ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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滅多に無いこの作品での斜め上の話ですね!(それをどの口が言う)
いやもちろん理由はあるんですけどね!この二人が設定的に都合が良かったのと、
残りはあとがきにて!

2018/06/16 句読点や細かい部分を修正


第339話 そしてメイドは八幡と出会う

「メイド喫茶だと?」

「まだあくまで実験段階だから、

大手の家電店でやるのはちょっと早いんじゃないかって話になったらしいよ」

「商品化するかも分からないような、本当に実験段階の企画って事か」

「うん」

「まあとりあえず行ってみるとしよう」

 

 そして四人は楽しそうに話し始めた。

 

「私メイド喫茶って行くの初めて」

「これで私もついにお嬢様デビューかぁ……」

「メイド服の試着でもしてみようかな?」

「八幡の前でそんな格好したら襲われるかもしれないわよ」

「え~?それに何の問題があるの?」

「むしろ望むところじゃない」

「詩乃っち、この二人がこうなったら何を言ってもフリにしかならないよ」

「そうね……」

 

 その会話にさすがに我慢出来なくなったのか、八幡は四人に言った。

 

「お前ら俺がいるって事を忘れるんじゃねえ」

「「「「は~い」」」」

 

 そしてキットが、まもなく現地に到着すると告げてきた。

 

「八幡、そろそろ目的地に到着します」

「そうか、まあお前ら、今日は何も考えず楽しんでくれ」

 

 

 

 その日の仕事が一段落し、何か面白い事でも無いかなと休憩中に窓の外を眺めていた、

メイクイーン・ニャンニャンのメイドの一人であるフェイリスの目に、

不思議な五人組の姿が映った。

 

「はぁ、今日もアキバは平和だニャ……むむっ、あれは……ガルウィング!?

これは珍しいものが見れてラッキーだったニャ。乗っているのは女子高生の四人組?

それとそれを連れまわす一人の男性…………

ニャニャッ!?誰も乗ってない車が走り去っていったニャ!?

まさかあの車は失われた古代文明の遺産ニャ?それにあの男性の、あのオーラは……

これは俄然興味が沸いてきたニャ、あの人達、うちにお客として来てくれないかニャ」

 

 その刹那、一瞬八幡とフェイリスの目が合った気がした。

八幡は単にこれから入る店を眺めただけであり、

確かに中にメイドさんがいるなと思っただけなのだったが、

フェイリスにとってはそれは運命を感じさせるものだった。

 

「まさかこれがキョーマの言っていた、シュタインズ・ゲートの選択なのかニャ?」

 

 フェイリスはそう考え、期待に胸を膨らませた。

そして八幡達が店の入り口へと向かって歩き出すのを確認したフェイリスは、

休憩を途中で切り上げ、急ぎ店内へと戻った。

そして目的の五人組が入ってくるのを見たフェイリスは、同僚達にこう声を掛けた。

 

「ごめんニャ、あの五人組はフェイリスにご奉仕させて欲しいニャ」

 

 フェイリスがそんなお願いをした事は今まで一度も無かった為、

同僚達は驚きつつも、それを許してくれた。

 

「ありがとニャ!」

「フェリスちゃん、ところで休憩は?」

「途中で切り上げてきたニャ、窓からあの五人が見えたからニャ」

「そうなんだ、誰か気になる人でもいたの?」

「あの男の人から凄まじいオーラを感じたのニャ」

「そっか、いい事があるといいね、フェリスちゃん」

「うん!」

 

 そしてフェイリスは、ドキドキしながら五人の所へと向かった。

 

(こんな気持ちになるのは久々だニャ)

 

「いらっしゃいませご主人様、お嬢様方。

本日担当させて頂くフェイリス・ニャンニャンですニャ」

「あ、宜しくお願いします」

「それではお席へ案内しますニャ」

 

 そして五人を席へと案内し、メニューを渡したフェイリスは、

にこやかな笑顔で八幡に話し掛けた。

 

「ご主人様からは何かオーラを感じたのニャ、

もしかして前世の記憶をお持ちですかニャ?」

 

(ん、ネタなのかな、ここでおかしな否定の仕方をしたら、せっかくの空気が壊れちまうか)

 

 そう余計な気をまわした八幡は、フェイリスにこう答えた。

 

「いや、前世も何も、俺は闇の妖精だからな、かつての記憶は鮮明に頭の中に残っている」

 

(ALOじゃスプリガンだし、合ってるよな、うん)

 

 その言葉を聞いた四人は、ひそひそと囁き合った。

 

「ねぇ詩乃っち、八幡さんはどうしちゃったの?」

「多分あれは、空気を読んで相手のノリに合わせたんだと思う」

「あっ、そういう……」

「私達も何かあったら合わせないとだね!」

「えっ、私も?」

「当然!」

 

 そしてフェイリスは、その八幡の言葉にこんな反応をした。

 

「ニャニャッ!?まさか闇の妖精とこんなところでお会い出来るニャんて……」

「あと、ご主人様って呼び方をされると少し緊張しちまうから、

出来れば俺の事は八幡と呼んでくれ」

「八幡……八幡……分かったニャ、八幡!」

 

 フェイリスはそう言われ、とても嬉しそうに八幡の名前を呼んだ。

 

(いきなり呼び捨てにされてもまったく気にならないどころか、

昔からずっと友人だったような気にさせられるな、これがプロって奴なんだろうな)

 

 八幡はそう思い、少しサービス精神を発揮してこう付け加えた。

 

「ちなみにこいつは猫の妖精で、ゴーレムマスターだ」

「ニャニャ、ニャんと!?」

「ちょっと八幡」

「ケットシーなんだから合ってるだろ?」

「それはそうだけど」

「俺はゴーレムじゃない、どちらかというと自動人形だな、オートマタだ」

 

 突然シノンの持つ荷物からそんな声がし、中からはちまんくんが飛び出した。

それを見たフェイリスは驚いたが、それをおくびにも出さずにこう言った。

 

「まさか……まさかまさか、これが妖精界の至宝と言われたあのオートマタかニャ!?」

「ああそうだ、今回は特別に連れて来たんだ」

「感激ニャ!まさか本物をこの目で見れるとは……」

 

 そして八幡は、こっそりと詩乃に尋ねた。

 

「…………おい詩乃、何故それがここにいる」

「わ、私にも何がなんだか……」

 

 困った顔をする詩乃の代わりに、はちまんくんがそれに答えた。

 

「こっそり詩乃の荷物に潜り込んだからな、っていうか重さで気付けって」

「うぅ……」

「まあいい、こうなったら適当に話を合わせろよ、詩乃」

「う、うん」

 

 そして八幡は、フェイリスに向かってこう言った。

 

「フェイリス、このオートマタの事は内密に頼むぞ、

最近妖精界にもスパイが入り込んでいてな、

こいつがここにいると分かったら、狙われるかもしれないからな」

「任せるのニャ!」

 

 実はこの時フェイリスは、はちまんくんのあまりの人間臭さを見て内心で動揺していた。

 

(何なのニャこれは……この人はフェイリスが思った以上に大物なのかもしれないニャ)

 

 そして八幡はフェイリスにこう言った。

 

「とりあえず俺はホットコーヒーを、ついでにトイレの場所を教えてくれ。

詩乃達はその間に注文を決めておいてくれ」

「うん、分かった」

「どうする?」

「私お腹すいた!」

「もうお昼を軽く回ってるし、少し重めの物でもいいかもね」

「俺のおごりだから遠慮するなよ」

 

 八幡は四人にそう声を掛け、フェイリスの後に続いた。

 

「それじゃあこちらへどうぞニャン」

 

 そして四人の死角に入った瞬間、八幡はフェイリスを呼びとめてこう囁いた。

 

「さっきはいきなりで驚かせちまったな、ごめんなフェイリス。

あいつは俺の人格を参考に作られたソレイユ製のロボットでな、

市場にも出回ってないから、秘密にしておいてもらえると助かる」

 

 それを聞いたフェイリスは、あのソレイユならそれくらい有りかもしれないと納得した。

そしてフェイリスは、八幡にこう尋ねてきた。

 

「八幡はソレイユの人なのニャ?それじゃあ今日ここに来た目的はもしかしてアレかニャ?」

「ああ、アルゴに教えられてきたんだよ、ここにソレイユの試作品が置いてあるってな」

「なるほどニャ、八幡は魔王からの使者だったのニャね」

 

 それを聞いた八幡は仰け反った。

 

「魔王が自分でそう名乗ったのか?」

「ううん、フェイリスの感想ニャ」

 

 それを聞いた八幡は、素直に感心した。

 

「……凄いなフェイリス、実際あの人のあだ名は魔王なんだ」

「魔王がここを訪れた時は凄かったニャ、八幡とは別の意味で、凄いオーラだったニャ」

「別の意味って、俺からもそのオーラとかいうのが出てるのかよ……」

「うん、沢山出てるニャ!」

「ま、まあいい、とりあえず今日その機械は使えるか?」

「実は今調整中なのニャ……でも壊れてるとかじゃニャいから、使うのに問題はないニャ」

「そうか、頼めるか?」

「そうニャねぇ……」

 

 そしてフェイリスはじっと八幡を見つめた後、こんな条件を出した。

 

「おーけーニャ、その代わり八幡に頼みがあるのニャ」

「頼み?俺に出来る事であれば問題ないが……」

「フェイリスにも、八幡がプレイする姿を見せて欲しいのニャ!

正直今までのご主人様達は、興味本位の素人さんばっかりで、

フェイリスはちょっと欲求不満だったのニャ」

「俺のプレイ姿な……」

 

 それを聞いた八幡は考え込んだ。

 

(GGOの時間にはまだ早いし、俺がALOのハチマンだとバレるのはな……

まあいいか、あの姉さんとアルゴが選んだ人だ、秘密は守ってくれるだろう。

その前に一応確認するか……)

 

 そして八幡はフェイリスにこう言った。

 

「なぁ、フェイリスはALOについては詳しいのか?」

「ここに機材を設置する時に、

お試しでアルゴにゃんに少し説明しながら案内してもらったのニャ。

あれは甘美な体験だったニャ!」

「なるほどその程度か、俺のゲーム内での姿について、

誰にも言わないと約束してくれるならオーケーだ」

「それでいいニャ!しかしその言葉、今のフェイリスは期待感でいっぱいなのニャ!」

「期待に添えるように努力はするけどな」

「お願いなのニャ!」

 

 そして八幡はフェイリスと共にテーブルに戻り、注文と同時に個室へと案内された。

そこには数台のアミュスフィアとモニターが設置されていた。

 

「ここがソレイユが作ったっていう施設なんだね」

「おう、本当は調整中らしいんだが、フェイリスに頼んで使わせてもらえる事になった」

「あ、そうだったんだ、ありがとうフェイリスさん」

「うわぁ良かった、ありがとう!」

「どう致しましてニャ、それじゃあ調整を中断してもらうニャ……あっ!

八幡、調整してくれている人も裏のモニターで見る事になっちゃうけどいいかニャ?」

「誰が調整してくれてるんだ?」

「アルゴニャンの知り合いで、私の知り合いでもあるスーパーハカーだニャ」

「ああ……ならオーケーだ、宜しく伝えておいてくれ」

「ありがとニャン」

 

 そして八幡は四人にこう言った。

 

「とりあえず使わせてもらう為の条件として、

フェイリスに俺のプレイする姿を見せる事になった。という訳で俺は今からALOに潜る。

お前達は食事をしながらどんな感じだったか後で感想を聞かせてくれ。

解説はこいつにさせればいい、それだけの知識は持ってるはずだからな」

「おう、任せろ」

 

 はちまんくんはそう言って胸を張った。

 

「あっ、そうなんだ」

「宜しくニャ、詩乃にゃん」

「こちらこそ」

「八幡さんのプレイ姿?うわ、興味ある!」

「ALOってあの空が飛べるゲームだよね?」

「おう、今の俺のホームだな」

「うわ、楽しみ!」

「それじゃあちょっと待っててニャ、ちょっと裏で話してくるのニャ」

 

 フェイリスはそう言うと、バックヤードへと消えていった。

 

 

 

「ダルにゃん、ちょっといいかニャ?」

「フェイリスたん、どしたん?」

「機材の調整を一旦止めてもらってもいいかニャ?

ちょっとこれを使わせたい人がいるのニャ」

「それは別にいいけど、誰か来たん?」

「八幡って人ニャ、ダルにゃんも映像を見ていいそうニャよ」

「八幡……?あ……」

 

 その名前を聞いて固まったダルを見て、フェイリスはいぶかしげにダルに尋ねた。

 

「どうしたのニャ?もしかして知り合いだったのかニャ?」

「フェイリスたんごめん、アルゴ氏にその人の事は聞いてはいるんだけど、

守秘義務があるから話せないんだお」

「えっ?」

 

 フェイリスはその意外な言葉に驚いた。それは守秘義務が課せられる程、

八幡が大物だという事に他ならないからだ。

 

「その人の名前だけ聞いた段階で、僕にはアルゴ氏から守秘義務が課せられたんだお、

多分僕がその人の正体にたどり着くって事前に分かってたんだと思うお」

「で、ダルにゃんは正解にたどり着いたと」

「凄く苦労してやっとたどり着いたお、案の定重要人物すぎて驚いたお」

「そうニャんだ……」

 

 フェイリスは、ダルがそんな事を言うのは初めてだと思い、

どうしても八幡の事が知りたくなった。

 

「まあ興味があったらネットの噂でも調べてみるといいお、

それだけでまあそこそこ表面的な情報は集まると思われ」

「うん分かった、ありがとうダルにゃん」

「でも彼のプレイ動画を見れるなんて凄くラッキーだお、

というか世界初かもしれないお」

 

 その言葉にフェイリスもわくわくを止められなかった。

そしてフェイリスは部屋に戻り、八幡に言った。

 

「準備おーけーニャ!」

「ありがとなフェイリス。良かったら俺が払うからフェイリスも何か注文してくれ、

常識の範囲内なら遠慮しなくていいからな。それじゃあちょっと行ってくる」

 

 そして八幡はALOにログインし、その瞬間に画面にハチマンの姿が現れ、

バックヤードでダルが絶叫した。

 

「やっぱりだお!SAOの英雄、ハチマンキターーーーーーーーー!」




他作品を更にクロスさせたというよりは、あくまでゲスト的な登場になります(多分……)
まあダルは相談役的なポジションとして、今後も出る可能性は否定出来ませんが、
フェイリスはどうでしょうね、キャラが勝手に動けば出るかもくらいでしょうか。
それよりも問題はこの設備の方です。この設備によって得られたデータを元に、
ユーザーが簡単に自分のプレイを配信したり出来るようになっていき、
その流れでこれの一部の技術がオーグマーへと転用されると、
このエピソードはその準備段階の様子を描いていると思って頂ければ!
ちなみに序盤でフェイリスの事をフェリスちゃんと呼んでいる子がいますが、ミスではありません!

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