恋姫†国盗り物語   作:オーギヤ

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第二十九話

 

 学問を正しく修め、清廉の士として世の中のため人のため、役に立ちたい。

 水鏡女学院の門を叩いた当時、諸葛亮と鳳統は自分達の将来の姿に思いを馳せていた。

 

 一を聞いて十を知る。論語の諺を体現するかのように知識を深めていく二人。

 慢心することなく努力を怠らず、たちまち学院内でも傑出した存在として認められていく。

 

 そんな二人の評判を聞きつけた地元の有力者が、勧誘の使者を送ることも数度あった。

 師である水鏡同席の下、やって来た使者と対面する諸葛亮と鳳統。二人は使者の張り付いた笑顔の奥、自分達を値踏みするような視線を恐ろしく感じ、どうしても上手く話せなかった。

 

「────所詮は子供。無理もありません」

 

 そして期待外れだと嘲笑し去っていく使者。

 顔を伏せて黙る二人。そんなことが続けば、二人は身内以外に苦手意識を持つようになる。

 

 師である水鏡は良くない傾向であることを理解していたが、他者との関係は切れないもの。

 既に知者として自分を優に超える二人。足りていないのは心の強さ。人見知りのまま外の世界へ出すことを善しとしない水鏡は二人の変化を静かに待つ。そしてその時は突然訪れた。

 

「当方は南陽軍だ! 諸葛亮孔明、前に出ろ! お頭の命令だ。一緒に着いて来てもらうぞ!!」

「は、はわわわわわわ!?」

 

 世間を騒がせている南陽軍の兵隊が、とある日の朝一番に諸葛亮を指名し連れ去って行った。

 あまりに急な出来事にポカンと口を開ける水鏡。鳳統は大いに取り乱していたが、既に討伐軍を一度打ち破っていた南陽軍相手ではどうする術もない。ただただ諸葛亮の無事を祈る二人。

 

「この度は人攫いのような真似をして申し訳ありません。諸葛亮殿は無事にお返し致します」

「よかったあ。生きて帰って来れた……」

 

 そして夜には諸葛亮が送り返される。

 丁寧な口調で頭を下げる孫権を見ては水鏡も鳳統もホッとし、何か手違いがあったのだと思う。

 

「それでは続いて鳳統殿をお借りしますね。鳳統士元、前に! 月影の命により連行します!」

「あ、あわわわわわわ!?」

「雛里ちゃあぁぁぁぁぁん!?」

 

 だがホッとしたのも束の間、諸葛亮と入れ替わる形で今度は鳳統を連れて行った孫権。

 世間の喧騒から隔離された、閑静な水鏡女学院に南陽軍の嵐が吹き抜ける。そしてこの嵐こそが、諸葛亮と鳳統を変える、変化のきっかけになったと後に水鏡は振り返ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────南陽軍の人達に常識無し。礼節無し。配慮無し。そして私の拳に敵う者も無し」

 

 南陽軍と交流を、月影と交流を持つようになった二人の変化はすぐに言動に表れた。

 

 年も若く多感な時期の諸葛亮と鳳統。

 物凄くわかりやすく、これまた随分と影響を受けているなと水鏡は苦笑いを浮かべる。

 

「朱里ちゃん凄い!」

「まったく、もう少しで手が出るところだったよ。私は大人だからグッと堪えたけど」

「なんで拳なのかわからないけど凄いね。じゃあ今度、月影さんに実践してみせてよ!」

「え、いや……ま、また機会があればね!」

 

 その一方で人見知りの二人があっさり馴染んだ理由はなんだろうと気になった水鏡。

 物静かだった面影はどこへやら。すっかり騒がしくなった二人を手招きしては訊ねてみる。

 

「月影さんは怖くないんですよ」

「所業は恐怖そのものですが、人となりは意外と寛容で。私達を油断させる罠なのかな?」

 

 鳳統は柔らかく微笑み、諸葛亮は腕を組んで考えるも、やはり肯定的な返事を返した。

 世間の評判と人となりが必ずしも一致しないことを水鏡はよく理解していたが、今回のケースは極めて珍しい。一体どんな人物なのだろうと二人の言葉を聞き水鏡も興味を惹かれていった。

 

 そして実際に月影と対面した水鏡。

 年は二十歳を少し過ぎた程度。想像よりも随分と若いが、その言動は大人びていた。

 

 物腰も穏やかで、よく考えて言葉を選んでいる姿をみると、頭の回転も良さそうであった。

 諸葛亮と鳳統に頼まれては遊戯にも興じ、再戦を乞われては年長者らしい対応をみせる。この人物が南陽軍の頭領とは、事前に知らなければ考えもしないだろう。そう水鏡は評する。

 

 遊戯の勝敗も負け越しはしたが諸葛亮、鳳統相手に僅差なものばかりで、水鏡を驚かせた。

 官吏としても十分通用するだろうと想像し、何が原因で乱を起こしたのだろうと考える。人物鑑定家として名を博していた水鏡を以ってしても、一度会っただけでは全てを見抜けない。

 

「正義の名の下に南陽軍を、オレを断罪するならそれもいい。ただ一つ確かなことは────」

 

 ただ一つ、確かなことは世間に轟くほど南陽軍の頭領月影が極悪人ではないこと。

 そして本人にも自覚があるように、決して善の存在ではないということだ。必要とあれば、あらゆる手段の行使を躊躇わないだろう。そういった芯の強さも言葉の節々から感じ取れた。

 

「正義が勝つとは限らんということだな」

 

 盤上を見つめ、淡々と言い放った月影の言葉には力があり、思わず身震いする水鏡。

 その黒い瞳は何を見ているのか。遥か遠くまで見通しているかのような深い瞳。静かながらも、時折放つ雰囲気には大物感があり、やはり水鏡は傑出した何かを感じずにはいられなかった。

 

「朱里、雛里。あまり月影殿に迷惑をかけないようにね。あの方はきっと先の世で大成するわ」

「はーい、先生!」

「それまで生きていればですがね!」

 

 月影が帰った後、水鏡は諸葛亮と鳳統にそう述べては月影の人物像を評した。

 さらに一言、遠くないうちに巣立っていくであろう教え子二人へ向けて水鏡は言葉を贈る。

 

 稀有な才知に溢れた諸葛亮と鳳統。

 月影と紡いだ縁は、あるいは天命か。二人であれば月影を導けるかもしれないと水鏡は思う。

 

「────そして二人共、もし月影殿に正道を歩むことを望むなら、その懐に入りなさい。あの方は確かに寛容であるかもしれないけど、外の人間の言葉に従うことは決してないでしょう」

 

 本当の出会いなど、一生に何度あるだろう。

 諸葛亮と鳳統を力技で連れ出した月影。その方法は決して褒められたものではない。

 

 ただ結果として、それが二人を変えたのは紛れもない事実。よく懐いているように縁があったと考えるのが自然であった。そして紡いだ縁が、先の世に平和をもたらすことを水鏡は願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後も諸葛亮と鳳統は南陽軍の面々と、月影と交友を深めていった。

 そして秋のこと。討伐軍第四陣の襲来を前に月影に呼び出され、知恵を求められた二人。

 

 王朝に歯向かうのは流石に不味いだろう、と断りの態度をみせる諸葛亮。一方、鳳統は前向きで討伐軍の編成について訊ねる。諸葛亮は鳳統の手を引いては月影から離れ、説得にかかった。

 

「ちょ、ちょっと雛里ちゃん。いくらなんでも不味いよ。国に背くのは流石にちょっと……」

 

 諸葛亮は参戦すべきではないと言った。

 将来的に月影の味方をすることを否定するつもりはなかったが、それは然るべき決着がついた後からでも遅くはないと。諸葛亮の意見は真っ当であったが、鳳統は首を縦に振りはしなかった。

 

「厳しい時に協力してこそ信頼を得られるんだよ。私達ならきっと力になれる」

「それはそうかも、しれないけどさあ」

「朱里ちゃん。私はね。未熟な私を求め、優しくしてくれた月影さんの力になりたいの」

 

 そう言って鳳統は、孫権に半強制的に連れられ、この城へ来た当時のことを振り返る。

 

 強い恐怖心もあってはまったく話せず、ただオドオドとするばかりであった鳳統。

 そして鳳統は、上手く話せない自分に対し蔑まれる視線を向けられることを強く恐れた。

 

 これまで同様、こんなものかと嘲笑の的になることを恐れ顔を伏せる鳳統。だが────。

 

「よく来た士元! その帽子似合ってるぞ!」

「え、上手く話せてないこと? ここに来ると大人だってガクガク震えるから別になんとも」

「若い女の子は甘い物が好きだよな! 食え! 孔明の時は配慮が足りてなかったからな……」

「おい、お前らもニヤニヤしてないで士元をもて成せ。ウチの秘密兵器になり得る逸材だぞ!」

 

 月影はそんなことを微塵も感じさせず、屈託のない笑みを浮かべて鳳統と向き合った。

 スーパースターの来訪とあっては盛大にもてなし、諸葛亮の二の舞回避に全力で努めた月影。

 

 その露骨すぎる接待の嵐に気づかない鳳統ではなかったが、これまで出会った外の世界の大人達とは異なり、自分を思いやる優しい対応を受けたことが嬉しく、言葉が出なかった鳳統。

 

 南陽軍が悪の集団なのは百も承知。

 それでも鳳統は好意を抱いてしまった。鳳統は月影に惹かれその力になりたいと素直に願う。

 

「朱里ちゃんは違うの?」

「う、ううん。私は酷い目に遭った記憶の方が強い……強いけど、それでも私も────」

 

 諸葛亮も鳳統同様、過去の美しい記憶を遡ろうとするも、苦い記憶が先に浮かんでしまう。

 苦い記憶が浮かぶも、今になって振り返るとどこか愉快でもある。確かに酷い目に遭いはしたが、思い出す度にニヤケてしまう思い出になったもんだと諸葛亮は観念しては微笑んだ。

 

「────月影さんの力になりたい」

「うん! そうだよね。朱里ちゃん!」

「月影さんが正道を歩めるように力になりたい。それはきっと私達にしか出来ないことだから」

 

 こうして諸葛亮は決意を固め、鳳統と共に南陽軍に参戦する運びとなった。

 そして大戦後も城に留まり、月影の補佐に勤めていた二人。二人の心は既に決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ行くよ。雛里ちゃん」

「うん、朱里ちゃん。行こうか」

 

 月影に加入を求められた翌日。

 諸葛亮と鳳統の二人は謁見の間の扉の前に立ち、高鳴る鼓動が収まるのをジッと待つ。

 

 中からは賑やかな声が聞こえ、そっと戸を開けて覗くと幕僚達が腕相撲大会に興じていた。

 まったく自由な人達だ、と二人は微笑む。そして一度戸を閉め、胸に手を当てると鼓動は収まっていた。よし、と再度気を引き締め、豪快に戸を開けては腹の奥から声を張り上げる二人。

 

「オラァッ! 孔明様と雛里ちゃんのお出ましですよ! 遊んでないで二列に並んだ並んだ!」

「みなさんに大事な話があります!!」

 

 もう何度目かもわからない登場シーン。

 中にいた面々もすっかり慣れており『なんだなんだ』と言いながら言われた通りに動く。

 

 月影も普通に並ぼうとしていたので鳳統が慌てて止め、中心に立つようにと頼む。

 月影と向かい合うように諸葛亮と鳳統が立ち、その両サイドに文鴦以下の幕僚達が並ぶ。

 

「────そうか。答えを出したんだな」

 

 その威圧感は中々に濃いものがあったが、諸葛亮と鳳統が物怖じすることはもうない。

 

「この諸葛孔明。我が主、月影の命に従い、今この時より軍師の任を拝命致します」

「同じく鳳士元。我が主、月影の命に従い、今この時より軍師の任を拝命致します」

 

 月影の言葉に頷くと二人は深々と臣下の礼を示し、自身の抱負を語った。

 

「貴方が万人を導き、正道を歩むことを私は望みます。共に難局を乗り越えましょう」

「万難を排し、上り詰めた頂が泰平であることを私は望みます。月影軍に勝利を栄光を」

 

 そして声を揃え『貴方の助けとなることを今ここに誓います』と宣言する。

 月影の内なる喜びは大変なものだったが、外には出さず凛とした態度でそれを許した。

 

「確かに認める。諸葛孔明、鳳士元。これより両名は有事においては軍師として軍を司り、平時においては内政官として農政、経済、商業、開発、外交、物資管理を取り仕切ることを命ずる」

 

 その場にいた誰もが『いや、多いな』と思ったが、誰も口には出さなかった。

 諸葛亮と鳳統が抱負を語り、月影がそれを認めて締めると、脇に並ぶ皆が二人を祝福する。

 

 親し気に声をかけられ祝福される二人。

 笑顔でそれに答える二人を眺めながら、やはり月影は内なる喜びを抑えられずにいた。

 

 諸葛亮と鳳統の加入。望んでいたことではあったが、実際にそれが叶うと想像していた以上の喜びがこみ上げる。ひとしきり祝福された二人に近づくと、そっと優しく二人を抱き寄せた。

 

「二人共、これから頼むぞ」

「はわわっ! 月影さん!?」

「あわわっ! 大胆不敵な!?」

「孔明と士元が加わったんだ。袁家のアホ共も曹操も敵じゃねえよ。はっはっはっはっは!!」

 

 そして片腕ずつに抱き寄せた二人に頬ずりをして、この世の絶頂を噛み締める月影。

 

「あわわ、あわわわわわわ!?」

「さ、さっそく私達を手籠めに!? 昨日の良い感じの話の裏にはこんな狙いが。変態です!」

 

 顔をみるみる真っ赤に染め上げる鳳統。

 同じく真っ赤に染まる諸葛亮は月影の奇行に抗議を示すも、身体に力は入っていなかった。

 

 されるがままに受け入れる二人。

 それでも周囲が生暖かい視線に気づくと諸葛亮はハッとしては声を上げ、助けを求める。

 

「みなさーん! ここに変態がいますよー! ちょっとこの人なんとかしてくださーい!」

「はっはっは! 甘いな孔明。ここはオレの城。オレが法であり支配者だ。助けなどない!」

「ならば、その支配を解き放ってみせます。私達が入ったからには好き勝手は許しませんよ!」

 

 そうだよね、と真横の鳳統を見る諸葛亮。

 鳳統は月影にスリスリと身体を預けては満足そうに目を瞑り、諸葛亮の言葉に笑って答えた。

 

「朱里ちゃんに反骨の相が見えますねえ」

「え、なんで!? 酷くない!?」

「私は月影さんの味方ですよお。貴方が成すべきことを、最後までしっかり支えてみせます」

 

 それは頼もしい、と月影はさらにご満悦。

 これほど機嫌の良い月影を見るのは古株の文鴦達であっても記憶にないほどであった。

 

 皆が笑いながら月影に愛でられる諸葛亮と鳳統の姿を見る。平和で得難い日々の一幕がそこには広がる。そして最後に一つ、諸葛亮と鳳統には決めねばならない大きな問題があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────で、大将。どっちが筆頭軍師だ?」

 

 しばらくの後。諸葛亮と鳳統を解放した月影に向かって文鴦が声をかける。

 息も絶え絶えに余韻に浸っていた諸葛亮と鳳統。文鴦の言葉に反応すると目を合わせた。

 

「先に呼ばれたのは私だよね。雛里ちゃん?」

「先に決意したのは私だよね。朱里ちゃん?」

 

 そして互いに譲る気がないことを察する。

 バチバチと火花を飛ばし合う両雄。ここまで来て身を退くことなんて考えるはずもない。

 

「話し合っても平行線。じゃあ勝負だね」

「そうだね朱里ちゃん。それがここの流儀」

 

 互いに譲れないのなら、決着は勝敗によってつけるべき。それが南陽での絶対のルール。

 必ずしもそんなことはなかったが、二人はそう認識していた。そしてお誂え向きの舞台もある。先程まで幕僚達が遊んでいた机に視線を向けると、決着をつける種目がすぐに決定する。

 

「筆頭軍師を腕相撲で決めるのか……」

「本人達が納得するならなんでも構わんよ」

「知恵比べとかじゃないのが南陽軍……じゃなかった。今は月影軍か。月影軍らしいですねえ」

 

 黙々と身体をほぐす諸葛亮。鳳統もトレードマークの魔女っ子帽子を脱ぎ臨戦態勢を整える。

 

 そんな様子を見ていた甘寧がマジかと呟くも『二人で好きに決めればいい』と月影。

 周泰は月影軍らしさのある決め方に納得し、孫権は鳳統が脱いだ帽子を被って遊んでいた。

 

「どうかな? 似合ってる?」

「似合ってるけど士元の帽子だ。パクるなよ」

 

 やはり機嫌の良い孫権は愛られる二人を誰よりも微笑ましく余裕ぶっこいて眺めていた。

 この城へやって来た当時の鋭い眼光はどこへやら。平和になっていく日々の中で孫権はすっかり丸くなり、そしてその体重も増加傾向にあることを、当の本人すら知る由もない。

 

 そして他の幕僚達も諸葛亮と鳳統に近づいては囃し立て、勝負の行方を楽しんでいる様子。

 

「どう見る大将。勝敗予想は」

「勝敗ねえ。見たところ互角そうだが……」

 

 文鴦に声をかけられた月影は考える。

 見たところ腕力的には互角か。小動物にも完敗しそうな二人だが、パっと見の印象は互角。

 

 勝敗を分けるのは何か。考えていると諸葛亮と鳳統にアドバイスを送る者の姿が目に入る。

 

「いいか気合いだ! 気合いで押し切れ!」

「腕相撲は気合い。気持ちで勝利を掴む!」

 

 諸葛亮に対しては魏延が根性論を強く推し、勢いで勝利を掴むようにと檄を飛ばす。

 

「ええか技術や。腕相撲は技術。体重乗せて手首も曲げとけ。拮抗した相手ならそれで勝てる」

「腕相撲は技術。なるほど深いです!」

 

 鳳統には鄧艾が理論的な言葉を贈る。

 その両極端なアドバイスが耳に入った月影は、どちらが勝つのかを簡単に察してしまう。

 

「指示役の差が歴然過ぎて流石にな。鄧艾はズルい気もするが……まあ、それも技術のうちか」

「オレなら腕ごとへし折るぜ」

「お前に小細工は通じんわな。あの二人もそんな風に……ならんでいいか。脳筋軍師はちょっと」

 

 諸葛亮と鳳統。両名と親交の深い者によるアドバイス。これがそのまま勝敗を分けた。

 互いに机に肘を立て、右手を握り合って組むも、左手の使い方に決定的な差が出ていた。

 

 諸葛亮は左手を腰に置いて息を吐くも、鳳統は机の角を持ち体重を乗せられる態勢をとる。

 鄧艾を除いた、その場の全員が『アカン』と内心で思うも、腕相撲初心者の諸葛亮はそれに気づかない。腕力では拮抗する両者。開始の合図が告げられると、勝敗はすぐに決してしまう。

 

「よし! かったかった!」

「ああ! 負けちゃったぁぁぁ!」

 

 ぷるぷる腕相撲の軍配は鳳統に上がる。これにて筆頭軍師を巡る勝負に決着がついた。

 

 月影軍、筆頭軍師鳳統。副軍師諸葛亮。

 当代屈指の軍師二名が加入した月影軍。その躍進は既に約束されたも同然であった。

 諸葛亮と鳳統の加入後に月影は広く領内の人材を招き入れ、翌月には新体制を固めていく。

 

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