西住家の少年   作:カミカゼバロン

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 長らくお待たせいたしましたっていうかもう誰も待っていない疑惑。
 リアル事情のアレコレと資金面での踏ん切りのつかなさから、環境整うまでクッソかかりました。もっと短い期間で戻ってこれると思っていました。申し訳ありません。

 ともあれ環境整いましたので復活していきますが、目指せ週1更新のペースでお願いします。

 また、感想については大分溜まってしまっておりますが、投稿環境が無くなってからこれを投稿するまでの間についた感想については量が多いので、申し訳ありませんが返信なしで、その分だけ本編執筆に注力する感じでお願い致します。
 イヤ本当に申し訳ありませんでした。


少年、手持ち無沙汰になる

「思うのだが」

「はい」

「まほも意外と、いや意外でもねぇけど戦車道以外に人付き合い少ないんで、妹の友達の親御さんと観戦とか、かなり舞い上がってるテンションなんだよな」

「はい」

「……ちんまいの2号」

「はい」

「……すまん、お前も忙しそうだな」

「はい」

 

 

 戦車道全国大会、大洗女子対サンダース戦。

 開始5分、関係者席はいきなり無関係な話題に突入していた。正確には、開始直後でまだ両陣営ともに戦闘区域内での索敵合戦になっており、目に見えて分かる大きな動きがない為、関係者席に座る唯一の無関係者(修景)が居心地悪そうに呟いた言葉に、唯一オレンジペコだけが反応らしい反応を返していた。

 

 同じ観戦者でも、開始直後の静かな時間とは言え、選手をしている戦車女子達―――特に指揮官級の2名は暇ではない。

 エリカは大モニターに分割表示されている両校、各車両の動きを手早く手元の紙に書き出し、手書きのマップと照らし合わせ、口元に手を置いて何やら考えている。恐らく、『自分ならどうするか』、或いは『この行動パターンから見た両陣営の狙いは』などと、脳内でシミュレートしているのだろう。

 しかしサンダース側の動きの意図が読めない様子で、短気な彼女らしく1,2度髪を掻き毟るようにして『ああもう!』などと小声で罵声を上げている。直後、隣りに座っている修景に気付いて慌てて手櫛で髪を整える動作の中に秘めた意図に、本人はまだ気付いていない。更に言うならば、修景も気付いていない。

 

 一方で、エリカから見ると修景の逆隣に座ったダージリン。こちらは筆記ではなく、目視と記憶で戦域と車両配置を頭の中に展開している様子で、手帳やメモなど用意する素振りすらない。

 その手に持つのは湯気を立てる紅茶―――と、あと修景が買ってきた鯛焼きである。パクリと小さく齧って、紅茶を一口。満足気に頷いて、再び画面を見る。どこか満足げな口元には、小さくクリームが付いていた。

 ちなみに現在、黒森峰+聖グロ+無関係者で構成されたこの一団は紅茶セット含めて黒森峰の観戦スペースの方にすっかり移動しており、本来聖グロの面々が居るはずだった観戦スペースには、絨毯とテーブルと衝立だけが申し訳なさげに残っている。

 

 と、まぁ。

 名門の副隊長(エリカ)と、別の名門の隊長(ダージリン)。各々作戦指揮に関わる立場の2名は、分析・思考・その他諸々と大忙しである。生真面目さと気の短さが同居したエリカと優雅さと紅茶が同居したダージリンで、かなり見た目の雰囲気に差はあるが。やっている事は両者ともに、ある意味では直接戦闘以上に重要な、最序盤の偵察戦の分析だ。

 

 ―――が。

 見た目からして忙しそうなエリカと、見た目は優雅だが脳内はフル回転しているだろうダージリンの両者に声をかけるのも躊躇われるが。観戦専門の修景は、具体的に偵察の動きから両校の指揮官の意図などを読めるほどにまで戦車道に習熟しているわけではない。

 より正確に言うならば。戦車のスペックや来歴などについては、みほやまほへの出題役などを幼少期にやっていた関係上もあり、下手な戦車道女子よりも知識があるくらいなのだが。有機的なレベルの戦術となってくると完全な門外漢だ。

 教科書レベルのセオリーは分かるのだが、それ以上はまるきり駄目。女子の武道である戦車道に男子が立ち入ってくる事を、保護者であるしほが好まなかったのもあるのだろう。ボードゲームに近い盤上演習などにも、修景は触れさせて貰った事がない。

 

 ちなみに、子供心には将棋やチェスやオセロの親戚にしか見えなかったそれを触らせて貰えなかった事に、当時はまだ齢一桁だった修景がえらく落ち込んで、愛する娘2人に『弟/兄をいじめるな』とステレオで抗議を受けた事は、しほにとって子育て追い詰められエピソードBEST10に入る一件である。

 母として折れるべきか、西住流の師範として男子が戦車道に関わってくるのを拒むべきか。最終的に懊悩して身動きが取れなくなった顔面蒼白(当社比。一見するといつもの鉄面皮)のしほに助け舟を出したのは長年の友人であり使用人でもある井手上菊代であった。

 モノポリーであっさり釣られて戦車道の盤上演習からそっちへ興味を持っていかれた息子&娘2名に愕然としたものだ。幼い子供は興味が移るのも早いのである。

 

 まぁ、幼い頃のモノポリーエピソードはともかく。

 そういった事情から最序盤の偵察戦について、『偵察戦してるのは分かるんだけど、具体的に何がどうなってるかは分からん』という理解レベルで眺めていた修景。

 手持ち無沙汰に口から出た話題は、眼前の試合とは全く関係ない事で。修景から見ると集団の中で一番離れた位置に座っていたオレンジペコだけが、目線は試合を映しているモニターに向けたまま、脳の思考領域の余剰分で反応を返した感がある。

 オレンジペコとて、ダージリンにここに連れられて来た以上は聖グロの中でも今後の期待株であり、未来の隊長か副隊長という立場である。彼女も脳と思考の9割は現状の理解と分析に当てられており、修景への反応も礼儀正しい彼女らしくなく若干ぞんざいだ。と言うよりは、礼儀正しい彼女だから返答はしているが、音声に自動応答で「はい」だけが返ってきていると言うべきだろう。

 無論のこと、修景側も彼女たちが忙しいのは理解しているので、肩を竦めて反省するだけなのだが。

 

「……実際どーなんだこれ。動きが分からん」

「あら」

 

 そして肩を竦めながらも誰に対するでもなく発した言葉に、今度はダージリンが反応を返す。優雅に紅茶を啜るが、口元にはクリームが付いたままだ。

 

「西住家ではそういったことは習わなかったのですか?」

「しほおばさん、俺が女の武道である戦車道に関わる事は禁じてたんで。戦車の来歴やスペックを姉と妹が暗記させられてる時の出題役くらいっすわ。後は観戦専門」

「西住流らしい話ですこと」

 

 お手上げー、とでも言うように両手を上げた修景に、ダージリンは口元に手をやりくすくすと笑う。しかし笑いながらも、目線は大モニターから外さない。大洗とサンダース附属の動きを見逃さないようにと、モニターに映る各車両の一挙一動を鋭く見定めている。

 飄々とした奇矯な言動が目立つようで、しかし目敏く怜悧で油断ならない。それがダージリンという少女の持つ二面性だ。

 

 ただし、口元に触れた手に付いた鯛焼きのクリームに気付き、慌てて拭う辺りはどこか年相応でもある。

 その様子を『意外と可愛らしい挙動するなこの人』という感想をおくびにも出さないまま見ながら、修景は恐る恐ると聞いてみた。

 

「邪魔なら黙ります?」

「いえ、大丈夫です。今、ある程度類推はついて一段落したところですので」

 

 口元に浮かぶ笑みが、楽しそうな笑みから皮肉げに口の端を上げた物に変わる。

 丁度、大洗側が偵察に出したM3が6両のシャーマンに半包囲された状況が大モニターに浮かんだ所だ。M3は大急ぎで離脱開始。フラッグ車ではないものの、隊長であるケイの乗った車両も含まれた主力部隊相手に遁走を開始する。

 つまり序盤の布陣と偵察戦において、サンダースが保有車両の半数以上を一点読みで敵偵察車両に当てた一方的な読み勝ちとなる。が、半数以上の車両を一点に集中するということは、必然他が薄くなる。幾ら何でも投機(バクチ)が過ぎる。それ故に、エリカなどはサンダースの意図が読めなくて苛立っていたのだが。

 

 なお、『正史』においてはこの段階でエリカはまほと並んで観戦しながら、落ち着いた様子で皮肉げに試合を見ていたのだが。宮古修景という異物が西住姉妹との関係の中に複雑に絡んで来たことのバタフライエフェクトか、みほへの感情がある意味正史よりも整理されているとも複雑化しているとも言えるエリカには余裕がない。

 『あの子ともあろうものが、何やってんのよ!』という高評価の裏返しとなる苛立ちと、『あの子なら絶対に援軍を送るから、ここからの展開は』という理解に裏打ちされた分析と。その他大小強弱好悪諸々の感情が複雑に入り混じったエリカは、有り体に言えば正史よりもこの試合に入れ込んでいる。

 後はまぁ、隣にいるのが尊敬する西住まほ隊長ではなく、その12日差の弟なのもあるだろう。修景相手にちょっと解説とかしてみたかったのに、サンダース側の理解できない動きでそれが出来ない苛立ちは、果たしてエリカの余裕の無さの何割か。みほ絡みよりは確実に小さいが、ゼロというわけでもない微妙なバランスである。

 

 ともあれ、そんなエリカは自分にとって修景とは逆隣に座るダージリンへ、擬音を付けるならば『ぐわっ』などと太文字で描かれそうな勢いで振り返った。『類推がついた』という言葉への反応であるのだが、勢いが良すぎて遠心力で舞い上がったセミロングヘアーが鞭のような勢いで修景の横っ面を強打する勢いだ。

 シャンプーの良い香りのする御令嬢(おじょうさま)の髪ではあるが、十分な遠心力を以て叩きつけられたそれは、どちらかと言うと凶器の様相を呈して修景の横面を強襲する。反射神経が鈍い部類の修景は反応出来ずに硬直していたが、幸いにして直撃はせずに眼前数センチを鞭のような勢いで振り抜かれた凶器()。それに対して修景が抱いた感想は、『良い匂い』よりも『九死に一生』だった。

 

 年下の女の子が丁寧に手入れした髪の香りに、“女性”を意識して頬を赤らめるなどという甘っちょろい青春イベント発生せず。頬を赤らめるよりはむしろ青ざめさせ、どちらかというと修景が意識したのはエリカの女性らしさよりも車間距離の重要性だった。そもそも2人観戦用のテーブルを前に、4人で詰めるように座っているから起きた惨劇である。

 なお、ダージリンからはエリカに隠れて修景がよく見えず、修景から一番離れて座っていたオレンジペコだけがその一連の動きを俯瞰できていた。反応、口元を抑えてそっぽを向いて堪える。ややウケである。

 

「類推できたってどういうことなの!?」

「ふふ」

 

 そして、修景とオレンジペコの様子には各々の位置関係、視線、視野、意識など様々な要因から気付かず。半ば食って掛かる勢いで、年上に対する敬語も忘れてダージリンへと詰め寄るエリカと、余裕のある様子で微笑む英国淑女(※純正日本人)。

 いきり立つエリカを面白げに眺めながら、聖グロリアーナの隊長は紅茶を一口啜る。優雅で余裕のある立ち振舞いだ。余裕ぶっているというより、その立ち振舞いの方がダージリンにとって自然なのだろう。

 

「こんなジョークを知ってる? アメリカ大統領が自慢したそうよ」

「はぁ?」

「我が国にはなんでもあるって。そしたら外国の記者が質問したんですって。『地獄のホットラインもですか?』って」

 

 くすくすと笑うダージリンと、『何を言っているんだこいつは』という懐疑の視線を向けるエリカ。何かと言えば格言に絡めたがる癖は、ダージリンの悪癖だ。オレンジペコは『またか』とでも言いたげに溜息を吐き、その言葉の元を言及しようとした所で、

 

「……ソ連の首相じゃありませんでしたっけ? 質問したの」

「何パターンかありますわね。定番お国柄ジョークですから、広がるうちに派生系も出来たのでしょう。あら、そちらが大元だったかしら?」

「いや、そこまでは知りませんが。でも、あー……」

 

 修景が先んじて、ダージリンの言葉に反応していた。対するダージリンも面白げに、エリカの肩越しに修景へと視線と言葉を向ける。

 実の所、こうして並んで観戦しているが、宮古修景という少年とダージリンの関わりは未だに殆ど無いと言って差し支えない。抽選会の日の偶発遭遇でも、修景が主に話していた相手はオレンジペコとローズヒップ。ダージリンは主にエリカと愚痴り合いによる暗黒物質(ダークマター)製造に勤しんでおり、修景との会話は無かったわけではないが多くもない。

 

 飄々とした余裕のある振る舞いと相反するように、怜悧に見定めるような目が修景へと向けられる。西住流宗家の次期家元が友人の子であるからと養子同然に引き取った少年。みほやまほとの関係も良好で、黒森峰の副隊長であるエリカとも仲は悪くない様子だが。はてさて、彼自身は果たしてどういう人間か。

 興味と値踏み混じりの観察の視線を、しかし悟られないように向けるダージリン。その前で修景は何かを思い出すように視線を虚空に向け、沈思数秒。納得したように溜息混じりの言葉を吐き出す。

 

「情報戦でなんかやられてんな。スパイ問題ですよね、その格言。事前に作戦抜かれてるとか?」

「―――お見事」

 

 溜息混じりの言葉に、ダージリンが出した評価は合格点。呆気にとられた様子のエリカとオレンジペコを尻目に、紅茶のカップをソーサーに置いて小さく拍手。ダージリンにとっては友人でもあり好敵手でもある西住姉妹の間に挟まれた、兄でもあり弟でもある少年―――宮古修景。彼に対する未だに定まっていなかった評価を、彼女は内心で2つほど上げた。

 知識はある。頭も切れる。自分の出した格言の『本質』に対する理解の早さから、ダージリンは修景をそう定義する。

 そも、元々がダージリンの出した格言は、冷戦時代の米ソのスパイ活動合戦を皮肉ったお国柄ジョークだ。彼女と修景のやり取りの通りにパターンは幾つかあるが、ソ連へのスパイ活動用のホットラインをアメリカ大統領が『地獄へのホットライン』と表現する点は共通しているものである。

 

「事前にって―――潜入調査とかですか? あと、作戦を上手いこと聞き出されたとか? そう考えると、ここまで一方的に一点読みで負けてるのも分かりますけど……」

「情報管理はしっかりしねぇとな。今は情報化社会だし」

 

 ちなみに、オッドボール三等軍曹こと秋山優花里がサンダースへの潜入調査を行っていたりするので、大洗側もその手の工作は手を尽くしている。そもそも潜入捜査はルールで公認されており、見つかった際の待遇もルールに明記されている辺り、戦車道というのはある意味では物凄く実践的な武道である。

 なお、エリカはどうにもその手の事が苦手な、良くも悪くも直線的な性向の持ち主だ。試合の盤面だけ見ていれば分かる筈もなかった大洗側の苦戦の理由に、嫌そうな顔で眉を顰める。情報戦自体はルールにも明記されているのでそれに対して『怒っている』や『嫌っている』というわけではないが、苦手を自覚した『うげぇ』とでも表現すべき表情だ。

 

「私、そういうの苦手なんですよね。っていうか、あの子もそういうのは得意な方じゃないんだから、周囲がフォローしなさいよ!!」

 

 そしてそのまま吐き出される言葉は、罵倒の形を取っていたが内容は明確な心配だ。その言葉に対して、ダージリンとオレンジペコは辟易するような表情を浮かべる。

 『いや、貴方達仲良いの? 悪いの?』と、聖グロ2名の浮かべた表情は言葉より雄弁な形ではあるものの、言ったエリカは相手の反応に怪訝そうな顔を浮かべるのみ。どうにも、みほを心配しているという自覚が無いらしい。

 唯一エリカの複雑な内心に対して一定の理解がある修景は軽く流して、立ち止まりかけた話を前に進める。

 

「となると、どこでそれに気付いて作戦を変えれるかって話になりますけど」

「どうかしらね。事はそう単純ではないの。言ったでしょう? 『我が国には何でもある』という、お国柄ジョーク。本質は確かにスパイ問題ですけども、本当に『何でもある』のよ、サンダースには」

 

 そうして、ダージリンが視線を向ける先。大モニターでは大きく状況が動いていた。6両で追い回されていた大洗のM3の元には八九式と四号戦車が救援に駆けつけており、3両は交戦しながら森の中からの離脱を試みて成功している。

 その際に大洗を待ち伏せするように2両、サンダースのM4。もはや一点読みにしても度外れた投機である8両投入。サンダースの車両の8割を集中投入しての、圧倒的な正面戦力差。

 大洗側は速度を落とさず正面から、相手の待ち伏せ車両とすれ違うようにして走り抜け、稜線を越えて逃げ切っている。サンダース側は手仕舞いか、深追いを避ける動きだ。

 

「……確かに物量に物を言わせた戦い方をしています。そういう点は、さすがサンダースですが」

「でも、おかしいわ。事前に作戦が漏れてたとしても、撤退方向までドンピシャ当たる?」

 

 オレンジペコが率直な感想を口にし、一方でエリカが眉を潜めて疑問を口にする。事前の作戦は事前の作戦。状況が変わったならば、そこから練り直すのが指揮官の役目だ。少なくともみほは、想定外なまでに一方的に偵察戦で不利になった状況に対し、自身の車両含む救援を出して救助からの撤退という方策に出ている。

 これは事前の作戦には無かったはずの、臨機応変な対応だ。そこでの撤退方向まで読み切られていたという事に、エリカも不自然さを感じ始めていた。事前の情報を抜かれていただけでは、説明がつかないのである。そして、その両者の反応に苦笑を浮かべ、ダージリンは正解を口に乗せた。

 

「だって、多分無線を傍受されてますもの。そういう機材がある辺り、本当に『なんでもある』のでしょうね」

「……はぁ!?」

「それ、良いんですか?」

「うーん……。ルールには通信傍受機の使用の可否は書かれていないし、規定ではその車両に搭載される予定だった装備は搭載可能。第二次世界大戦期の技術でも、通信傍受用の機材は作れると言えば作れるでしょうけど」

 

 小首を傾げながら、聖グロリアーナという名門の隊長は内心で溜息を吐く。ああ、全く。戦車道は戦争ではなく武道・スポーツであり、情報戦もルールの範疇でやるべし。それは規定というよりスポーツマンシップの部分での話なのだが。

 通信傍受という発想が浮かびもしていなかった様子でぽかんと口を開けて声を出したエリカと、控え目に苦言を呈するオレンジペコの両名を見るダージリンの目は好意的だ。むしろ、サンダース側の動きの不自然さとその的中率からこの発想に思い至った自分はその気になれば“ダーティな”動きも出来る資質があるなと、内心で自分を恥じている有様である。

 ルールに書かれていないからと、これは幾分拡大解釈が過ぎる。戦車道女子の中でも特にフェアプレイやスポーツマンシップを好むケイの打ち筋ではないが、果たして誰の行動か。

 

「こんな格言を知ってる? 『イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない』。でも、これは戦争ではなく戦車道。手段は選んで、上品に行きたいものね」

 

 そう結論付けて、『やれるがやらない』と言外に断言しながら。ダージリンは先程ソーサーに置いたカップを再度手に取り、一口飲んで肩を竦めたのだった。




 「戦いに手段を選ぶな」と言って通信傍受やってたアリサさんですが、原作でもその思想は「これは戦争ではなく戦車道」と、自分のトコの隊長であるケイさんにバッサリやられていましたね。
 個人的にはケイさんのその言葉が、まさに通信傍受に対する回答かなぁと。その解釈で進めさせてもらっています。
 秋山殿=オッドボール三等軍曹の偵察はルールの範疇である事、アリサさんの行動はルールの拡大解釈からくるグレーゾーンの行動だった事もあるかと思われます。
 戦争ではなく、戦車道は武道でスポーツ。だからこそクリーンなフェアプレイ精神が重視される、という事かと。

 とはいえ、ダージリンさんにもボロクソに評されているアリサさん。実は結構、今後の出番が内定していたり。
 なにげにこの方、大洗が廃校になることを事前に掴んでいたりと、色々と二次創作的に美味しいポジションだったりいたします。

 今回、こき下ろされてるのは―――まぁスポーツでグレーゾーン突いちゃったら怒られるよね。でも今度は良いポジで出番あるよ。頑張れ。

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