ラフムに転生したと思ったら、いつの間にかカルデアのサーヴァントとして人理定礎を復元することになった件   作:クロム・ウェルハーツ

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リメイク版https://novel.syosetu.org/115936/一話を投稿しています。
リメイク版へ全て行き次第、申し訳ございませんが、こちらの方は削除させて頂きます。


0から1のインタールード その②

 -ON-

 

「う……ん……」

 

 ──許さん! 奴は、奴は私がこの手で……殺す!

 

「ラ……」

 

 ──いや、それは“不可能”……か。未来は既に焼却された。

 

「フ……」

 

 ──改めて自己紹介をしようか。私はレフ・ライノール・“フラウロス”。貴様たち人類を処理するために遣わされた、2015年担当者だ。

 

「ム……」

 

 ──自らの無意味さに! 自らの無能さ故に! 我らが“王”の寵愛を失ったが故に! 何の価値もない紙クズのように、跡形もなく燃え尽きるのさ!

 

「ラフムッ! ……ハァッ! ハッ、ハッ」

 

 悪夢から飛び起きるように少年はベッドの上から体を起こした。悪夢の影響からか、彼の呼吸は荒く、そして、酷く不規則だ。

 

「随分、魘されていたね。変な夢でも見たかい? 例えば……空を飛ぶ夢とか」

「フォウ! フォフォウ!」

 

 顔を顰めて頭を押さえる少年、藤丸立香の耳に二つの声が届いた。一つは知らない女性の声。そして、もう一つの声は藤丸がよく知る小動物、フォウの鳴き声だ。フォウの声から自分の傍にいる女性は敵ではないと判断した藤丸はゆっくりと顔を女性の方へと向ける。

 亜麻色の長く緩く巻いた髪に、華美でありながらもどことなく気品を感じられる服を身に着けた美女が彼のベッドの傍に立っていた。

 

「えっと……貴女は?」

 

 ──綺麗だ。

 

 これまでの人生で見た事がないほどに美しい人だと藤丸は常よりも鈍い頭で考えを纏める。が、前の美女に気を取られている時間はないと藤丸は無意識に考えていた。

 何か、何か大切なことが自分にはあったハズだ。だというのに、自分の思考が緩慢であることに藤丸は歯嚙みする。

 寝ぼけ眼を擦りながら、大切なことを思い出そうとする藤丸へとベッドの隣に立つ女性は話しかけた。

 

「んー、まだ思考能力が戻ってないのか。こうして直接、話をするのは初めてだね。なに? 目を覚ましたら絶世の美女がいて驚いた? わかるわかる。でも慣れて」

 

 二コリと軽く微笑んだ美女は自信に溢れた声で自己紹介を始める。

 

「私はダ・ヴィンチちゃん。カルデアの協力者だ。というか召喚英霊第三号、みたいな?」

 

 “英霊“

 そのワードにピンと来た藤丸は素早く顔を上げる。しかし、ダ・ヴィンチと名乗った英霊、つまり、サーヴァントは藤丸を止めた。

 

「とにかく話は後。キミを待っている人がいるんだから、管制室に行きなさい」

「……ラフム。そう言えば、ラフムはどこですか? それに、マシュも。オレ……マシュの手を握っていたのに。それに、ドクターもいない」

「詳しい話は後、後。ほら、立った立った」

「え? わっ!」

 

 藤丸の手を引っ張ってベッドから彼を放り出したダ・ヴィンチは藤丸の足に靴を引っ掛けさせて、彼の背をドンと押す。軽い空気音と共に開いたドアの先へと藤丸は進ませられた。振り返ると、ダ・ヴィンチはとてもいい笑顔で藤丸を見つめ、右腕をそっと上げる。

 

「さあ、行きたまえ! 若人よ!」

「行くって……どこにですか?」

「まだまだ主人公勘ってヤツがなってないなあ」

「フォウ、フォウ!」

「ほら、この子だってそう言ってる。ここからはキミが中心になる物語だ。キミの判断が我々を救うだろう。人類を救いながら歴史に残らなかった数多無数の勇者たちと同じように。英雄ではなく、ただの人間として星の行く末を定める戦いが、キミに与えられた役割だ」

 

 ダ・ヴィンチがそこまで言った瞬間、またもや軽い音がしてドアが閉まった。自動ドアに阻まれた藤丸は部屋のドアを一瞥した後、踵を返す。何はともあれ、探さなくてはいけない。自分のサーヴァントであるラフム、そして、意識を失う寸前まで手を握ったことを記憶している自分のサーヴァントを。

 

 +++

 

 藤丸が辿り着いたのは、先日、自分が向かった場所。巨大地球儀、カルデアスがある部屋だ。青いホールの中心に探し人がいた。その菫色へと駆け寄る藤丸の足音を聞き留めたのだろう。彼女は振り返った。藤丸の姿を確認した彼女は口元を綻ばせる。

 

「おはようございます、先輩。無事で何よりです」

「マシュ!」

 

 マシュがそこにはいた。レイシフトで特異点F冬木からカルデアへと戻る瞬間まで手を握っていた少女がそこにはいた。そして、マシュの様子を見るに、大きな傷もなく状態は良好そうだ。

 

「先輩、ありがとうございます。先輩がいてくれたので意識を保っていられました」

「いや、お礼を言うのはオレの方だ。マシュ、ありがとう」

 

 無事を確かめ合い、笑顔を浮かべる二人。その二人の耳に咳払いが届いた。

 

「再会を喜ぶのは結構だけど、今はこっちにも注目してくれないかな」

「ドクター!」

 

 彼らの後ろに立っていたのは、特異点Fで映像の向こうから指示を出していたロマニ・アーキマンだ。

 

「うん、まずは生還おめでとうと言わせてもらうよ、藤丸くん。そして、ミッション達成、お疲れ様。なし崩し的に全てを押し付けてしまったけど、君は勇敢にも事態に挑み、乗り越えてくれた。その事に心からの尊敬と感謝を送るよ。君のお陰でマシュとカルデアは救われた」

「オレじゃなくて、頑張ってくれたのはマシュとラフムと所長です」

「……そうだね。まずはそこからか。いいかい、落ち着いて聞いてくれ。……所長は殉職された」

「え? で、でも……」

「これは事実だ。ボクらにはどうすることもできなかった」

「そんな……」

「所長は残念だったけど……今は弔うだけの余裕がない。悼むことぐらいしかできない。人類を守ることをボクらは所長から託された」

「そう……ですか」

 

 と、藤丸はあることに気付く。マシュはいた。しかし、その横にはもう一体の自分のサーヴァントの姿はない。

 

「ラフムは?」

「え? さっきまで、そこに居たのに……。誰か! ラフムの行先を知らないか?」

 

 ロマニに尋ねると、ラフムはどうやら無事らしい。それを聞いて藤丸はほっと息を吐いた。ロマニの指示でスタッフが慌ただしく監視カメラを確認していく。

 

「見つけました、守護英霊召喚システム(フェイト)の前で跪いています。まるで、祈るように」

 

 ラフムのいる詳しい場所を聞こうとスタッフへと口を開こうとした藤丸だったが、ロマニに止められた。

 

「待つんだ、藤丸くん。ラフムの所に行く前に君に説明しておかなくちゃならないことと、君に聞きたいことがある」

「なんですか?」

「まずは、レフのこと。状況から鑑みるに、彼の言葉は真実だ。人類は滅びている。このカルデアだけが通常の時間軸に無い状態だ。崩壊直前の歴史に踏み止まっている……というのかな。宇宙空間に浮かんだコロニーと思えばいい。外の世界は死の世界だ。この状況を打破するまではね」

「……解決策があるんですね?」

「もちろん。まずはこれを見て欲しい。復興させたシバで地球の状態をスキャンしてみた。未来じゃなくて過去の地球のね。冬木の特異点は君たちのおかげで消滅した。なのに、未来が変わらないということは、他にも原因があるとボクらは仮定したんだ。その結果が──この狂った世界地図」

 

 カルデアスが不明瞭な世界を映す。

 

「新たに発見された、冬木とは比べ物にならない時空の乱れだ。よく過去を変えれば未来が変わる、というけど、ちょっとやそっとの過去改竄じゃ未来は変革できない。歴史には修復力というものがあってね。確かに人間の一人や二人を救うことが出来ても、その時代が迎える結末──決定的な結果だけは変わらないようになっている。でも、これらの特異点は違う。これは人類のターニングポイント」

 

 ロマニはカルデアスを見上げながら説明を続ける。

 

「“この戦争が終わらなかったら”“この航海が成功しなかったら”“この発明が間違っていたら”“この国が独立できなかったら”……そういった、現在の人類を決定づけた究極の選択点だ。それが崩されるということは、人類史の土台が崩れる事に等しい。この七つの特異点はまさにそれだ。この特異点が出来た時点で未来は決定してしまった。レフの言う通り、人類に2017年はやってこない」

 

 カルデアスから藤丸へとロマニは目線を映す。

 

「けど、ボクらだけは違う。カルデアはまだその未来に到達していないからね。分かるかい? ボクらだけがこの間違いを修復できる。今、こうして崩れている特異点を元に戻す機会(チャンス)がある」

「つまり……」

「結論を言おう。この七つの特異点にレイシフトし、歴史を正しいカタチに戻す。それが人類を救う唯一の手段だ。けれど、ボクらにはあまりにも力がない。マスター適性者は君を除いて凍結。所持するサーヴァントはマシュだけだ。この状況で君に話すのは強制に近いと理解している。それでも、ボクはこう言うしかない。マスター適性者48番、藤丸。君が……」

「オレにやらせてください」

「……いいのかい? たった一人で、この七つの人類史と戦わなくてはいけない。そのことを理解しているのか?」

「覚悟しています」

「逃げ出しても誰も君を責める者はいない。それでもかい?」

「逃げたら守れない。そうでしょう?」

 

 少し考え、ロマニは笑う。

 

「ああ、君の言う通りだ。では、これより、カルデアは前所長オルガマリー・アニムスフィアが予定した通り、人理継続の尊命を全うする。目的は人類史の保護、及び、奪還。探索対象は各年代と、原因と思われる聖遺物・聖杯。我々が戦うべき相手は歴史そのものだ。君の前に立ちはだかるのは多くの英霊、伝説になる。それは挑戦であると同時に、過去に弓を引く冒涜だ。我々は人類を守るために人類史に立ち向かうのだから。けれど、生き残るにはそれしかない。いや、未来を取り戻すにはこれしかない。……例え、どのような結末が待っていようとも、だ。以上の決意を以って、作戦名はファーストオーダーから改める。これはカルデア最後にして原初の使命」

 

 一息ついて、ロマニは宣言した。

 

「人理守護指定・G(グランド).O(オーダー)。魔術世界における最高位の使命を以って、我々は未来を取り戻す!」

 

 

 

 -OFF-

 

「t@a'!! t@a'!! jqt@a't@t@t@j0p.$4!! 7Z2$$$44443!! t@a'#33!! 10;yt@a'3!! eZf[eeZf[ej0rk&&!! s:.$4!! s:a'44!!」

「マシュ、ラフムは何て言ってるの?」

「わかりません」

 

『魔力が最も高まる時間帯にガチャを回そう』とラフムは習った。『君は午前2時教のフレンズなんだね、分かるとも!』と叫んで、緑色のアサシンに飛び掛かりたいものだ。午前2時に回した結果、予定調和の如く……高レアサーヴァントは当たらなかった。☆4枠の綺礼は悪い文明。失望しました。午前2時教を辞めてマフィア梶田教になります。

 

 と、ラフムは気づいた。このまま地面に寝転がりながら『溶けるぅ!! 溶けちゃうぅうう!!』とか叫んでいても仕方ないことに。とりあえず、状況を整理してみよう。

 

 ラフム、ガチャを見つける→ラフム、マスター&マシュとロマンに見つかる→彼らはラフムのパトロン(絶好のカモ)である→ラフムにガチャを引かせてくれるようお願いしている→しかし、ラフムの言葉は通じなかった!

 そんな感じだ。しかし、ラフムは諦めない。ガチャ宗教になんか負けない!

 

「q@epeb4g)4、g)hq@epeb4g)4、dy72d@g)4。r^@wk6t.sk4nk67。xyd'eEEy! o“-@2Z”]……YEAAAAH!」

「マシュ、ラフムは何て言ってるの?」

「わかりません」

 

 絶対に笑ってはいけないカルデア査察官になったような気分。セクシーはサンシャインな斎藤さん、キュートはサンシャインなラフムであることは確定的に明らか。

 ちなみに、ラフムが査察官になったのなら、倉庫街の倉庫の上に立ちながら魔術で姿を隠蔽しつつ、えっちなCGの開帳を許すのに。知恵の実(アップル)の手先どもめ、人造人間(アンドロイド)たちに比べてリリースを遅れさせたばかりか、CGすらも許さぬとは何たる非道、何たる外道……。

 

 午前二時召喚とか触媒用意するとか迷信信じて向かうはイフ城、我が征くは爆乳の彼方。穢れ切った輝石(え? 今は石4個なの?)を守護英霊召喚システム・フェイト(ガチャ)へと捧げる。イメージするのは高レアサーヴァントを引く自分だ。

 

 ガチャが光り輝く。12の光の玉が円状に並び、そして、1つの光の玉がその12の光の玉の上で輝く。時計回りに回り出した12の玉。その光の玉は一本の線となり、円を描……あ、あかんわ、これ。ラフムは虹演出以外を信じることができない。

 

 予想通りというか、光が収まった後、そこにあったのはとてもよく見知った概念礼装、“偽臣の書”だった。

 

 ワ カ メ は い ら な い !

 

 ちくしょう! 台無しにしやがった。お前はいつもそうだ。このガチャはまるでお前の人生そのものだ。お前はいつも爆死ばかりだ。お前は色んな☆5サーヴァントを欲しがるが、一つだって手に入れられない。誰もお前を愛さない。

 

 誰かラフムに偽臣の書という概念礼装の使い方を教えて。弱体耐性20%アップ(前提条件として凸済みとする)するなら、素直にNPチャージ50%の龍脈(前提条件として凸済みとする)を着ける。

 どうせ同じワカメなら、優秀な方(レコードホルダー)が良かった。それなら、ケタケタ笑いでデバフを与えることができるラフムに合う礼装だったのに。

 

 けど、一応は☆3の概念礼装。ずずいとショップに行ってダ・ヴィンチちゃんに売り払えば、500QPとマナプリズム1個と交換できる。その後、20マナプリズムで呼符を交換すればいい。穢れ切った呼符を手に召喚すればいいだけの話だ。

 

 さて、そうと決まれば召喚を……。マナプリがない。イベントがない状態でマナプリを集めるのは効率が悪い、というより絶望的だ。種火を集めて銀種火をマナプリに変えればいい話ではあるが、それよりも前にラフムのレベルを上げて欲しい気持ちもある。

 これはマズイ。ガチャができない。いや、待てよ。ガチャをしていらない礼装やサーヴァントをマナプリに変えたらガチャができるじゃないか!(錯乱)

 

 と、そこでラフムは気が付いた。

 ちょっと待って。

 ラフムは何か大事なことを忘れている気がする。

 

 ///

 

 が、マスターの意識は戻らなかった。彼のバイタルはほぼ正常であることから単なる疲れで眠っているだけとDr.ロマンに聞いてマシュと共に胸を撫で下ろした後(もちろん、比喩的な表現だ。マシュのマシュマロには触っていません……触っていません)、手が空いたラフムはふと思い付いたんだ。

 

『カルデアの中を探検しよう』って……。

 

 数時間前のラフムを心の底から恨み、爆死しやがれと願いながら、ガックリと肩を落としてトボトボと歩く。

 

 ///

 

 お気づきだろうか?

 

 ///

 

 が、マスターの意識は戻らなかった。彼のバイタルはほぼ正常であることから単なる疲れで眠っているだけとDr.ロマンに聞いてマシュと共に胸を撫で下ろした後(もちろん、比喩的な表現だ。マシュのマシュマロには触っていません……触っていません)、手が空いたラフムはふと思い付いたんだ。

 

『カルデアの中を探検しよう』って……。

 

 数時間前のラフムを心の底から恨み、爆死しやがれと願いながら、ガックリと肩を落としてトボトボと歩く。

 

 ///

 

 おわかりいただけただろうか?

 

 ///

 

 が、マスターの意識は戻らなかった。彼のバイタルはほぼ正常であることから単なる疲れで眠っているだけとDr.ロマンに聞いてマシュと共に胸を撫で下ろした後(もちろん、比喩的な表現だ。マシュのマシュマロには触っていません……触っていません)、手が空いたラフムはふと思い付いたんだ。

 

『カルデアの中を探検しよう』って……。

 

 数時間前のラフムを心の底から恨み、

 _人人人人人人人人人人人人_

 >爆死しやがれと願いながら<

  ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

 ガックリと肩を落としてトボトボと歩く。

 

 ///

 

 おかわりいただけるだろうか?

 自分で自分に呪いをかけて、それが炸裂している。ラフムは呪いなんて使えなかったハズだけど、多分、過去のラフムのせいだ。かくなる上はレイシフトをして過去のラフムに爆死するからガチャを回すのは止めておけというべきか。

 

 そこで、ラフムは自分の背中に注がれている視線に気が付いた。振り向くと、そこにはマスターが何とも微妙な顔でラフムを見ていた。

 

 もう一回、回させて。ほら、次、来る気がビンビンにしているから、さ。次は☆5サーヴァントを当てる、必ず当てるから。いや、ホント、マジで。ラフムはやるよ、かなりやる。

 

 10連は終わらぬ──我らが胸に彼方への野心ある限り! これぞ大軍師の究極陣地! 勝鬨を上げよ! 石課金陣(はずれずのじん)! 課金王の軍勢(アタルマ・デ・ヤメンゾイ)! AAAALaLaLaLaLaie!!

 

 そんな気持ちを表情にする。具体的に言うと、口からよだれを垂れ流している状態だ。

 ラフムをじっと見つめているマスターは少し泣きそうだ。まあ、気持ちは分からなくもない。勝手にガチャを回されて、その結果がワカメなら大抵の人間は今のマスターと同じような表情をすること請け合いだ。しかし、その程度はとうの昔に通り過ぎた道。単発で当たらなければ、10連ガチャをすればいいじゃない。単発でPUキャラが出たとかいう人は、もしかして可愛いから運営に見逃されていただけではないかしら?

 

 ラフムは生前から運営とは本気のプロレス(ガチャ)をしていたから、高レア鯖を当てる最高に頭のいい方法を知っている。

 

 そう……出るまで当たる教だ。回せ、回転数が全てだ。

 

 固有時制御・三十連召喚(タイムアルター・30連ガチャする)! 固有時制御・百連召喚(タイムアルター・100連ガチャする)

 

 ガチャを回させてとマスターを見つめるが、次にマスターが取ったのは驚きの行動だった。なんと、マスターはラフムの首に腕を回して抱きしめたのだ。

 

「ラフム」

 

 耳のすぐ傍でマスターの甘い声がする。

 オウフwwwいわゆるストレートな展開キタコレですねwww

 おっとっとwww拙者『キタコレ』などとついネット用語がwww

 まあ拙者の場合、ノッブ好きとは言っても、いわゆる声優としてのノッブでなく、ガーチャーとして見ているちょっと変わり者ですのでwwwゆうきゃんの影響がですねwww

 ドプフォwwwついマニアックな知識が出てしまいましたwwwいや失敬失敬www

 まあ彼氏面のメタファーとしての巌窟王は純粋によく演じてるなと賞賛できますがクハハ

 私みたいに一歩引いた見方をするとですねwwwポストジョージのメタファーと型月主義のキッチュさを引き継いだアクターとしてのですねwww

 りえりーのショタ性癖はですねwww

 フォカヌポウwww拙者これではまるでオタクみたいwww

 拙者はオタクではござらんのでwwwコポォ

 

 思わずキャラが崩れてしまう。それほどに回す方のノッブの声は甘かった。

 

「f00……」

「一人で背負うな。オレは……マスターだろ?」

 

『まだまだ頼りないと思うだろうけど、さ』と言いながらラフムから体を離したマスター。何が起こったのかさっぱりだけど、取り合えず頷いておいた。

 

 

 

 -ON-

 

 守護英霊召喚システム・フェイトを稼働させ、概念礼装が排出された途端に、ラフムは今まで見せたことのない表情を浮かべた。茫然自失というように口から涎を垂らしているラフムを見た瞬間、藤丸は大きく目を見開いた。そして、彼はラフムの気持ちに気づく。

 

 ラフムは召喚の責任を感じているのだと。

 

 思えば、出会った時からそうだった。

 マスターである自分を常に優先していた。オルガマリーに爪を向けたのも自分のため。普通なら、素人感丸出しの自分の指示ではなく、身なりが整い魔術師然としたオルガマリーをマスターよりも上と認め、オルガマリーの指示に従うだろう。

 一般人でしかない自分とカルデアの所長であるオルガマリーを天秤にかけたのも自分のため。普通なら、自分よりも上の立場であるオルガマリーを優先させるのは自明の理。

 

 ラフムの全ての行動は自分、つまり、思いがけずラフムのマスターとなってしまった自分を尊重する行為に他ならなかったのだと藤丸は思い至った。

 

 そして、今回、運という不確定極まりないものに大きく左右される召喚にラフムが率先して挑んだのは、何の役にも立ちそうにもない礼装をマスターが引いてしまい、気落ちするのを避けるためではないか? いや、きっと……必ずそうに違いない。

 なぜなら、ラフムは常にマスターである自分を第一に行動してきた。特異点Fで単身、アーチャーとの戦闘を行ったのも自分を危険に巻き込まないためだと考えられる。

 あの時は自分の体、そして、今回は自分の心をラフムは守るよう行動したのだろう。ハズレと断じることができる礼装を引いてしまい自身が(なじ)られることすらも承知の上で。

 

 ──ああ……かっこいい。

 

 しかし。

 

 ──堪らなく……辛い。

 

 その生き方が、自分を危険に晒しても前に立ち続けるラフムの姿が藤丸には痛々しく思えたのだ。サーヴァントは道具や武器として扱われるもの。それが魔術師の常識だ。サーヴァントと縁を育むなど愚の骨頂だと魔術師然とした魔術師は嘲笑うだろう。

 

 だが、藤丸という人間は魔術の素養があるというだけの一般人。彼はサーヴァントが道具として自らを律する様子を見る事は耐えられなかった。

 だからこそ、彼はラフムを抱きしめたのだ。自分の盾となり、剣となり、時には軍師となる存在を。まるで、父や兄、母や姉、教師や上司、いや、それ以上に自分を慈しみ守る存在を。

 

「ラフム」

「f00……」

 

 震えるラフムの声。それを耳にした藤丸は更にきつくラフムを抱きしめる。

 

「一人で背負うな。オレは……マスターだろ?」

 

 藤丸はラフムから体を離してじっと見つめる。ややあって、ラフムは頷いた。

 


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