、高らかと宣言された。
『これよりイベントが開始されます、これよりイベントが開始されます』
その告知を聞いた全プレイヤーは雄たけびを上げた。
だがその直後にとんでもない展開が待っていた。
「よぉお前ら、このところ随分好き放題やってくれたよな、まったく参ったよ」
再びシャナの姿がモニターに現れそう言った。
「自業自得だろうが!」
「何だよ、命乞いか?」
「女の敵め!首を洗って待っていやがれ、必ず倒してやるからな!」
その声は当然シャナには届いていないが、イベントのせいで皆高揚しているせいか、
群集の大多数はそんな感じだった。噂を信じていなかった者達ですら、
その場のノリで似たような事を言っていた。これが群衆心理なのだろう。
そしてシャナは、問いかけるような口調で話を続けた。
「さて、そんなお前らに、親切のつもりで一部情報を開示してやる事にした。
あまりに秘密主義だとまたおかしな噂が流れるかもしれないからな。
信じるか信じないかは好きにしろ。現在俺の仲間は全部で九人。
俺、シズカ、ベンケイ、シノン、ピトフーイ、ニャンゴロー、イコマ、エム、ロザリアだ。
それじゃあ自己紹介を頼む」
「はぁ?」
「自己紹介?何の為に?」
「まあ聞いてみようぜ」
そして八人は自己紹介を始めた。
「シズカです、シャナのリアル同級生です」
「ベンケイです、シャナのリアル妹です」
「シノンよ、シャナの狙撃の弟子になるのかしらね」
「ピトフーイよ、シャナを頑張って探し出して、押しかけ下僕になったわ」
「ニャンゴローだ、シャナのリアル元同級生だな」
「イコマです、シャナさんのリアル友人ですね」
「エムだ、俺はどちらかというとピトフーイの友人だな」
「ロザリアです、シャナは学生だけど仕事もしているので、私はそのリアル部下です」
その言葉を聞いた群衆はぽかんとし、口々に騒ぎ始めた。
「おい、これって……」
「八人中五人がただのリアル仲間じゃねえかよ……」
「純粋にゲームからの仲間っぽいのはエムを除けばシノンとピトフーイだけじゃねえか」
「無責任な噂を流した奴は誰だよ!あと噂に乗っかった馬鹿は出てこい!」
そして再びシャナが画面に現れた。
「リアルの友人関係だけ見れば男女比は一対二、イコマ、シズカ、ニャンゴローだ。
お前らに三人友人がいたとして、それくらいの比率は珍しいのか?
まあ珍しいんだろうな、だからお前らは俺に色々言ってきたんだろうしな。
ちなみにシノンとピトフーイだが、シノンはスナイパー候補だったし、
ピトフーイは第一回BoBの映像を見て個人的に俺を追いかけていただけだからな、
お前らの誰かがスナイパーとして俺の前に現れていたら、
シノンの場所に立っていたのはお前らの誰かかもしれないし、
お前らの誰かが俺に会おうと頑張って努力していたら、
ピトフーイの位置に立っていたのはやっぱりお前らの誰かだったかもしれないな。
で、俺がこいつらを脅して従わせているんだったか?本当に面白い事を言う奴がいたもんだ」
その言葉はあえて煽り気味に放たれた為、多くのプレイヤー達は熱くなり、
口々に画面に向かって罵声を浴びせ始めた。
「それが本当かどうかなんて分からないじゃないかよ!」
「そうだそうだ!」
「証明出来るもんならやってみろよ!」
「えっと、こういう事を言うのは趣味じゃないんだけどね」
そしてシズカが画面の中に現れ、こう言った。
当然場が熱くなっているのを予想してである。
「無責任な噂に乗っかった人達は、今周りにいる女性プレイヤー達が、
自分達の事をどんな目で見ているか自覚した方がいいんじゃないかな?」
その言葉を聞いた瞬間、当事者である男性プレイヤー達の視線が、
周りの女性プレイヤー達に一斉に注がれた。
その女性達の全てが、そんな男性プレイヤー達を嫌悪のこもった目で見つめており、
その瞬間に熱狂が覚めたそのプレイヤー達は、自分達のしでかした事の意味を悟った。
そしてそこにピトフーイが追い討ちをかけた。
「お前らは私の友達のロザリアちゃんに、拷問まがいの事までしてくれたわよねぇ?
もちろん反対した人もいるだろうけど、事実は事実だからね。
その時たまたまいなかった奴も同罪だし、
シャナが怒ってこんなイベントを企画するのも当然だよね」
「あの噂は本当だったのか……」
「最悪……」
「正直限度を超えてるよね」
当事者達はそれに何も言い返せず、その場で縮こまった。
そしてその中の一人が、何かに気付いたようにこう言った。
「お、おい……今確か、こんなイベントって言ったよな……?」
「何かあるのか……?」
その囁きはどんどん広がっていき、群集はどういう事なのかとシャナの言葉を待った。
そしてそんな現状を読んでいたのか、再びシャナが現れた。
「さて、そろそろ気付いた奴もいるかもしれないが、
今回のイベントは俺からのお前らに対する意趣返しだ。
巻き込まれた一般のプレイヤーには悪いと思うが、まあリスクも何も無いのは確かだから、
のんびりとイベントを楽しんでくれ。いつでもリタイア出来るしな。
さて、俺の事が嫌いで仕方ない馬鹿ども、あえてそういう言い方をさせてもらうが、
馬鹿どもに一つ聞く。お前らは今の自分の立場を分かっているのか?
お前らは、俺がどこにいるのか分かっているのか?
毎日一度でも戦闘に参加しなければ、失格になるって分かってるか?
戦力比は八対二百十一だぞ?そもそもお前ら、源氏軍を見付けられるのか?」
その言葉を聞いた平家軍の者達は、その言葉で始めて状況を把握した。
「八対二百十一……しかも相手はおそらく車による機動力を確保してるよな……」
「そもそも敵はどこにいるんだよ!
下手をすると、何も出来なくて終わっちまうだけじゃないのか?」
「やられた……いくら何でも戦力が偏りすぎだろ……」
絶望に駆られたプレイヤー達は、どうするのがベストなのか判断出来なかった。
その心の隙を突くように、シャナは次にこう囁いた。
「まあリスクも何も無いとはいえ、このままじゃお前らも感情的に納得しないよな。
そこでお前らに一つ朗報だ、よく画面を見てくれ。
この映像は、今俺の旗から見える映像を特別に流してもらっている物だからな」
その言葉を聞き、画面に見入った者達は口々にこう叫んだ。
「おいあれ、『この木なんの木』なんじゃないか?」
「そうだよ間違いない、でもあそこって遠いんだよな……
「ともかくあの辺りに行けば、確実に敵が存在するって事か」
そしてシャナはこう言葉を続けた。
「どうだ、何か見えるだろ?俺達はしばらくはここを本拠地にし、
ここから各方面に出撃する事にする。俺の知らない三組の源氏軍の戦士は、
可能ならここまで来てくれ。そうなったら俺が必ず保護すると約束する。
もちろん秘密裏に連絡してきてくれてもいい。たまには街にも戻るつもりだからな」
「あの付近に拠点に出来るような施設なんかあったか?」
「シャナがそう言うからには、何かしらあるんだろうよ」
「最後に平家軍の戦士達よ、いい物を見せてやろう」
そして映像がぐるっと周り、前方に二台のジープの姿が現れた。
その二台のジープの上には、平家の赤旗がひらめいていた。
「目端のきく何人かが、街から俺達をずっと追いかけてきてたんだよな。
なので開戦ののろし代わりに、今からあいつらと交戦する。
おい馬鹿ども、自分達がこれから誰を相手にする事になったのか、
その濁った目でしっかりとこの戦いの結果を見ておけよ」
そう言ってシャナはM82を取り出すと、まともに狙いもつけず、
いきなり先頭のジープ目掛けて銃弾を発射した。
その瞬間にジープのフロントガラスに穴が開き、運転手が眉間を撃ち抜かれ、
そのジープは砂埃をあげてその場で回転した。
「何だよそれ……」
「まともに狙ってるようには見えなかったぞ」
そしてその直後に、後続のジープから銃弾の雨がブラックに降り注いだが、
ブラックの装甲はそれを全て弾き返し、逆にブラックから、
最初に停止したジープに銃弾の雨が降り注ぎ、中に乗っていた者達はあっさりと全滅した。
「何だよあれ……」
「おかしいだろ……」
直後に百八十度回頭したブラックは、もう一台のジープの後ろに張り付き、
そのままワイヤーランチャーを射出した。そのワイヤーは残りのジープの後部に刺さり、
ブラックが急ブレーキを掛けると、ジープはそのパワーに負け、まったく進めなくなった。
「まじか」
「どれだけパワーがあるんだよ、あのハンヴィー……」
「あれはかなり改造されてるな」
そしてそのままだと狙い撃ちされるとでも思ったのか、
ジープの中から三人のプレイヤーが飛び出してきた。
観戦していた者達は、中にいようが外に出ようがどちらにしろ撃たれるだろうと思い、
固唾を飲んでどうなるか見守っていたのだが、
案に相違してブラックからの銃撃はまったく無かった。
その代わりにシャナがジープの中から飛び出し、
まっしぐらにその三人の方へと走り出した。
「うわ、まさかの接近戦?」
「確かにシャナといえば接近戦だけどよ」
「シャナはどうするつもりだ?あれじゃ狙い撃ちされるだけだろ?」
その言葉通り、三人は慌てて銃を構え、シャナ目掛けて発砲しようとした。
その瞬間にシャナの持つ何かから、黒い散弾のような光線が発射され、
周囲にすさまじい砂埃が舞い上がった。
「うわ、何だ今の?」
「光学散弾銃か?それにしちゃ何かおかしかったが」
「太い棒みたいなのを持ってなかったか?」
「まさか新兵器か?」
そして砂埃が晴れた後、そこには一人のプレイヤーの姿しか無く、
そのプレイヤーは腕を失っており、何の武器も持ってはいなかった。
そしてシャナが画面に向かってその手に持つ武器を指し示した。
それは黒い刃を持つ光剣であり、観客達はそれを見てどよめいた。
「おい、あれって……」
「黒い刃の光剣?あのネタ武器の?」
「いやいやまさか、あれは本当にただの光る棒だぞ?」
そして当事者間でも、こんな会話が繰り広げられていた。
「何だよそれ……」
「次はお前の首を刎ねるぞ、備えておけよ」
次の瞬間シャナが刃を振るい、そのプレイヤーの首を刎ねるのを見て、
観客達は一様に言葉を失った。
「何だよあれ……」
「もしかして光剣とは別の何かなのか?」
「あれだ!俺達はこの前あれにやられたんだ!」
「おい、誰かあれについて知ってる奴はいるか?」
だがその問いに答えられる者は誰もおらず、辺りは静寂に包まれていた。
そして画面の中のシャナはARを仕舞い、モニターに向かってこう言った。
「ちなみに今の奴らは、うちのロザリアが拷問された時に参加してた奴らだったから、
この手で直接殺す事にした。もう分かったと思うが、
一度でもそういう集まりに参加した事のある奴は、既にこちらのリストに載っている。
お前らは安易にリタイア出来ると思うなよ?もしそれが確認されたら、
こちらはそのリストを公開する準備がしてあるからな。
恨むなら自分の愚かさを恨め、お前らは皆殺しだ、絶対に逃がさん。
さっきも言ったが今日はカウントの上ではゼロ日目と判断されるそうだ。
だから今日は戦闘をしなくても失格にはならないらしいぞ。
安心して明日までにどうするか作戦を練ってきてくれよ。
最後に字幕付きで、ザスカーの担当者の言葉をお前達に伝える。それじゃあまた明日な」
そしてシャナの姿が画面から消え、代わりにシンプルな字幕と音声が再生された。
そこにはこう書いてあった。
『このイベントを不公平だと思うプレイヤーもいるでしょうが、
全員に平等にチャンスは与えているはずですので、それは全て貴方達の選択の結果です。
せめて正々堂々とイベントを楽しんで下さい。
ちなみに道義的には、我々はあなた方を絶対に支持しません。
今回のイベントは、そういう我々の感情が反映されたものだとお考え下さい』
これはソレイユとの提携を視野に入れたザスカー首脳陣の、
ある意味リップサービスの部分が大きかったのだが、
その文字を見た反シャナ派のプレイヤー達は顔を真っ青にした。
自分達の行為が、公式に運営に否定された事になるからだ。
イコールそれは、シャナが無実だという事の証明にもなった。
ルール違反では無いので特に処罰とかは無いのだが、
シャナがそのリストを公開した瞬間に彼らは叩かれる立場になり、彼らの命運は尽きるのだ。
こうして彼らの逃げ場は失われ、もう後が無い彼らは、せめてシャナに一矢報いようと、
決死の覚悟で『この木なんの木』に向かい、バタバタとシャナに倒されていく事となる。