――side真姫――
「やっと決まったぁぁぁぁぁ~、疲れたぁぁぁぁぁ~」
店のBGMを決めようとして早5時間、時が経つのは早いものね。
「…って、もうこんな時間なのね…早く寝ないと…」
現在の時刻は3時過ぎ位。美容に人一倍気にかけるためいつもは10時には寝ているし遅くても12時には寝ている。今まででここまで遅く起きていたのは2、3回しかないのではないんじゃないかしら。
「とりあえず自分の部屋に戻らないと…」
私は5時間前位にゲットした私の部屋のものであろう鍵を握り、そこを後にした。
【少女移動中】
「開かない…」
もう一度鍵穴に鍵を差し込む。されど開かない。そもそも鍵穴に鍵が入らない。
「チッ……」
段々と怒りがこみ上げてきた。いや、正確には来た当初から怒りのボルテージはほぼMAXだったのだがここまでムカついてはいなかった。つまりMAJIGIRE状態である。
「この家主ほんっっっっとにふざけんじゃないわよ!!!!大体、なんで普通に鍵を用意しないのよ!!!ぶっ○すわよ!!」
怒りのあまり乙女らしからぬ暴言を吐いた。いや、そうはいっても眠いのは自分の勝手だとしても数々の置き手紙の不備などの間抜けさ、理由もなしに頼んでくる傲慢さ、そして何より自分の部屋にすら自由に入れさせてくれない悪質さに相当キレていたのも事実だ。
「……はぁ、まぁ元は私の我儘だったわけだしね……しょうがないか……もういいや……空いている部屋で寝よ……。」
そう決めた私は同じ階にある部屋に赴むいた。
【少女移動中】
「普通に開いた…」
隣の部屋は驚くほどにすぐに開いた。まぁ当然といえば当然だけれども。それよりも、
「この部屋女子力高いわよね…」
棚やクローゼットなどの収納スペースはすべて種類・好み・季節ごとなどに分類されており、机や椅子などには傷一つない。そして何より多すぎるほどの掃除道具。……まぁ、“女子力”とは少し違うのかも知れないわね。いわゆる綺麗好きというやつかしら。まぁ、どちらにせよ
……もしかしたら、整理していたときにも少し思ったけれどもこの写真に写っている子かしら。……だとしたらずいぶん可愛い子ね。銀髪のショート、カメラにピースをしながら満面の笑みってことはこの子元気系の子かしら。まぁ、元気系の子が実は綺麗好きなんてことよくある話だしね。
『にゃ?』
違う。貴方じゃない。あとパクリになっちゃうからやめなさい。叩かれても知らないわよ。
それと隣に並んでいる優男は彼氏かしら。……デート中にしてはだいぶふてぶてしい顔をしているわね。元が不機嫌そうな顔とかそういうレベルじゃないわよ。もうなんか写真越しにどす黒い不吉なオーラがただよってくるわね。なんか彼氏と彼女で間反対な性格をしているのね。なんだか不思議なカップル。
……もうこんな時間なのね。そろそろ本当に寝ないと。それにしてもあの家主はいったい何がしたかったのかしら?
――季節は四月。桜吹雪が舞い物事の全てが動き出すまさに青春の証とも言えるこの時期。実は冷静に、かつ健康学的に考えるとあまり良好な季節でないことをご存じだろうか。
春という季節はいうなれば冬が明け暖かくなってゆく時期のこと。今日本の冬は侮れたものではない。東京でも寒い日には普通に0°を切る寒暖な季節。そんな寒い季節から一転、一気に気温は10°以上上がり日差しも暖かくなってくる。そうなると冬に対応していた体はどうなるのだろう。一気に陽気で暖かい日差しを全面に浴びる。人はどんどんその変化に対応できずに倒れて行く。ここにもまた一人、その犠牲者がでたようで――――。
【少女睡眠中】
「んんっ……、もう朝……?」
カーテンからの
「っ…………、痛っ……!!」
体中に鳴り響く猛烈な頭痛と、寝ていても分かるほどの目眩に襲われる。
――ヤバい。
体が、いや、本能がそう感じていた。このままでは本当にまずい。
――とにかく、ここからでないと……!
着実に体を蝕ばんでくる何かに体力を吸いとられながらも、必死に頭を働かす。
――これは……熱中症?っ、……ヤバい、頭が、働かない。
ゆっくりと呼吸をしていても、動悸は収まることを知らず、むしろどんどん早くなっていく。その身に宿ってしまった何かが私の体を乗っ取ろうとしたその時――。
ガチャァァァァァァァン
――何……?!
制御の効かなくなった体が、棚を蹴ってしまい花瓶が落ちたそうだ。それよりも、
――水が、染み込んでくる……!
花瓶の中に入っていた水が自分の服を濡らしてきているのだ。そのままだと、体温が急激に下がる恐れがある。
――服、脱がないと……!
無き力を盛大に振り絞り服を脱ぐ、下着一枚に四つん這いに汗だく。いつもの自分だったらこんな姿をしてしまった暁には誰にも見られていなくても三日三晩布団にくるまって出てこないレベルで恥ずかしがるのだが、今はそんなそぶりしすらしない。いや、出来ないのだ。それほどまでに彼女は危機に陥っていた。
ギシ 、ギシ、ギシリ
急に階段を上ることが聞こえてくる。それはいくら頭が働いてなくても分かる程の、まさに救いの音だった。
――きずいてもらわなきゃ……!
彼女はそう思うと器用に手と足を使いドアの方に向かった。汗だくになりながらも必死でドアに向かっていった。だからだろうか。その相手が
――ノアノブに……手を……
某大きめの怪物が人類を襲う大人気漫画でも言われているように、この世界は良くも悪くも残酷なのである。その残酷さは相手の状況・性別・思想などを無視してくる。無情にも、上ってくる相手は彼女の待ち望んでいるものではない。
――とど……いた。たっ……て、開けないと…。
しかし時に運命も残酷さと紙一重であるとも言える。運命もまた双方の望む出会いをしてくれるとは限らない。その中には残念なことに残酷さにある運命も、存在する。永久に望んだ歯車は絶妙に最悪なタイミングで、
――開け………………?!
「「え?」」
絡み合う。
次らへんからオリ主と真姫ちゃんの絡みが始まります。