恋姫†国盗り物語 作:オーギヤ
文鴦率いる遠征軍が不在の間、月影は軍師の登用と朝廷への政治工作をメインに動いていたが、どちらも目立った成果は上げられなかった。
軍師の方はお察しである。
月影は諦めず精力的に動いていたが、顔合わせまで漕ぎ着けた人材はいない。
軍師候補となりそうな人材については調べ上げる。襄陽の馬良、馬謖。南郡の蒯越、蒯良。領土の近くで評判の良い人物をリストアップしてみるも、そこからの発展がなかった。
人を遣わすも丁寧に断りを入れられる。
在野の人材ならまだしも、豪族関係者の四人が首を縦に振ることはなかった。
残念ではあるが当然の結果には月影も渋い顔をする。それでも反応はそれほど悪くもない。
特に馬良、馬謖からは『朝臣に名を連ねられるのであれば改めて此方からご挨拶を』と言伝を預かる。『そのためには軍師が必要なんだけど』と月影は思うも、仕方のないことであった。
朝廷への工作はさらに難航する。
有力者に金銭を贈り協力的な態度を取らせるのが目的であったが、誰に贈るべきかが難しい。
効果的な金額もわからないし、朝廷内の関係性もイマイチ見えてこない。派閥間の対立関係が複雑に絡まり過ぎていて外からの情報だけでは内部の事情を把握することが困難を極めていた。
「何人か間引けば多少分かりやすくもなるが、現状それが出来そうなのは周泰ぐらいか……」
頼むのは不味いよな、と月影。
周泰なら都の要人を暗殺することも可能だろうが引き受けるとは流石に思わない。
仮に周泰が引き受けたとして孫家が許すと思えない。孫家を敵に回してまで実行する価値があるかは正直怪しい。面倒なのを間引いたところで、さらに厄介なのが出てくる可能性もある。
周泰を挟んで周瑜に助言を求めた月影。
月影は使える人材は惜しみなく使うし、頼れる相手には教えを乞うことを厭わない。
周瑜は若干困惑しながらも『同族か同郷の伝手を頼るのが一般的で信用も得やすい』と返答し、いくつか過去の事例を挙げて紹介した。周瑜もなんやかんやで面倒見が良かったりする。
それでも同族に同郷の線は考えられない。
未来人の月影視点ではこの時代、この世界には縁も所縁もない。天涯孤独の身だ。
このように朝廷への工作は難航していた。
次に月影は朝廷の内部事情について知り得る人物について検討することにした。
南陽軍の面々は当然知らないとして孫家も詳しくはないようだ。領内、または近辺で朝廷内部について精通する人物を調べた月影はやがて、諸葛亮と鳳統の師である水鏡の名前に辿り着く。
「本名は司馬微。水鏡は隠居してからの名か。過去には少傅を務めた経歴もあると」
これは大物だな、と月影は驚く。
少傅とは皇太子に仕える官職。朝廷内の事情について詳しいと考えるのは自然である。
意外なところで繋がりがあるものだと月影は思った。そして諸葛亮と鳳統と関りがある手前、その師である水鏡とは一度は話してみたいとも思っていた。これは丁度良い機会である。
「────じゃ、留守番よろしく」
「二、三日で帰ってくるのね?」
「何事もなければそんなもん。城の連中が馬鹿なことをしていたら叱っておいてくれ」
水鏡女学院は拠点から距離も離れておらず、冀州討伐軍の敗戦を受け朝廷も慌ただしい。
城を離れるには比較的タイミングが良かった。それから数日後、討伐軍の動きがないことを確認した月影は孫権に留守を頼んでは少数の供を引き連れて水鏡女学院へと向かった。
水鏡女学院は南陽郡の山間に庵を構える。
世間の騒乱とかけ離れた自然豊かで閑静な地は教育の場には適しているといえた。
道中には山賊が住処として好みそうな地形もいくつかあったが南陽郡内に山賊はいない。
黄巾軍と並び反体制派、二大勢力と目される南陽軍。気合いの入った荒くれ者は南陽軍に加入し、半端者は月影を恐れて他郡へと向かう。山賊が縄張りとするには危険が大きすぎた。
賊の総本山であるが故に、賊が大陸全土に跋扈する時代に平和を保つという矛盾。
そんな地を治める月影は誰に憚ることもなく堂々と進み、やがて水鏡女学院へと辿り着く。供を外で待機させては下馬し、敷地内へと踏み込むと聞き覚えのある声が月影の耳に届く。
「────そこで油断していた月影さんの顎に蹴りを叩きこんでこう言ってやったの。私を従えたければ腕ずくでどうぞ。まあ、そんな実力じゃ一生出来ないでしょうけど……ってね」
草木が生い茂る正面口前では、諸葛亮と鳳統が座り込み何やら楽し気に話をしていた。
月影は二人に気づかれないように姿を隠し会話を聞く。どうやら諸葛亮が南陽軍に連行された時の武勇伝を得意気に語っているようだ。月影は『そんなことあったか?』と首を傾げる。
「へえ、そうなんだ!」
「私の間合いで油断するなんて甘いよね」
「朱里ちゃんって月影さんの顎に足が届くんだね。身長差で難しそうだけど」
「うっ! そ、そこは蹴りの前に腹部へ鉄拳を当てて態勢を崩したという過程が……」
鳳統は諸葛亮の話を信じてはいなかったが、なんか面白いので付き合っていた。
諸葛亮は城内で狼狽える自分の印象改善のために度々鳳統に与太話を吹いていたが、この時はタイミングが悪かった。すぐ近くで月影が話を聞いているとは、まさか夢にも思わない。
「私が向こうで静かなのも、そういうこと」
「そういうこと?」
「暴挙に出て来ても対応出来るように備えてるの。雛里ちゃんには難しい話かな?」
「うーん、ちょっとわからないかな」
「また今度体調が悪くなければ見せてあげる。知と暴を備えた私の真の姿ってやつをね!」
鼻息も荒く吹きまくる諸葛亮。
ちゃっかり体調面で予防線を張っているあたりは抜け目がなかったりもする。
この日も絶好調な諸葛亮。
ただ、長続きはしない。月影が音を立てず忍び寄っては二人の傍へ近づき声をかける。
「────月影の野郎が調子こいてたら、やっぱ孔明さんがシメたりするんスかね?」
「調子こいてなくてもシメるよ!」
勿論、月影は怒ってなんていない。
こんなことで目くじらを立てるほど度量は狭くない。その逆に面白がっていた。
「また顎をパカーンと一発……って、孔明? 雛里ちゃん。呼び方なんか変じゃ……」
「どうも。顎をカチ割られた礼に来ました月影です。本日は対戦よろしくお願いします」
二人とも元気そうだな、と思う月影。
諸葛亮は月影の姿を見ては口をパクパクさせ、一つ大きく息を吸い込んでは悲鳴を上げる。
「で、でたあぁぁぁぁぁ!!」
「月影さんだ! こんにちは!」
「ああ、二人とも変わりなさそうだな」
逃げようとする諸葛亮の腕をガッチリ掴んで、嬉しそうに月影へ声をかける鳳統。
「孔明との決着は後でつけるとして、まずは本題を済まそうか。水鏡殿はご在宅かな」
「先生に御用ですか?」
「あ、挨拶だ……。遂に挨拶に来たんだ。いつか言ってた話の続きが遂に今日……!?」
はわわ、と慌てる諸葛亮。
それでも『先生に迫る危機を見逃すことは出来ない』とすぐに覚悟を固める諸葛亮。
「先生を売ることは出来ません!」
「そうか。なら先に決着をつけるか」
「すぐに先生の予定を聞いてきます! 使い走りはこの諸葛孔明にお任せを!」
腰に据えた剣をチラリと見てから月影がそう言うと、諸葛亮の態度は一変する。
走り去って行く諸葛亮の背を見ながら『やれやれ』と呟く月影。そして戻って来るまでの間、お土産の甘味を鳳統と食べながら時間を潰す。やがて息も絶え絶えの諸葛亮が戻って来た。
「ああ! なんか食べてる!?」
「おいしーよ!」
「水鏡殿のご予定はどうだった?」
「月影殿を客間にお通しせよとのことです。雛里ちゃんばっかりズルい……ぐぬぬっ」
不満気な諸葛亮に連れられ建屋内に入る月影。
そして客間の前に着くと『ありがとう』と言って諸葛亮の分の甘味を差し出す。
嬉しそうに受け取ったのを見て『長くなるから外で遊んでてくれ』と言い客間へ入る月影。
月影が客間へ通された後、諸葛亮と鳳統はまた元の場所へ戻り駄弁っていた。
喋る内容は尽きないが、お喋りよりも客間が気になる二人。水鏡と月影が何を話しているのか気になって仕方ない二人。そして諸葛亮にはもう一つ気になることがあった。
「ね、ねえ雛里ちゃん?」
「なあに、朱里ちゃん?」
「今から鍛えたらなんとかなるかな。肉弾戦で月影さんと互角ぐらいに戦えたり……?」
無謀な挑戦を試みようとする諸葛亮。
水鏡と話を終えた後、月影との対戦が予定されている諸葛亮は気が気じゃなかった。
「いや、それは流石に無茶じゃ……」
「だ、だよね。私だけ武器使用可とかにならないかな。武器もぜんぜん扱えないけど」
「戦闘を想定するなんて朱里ちゃん勇敢だね。私は盤上遊戯で遊んでもらうのかと思ってた」
鳳統に言われて天啓を得たかの如く閃く諸葛亮。なにも心得皆無な武で競うこともない。
「それだ……! それだよ雛里ちゃん!」
「うんうん。私も遊んでもらいたいし」
「軍人将棋でボッコボコにして私の実力を思い知らせてやる! 駒と盤を取ってくるね!」
そう言い残すとまたしても走って行く。
月影に反発しながらも言動面では、しっかり影響を受けていたりする諸葛亮。
諸葛亮が戻って来るまでの間、鳳統は客間の方角に目を向け『何を話してるんだろう』と思う。そして自分達にも力になれることはないものかと考える鳳統であった。
「──────」
「────────」
「────────でしょうか」
「近く────は────と想定すると」
客間に繋がる廊下前で中に入るタイミングを窺う諸葛亮と鳳統。
断片的に聞こえてくる二人の声色から真面目な話をしている雰囲気を感じ取る。
勝手に入ると怒られかねない。
月影は多分怒ったりしないが師である水鏡は怒る。二人はジッと飛び込む機を窺った。
やがて話が一段落ついた気配を察する。待ってましたとばかりに鳳統が襖を開くと、同じく待ってましたとばかりに諸葛亮は目を輝かせながら客間の畳を踏み込み、堂々と入室する。
「オラァッ! 乱入の時間ですよ!」
諸葛亮が両手に抱えた将棋盤を月影へと突き出しては、やはり声高に叫んだ。
月影と水鏡の二人は襖越しに諸葛亮と鳳統の姿を確認しており、驚いた様子はなかった。
「すまんすまん。随分と待たせたな」
「二人ともよく待ちましたね。偉いですよ」
月影と水鏡の二人は落ち着きを払ったトーンで大人の対応をみせる。
月影の居城とは違った意味で出鼻を挫かれる諸葛亮。だが、ここは諸葛亮のホームである。
城内でのように慌てるようなことはない。ふふんと鼻を鳴らしては将棋盤を月影の前に置き、盤上をトントンと指で叩いては勝負を促す。
「え、何? 将棋すんの?」
「さあ、決着をつけるとしましょうか!」
「ああ、そんな話もしてたな。自分の土俵で戦おうとする姿勢は素晴らしいが、ふむ────」
水鏡との話し合い直後だからなのか。
返事をする月影は、まったく別のことを考えているように諸葛亮には思えた。
「ええっと、駒の動かし方は確か……」
「…………………………」
そして将棋に不得手な仕草を見せる。
これをチャンスと捉える反面『詳しくないんだ』と少し残念にも感じてしまう。
どうせ対戦するなら互いに楽しめる種目がよかった。そんなことも思ってしまう諸葛亮。
月影と諸葛亮の対戦が始まる。
駒を持つ手つきが覚束ない月影。駒組みも定石から外れており『やっぱり初心者かな』と察した諸葛亮。速攻をかければ秒殺もあったが、それもどうかと思っては手を緩めて指す。
形勢を互角のまま中盤戦へ移そうとする諸葛亮。これが失敗であった。月影の駒組みは定石から外れてはいたが、駒の一つ一つが連動していることに気づいた頃には手遅れとなる。
「──────ま、こんなもんよ」
「な、ななななな……!」
「初心者相手と油断すれば格下にだって負けることもある。勝負の綾とは面白いもんだな」
対局は月影の作戦勝ちに終わる。
初心者を装い油断させ定石にはない戦法で攻めた結果、諸葛亮から勝利の金星を取る。
「謀りましたね!?」
「いや、勝負ってそういうものだろ」
「ぐぬぬ……。こうもあっさり敗れるとは……」
観戦していた水鏡もこれには驚く。
教え子である諸葛亮の実力の高さは勿論、師である水鏡もよく知っていた。
油断を誘ったとはいえ、その後に巻き返す隙を与えず完封。先に交わした話し合いでもそうであったが、月影は視野が広くなんとも強かである。やはり只者ではないと水鏡は評価する。
一方の鳳統は感嘆していた。
そして次は自分とばかりに食い下がる諸葛亮を手で制しては月影の前に立つ。
「朱里ちゃんの仇は私が取ります!」
「え? 士元ともやんの?」
「負けたままにはさせれませんからっ!」
「君が勝ったところで孔明が負けた事実は変わらんが、まあいいや。打つなら打とうか」
そう言って盤の前に座り直す月影。
鳳統は内心ウッキウキながらも凛とした表情で衣服の乱れを整え、月影の対面に座る。
「雛里ちゃん! 負けないでね!」
「敗北者の言葉には耳を貸さないよ」
「え、酷くない? 応援してるのに……?」
こうして月影と鳳統の対局が始めるも、今度は勝てないだろうなと予想する月影。
諸葛亮とは違い鳳統に油断はない。月影に一瞥もくれず盤上を一心に見つめている。
鳳統からは高い集中力を感じる。
まともに戦えば勝てる相手ではない。少なくとも月影はそう思っていた。
序盤は互いの攻め手を消し合う攻防が続くも、中盤以降は徐々に鳳統が押し気味に進める。
終盤、先に月影が必至をかけるも鳳統は慌てることなく冷静に攻め続け、見事に勝利を掴む。
「対戦ありがとうございました!」
「こちらこそ。鬼強いっスね……」
順当な結果だと思う一方、やはり鳳統は凄いなと感心する月影。
月影もこの手の盤上遊戯には腕に覚えがあったが、流石に鳳統には及ばなかった。
さて、これでケリがついたと考える月影であったが、どうやら簡単には終われないらしい。
「次は私と再戦ですね!」
「え? まだ打つの?」
「負けたままでは引き下がれません! それと打つではなく指すです。憶えとくように!」
観戦していた諸葛亮が対局の終了と共に鳳統と入れ替わるように着席する。
月影は少し戸惑い、水鏡を見ては目で訊ねるもニコリと微笑まれては仕方がなかった。
「朱里ちゃんと二回指すなら私ともですよ!」
「君は勝っただろうに……」
「当然、一勝一敗では終われませんので三戦目もあります。二本先取が勝負の鉄則!!」
「朱里ちゃんと三回指すなら……!」
「ああ、わかったわかった。三回ずつな。それで勘弁してくれ。二人とも元気だな……」
諸葛亮との二戦目は諸葛亮の勝利。
鳳統との二戦目も鳳統の勝利。そして諸葛亮との三戦目も諸葛亮の勝利に終わる。
順当な結果のまま局は進む。
三戦目では月影に勝ち越した諸葛亮が渾身のガッツポーズを決め水鏡に怒られていた。
そして鳳統との三戦目。駒を叩く音が響く客間の中、諸葛亮が南陽軍の話を月影にした。
「そう言えば南郡攻略はどうです?」
「平定したとは聞いている。何を以って平定と定義するかは微妙なところだが」
「それはおめでたい、と言っていいかはなんともですが、お仲間もやっぱり凄いですね」
序盤、中盤は拮抗した展開が続く。
「今は勢いづいて江夏郡を攻めてるらしい」
「え、なんで……!?」
「それはオレが誰よりも知りたい。アイツら脳筋だからな。本能が囁いたのかもしれん」
対諸葛亮には月影の一勝二敗。
対鳳統には現在二敗。連戦の消耗もあるにはあるが、やはり二人は強敵であった。
この結果を順当と考えている月影には特に焦りはない。そこそこ健闘は出来ているし、恰好はついているといっていい。仮に全敗したからといっても命が取られるわけでもない。
「南陽軍が最も優れている点は縛られないところだ。何処の誰を攻めても憚られないからな」
「うーん、この逆賊……」
「討伐軍の有様を見ているとな。様々な事情が絡み合って一枚岩になれていないのが分かる」
組織が大きいほどその傾向が顕著になる。
月影はそう考えていた。切り崩せるのであれば内から崩したいが自分には無理と考える。
ある程度の工作は行うが決着は戦場でつける方が性に合っている。その方が分かりやすい。
「南陽軍は黒も黒。漆黒よ。こちらが正しいとか善の集団などと綺麗事を抜かす気は毛頭ない」
月影は状況によって発言を多少変えることはあっても、自軍を白とは考えていなかった。
自分を恨む者が山ほどいることも、生け捕りになれば地獄の責め苦を負うことも承知している。
「正義の名の下に南陽軍を、オレを断罪するならそれもいい。ただ一つ確かなことは────」
終盤に鳳統が攻勢を強めるも攻めきれない。
形勢は月影良し。その形勢は投了図まで変わることなく、三戦目で月影は鳳統を下した。
「正義が勝つとは限らんということだな」
水鏡との話し合い。諸葛亮と鳳統との対戦を終えた月影は水鏡女学院を去った。
鳳統は残念そうに引き留めるも『オレみたいなもんが長居するのもな』と固辞する。
「月影さんは敗れたんですから、次からは私達に敬語を使って下さいよ!」
「孔明。次は腕力で勝負しような!」
「う、嘘です嘘です! 暴力はよくない。本日は対戦ありがとうございました!!」
月影を見送りに来た諸葛亮は勝敗結果から強がるも、あっさり返り討ちにあう。
そして水鏡や鳳統に礼を言って月影は去って行った。残された三人はしばらく後ろ姿を見つめ、やがて月影の姿が見えなくなってから水鏡がゆっくりと口を開いた。
「月影殿、若いのに風格があったわねえ」
水鏡はそう総括する。
月影自身の能力もさることながら、諸葛亮と鳳統に目をつけた慧眼も素晴らしい。
水鏡は今の時勢を騒乱期と捉えていたが、変革期なのかもしれないと考えを改める。月影のような人物が台頭し人材を集めれば破るのは困難であると。実際、今現在も勝ち続けている。
「先生も物怖じしてませんでしたね。朱里ちゃんなんて最初は散々だったのに」
「貴女達が無事に帰って来て向こうでの話を聞いたことから、人となりは察していたし」
だからこそ話し合いに応じた水鏡。
そして助言を乞われては求められたことを話す。およそ朝廷外の人間には知り得ない情報であったが、月影がある程度の事情を把握していることは受け答えから見て取れた。
本当に大したものだと水鏡は思う。
後は軍師が足りていないと嘆いていたが、そう遠くない日に埋まるだろうと予想する。
「朱里、雛里。あまり月影殿に迷惑をかけないようにね。あの方はきっと先の世で大成するわ」
「はーい、先生!」
「それまで生きていればですがね!」
素直に返事をする鳳統と悪態をつく諸葛亮。どちらも水鏡にとっては可愛い教え子であった。