何にせよ評価や感想、PV数その他、恐れ多い限りです。ありがとうございます。
あと、しほさんTV期間の辺りではまだ師範で、家元を正式に継承したのが劇場版の頃という事について、すっかり勘違いしておりました。
感想で教えていただきましたので、とりあえず取り急ぎ修正しました。
さて、まほがしほ相手に言質を勝ち取った翌日。ついでに、修景の学校にて学力テストが行われている頃。つまりは修景、学力テストすっぽかし確定となった頃。
午前の授業について家庭の事情で遅れる旨を学校に連絡したみほのアパートにて、修景は妹である西住みほとテーブル越しに向かい合い、昨日の戦果―――正確にはまほが勝ち取った戦果について、みほに伝えていた。即ち、師範であり母であるしほからの“黙認”である。
最初にそれを聞いたみほは目を丸くしていたが、内容を理解すると嬉しそうな笑顔を浮かべて礼を言った。
「ありがとう、お兄ちゃん! まさかお母さんが許してくれるなんて……」
「俺は準備を整えただけ。実際に交渉したのはまほだから、今すぐとは言わんけどそのうちちゃんと礼は言えよ。あと、しほおばさんもアレ、激怒の理由の何割かは命綱無しでお前がダイブしたことから来る心配が裏返ったものだからな」
「……うん。お姉ちゃんともお母さんとも、そのうちちゃんとお話できるように頑張る」
「なら良し。そんじゃ、俺はそろそろ帰らんと出席日数がエラいことになりそうだから、今日の昼の便で学園艦を降りるが。そっちは日曜に練習試合あんだっけ? 本当なら、それまで見て行きたいんだがな」
「長居したら、それこそお兄ちゃんがお母さんに怒られるよ?」
時既に遅し。帰った修景を待っているのはしほの説教なのだが、その部分についてはまほは修景への結果報告の際には別に伝えていなかったため、彼としても自分に待ち受ける運命について、現時点では知る由もない。
別にこれは、まほが修景への悪意で行ったわけではない。ただ、みほと違って修景に対しては今回は十割自業自得なのもあり、庇う必要性を感じていないだけである。この辺り、立場が逆ならまほに対してならば修景もそうするだろう。
一応まほからしほ相手の論陣の結果を修景に報告した時には、『帰ったら大変だろうが頑張れ』という言葉はあったのだが、詳細を伝えはしなかったため特に救いになる要素はない。
ともあれ修景少年は帰った後に待ち受けるあれこれというより、そもそも帰り道の長駆から目を背けるようにして、深々と溜息。
ぬいぐるみが多く置かれた少女趣味な妹の部屋にて、大きく伸びをする。
「まーたバイク乗って帰るとなると、気乗りしなくてなー。いっそ俺もこっちに転校すっかな」
「お兄ちゃん、ここ女子校だからね?」
「へいへい、分かってますよちゃんと帰りますよ。でも、練習試合って確か聖グロだよな? 見てみたかったんだがなー、二重の意味で」
「二重の意味?」
「まず、お嬢様学校ってだけでポイント高いな。男子校通ってる身としては!」
力を入れて語った言葉に、妹の視線の温度が二度下がった。
それに気付いた修景が、慌てた様子で手を振って弁解する。
「あ、これサブの方。サブの理由だから」
「いやまぁ別に無理に弁解しなくても良いけど。……それじゃあメインの理由って?」
「西住家、基本的にドイツ戦車に縁深いしドイツ戦車好きが多いけど、俺英国系結構好きなんだよ。オープントップなんで戦車道には出られないけど、アーチャー対戦車自走砲とか」
「……ねぇお兄ちゃん。それって確か、砲塔が後ろ向きに付いてる奴?」
「ああ、ただし砲撃は尻から出る。世にも珍しい、後方向きに砲塔が設置された対戦車自走砲だ。イギリスがバレンタイン歩兵戦車を元に開発したものだな」
バレンタイン歩兵戦車は第二次世界大戦期のイギリスで最も多く製造された戦車である。時代的には聖グロリアーナが主力とするマチルダII歩兵戦車よりも後の物であり、戦車としては小型な部類だ。バレンタイン自体はその小型化の作用もあり、安価で大量製造向きの傑作車両と言える。
しかしそれ故、多くの魔改造による派生戦車も出ているわけだ。主に“英国面”などと称される、英国の謎の開発理論の犠牲的な。トんだりハねたり大ハシャぎである。比喩でもなんでもなく、塹壕を超えるためにロケットブースターで飛ぶ戦車が開発されていた。
「アレ主砲発射すると砲身のノックバックで操縦手が撲殺されるから、主砲撃つときは操縦手が外に出てなきゃいけないんだよな。戦場で」
「オープントップな事も合わせて考えると、安全確保的な意味でどう考えても戦車道に出しちゃいけない車両だね……」
「ヴァリアント歩兵戦車とかどうよ。これもバレンタインの派生系だけど、ちゃんと全面覆われてるし、戦車道の規定内だぞ」
「それ、操縦手が変速レバーに撲殺されかけた奴……」
ヴァリアント歩兵戦車とはたった27tの重量で114ミリという正面装甲を目指して開発された突撃戦車であり、試作車の試運転は1945年5月に行われているため、一応は戦車道の規定では使用可能車両な筈なのだが、この車両を戦車道で運用している学校は今のところ存在しない。多分この先も出てこないだろう。
重量に見合わない装甲の代償として操作性が最悪であり、操縦手は操縦レバーに全体重をかけて一挙一動に全身全霊を込めて操作せざるを得ない上に、フットペダルは制動しきれなければ激しくノックバックし、変速レバーはともすれば操縦手を殺傷する勢いで跳ね返ってくるのである。―――前言を撤回する。もはや“操作性が最悪”というレベルの問題ですら無い。操作するだけで操縦手の命の問題だ。
結局試験走行は担当検査官の判断で中止され、計画自体も全てお取り潰しとなった後に、その試作車は戦車技術学校に“反面教師として”展示されるという扱いをされることになった曰くつきである。技術学校の生徒に対して、『その車両の問題点を探す事で反面教師とするべし』として見せられるレベルの失敗作とされており、後に大洗で使われるポルシェティーガーの比ではない失敗戦車だ。
「バレンタインの派生系は良いぞぉ。ロケットブースター付けて塹壕飛び越えようとした実験車両もあるからな。あの国最終的にアホみたいに車体長い戦車を作ることで戦車に塹壕越える能力持たせようとか考え出すし、そういう発想大好きよ俺」
「お兄ちゃん、戦車が好きっていうより単純にネタ性が高いものが好きなんだよね? ……うん知ってた」
「ただしバレンタインデーは炎上すればいいと思ってます」
「それは知らないよ。っていうかお兄ちゃん、学校で貰ったりはしないの?」
「男子校で貰う方が怖いわ」
さて、と一息置いて、修景が席を立つ。
用件は既に大筋で終わった。後は修景主観で纏めれば文庫本で1冊になるほどの長く苦しい旅の復路だけである。
「そんじゃまー暇見てまた来るから、元気にやってろよ」
「あ、うん。お兄ちゃん、来てくれてありがとうね。……おかげで、お姉ちゃんとお母さんのこと含めて、少し気が楽になった気がする」
「おう、それだけで来た価値は十分あったわ。武部さんとか五十鈴さんとか、友達にも恵まれてるみたいだしな。―――ただ、友達っていうなら逸見さんって子、黒森峰で会ったけどあの子もお前のこと凄く気にかけてたから。落ち着いたら連絡してやれよ」
「エリカさんが? ……うん、気持ちの整理が付いたら、お姉ちゃんやエリカさんに連絡してみる」
尚、その前に今度はエリカ側の感情が拗れるのだが、それはまた後の話。
「さぁて―――帰るか!!」
宮古修景、ここからまた数日がかりの帰還の始まりだった。
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辛い、辛い旅路だった。
走っても走っても着かない目的地。不意の荒天に、これはたまらんとパーキングエリアで足止めを食らうこと2時間。
走っても走っても着かない目的地。今度は事前に当たりを付けておいたので大丈夫だろうと思っていた宿が満室。土地勘のない場所での迷走。
走っても走っても着かない目的地。充電忘れて切れる携帯の電池。未来と明日を探す物語(≒近隣でイベントやってて宿がどこも空いてなくて、泊まれる場所を探し回るの意)。
そして、走っても走っても着かない目的地―――。
「思うのだが、弟」
「……なんだよ姉」
そんなこんなで大洗を発ってから4日後の夜。
もはや北九州から熊本まで行く気力も失せ、少しでもショートカットをすべく博多からの連絡船で黒森峰へバイクごと乗った修景は、およそ10日前と同じ場所で同じ相手に、ただし疲れ切った様子で対面していた。
つまりは、博多から熊本までをバイクで行くのではなく、博多→黒森峰→熊本と連絡船を利用して移動するついでに、以前と同じファミレスにて。対面に座るまほとエリカ相手の結果報告であった。
頼んでいる物も以前とほぼ同様。戦車道の練習上がりでパンツァージャケット姿のまほとエリカの前には、各々カレーとハンバーグが置かれている。修景の前に置かれた日替わりが、以前と別の品な程度の差だ。
感情の読みにくい無表情のまほの対面にて、疲れ果てたリーマンめいた様子で椅子に全体重を預けてだらけ切った姿の修景。その疲弊しきった様子を見て心配そうなエリカはまほの隣。修景から見ると斜め向かいだ。
そんな前回と変わらない配置のまま、まほは食器同士が擦れる音も立てずに綺麗にカレーを食べながら疑問を口にする。
「東京辺りからバイク込みでフェリーにでも乗って九州まで来たならば、西日本横断ツアー状態は避けれたのではないか?」
「……そんなのあんのか」
「弟、お前基本頭と口は回るが、時々馬鹿だろ」
「知ってたならなんで教えなかった姉」
「お前が逆の立場ならどうする」
「お前の苦難の旅路が全部終わった後に教える」
「それが答えだ」
会話は終わりとばかりに、まほは黙々とカレー攻略に戻る。
この辺り、実際にしほ相手に論陣を張った自分に対し、事前準備をしただけの修景がみほからの感謝を直接受けたという事に対する意趣返しもあるのかもしれない。
そのまほの様子を見て、修景が魂すら抜けきったと言わんばかりに、これまで以上に椅子に深く身を沈める。
そんな姉弟の様子を横目で見て、『なんだかなぁ』とばかりにエリカは小さく肩をすくめた。
修景がまた黒森峰に来たとまほに呼ばれ、練習後に来てみればこの会話である。果たしてこの姉弟、仲が良いのか悪いのか。
そのエリカの様子に気付いたのか、ぐったりしていた修景が彼女に視線を向ける。
「あー、そんで逸見さん。少しゴタついたけど、みほは元気してたよ。友達もちゃんと出来てた。俺が実際に会ったのは如何にも和風良家の子女って感じの御嬢様と、家庭的そうな御嬢さんだったけど。みほの奴が誰にも話しかけられずにいたのを見て、向こうから声をかけてくれたんだとさ」
「そうですか……それは、良かった」
「つーかまほ。逸見さんに適宜報告はしていなかったのか?」
「元気だったらしいという事と、お前の珍道中については伝えたぞ。詳細については、実際にみほに会ったお前から聞かせたほうが間違いがないと思っていただけだ」
「詳細云々はともかくとして、珍道中の情報要らなかったよな絶対」
「あ、あはは……」
既に目の前のハンバーグセットを食べ終えていたエリカは、冷水の入ったコップを手の中で揺らしながら小さく苦笑。実際余分な情報だったが、深夜のバラエティ番組の企画みたいで結構笑えたのは、彼女的にも否定はできない。
ともあれ、安心した。そうとでも言うように小さくエリカが息を吐き―――
「向こうで新しく、その友達らと戦車道もやるみたいだし」
「―――今、なんて?」
―――そこで修景が言った言葉で、空気が変わった。
エリカが修景を見る表情が、安堵の微笑から感情の無いものに変わっている。
以前にこの店でやったのと同様に何かが彼女の逆鱗に触れたかと、修景は慌てて椅子に座りなおす。
そんな彼の慌てた様子など意に介さず、エリカは静かな―――嵐の前を思わせる静かな声で問いかけた。
「大洗って、戦車道が無い学園艦じゃなかったんですか?」
「あ、ああ。ただ、今年から文科省の方針で戦車道を復活させるってなって、生徒会から戦車道経験者と見込まれて強く乞われてって―――」
「なにそれ」
一拍。そして、爆発。
横でカレーを食べていたまほが飛び上がるほどの音量で、立ち上がって拳をテーブルに叩き付けたエリカの叫びが、レストランホールに響き渡った。
「相談の一つもしてくれないで、勝手に居なくなって、居なくなった先で友達と戦車道!? 私は、ゆくゆくはあの子が隊長になってそれを支えるんだって……っ! 去年の失敗なんか帳消しにする勢いで今年は優勝してやろうって思ってて……っ! 一人で勝手に盛り上がって決意決めて、結局全部蚊帳の外で!! あの子の事を友達だと思ってたのは私だけ!? あの子にとって私は友達でもなんでもなかったの!?」
「え、エリカ。みほだって最初は向こうでの戦車道を断ったという話で―――」
「でも隊長も! 西住流も! 今ここでこうして話しているということは、みほが戦車道をする事を認めるんでしょう!? じゃあ、何だったんですか! 師範がしたという叱責は何で、結局どうしてあの子は黒森峰を出て行く必要が―――っ!!」
言っているうちに息が切れてきたか多少は冷静になってきたか、或いは両方か。
他の客も店員もすっかり黙り、有線ラジオから流れるヒット曲だけが軽薄に響くファミリーレストランの店内で、エリカはぜぇはぁと荒い息を整え、俯いたまま小さく呟く。
「……すいません、何かしらの理屈とか、家族間の感情とか、そういうのがあるのは分かります。けど、今は冷静に聞けそうにありません。―――失礼します」
呟き終わると同時に、パンツァージャケットの内懐から取り出した財布から、叩き付けるようにして千円札をテーブルに置く。
そのまま修景とまほが止める間もなく大股で、逸見エリカはレストランから飛び出していった。
その背を思わず見送って数秒。我に返ったまほが慌てたように立ち上がるが、対面の修景がそれを手で制した。
「エリカ、待っ……!!」
「まほ、俺が追う。逸見さん、本人も自覚してる通り今は冷静じゃない。最悪お前が追ってって大喧嘩にでもなったら、黒森峰の隊長と副長の間に亀裂が入るぞ」
「……っ、修景。それはそうだが……!」
「考えてみりゃ、逸見さんが本気でみほを友達と思ってくれてたんなら、現状は梯子を外されたとも言える状況なわけだしな。それに気付かず、軽々しく話題に出した俺のミスだ。言うにしてもワンクッション置くとか工夫の仕様もあったろうに、鈍ってたかね、全く」
修景も先のエリカがやったのと同様に、手早く財布から千円を出してテーブルに置く。後の精算はまほに任せる構えだ。
「俺が追ってって詳細を説明して逸見さんの怒りが収まらなくても、最悪俺が泥被れば良いだけの話だし。お前と逸見さんの仲まで拗れたらもうどうしようもない。とにかくお前は明日、事情説明から一晩経って落ち着いたころに逸見さんと話をして来い」
「……分かった。任せて良いのか? 修景」
「任せとけ。―――ただし、ここは任せた」
そうしてエリカを追って―――或いは何かから逃げるように足早にレストランを出て行く修景。
徐々にざわめきを取り戻すレストランの中で、何か違和感を覚えながらまほは首を傾げる。
ここは任せたと言われたが、さて。伝票を持って行っての精算以外に何か任されるような事はあったか、と。
そうして思考するまほの背後から、ポンと気軽に、ただし逃がさぬとでも言うようにガッチリとホールドする圧力を伴いながら、肩に手が置かれた。
その手の主はエリカではない。無論、今立ち去った修景でもない。となればその手の持ち主は、いったい誰か。
油差しを怠ったブリキ人形、或いは体調の悪いゾンビのようなぎこちない動きでまほが振り返る先。
そこには―――
「お客様、店内で騒々しくされますと他のお客様の迷惑になります。奥の方で少しお話よろしいですか?」
宜しいですかと確認系の文章を使いながらも、有無を言わせぬ勢いで。
エリカの同級生にしてここのアルバイトである店員が、『よほど惨たらしく死にたいようだな』という副音声が脳内に再生されそうな営業スマイルと共に佇んでいた。
(……謀ったな、修景―――っ!!?)
内心で弟(彼女主観)に悪罵を叩きつけるまほ。だが、逆の立場ならばまほも修景を置いて素早く退出していただろう。
ともあれレストランの奥の従業員用の事務所まで連行された彼女が、ごくごく当然の『レストランで毎度騒ぐな』というお説教から解放されるまでは、1時間の長きを要する事となるのだった。
基本的にやったらやり返される姉弟。
そして原作とは違った拗れ方をする問題。
あと本編と関係なくて凄くどうでも良いですけど、WoTやっててカチューシャ隊長ボイスMOD使ってる時に、
・敵との戦闘中にうっかり崖に落ちかけて、一瞬でもエンジンを緩めたら水中に落ちる私のM7(既に復帰不可能)
・そんな状況の私のM7にトドメを刺そうと突っ込んできたカヴェナンターに発砲→炎上→敵さんそのまま勢い余って崖から転げ落ちて水中でクラッシュ
・カチューシャ隊長「燃えてるの? 念のため救助を要請してあげなさい!」
という事がありましたが、カチューシャ隊長。燃えてることの救助よりも北極圏マップで水に落ちた事への救助を要請してあげてくさい。というか、助けてほしいのはこっちだ(数十秒後無事死亡)。
活動報告でもこんな調子でWoTの話しかしてないので、活動報告どころか活動放棄の有様です。