私は、夢から覚めるなり診療所の方へ戻っていった。あの老人の事が気になったからだ。階段を上ると、扉が閉まっていた。ノックをする。
「……あなた、どなた?獣狩りの方、かしら?」
女性の声だ。そうだ、と返すと、
「だとしたらごめんなさい。この扉を開けることはできないわ」
実に残念だ。……しかし、何故彼女が?
「私はヨセフカ。この診療所をあずかる者として、大事な患者さん達を、感染の危険にさらすことはできないの」
この診療所を預かる……?だったら、あの老人は何だったのだ?まさか、他人の診療所を無断で使用していたのか?私が考え耽っていると、彼女は続けて、
「だから、街のために狩りに出る、あなたには申し訳ないのだけど今、私にできることはこれくらいよ」
輸血液を渡してくれた。そう、輸血液。破裂させ、血を浴びることで自らの身体を活性化させる。更に生命力すら回復できる。これを狩りに役立てろ、という事なのだろうか。
*
「はぁ、はぁ……」
私は息を切らしていた。先ほど私を殺した化け物を、今度は私が殺してやったからだ。ヨセフカから戴いた輸血液は、早速使ってしまっていた。獣相手はまだ慣れない。私は診療所にある空の輸血パックに、殺した化け物の血を注いだ。ついでにいくつか輸血液を拝借してやった。まあこのくらいは許されるだろう。
診療所を出ると、まだ夕刻であった。長い時間が経過したようにも思えたが、夢を見ていたからだろうか?
「ああああああああああ!!!!!!」
突然、男の悲鳴が聞こえる。声の主を探すと、民間人が発狂して斧を振り回していた。その目がぎょろっとこちらを見る。そして更に発狂し、こちらに襲い掛かってくる。私は後ろに回り込み、ノコギリ鉈で背中を切り刻む。男は苦しそうな声を上げ、それから動かなくなった。そういった事が何度も続いた。時には10人ほどの群衆を相手にもした。だが私は人型の相手は敵でないと言えるほど得意なのだ。過去の従軍経験の中で、最も相手にしたのが人間だからだ。ましてやそれが素人の民間人となると、傷すら負わない。私は一方的に民間人を屠ることに、抵抗感はなかった。寧ろ血を求めていたのだ。つまり、快感を覚えていた。狩るのが、楽しい。
*
「そこの誰かいるのですか?もしかして、獣狩りの方でしょうか?」
家の窓からそんな事を投げかけてきたのは、私と同じ不治の病を持った重病人、ギルバートだ。彼もよそ者だという。彼に「青ざめた血」の事を聞いてみると、
「『青ざめた血』、ですか?うーん……すみませんが、聞いたことはありません」
まあ、よそ者だからそりゃあそうだ。私はほんの少しだけ落胆した。だが彼は貴重な情報を教えてくれた。医療教会。血の医療と、その特別な血の知識を独占しているそうだ。よそ者を受け入れないヤーナムらしいやり方じゃないか。軽く嘲笑しながら私は、そこに向かう事にした。ヤーナムの街は、よそ者に何も明かしはしないが、今は獣狩りの夜だ。むしろ、好機なのかもしれない。