恋姫†国盗り物語   作:オーギヤ

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第十九話

 

 討伐軍を三度返り討ちにしてやったが、どうやらまだ決着とはならないらしい。

 間者の報告では袁家主導で四度目の南陽討伐軍編成が計画されているとのこと。元々この地が袁術の領土であったことを考えると分からんでもないが、それなら初戦から来ればいいものを。

 

 まあ、それでも悪い話ばかりじゃない。

 朝廷内でも遂に南陽軍を討つのではなく取り込もうとする動きがみられているようだ。

 その動きに袁家の偉いさんが真っ向から反対したことにより鎮静化はしたが、第四陣が負ければ主流となるのかな。いい加減、決着は近い。次が最後と考えて気合いを入れねばならない。

 

「────さて、誰が来るのかな。冀州を治める袁紹がわざわざ来るとは考え辛いが……」

 

 無難に考えるなら前回取り逃した皇甫嵩か。

 戦わずに兵を下げたということは、こちらの力量をある程度は測れているとみていい。

 皇甫嵩は相当手強そうだ。朱儁は流石に総指揮官とはならないだろう。三度敗れて四度目となれば朝廷の正気を疑う。三度目と知った時も驚いたが、袁家主導ならば人選を刷新するはずだ。

 

 盧植が更迭され朱儁もダメとなると皇甫嵩。

 朝廷内での格を考えるとそうなる。それでも張角の方も健在なので断定は出来ない。

 どちらに重きを置いているかにもよるが、厄介とみるべきは断然張角であるべきはずだ。オレを討ち取ったところで黄巾の乱は終わらないが、張角を討てば収束に向かうと考える。

 

 袁家主導なら袁紹か袁術が総指揮官となる可能性もあるが、それなら流石に負けはしない。

 舐めてるわけではないが袁術は子供。袁紹は領土を冀州に据えており、冀州には黄巾賊の本拠地がある。全軍を冀州から遥か離れた荊州は南陽郡に向かわせるなんて真似はあり得ない。

 

 普通に考えれば袁紹は冀州討伐軍に加わる。袁術は来るかもしれんが、来たところで脅威とはなり得ないはずだ。無難に袁家の息がかかった連中がゾロゾロ来るのかな。まだ編成の状況は見えてこないが、数に物を言わせるような相手で済むのなら、いくらでもやりようはある。

 

 袁家と対立関係にある勢力に渡りをつけ、次で最後となるように動いていこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南陽軍の連中、ウチの連中は見た目そのままに荒っぽい気質のヤツが実に多い。

 口より先に手が出るなんてことは日常茶飯事。一日を通してみれば、必ずといっていいほど何処かしらで揉め事が起こっている。そこに野次馬がワラワラと集まっては賑やかにやっている。

 

 下手に鬱憤を溜め込むよりは適度に発散させる方がよっぽど健全だと思う。揉め事が起こり殴り合いに発展したとしても、決着がつけば互いの健闘を称え合いスッキリと遺恨無し。

 荒っぽい中にもそういう気質の連中が多いのでオレも止めたりはしない。『肩がぶつかった』だの『道を譲らない』なんて程度の揉め事にイチイチ顔を出していたら本当にキリがない。

 

 そんなこんなで南陽軍内での揉め事は日常化していたが、この日も案の定火蓋が切られた。

 

「────おい、お前は確か甘寧とか言うたか。姐さんの側近かは知らんがなあ……」

 

 討伐軍も去り、一息ついた秋のこと。

 謁見の間で主だった面々と談笑を重ねている最中、鄧艾が甘寧に噛みついた。

 

「カシラに舐めた口利くんはやめとけ」

 

 鄧艾の言葉に甘寧が反応する。

 甘寧はこちらをチラッと見て様子を窺ってきたが、オレが知らん顔をすると応戦した。

 

「なぜ貴様にそんなことを言われねばならん」

「口の利き方を改めろって話や。カシラ相手にそんな言葉遣いでええと思っとるんか?」

「私が月影を敬う理由などない。立場の上下がない以上、なんの問題もないと思うがな」

「ほう、この城に住み食事の世話にもなっとって義理はないと。孫家の兵隊は随分図太いのう」

 

 この日はどうやら幹部クラスの面子が揉めるらしい。鄧艾対甘寧の構図ときた。

 近くで話をしていた連中はみんな会話を止め『なんだなんだ』と二人の周りを囲っては面白そうに成り行きを見ている。オレは玉座に腰を下ろし肘をついては遠目に見物と決め込む。

 

 鄧艾は甘寧の言葉遣いが気に入らないらしい。

 南陽軍の親玉であるオレにタメ口を利くのが気に入らないのか。オレはぜんぜん気にならんが、鄧艾の言葉にも一理はある。まあ、それでも甘寧の言葉には十理ぐらいあるのだが。

 

「蓮華様や文鴦だってそうだろう」

「その二人は例外や。カシラの右腕のアニキと姐さん。オドレはその二人と同格とでも?」

「私が蓮華様と同格ということはあり得んが、それとこれとは話が別だ。そもそも────」

 

 鄧艾に喧嘩を売られた形の甘寧ではあったが、それでも冷静に反論していた。

 甘寧の言葉に間違いはないが鄧艾も中々に弁が立つ。周囲の囃し立てもあり口論は徐々に熱を帯びていった。止めるほどでもないかと眺めていたが、やがて鄧艾が甘寧の急所を突いた。

 

「────ま、そうしたい気持ちもわかる」

「ん?」

「オドレは周泰と違って日中なんもせんとフラフラしとるもんな。存在感を出したいんやろ」

「私がフラフラだと……?」

「カシラと五分に接することで格を保ちたいんやろうが、そんな魂胆は見え見えや。浅いのう」

 

 鼻で笑ってはそう言い放つ鄧艾。

 甘寧の纏う雰囲気が瞬時に鋭さを増す。鄧艾もなんだ。絶妙に余計なことを言うもんだ。

 

 甘寧の立場は微妙なものだと思う。

 孫権の護衛という触れ込みではあったが、ここ最近は護衛をしている姿もあまり見ない。

 誰と一緒にいることが多いかと言えば孫権ではあるが、それと同じぐらい単独であちこち練り歩いている。用事がある様子ではなく、悪く言ってしまえば暇を持て余している感じだ。

 

 甘寧が暇を持て余すということは、護衛対象の孫権の身が安全という見方も出来る。

 それは即ち南陽軍に対する警戒心が薄れているということに繋がる。本来であればバリバリ働いている周泰の方がよっぽどおかしいはずだが、そこについては誰も触れていないな。

 

 そんなことを思いながら周泰を見る。

 なにやらソワソワしている周泰はオレと目が合ったのをGOサインと受け取ったのだろうか。

 オレを見てはコクリと頷くと睨み合う鄧艾と甘寧の前に割って入り、声を張り上げた。

 

「思春殿の悪口は見過ごせませんよ!」

「────明命! すまない。助かる」

「いくらフラフラしていても思春殿は孫家の主力。舐められる謂われはありませんねえ!」

「フラフラは否定してくれんのだな……」

 

 意気揚々と割って入った周泰。庇っているのかは微妙だが、甘寧の強さを主張した。

 似た流れは以前にも見たな。おそらくこのまま鄧艾対甘寧の武力勝負に発展するのだろう。

 

「ほう、孫家の主力ねえ。どれほどのモンか体験してみんことには、なんとも言えんなあ」

「ならば鄧艾。その身で味わってみるか? 舐めた口を利いてるのはどちらか教えてやろう」

 

 予想を裏切らずに場の空気は対決濃厚。

 このまま黙って勝負の行方を見届けてもよかったが、もう一捻り出来ないかと考える。

 甘寧が暇を持て余しているのなら南陽軍に引き入れたいと思う。周泰という前例がある以上、可能かもしれない。前線に立つのは無理としても、孫家流の鍛錬とか兵にしてくれんかと。

 

「孫権。ちょっといいか」

 

 そう考えたオレは甘寧の主人である孫権を近くに呼んでは、そっと耳打ちをする。

 甘寧を引き入れるには孫権の了承が不可欠と考え、前線に立たせないという条件でどうかと提案してみる。兵の鍛錬とか城の見回りとか、後方勤務中心でどうですかねと訊ねてみる。

 

 それともう一つ。鄧艾対甘寧の対決規模を広げてみてはどうかなと提案してみた。

 

「────うんうん。いいわよ」

「言っといてアレだが、あっさり承諾したな」

「本人も手持無沙汰みたいだし。それに南陽武道大会かあ。ほどほどに物騒で盛り上がりそうね」

 

 武道大会と言う言葉を聞いた瞬間、その場の全員が瞬時に反応を強めた。

 

「ウチも人数増えたしな。そろそろ軍団化を視野に入れる段階だと考えていたし丁度いい機会だ」

 

 これまでも検討したことは何度かあった。

 南陽軍という一括りにせず、第一部隊や第二部隊のように隊を明確に分けるのもいいかと。

 その方が競争にもなるし、なにより連携が取りやすい。武道大会での上位八人をそのまま軍団長に据え強化を図る。実績は度外視となるが強い順に割り振るのだから誰も文句は言わんだろう。

 

 これなら甘寧が割り込んでもおかしくないし、新規の逸材発掘にも繋がるかもしれない。

 我ながら名案だと思う。一つ困ったことがあるとすれば、オレが参加出来ないことか。トップが参戦して枠を取ってしまうのは違う気がするので今回は大人しく観戦側に回ろうと思う。

 

「流石は大将だ。いきなり気合いが入る催しをブチ込んでくる。いいねえ、楽しみだ!」

「ワタシも優勝を目指しますよ!」

 

 いの一番に文鴦と魏延が嬉しそうに声を上げる。この二人が優勝候補の筆頭とみていい。

 

「おい、甘寧。オレとやるまで死ぬなよ」

「貴様も無様に散ってくれるなよ。私を愚弄した舌は首ごと叩き斬ってやろう。覚悟しておけ」

 

 鄧艾と甘寧もやる気十分だ。なんか普通に死を想定しているが武道大会なんだよな。

 

 そんなこんなで武道大会を実施する運びとなったが、やはり想定外のことがあった。

 一般のエントリーは腕利きが数十人程度と予想していたが一般兵がこぞって参加を表明したこと。勝算は無いが幹部クラスと戦ってみたいと声を挙げた意気込みは切り捨てられない。

 

 ウチの兵隊らしいなと思う。そういうわけで本戦の前に予選を実施することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南陽武道大会予選は当初バトルロワイアル方式を考えていたが、普通に死者が出かねない。

 健全に持久走、重量挙げなどを実施し基準に満たない者を落としていく。基準というのは大きく括って文鴦達と戦って死なないレベルだ。手加減なんて生易しいものはあまり期待出来ない。

 

 基準を満たした者達を戦わせ選別していく。

 オレは別件で見届けられなかったため、予選通過者は五十六人にするようにと伝えた。

 

 文鴦、魏延、高順、張燕、周倉、廖化、鄧艾、甘寧。この八人をまず各ブロックに分ける。

 これに予選を勝ち抜いた精鋭を加えて本戦を実施する。文鴦達を先に分けたのは、トーナメントを完全抽選としてしまうと緒戦から文鴦対魏延なんて対戦カードも起こり得てしまうからだ。

 

 それもトーナメントの醍醐味としてしまうのも一つの手だが、どうせなら幹部クラスの実力を直に触れるきっかけとしたい。そんな考えもあり有力者は事前に振り分けておいた。

 人数の関係もあり予選は複数日に分けたが、本戦はそれから一週間後に実施。一回戦、二回戦、三回戦、準々決勝、準決勝、決勝と最大六戦を一日の間に戦う地獄のワンデートーナメント。

 

 城外の荒野に特設会場を設けた。

 半ば思いつきで始めたものの周囲の熱気が凄い。兵士だけでなく領民達も観戦している。

 耳にした話によると優勝者を予想する賭けも行われているとのこと。不動の本命は文鴦。対抗に魏延。穴で高順と鄧艾らしい。南陽の領民らしく逞しくも良い予想をする。

 

「私は文鴦殿に賭けましたよ!」

「ああ、そう。周泰は出なかったんだな」

「興味はありましたが、思春殿の応援も大事ですので。それに私は別の役目がありますし」

「応援とか言いながらちゃっかり文鴦に賭けてんだな。甘寧もぜんぜん優勝の芽がありそうだが」

 

 一回戦、二回戦と観戦しながら周泰と話す。

 予選突破者は筋の良い者もいたが、やはり幹部クラスの牙城を崩すには足りなかった。

 

 トーナメントは順当な結果で進攻する。

 三回戦で甘寧と当たった者が相当鋭い槍捌きを見せ大金星を過ぎらせたが最後は甘寧が制した。

 

「思春にあそこまで迫るなんて凄いわね」

「一回戦、二回戦とは得物も違ってたし、完全にココを狙ってたみたいだが及ばなかったか」

 

 甘寧でなければ危なかったかもしれん。

 名前は姜維と言ったか。どこかで聞いた響きのある名だ。つまりは優秀なのだろう。同じく観戦する孫権と話しながらまじまじと思う。張燕、周倉、廖化だと喰われていたかもしれん。

 

「敗れはしたがアレは副将候補だな」

「思春殿、肩で息してますしね。かなりの長丁場でしたし、次戦以降に影響が出るでしょう」

「それも含めての勝ち抜き試合。相性や消耗具合で勝敗が変化するのが面白いところだろうよ」

 

 こうしてベスト8が出揃った。

 文鴦、魏延、高順、張燕、周倉、廖化、鄧艾、甘寧。予想通りの面々が名を連ねる。

 波乱は起きなかったか。姜維を始め何人か見込みのある者も発掘出来たため、大会は成功したといっていいだろう。負傷者は続出しているが、今のところ死者は出ていないことだし。

 

 

 

 

 

 準々決勝第一試合では文鴦が張燕を下し、第二試合では高順が廖化を下し準決入りを決める。

 第三試合では魏延が周倉を下し、いよいよやって来た第四試合。鄧艾対甘寧の勝負。これは偶然ではなく、事前の組み合わせ段階で鄧艾と甘寧は準々決勝で当たるように調整しておいた。

 

 逆の山に二人を振り分けてしまうと戦わずに終わる可能性が高かったためである。

 鄧艾と甘寧のいざこざが根本として始まった大会。白黒は付けさせるべきだろう。順当に勝ち上がればぶつかるように調整する。鄧艾はともかく、甘寧は危なっかしい場面も見られたが。

 

「ちなみに私も文鴦に賭けました!」

「うーん、この。孫家の絆はボロボロ」

「組み合わせがね。貴方の狙いはわかるけど鄧艾、魏延、文鴦の三縦は流石に厳しいかなって」

 

 お姉様でもどうだろう、と孫権。

 それを聞き、孫策ならこの地獄みたいな組み合わせでも優勝を掻っ攫うのだろうかと考える。

 実際に戦っている場面を見たことがないだけに断言は出来んが、おそらくオレが出会った中で最強格は孫策だと思われる。次点で文鴦。オレと文鴦は通算対戦成績では互角だったりする。

 

 初顔合わせの時こそ完敗したが、今の得物に新調してからは競った勝負が続いている。

 そんなことを振り返っていると会場では鄧艾と甘寧が向かい合う。お互い鋭く殺気を飛ばし今か今かと開始のゴングを待ちわびている。心なしか甘寧は消耗を引きずっているように映る。

 

「ようやく出番やな」

「ここまで上がって来たことは褒めてやろう」

「オドレもな。さてさて、孫家の主力とやらがどれほどのモンか教えてもらおうかのう!」

 

 鄧艾対甘寧の勝負は大会最大の激戦となった。

 甘寧の得物である曲刀は、初見段階が最も対応に苦労する一物であると推測される。

 速度もそうだが、変幻自在の太刀筋は本来手の内が知られていない短期決戦でこそ真価を発揮するはずだ。一方の鄧艾は薙刀を操るも、戦法はオーソドックスであり隙が無く堅実に強い。

 

 姜維との一戦で手の内の大半が明かされていた甘寧には分が悪いとされる一戦。

 それでも互角以上に渡り合う甘寧。観客の大多数はほとんど太刀筋が見えていないはずだが、それでもこの日一番の盛り上がりを見せる。何十合と打ち合い、遂に決着の時は訪れた。

 

 

 

 

 

「────私の勝ち、だな」

「ああ、そうやな。次こそは負けん……ぞ」

 

 流血の激しい鄧艾は前のめりに倒れ意識を手放すも、最後まで得物を離すことはなかった。

 鄧艾が倒れると甘寧は両膝をついて呼吸を整える。大歓声の中、荒い呼吸を整えようとするも落ち着く様子はない。ほとんど互角に近い勝負であったことは誰の目にも明らかであった。

 

「やったやった。思春が勝ったわ!」

「うん。良い勝負だった。鄧艾も相当やるな」

「四傑ならば上々でしょう。組み合わせ次第では優勝だって狙えたかもしれませんが!」

 

 孫権と周泰が甘寧の健闘を称える。

 まだトーナメントは終わっていなかったが、周泰も甘寧の限界を察しているようだった。

 

 その後の準決勝で文鴦が高順を下し、もう一方では満身創痍の甘寧を魏延が下した。

 決勝は文鴦対魏延。この顔合わせは鍛錬も含めて数十回は見ている。速度や技術重視ではなく腕力に重きを置く同型同士の対決。つまりはより腕力の強い方が勝利するシンプルな戦い。

 

 決勝の軍配は文鴦に上がる。

 こうして大会は幕を下ろした。優勝者の文鴦が第一軍団長。準優勝の魏延が第二軍団長。

 優勝者である文鴦に準決で敗れた高順が第三軍団長。同じく準決で魏延に敗れた甘寧が第四軍団長。準々決勝で文鴦に敗れた張燕が第五軍団長。魏延に敗れた周倉が第六軍団長と続く。

 

 以下、廖化が第七軍団長。鄧艾が第八軍団長とし南陽軍の編成を組んでいく運びとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大会を終え、死力を尽くし戦った鄧艾と甘寧。仲が良くなったかといえばそうでもない。

 

「オドレが魏延に負けたからオレがドンケツになってしもたやろ。どうしてくれんねん」

「末席の第八軍団長殿は隅っこで大人しくしているんだな。格上に噛みつくもんじゃない」

 

 そうは言っても互いの力量を知ったことで、わだかまりは多少改善された気もする。

 この日も朝からメンチを切り合っては言い争う鄧艾と甘寧を見ながらそんなことを思う。

 

「存在感がなんだって……?」

「────くっ! カシラァ! 次の大会はいつですか!? 来週あたりですかね!?」

「当分はやらんぞ。予選、本戦で何人重傷者を出したと思ってんだ。年に一回ぐらいかな」

 

 甘寧の口調についても南陽武道大会以降、鄧艾が追及することはなかった。

 オレが気にしていないことと甘寧の実力を知ったことで鄧艾も認めたのだろう。

 

「まあ、そんなわけで甘寧。これからは君の部下をビシバシ扱いてやってくれ。頼むぞ」

「私の部下……か。悪くない響きだ。うん、そうだな。やってやらんでもない。うむうむ」

 

 甘寧もどこか満足そうに頷く。

 甘寧率いる第四軍団は城内の警備を主な役割とする予定だ。前線には立たせるつもりはない。

 討伐軍と戦わせると事情が変わってくるからな。最悪、城を攻め込まれる場面では判断を任せると伝えた。つまりは遠回しに戦わんでいいと命じる。その時は孫権を守って逃げればいい。

 

「ああ、そうそう。各自、副将の選定を進めとけよ。その辺は全部一任するからな」

「先に言っておくが姜維はオレが抑えたぜ。優勝者に優先権があるのは当然だよな?」

 

 オレが副将について口にすると文鴦が被せ気味に発言する。流石は文鴦。強者は見逃さんか。

 

 文鴦の発言を受け困るのはやはり甘寧。

 姜維のことをアテにしていたかはわからんが、南陽軍内での伝手はないだろうしどうするのか。

 

「────くっ! 手が早いな文鴦。明命! どうだ、お前の力を貸してくれんか!?」

「お断りします! 私は忙しいので!」

「そうなると孫家で……。確か蓮華様の親衛隊に見込みのある者がいたな。育っていれば……」

 

 孫家から引っ張って来る気満々の甘寧。

 あんまりやり過ぎると孫策に睨まれかねん。既に甘寧、周泰としっかり引き込んでいるし。

 

「甘寧の言ってるヤツって誰のこと?」

「おそらくは呂蒙殿ですね。ほとんど接した記憶はないですが、確か目つきが悪かったっけ」

「お、おお……そうか。呂蒙ね。呼べるかは知らんが急がんでいいぞ。孫策を刺激するのもな」

 

 周泰に訊ねてみるも、挙がった名前はオレの想像の遥か上をいっていた。

 流石は孫家。層が厚いな。それでも大半が南陽軍に流れつつあるのが、果たしてどうなのか。

 

 ともあれ最終決戦は近い。最終決戦後の南陽軍の動きを一度みんなで相談しようと思う。朝廷に組み込まれた後、次の目標をどうするかも含め、じっくりと話し合う時間が必要だろう。

 




次話は孫家の幕間と曹操の幕間。
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