陽乃さんと美容師の彼   作:メイ(^ ^)

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まぁ、あれです。
投稿サボってごめんなさい。
ダクソのDLCがね、あとパリィマンだし。

それではどぞ。



蟠りはチェーンとともに

 

 

 

 

 

 

 

午後になるとまた雪が降ってきた。

窓から見える空はどんよりと曇っており、お日様も分厚い雲に覆われている。雪はふわふわと風に吹かれながら、綺麗に舞い、風が休むことなく吹き抜けている。

 

雪乃ちゃんからの電話が来てから一週間が経過した。

 

ヒラヒラと舞い散る雪を見ていると、思い出すのは過去の記憶。

 

雪乃ちゃんが生まれた日の記憶だ。

 

おぼろげではあるが、確か、あの日も雪が綺麗に舞っている夜だった。初めて出来る妹に心がすごく踊っていたのを覚えている。

 

 

カタカタと微かに揺れる窓。

 

ちらほらと舞う雪。

 

風は止まない。

 

 

今見ている風景は、

 

 

 

まるで、これから来る彼女を歓迎しているかのようだ。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

午後3時過ぎ。

 

その扉はいつものようにカランと小気味いい音を立てて開かれた。

数年ぶりに会う妹はいつものように………、少し昔とは違う柔らかな微笑みを持ち、肩に少し積もった雪を払いながらお店に来店した。

 

雪乃ちゃんの顔を見るやいなや、心臓がドクンと音を立てる。

わかっていたとはいえ、胸の内にわだかまる気持ちは消えてくれない。後ろめたさなのか、後悔なのか、言いきれない気持ちに体が強ばる。そんな私をよそに2人は慣れているように挨拶を交わす。

 

 

「いらっしゃい、相変わらず時間ぴったりなのな」

 

「時間厳守は社会人の常識よ、比企谷君。……あら、先客が居るのね」

 

 

……。

 

 

「予約したのだけれど、……まあ、いいわ」

 

 

……ん?

 

 

「しばらくらソファーで待たせてもらうわね」

 

 

……ちょっと?

 

 

「比企谷君、紅茶を出しなさい」

 

「……ちょいとお待ちを」

 

 

……あ、あれ?

 

 

「フランス製ののマリアージュフレールね」

 

「そんなもんねえよ……」

 

 

……いら。

 

 

「雪乃ちゃん!私だよ!お姉ちゃんですよー!」

 

「わかってるわよ、うるさいわね」

 

 

……。こ、この妹…。

 

 

 

 

 

 

……………

………

……

·

 

 

 

 

 

 

「……で、なんでここに姉さんがいるのかしら。比企谷君、もしかして誘拐?」

 

「んなわけねえだろ。住み着いたんだよ、引き取ってくれ」

 

「嫌よ、居候は比企谷君がお得意様だから」

 

「なに?似たもの同士って言いたいの?俺、一応働いてるんだけど」

 

「顔がニートなのよ。髪型もう少し何とかしなさい、本職なんだから」

 

「顔は俺の両親に謝れ、髪型はそのうちな」

 

 

比企谷君に髪をカットしてもらう雪乃ちゃんが、雑誌をパラパラと捲りながら彼との会話に興じる。

所々に出てくる自分の名前に少しばかり居た堪れない気持ちになりながら、ソファーに腰を掛けている。

 

 

この美容室には雪乃ちゃん以外にも、ガハマちゃんなどがよくここに髪を切りに来るらしい。

 

 

きっと、まだ彼のことが好きなのだろう。

優しくて、暖かくて、陽だまりのような彼だから。

その隣に居たい、共に歩きたい、そう思うのだろう。

 

 

かくいう私もその一人。

 

 

みんなからしたらぽっと出の私は邪魔者なのだろう。

 

 

思考の渦に飲まれていると、雪乃ちゃんがハッキリとした声音で私に告げる。

 

 

 

「姉さん、後で話があるわ」

 

「っ……、うん、わかった」

 

「……喧嘩は二階でしろよ」

 

 

 

何を話すのか、そんなのは知っている。

 

問いただされることも分かっている。

 

今まで目を逸らして逃げてきたことだ。

 

 

逃げ出しそうになる気持ちを無理やり納得させ、静かに階段を上った。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「……へ?」

 

 

 

時刻は午後5時過ぎ。

数時間前まで降っていた雪は身を潜め、どんよりとした雲だけが空を覆い尽くしている。

 

 

二階のリビングで雪乃ちゃんと向き合うように座っている私は、間抜けにも素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

 

 

「だから、気にしなくていいって言ってるのよ」

 

「で、でも!………怒ってないの?雪乃ちゃん、私は……」

 

「何もかも放り投げて逃げた、とでも言うの?」

 

「っ……」

 

「姉さんが考えてるほど、私はヤワじゃないのよ。……父の会社の事も、母さんのことも、気にすることないわ」

 

「……本当に、雪乃ちゃんはそれでいいの?」

 

「ええ、今まで全部姉さんに任せてきたのだから、きっと私の番だと思うの。………だから、私に任せなさい。知らないかもしれないけれど、あなたの妹はかなり優秀なのよ」

 

 

ニコッと笑いウインクする妹に少しばかり驚きながらも、いつの間にか私は涙を流していた。

あふれ出る涙はとまらず、恥ずかしさのあまり顔を手で覆ってしまう。

 

 

やはり雪乃ちゃんは変わった。

心に縛りついていたチェーンは優しく音を立て崩れ、それに伴い暖かな気持ちが胸いっぱいに広がる。

 

 

雪乃ちゃんは立ち上がると、そっと私を抱きしめ涙を拭き取ってくれた。

 

 

後ろめたさと嬉しさが交じりあい、きっとブサイクな笑顔になっていると思うけど、私もそっと雪乃ちゃんに抱擁を返す。

 

 

「雪乃ちゃん、ありがとね。……これじゃあ、お姉ちゃん失格だね」

 

「気にすることないわ。……姉さんは、今も昔も変わらず私の姉さんなんだからどっしりと構えてちょうだい」

 

「うん……」

 

 

 

 

 

 

……

.

 

 

 

 

 

 

ひとしきり抱擁を終え、私と雪乃ちゃんは椅子に座り、今までのことを話し合った。

雪乃ちゃんの大学生活の事、お父さんの会社でのこと、比企谷君とガハマちゃんとのこと。

 

 

久しぶりの姉妹の話はネタが尽きることがなく、時には恥ずかしがり、呆れ、それでも笑顔が消えることはなかった。

 

 

ひと段落会話を終えた後、雪乃ちゃんが少し頬を染め、それでも真剣な表情を作り、私に尋ねる。

 

 

「姉さん、その……お願いがあるのだけれど」

 

「うん、いいよ。何でも聞くよ」

 

 

今まで、迷惑をかけてきたんだから少しでも恩返しがしたい。雪乃ちゃんは真っ先に否定するだろうけど、これは私なりのけじめだ。

 

雪乃ちゃんの瞳をしっかりと見つめながら、その先を待つ。

 

 

お姉ちゃん、何でも聞いちゃうよー!!

 

 

 

「比企谷君を私にちょう「だめ」」

 

「……。姉さん、最後まで言ってないのだけれど」

 

「それはだめ」

 

「……さっき、何でも聞くって言ったはずだけれど」

 

「空耳よ」

 

「……いい度胸ね。ならば、戦いましょう」

 

「……いいよ、久しぶりに本気を出してあげる」

 

「…ふん、さっきまでピーピー泣いていたくせに」

 

「今度は雪乃ちゃんを泣かしてあげる」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

「やめて!仲良くして!」

 

 

 

 

 





次で最後かな。

出来るだけ早く出すように善処します。(たぶん)

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