君の名は。   作:やんかじ


原作:君の名は。
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映画の糸守の出来事をサヤちんの視点でなんとなく書いてみた

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初めてこういうの書くからだいぶ下手くそやけど読んでくれたらまあ、うれしいかな。


初日(サヤちんビジョン)

今日もいつも通りの1日が始まる。

リビングへ行くと既に母が朝食を用意してくれていた。

 「お母さんおはよー。あれ、お姉ちゃんは?」

 「朝の放送せないかん言うて朝早くに出ていったよ」

 「あ、そうやな。忘れてたわ」

 わたしの姉は町の役所(地域生活情報課)で働いていてる。だから時々朝の放送のために私が起きた頃にはもう家にはいない。

 『皆さま、おはようございます』

姉の声だ。わたしの家は母子姉妹三連続で町内放送担当なのだ。(ちなみにわたしも何故か放送部。)なので昔から近所の人たちに『放送のお嬢ちゃん』と呼ばれている。正直に言うと、その呼ばれ方はあまり良い気はしない。

 『糸守町役所からお知らせです…』

 「お姉ちゃんもいっつも大変やね~」

 「あんたも学校頑張ってきないよ」

 「わかっとるに、じゃあいってきます」

 家を出ると目の前に糸守湖が広がっている。今日も天気が良くて、湖に光が反射してなんとも綺麗だ。

 私の住んでいる糸守町は、この糸守湖を中心にして囲むように建物が建ち並び、さらにそれらを囲むように山が連なっている。

 「いつみても糸守湖はきれいやねぇ。せやけどほんと、なんもないわ…」

 などと独りごちる。

 そう、ここは超が2つ付くほどのド田舎で、何もありやしない。あるとすれば糸守湖と、あとは親友の三葉のとこの宮水神社くらいである。

 高校を卒業したら絶対に出ていってやる。と、いつも思うが決してこの町に愛着がないわけでは全くない。

 それから高校へ向かい歩いているとふと後ろから「おーい、サヤちん~」チリンチリンと私を呼ぶ声が聞こえた。振り返ってみると案の定、テッシーこと勅使河原克彦だった。テッシーも三葉とおなじ昔からの幼なじみで親友である。

 「おはよ、テッシー」

 「おう。乗ってくか?」

 「言われずとも」

 と、乗っているママチャリの後ろを親指で指しながら尋ねてきた。このやり取りは、まあだいたいはいつも通りのことで、向こうから言わずとも結局はこちらから要求するので言われる前に言った方が親切だろうという気持ちがなんとなく伝わってくる。

だって、本心ではなくともどことなく嫌そうだ。

 よいしょっ、と荷台をまたいだ。

 高校までの道のりは、家の前の道から一本道である。この道は糸守町をぐるんと1周繋がっていてどちらへ行こうがどこでも行けるようになっている。

 風が気持ちい。この町の風は糸守湖の次ぐらいに好きだ。

それからしばらくすると前の方に三葉が歩いているのが見えた。

 「みーつはー!」

 こっちに気づいた三葉は「おはよ、テッシー、サヤちん」と笑顔で返してくれた。

 「お前はよ降りろ」

 照れているのか、ぶつぶつ言われたので、

 「いいにんケチ!」と返す。

 「おもいんやさ」

 「失礼やな!」

 年頃の女の子に対し何たる暴言か。思わずパンチを御見舞しそうになった。

 「あんたら、仲ええなぁ」

 「よくないわ!」

 あ、ハモった。

 わたしたちのやりとりを見ながらニコニコして三葉はすこしからかい気味に言った。

 わたしは、すこしこの勅使河原克彦という男に気がある。この気持ちに自信が持てないので三葉にでさえ相談していない。だけどバレているのかわからないが、いつもからかわれている。

 あ、そうだ。三葉といえば、

 「三葉、今日は髪、ちゃんとしとるな」

 「え?なにって?」

 おぼえていないのか?

 「そうや、おばあちゃんにちゃんとお祓いしてもらったんか?」

 テッシーもこれに被せてきた。

 しかし、相も変わらず三葉は何のことか分かっていないようだ。

 「ありゃ、絶対狐憑きや」

 「なんでもオカルトにしんの!きっと三葉はストレス溜まっとるの!」

 この男、オカルト好きがたまにキズだ。

 たしかに昨日の三葉は明らかにおかしかった。昨日の三葉ときたら…

 と思った瞬間、三葉とテッシーが急に足を止め、俯きなぎら歩き出した。その理由はすぐに分かった。わたし達から見て、歩いているこの道の右斜め前、拡声器から聞こえ壊れたような声とそこに集まる町人たち。

 そこでは糸守町町長である三葉のお父さんが次の町長選挙のための演説をしていた。その三葉のお父さんの隣にはテッシーのお父さんも仕事着を来て立っている。

 正直、詳しいことは分からないし、聞けないが、あの2人には黒い噂がある(というより事実らしいが)。一言で言うなら、「癒着」というやつだ。そのせいで三葉とテッシーが陰口を叩かれたり、良い見かたをされないことがある。

 「よう、宮水」

 その演説を遠目で見ていた3人組の男女の中の男が声をかけてきた。

 出た…。またこいつらや。

 こいつらはクラスの(自称)イケてるやつらと言ったところで、いつも三葉に対してお父さんのことで嫌味を吹っかけてくるのだ。三葉もそれを言い返さない。そんなことをすれば余計目立って、ややこしい事になるからだ。それが賢い判断だと思うし。それをじっと耐える三葉はとても強い子だと尊敬できる。

 「おはよう」

 三葉は静かにかえした。

 「町長と土建屋はその息子も仲ええの」

 その男が言うと彼を取り巻く2人の女も笑う。

 2人とも無視を貫いて通り過ぎていく。わたしも少し演説を覗きながら二人のあとを追うような形で付いていく。

 「三葉!」

 突然大声がした。町長の声だ。三葉はびくっとして足を止めた。

 「胸はって歩かんか!」

 それだけ言うとまた演説を始めだした。

 ―さすが、町長。子供にもきびしいねぇ

 ―あれは正直かわいそうかも。

 などと、ヒソヒソ聞こえるがお構い無しで、

 「こんなときだけ…っ」

 そう言って三葉はよけい俯き足を早めた。

 いつもこういう時、第3者であるわたしはなんと声をかけていいの分からず、黙ってついて行くしかなかった。

 そして三葉とテッシーのお父さんに苛立ちを覚える。

 親が少しでも良くないことをすればその身内が苦労するということをしっかりと考えたほうがええよね。

 

 「ほんとになんもおぼえとらんの?」

 「うんってば」

 何度も聞いても答えはおなじ。本当に昨日のことを覚えていないらしい。

 「…だってあんた、昨日は自分の机もロッカーも忘れたーって。髪ボサボサの寝癖で結んどらんし。自分のことを『おれ』とか言っちゃって」

 「ええええ!?」

 「なんかあんた、記憶喪失みたいやったよ」

 「うーん」

 昼休み、校庭のいつもの溜まり場の木の下で三葉はバナナジュースを飲みながら昨日のことを必死で思い出さんとして顔をしかめる。

 「…うーん、なんか変な夢見とった気するんよ。あれは…別のヒトの人生の夢?…よく覚えとらんなあ」

 「なんやそら」

 「…わかった!」

 さっきまでずっと黙っていたテッシーが急に大声を出し、愛読書であるオカルト本『ムー』を突き出して、

 「それは前世の記憶!もしくはエヴェレット解釈に基づいたマルチバースに無意識が接続したっちゅう…」

 「あんたは黙っとって」

 と叱って黙らせると、三葉も叫んだ

 「あー、もしかしてあんたが私のノートに落書きを…」

 「は?」

 「あ、ううん。やっぱりなんでもない」

 三葉が何のことを言っているのかは分からなかったが、すぐに取り消した。

 「でも三葉、昨日はほんとに変やったよ。どっか体調でもわるいんやないの?」

 昨日は本当に、本当におかしかった。常日頃から色々なことのせいで町の人々から注目されている日々を送っているだけに、「しっかり、目立たず、しゃんとして、まともに生きる」という感じに気張り続けてきた三葉しか知らないわたし(多分てっしーも)は、よけいにおかしく感じた。

 テッシーではないがあれは本当に狐憑きなんじゃないかと一瞬本気でかんがえたくらいだ。

 「うーん。どこも悪くないんだけど…」

 そう言ってまた三葉は顔をしかめた。

 テッシーはまた愛読書に夢中になっている。

 「そうや!きっとストレスや!あんた最近そういうのいっぱいあるにん!それにあの儀式、今日やろ」

 「あー、言わんとってぇ!」

 お父さんのことは言うまでもなく、実家の神社での儀式もある。三葉は巫女さんなのだから。

 三葉は両手で顔をうずめながら

 「あーもう、とっとと卒業して東京行きたいわぁ。この町狭すぎるし濃すぎるんやさ!」

 三葉は力いっぱい声を上げ嘆く。

 たしかに彼女の言うことには同感だ。

この町は、少し窮屈すぎる。

 

 本屋ないし歯医者もないしな。

 電車は二時間に一本しか来ないし。

 コンビニは9時に閉まるし。

 そのくせスナックは二軒あるし。

 雇用はないし。

 嫁はこないし。

 日照時間は短いし。

 わたしと三葉の愚痴は下校途中も続いた。

 すると後ろから黙って付いてきていたテッシーがイラついたように口をひらく。

 「お前らなぁ」

 「なによ」と不機嫌なわたし達ににやりと笑い、

 「そんなことより、カフェでも寄ってかんか」

 「え…」

 「な…」

 「かふぇぇぇぇ!」

 わたし達はまあ見事にハモった。

 

 「三葉、怒って帰ってしもたやないか」

 「この町にそんなんあるか」

 野良犬のあくびを横目に、テッシーとわたしは近くの自販機で買ったコーヒーを飲みながら小さなベンチで座っていた。確かに、よく考えればこの町にカフェなんてあるはずが無かった。

 「あの子も大変やなぁ」

 「そら主役やからな」

 「そうやね」

 少し沈黙が続く。

 後ろから山に半分隠れた夕日がわたし達を照らしていた。

 やはりここからでも糸守湖は綺麗に見える。愚痴はこぼすがわたしは、もちろん三葉も、この町を愛している。それは三葉も同じだと思うが周りからの重圧が彼女には多すぎるのだ。わたしでも言いたくなるのにもっと言いたくなるのは仕方ない気もする。

 「ねえ、テッシー」

 先に沈黙を破ったのはわたし。

 「ん?」

 「高校、卒業したらどーする?」

 「何やさ、急に。将来とかの話?」

 「そう」

 「別に…この町でずっと暮らしていくんやと思うよ。おれは」

 野良犬の首筋を撫でながら俯き加減で答えた。その表情はどこか少し悲しく寂しく見えた。

 「そっか…」

 きっと彼も三葉と同じで、この町から出ていってやりたいと思っているのだろう。だけど、できない。なぜなら、彼には父の会社あり、いずれあとを継がなければならないからだ。いくら黒い噂が立っていて窮屈な暮らしをしていても従業員のために会社を経営して行かなければならないのだ。そう思うと彼がさっきイラついたように声を上げた理由に納得がいく。

 少し無責任なことを言っていたな。

 わたしは反省した。

 

 

『どうして見に来たんよ~。呪ってやるぅ』

 三葉からのお怒りのLINEが来た。

 きっと今日の儀式をテッシーと隠れて見に行ったことがバレていたのだろう。宮水神社の巫女である三葉から呪ってやるなんて言われたらちょっと怖いよ。

 『いいにん。かわいかったよ。三葉』

 そう返すわたしの顔は少しニヤついていた。

 時計を見るともう夜の11時を越えていた。

 「よし、寝よ寝よ」

 そうしてわたしは、三葉からの返信を待たずに眠りに落ちた。




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