ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

467 / 1227
すみません、明日は出張なので投稿を一日お休みさせて頂きます


第465話 開幕、第一回スクワッド・ジャム

「シャナさん!」

「悪い、待たせたか?レン」

「ううん、今来たところだから!」

 

 レンは嬉しそうにそう言った。だが実はレンは、一時間前からもうここに来ており、

シャナが来るのを今か今かと待っていたのだ。

レン曰く、必ず来てくれる人を待つのは楽しい、との事だ。

 

「それじゃあ行くか」

「うん!」

「最初は演習場だな、色々と把握しておきたい事もあるしな」

「分かった!」

 

 演習場に着くと、最初にシャナは、レンに普通に立ったまま射撃をさせた。

 

「とりあえずあの的を撃ってみてくれ、最初は十発、次はフルオートでだ」

「今の最高速度を知りたい、あのトラックを目印に、全力で往復してみてくれ」

「次は全力疾走のまま、あの的を狙ってフルオート射撃だ。

弾が切れた瞬間に、可能な限り早くリロードしてくれ」

「目を瞑ったまま一定速度で移動だ、俺が方向と数字を言うから、

その方向と角度に目を瞑ったまま曲がってみてくれ」

「俺が手を叩いたらその場で伏せる、次に手を叩いたら立ち上がって前進だ、

常に射撃体勢をとったままでな」

「後ろ向きになるべく早く走ってくれ、転んでも慌てずにそのまま転がって腹ばいになって、

そのまま射撃体勢を維持するんだ」

「しゃがんで丸まって坂道を転がるんだ、そしてあの茂みに近付いたら、

体制を立て直して中に飛び込み、そのままあの的を射撃だ」

 

 そんな事をしばらく続けた後、シャナはレンの頭をなでながら言った。

 

「よし、レンの能力は大体把握した、次は高速戦闘の注意点だな、

いいか、レン、複数の敵を相手にする時は、何があっても絶対に足を止めるな、

とにかく動いて動いて動きながら射撃だ」

「うん!」

「そして安易に飛び上がるな、どんなに速い奴でも、飛んでしまえばただの的だ、

ただし上下の動きが必要ないという意味じゃないぞ、

膝の伸縮を使って、上下の動きも必ず混ぜるんだ」

「膝の伸縮……よっ、ほっ!」

「そんな感じだな」

 

 そしてシャナは次に、一本のナイフを取り出した。

 

「ところでレン、レンはナイフで人が刺せるか?」

「う~ん……たぶん大丈夫、PKはそれなりに経験してきたし、

その段階で、これはあくまで痛みとかは何もないゲームの中の出来事だって割り切ったしね」

「そうか……それじゃあ次に、レンに適したナイフの使い方を教える」

「うん」

「最初にレン、基本的に相手を突くのは、

相手が完全に行動不能の静止状態になって、なおかつ背後をとった時だけにするんだ」

「ふむふむ」

「例えばこう、相手を正面から突いたとするだろ?

そうすると、慣れた相手なら、そのままレンの腕を掴んで、銃撃してくるケースもある」

 

 シャナはレンの正面にナイフを突き入れ、直前で静止させると、

その手をレンの手で握らせた。

 

「あえて刺させた後にそうされると、かなりやっかいだからな、くれぐれも注意してくれ」

「うん、そうすると、基本は斬る感じでいいの?」

「そうだ、レンはその速度を生かして、相手の脇をすり抜けつつ、

その勢いのままに相手を斬り裂くんだ」

「なるほど、すれ違いざまにか……」

「狙うのは相手が立っていたら太もも、もしくはアキレス腱だな、

太ももには動脈があるから、出血による継続ダメージを狙える。

アキレス腱は相手を一定時間歩けなく出来る」

「それじゃあ座ってた場合は?」

「銃を持つ腕、もしくは首だな、銃さえ奪ってしまえばどうとでもなるし、

首をうまく斬る事が出来れば、即死させる事も可能だ」

「なるほど」

「それじゃああの人形相手に練習だ」

「うん!」

 

 そしてレンは、色々な体制から一気に敵の懐に飛び込み、

ナイフで斬りつける練習を繰り返した。

何度目かの突撃の後、シャナが戻ってきたレンの頭をなでながら言った。

 

「よし、上出来だ、焦っている時ほど今の事を思い出すんだぞ」

「う、うん!」

 

 どうやらシャナは、レンが上手く動けた時を狙ってレンの頭をなでているようだ。

それにより、レンは成功したらシャナに頭をなでてもらえると、

無意識のうちに考えるようになり、その上達速度は飛躍的に上がっていった。

シャナの狙い通りである。 

 

 

 

 そして二人は、今日は砂漠地帯を越え、

森林地帯と砂漠地帯の境目にあたる場所へと向かった。

 

「今日は遠出するんだね」

「ああ、他のプレイヤーの邪魔が極力入らないようにな、

レンはもう砂漠地帯での動きには慣れていると思うから、

森林地帯でもスムーズに動けるようにならないとまずいと思うしな」

「確かに木の根とかが沢山ある場所は歩きにくいよね」

「しばらくきついだろうけど頑張れ」

「うん、絶対に負けられないから頑張るよ!」

 

 この日から、レンの戦闘能力は格段に上がった。

闇風やシズを交え、徹底的に色々なシチュエーションの実戦を繰り返したレンは、

それでも戦闘を楽しむ事が出来ていた。

あるいはシャナがいなかったら、レンは戦闘マシンになっていたのかもしれないが、

自分を見つめるシャナの視線がある限り、レンは常に前を向いていられた。

 

 

 

 そして濃密な二日間が終わり、その日シャナとレンは、

第一回スクワッド・ジャムに参加する為、第三回BoBでも使われた控え室の一室にいた。

 

「レン、調子はどうだ?」

「うん、すごく快調!」

「しかしまさか、ファイヤ本人が参加してくるなんてな」

「うん、本当にまさかだよね」

「というかあいつ、まともに戦えるのか?」

「出てくる以上、戦えるんじゃないかなぁ……」

「しかしこのメンバーがな……」

 

 ファイヤのチームメイトは、獅子王リッチーにスネーク、

残りの三人は、元平家軍の中級スコードロンのリーダーであった。

 

「まあこのメンバーから見るに、金でも掴ませて集めたんだろうとは思うが、

他のチームもかなりの数が、買収されているとみておいた方がいいだろうな」

「卑怯者……」

「まあ金の力も本人の実力の一部だって考え方もあるからな、

まあこっちがそれに付き合う事は無いから、とにかくこっちは敵を倒しまくるだけだ」

「だね!」

 

 そしてシャナは、改めて出場者リストに目をやった。

 

「参加者の中に知り合いも何人かいたが、

ファイヤが何も言ってこない以上、どうらやセーフだと認定されたみたいだな」

「知り合い?どの人?」

「このチームだな、『Narrow』」

「へぇ、そうなんだ」

「言っておくがレン、このチームを見たらとりあえず撤退だ、安易に近寄るんじゃないぞ」

「えっ?」

 

 レンはそのシャナの弱腰にとても驚いた。そんなシャナの言葉は初めて聞いたからだ。

 

「この人達ってどういう人なの?」

「本職だ、それで察してくれ」

 

 参加者名簿に記載された名前は、全部で五人。

コミケ、トミー、ケモナー、クリン、ブラックキャットとなっていた。

 

「ええっ!?銃で戦うのが本職って……」

「そういう事だ、なのでやり合うにしても、環境を整えてからじゃないと危険だ、

くれぐれもそれだけは覚えておいてくれ」

「分かった」

 

 他にもゼクシードとユッコとハルカのチーム『セクシード』もちゃんと参加していた。

薄塩たらこや闇風、エヴァ達やG女連、それにダイン達ら、元源氏軍所属プレイヤーは、

今回は参加せず、観客に徹しているようだ。これは速い段階でシャナが出場を表明した為だ。

 

「さて、そろそろ本番だな」

「頑張ろうね、シャナさん」

「レン、試合中はシャナと呼び捨てにするんだぞ、

そのタイムラグが生死を分ける事もあるからな」

「う、うん、えっと………シャナ」

 

 そしてGGO中にアナウンスが流れた。

 

『これより、第一回スクワッド・ジャムを開催致します。

それでは一分後に選手の皆様を試合の舞台へ転送致します、今のうちに準備をお願いします』

 

「レン、準備はどうだ?」

「問題なし、ぶちかますよ!」

「転送したら、とりあえず最初のスキャンまでは待機だな、

だが近くに有利に戦えそうなフィールドがあったらそちらへの移動も検討だ」

「了解!」

 

 そして一分後、二人はフィールドへと転送された。

そこは運良く砂漠フィールドであり、レンはその幸先の良さに喜んだ。

 

「運がいいね、シャナ」

「だな、俺も着替えるとするか」

 

 そしてシャナも今日の為に用意したピンクの戦闘服に身を包み、

二人は周囲の様子を観察する事にした。

 

「ところでレンがリーダーで、本当に良かったのか?」

「うん、だってその方が効率的でしょ?私が囮になって、シャナが敵を狙撃、

どう考えてもこれがベストでしょ」

「まあそうなんだがな」

 

 その微妙に不満そうなシャナの顔を見て、レンが言った。

 

「もしかして、私が傷付くのを見るのが嫌なの?」

「それはまあ嫌に決まってるだろ」

「ふふっ、そうなんだ」

「おう、そうだ」

「そっかぁ、ふふっ、でも私はやるよ」

「まあレンならそう言うだろうな」

 

 そして二人は周囲を見回し、廃棄された砦の跡のような建物を見付け、

そこへと移動する事にした。

 

「ここなら見晴らしもいいし、とりあえず問題ないな」

「さて、どういう配置になってるのかな」

 

 砦への移動後、少ししてからスキャン時間が訪れ、二人は端末に見入った。

 

「光点の数は十六、まだどのチームもやられてはいないようだが……これは……」

「マップ中央に、ドーナツ状に光点が集まってる……?シャナ、これって……」

「ご明察だな、やはり敵は組んでいるようだ、

おそらく試合開始直後に中央に集まるように打ち合わせしていたんだろうな、

今は移動途中といった所だな」

「この離れた所にある光点は、Narrowみたいだね」

「中央にいるのは……ゼクシード!?まずいぞ、ゼクシードの奴、囲まれてやがる。

敵も今の状況を見て、先ずは中央のゼクシード達を包囲殲滅しようとするだろう、

だがこの位置、おそらくゼクシード達は、ビル内に立てこもっているはずだ」

「救出に行かなきゃ!」

「だな、走るぞレン」

「うん!」

 

 こうしてシャナ達は、マップ中央へと全力で走り出した。




前書きにも書きましたが、明日は出張なので投稿を一日お休みさせて頂きます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。