どーも、凛です。



今回は、ゆたさんの爆誕祭用に書き上げた短編ものです。


うpが遅くなって申し訳ありません。


上手く書けたかわかりません…
なので感想下さい(笑)




ゆたさん誕生日おめでとうございます!

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ななルシ

 

 

2017年1月1日。夜。

新しく年が明けると、忙しさが少し落ち着き、さらに寒さが厳しさを増す。

そんな中、彼女は最近いつも暖かく迎えてくれる布団にまっしぐらに向かっていた。

その足は想像以上に軽いものだ。

それが新年を迎えた喜びかどうかは彼女だけが知るのみである。

 

明日もやることがたくさんある。

新年は嬉しいことが一気にやってくる。去年は創・獣神祭など、忙しくも楽しい一年だった。今年はどんな年になるだろう。

明日はどんなことが……。

 

そんな期待を胸に、彼女は初夢の世界へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───い」

誰だろう?私を呼んでいる──。

 

「──、お……」

ん~…なんだろう。懐かしいような、心踊るような…。

 

「おい‼」

「ぴゃい‼」

怒号とともに、彼女は体を跳ねさせる。

そこには今までの自分の部屋ではなく──

暖かい陽光降り注ぐ森の中だった。

くるりと辺りを見回すとまさにおとぎ話に出てくるような、美しい森だった。

朝露だろうか。木々の一枚一枚に細かく光る小粒の真珠たち。

それがまるで歓迎しているかのように、陽光とともに優しく光り輝いている。

少々神秘的な場所にゆたは魅入った。

しかし、それも数秒。ふと視線を感じ、振り向く。

先程の声の主だろうか──。

普通に振り返った、つもりだった。だが、その声の主を視界に捉える彼女の時間はスローモーションになる。

そこには彼女の大好きな『彼女』が玉座とも呼べる立派な椅子に座りながら待って…いや、鎮座していたのだから。

 

 

「る、ルシファー…?」

 

そう、ここがどこかはわからないが、その容姿は今まで自分が多く手掛けてきたイラストの題材だ。

反逆の堕天使・ルシファー。とあるソーシャルゲーム(モン◯ト)に出てくるキャラクターだ。

金髪に、やや赤みがかった双眸に豊満な胸。そして美脚。

その美しさの下からこちらを押し潰すような、圧倒的な存在感を醸し出している。

どこをどうとってもルシファーだった。

 

「我が名を知っておるのか。…まぁ、それも当然と言えば当然か」

 

自らの椅子に深く座り、全く動じる素振りすら見せない。

ゆたはここが何処かなどどうでもいいようで、目の前の美しい存在に、好きなものに、心奪われていた。

口からは「生ルシ…生ルシ…」と普段なら決して言わないような発言を小声で繰り返していた。

その様子にルシファーは、最初こそ若干引きぎみだったが、その対象が自分だと、自身の存在だと認識すると気分を良くしたのか二人きりという状況だからか、口が普段よりも軽くなる。

 

「お前は人間か?何故このようなところにいる?」

 

その質問にやっと半分正気に戻ったゆたはこの状況を思い出す。

 

「あ、はい、人間の、ゆたです。

私もなんでこうなったのか…わからなくて…」

「わかるところまででいい、なにか思い出せ」

「う~ん、思い出せといわれても…お正月にお布団に入ったらここにいたとしか言えないんですが…」

「正月?お前たちの世界も正月か」

「も、ということはこっちも?」

「うむ」

「へぇ…って、ここはどこですか!?私戻れるんですか!?」

 

状況を的確に理解しはじめたゆたは両手をバタバタと動かしながら混乱に陥る。まるで狂乱の北◯百裂拳のようだ。

 

「お、落ち着けゆた!

…大丈夫だ、この堕天の王たる我がお前を必ず元の世界に戻してやろう。安心しろ」

 

ゆたはこの時「自分は今までずっとルシファーを推してきて良かった」と思った。このとき彼女の目には冗談ではなく、確実にルシファーに後光が差していたのが見えた。

元の世界に戻ったら今よりももっとルシファーを崇め奉らなければ、と両目に涙を滲ませながら思っていると。

 

「…だが、条件がある。」

「…っ!?」

 

その発言に、ゆたに一瞬恐怖のようなものが走った。

今まで生きてきた中では味わったことのないこの感覚は、殺気なのか、それとも威嚇なのか。

忘れていたとはいえ、彼女…ルシファーは人間ではない。

元の世界に戻るにはどれだけの労力と身を削らなければならないのか。

おそるおそる条件とやらを聞こうと振り替えると…。

 

「べ、別に大したことではないのだがな…」

 

もじもじと少し顔を赤らめながら髪をいじる乙女。いや、普通の女の子が座っていた。

ゆたが今度は別の意味で困惑していると、かの女の子が意を決したように腕を組ながら、立ち上がる。

 

「我に、正月の過ごし方を教えよ‼」

「……はい?」

 

 

 

そんなこんなで威厳を少し失いかけているルシファー様の先生(お正月限定の)に就くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

「……で、何を教えましょうか…」

 

ルシファーの話を詳しく聞くところによると、毎年毎年この正月とやらに詳しい和の神達(スサノオやアマテラス)のペースに着いていけず、四苦八苦している、とのこと。また、坂本に教わるのも癪だし、他の女の子達にも気軽に聞きたくもなく、たまたま出逢い親近感を覚えたゆたに聞きたいということだ。

 

それにしても、とゆたは思った。

教えるのは別に構わない。むしろ元の世界に戻れるならこの程度ならば好都合だった。

そこは良い。だがなにを教えろと言うのか。

お正月はお正月だ。そんなことはルシファーも知っているだろう。

ならば、とゆたは口を開く。

 

「分からないこととか、聞きたいことを教えますよ!」

 

ゆたは大きく両手を広げて質問を迎え撃つ。

そうだな…と片手を顎に持っていき、しばらく考えるルシファー。

 

「…一富士、二鷹、三茄子というものがよくわからん」

「…なんだかルシファーがそんなこと言うなんて、ちょっと面白いね」

「そうか?我の知識も全能ではないということだ。

嘆かわしいことにな」

「ふぅ~ん…」

「それで、この単語はなんだ。なんの規則性もないように……ん?

ふふっ…そうか、わかったぞ」

 

にやりと口の端を吊り上げるルシファー。

と、すぐさまゆたの右手をとり、自らの胸に押し当てる。

ゆたの右手は圧倒的な弾力を誇っているそのメロン畑に埋まっていく。

指をわずかにでも動かせばすぐに埋まっていく富士などありえて良いのか。

彼女は今までには感じたことのない柔らかさに、赤面しパニックを起こしかけていた。

 

「これで富士、だろう。さて鷹、は…」

 

いまだメロン畑からてを離せていないゆたの前に、大きな紫紺の翼が顕現する。

そこでようやくメロンから手を離す。

少し名残惜しい右手は、何もない場所で形を変えずに留まっていた。

 

「これで2つ埋めたぞ。で、茄子を取りに行けば良いのか?」

 

ドヤっとするルシファー。

ゆたは慌てて止める。

 

「ち、違う違う!落ち着いてルシファー!

とりあえずそれしまおう!…ね!?」

「う、うむ…。お前もな…」

「というか、そもそもが違うよ、ルシファー。これは夢の話しだよ」

「夢?」

 

翼をしまいながらルシファーは首をかしげる。

 

「うん、新しく年を迎えて初めてみる夢のことを初夢って言うんだけど、そこに出てくると縁起がいいって言われるもののことだよ」

「ほう」

「富士山ってわかる?あれって下に向かって末広がりだから、子孫繁栄。鷹は高く空を飛ぶから運気上昇、茄子は実に毛がない植物だから怪我がないって言う風に意味があるんだよ。本当は5だか6だかまであるみたいだけどね」

「なるほど、でてきたもので新しく迎えた年がどのような年になるかわかる、というものか。願掛けに近いな」

「まぁそんなとこかな」

「ふむ、理解出来たぞ。それでだがな、次は………」

 

 

 

 

─────────────

 

 

 

 

どれくらい経っただろうか。

ゆたが知る限りの和のお正月の風習や単語の意味を教えた。

ルシファーは満足したのか自分の玉座に座り直し、足を組みながら微笑んでいた。

 

「礼を言うぞ、ゆた。我はとても満足だ」

「そ、そう…良かったよ……」

 

代わりにゆたは大いに疲れていた。

常識を教えることはこれほどまでに大変だったのかと両手を地面に付き、肩を落とす。

 

そんなゆたが目に入ったルシファーは少し焦ったように横に目をそらす。

しばしの沈黙が流れた後に、ルシファーが静かに口を開く。

 

「…さて、名残惜しいが、ゆたを元の世界に送ろうとしよう。

共に話しができて嬉しく思う」

「……あ」

 

そうだ、とゆたは改めて思う。どれくらいここにいたのかはわからないが、元の世界に戻るために今まで話していたんだと気付くと途端に寂しいような、残念な気持ちになる。

ルシファーを眼前にして、改めて彼女のことを美しいと思った。

まるで二次元から飛び出してきた、いや、この場合自分が三次元から飛び出してきたのだろうか。とにかく、不思議で神秘的。言葉に形容しきれないような、言葉にしたくないような。複雑な気持ちだった。

 

「…そんな顔をするな、ゆた。愛らしい顔が、台無しではないか」

 

愛らしいと、言ってくれた。

静かにこちらに語りかける彼女は静かにゆたの手をとって立たせる。

 

ああ、もう最後なのだ。元の世界に帰る時なのだ。

それを心のどこかで感じた。感じてしまった。

最初に流しておけば良かった。最後になんて、格好が悪い。

ファンがスターに握手会などで触れ合って涙を流すように、最初に──。

ダメだ。

力が抜けていくように、両頬を雫が伝う。

 

押し寄せる、別れの涙。

止まらない、嬉し涙。

 

その2つを、両の掌で受け止めるように王は優しくぬぐう。

その体が、膝が、地に付く前にしっかり抱き締める。

今度はいきなりその翼を広げたりしない。

ゆたを思いやるように、大きく伸ばしていく。

 

「…これで最後な訳ではない。互いにまた会うこともあろう」

 

「…うん、…ぅん、…っ」

 

二人はゆっくりと宙に浮く。

同時に、二人をずっと暖かく見守っていた森の朝露たちも舞い上がる。

そして二人はその朝露のなか、さらに上昇し続ける。

 

「…ゆた、見てみろ」

 

「…?」

 

言われて周りをルシファーの腕の中から見やると──。

 

 

「……きれい…」

 

 

二人を囲むようにルシファーの環状のサークルが薄い青色に輝く。

その中には中心にゆたとルシファー、周りには朝露が、陽光とサークルの輝きで美しく光輝いていた。

 

「…これでは涙か朝露か…はたまた宝石かわからんな」

 

 

二人は顔を見合わせて笑う。

そのゆたの顔にもう涙はなかった。

これからこうして笑うことはないのかもしれない。

しかし、ここでこうして逢えたこと、話したこと、笑ったこと。

彼女らは決して忘れないと、無意識に刻んでいた。

 

 

「…では、元気でな」

「…うん、ルシファーもね」

「ふっ、誰に言っている」

「ふふっ、それもそうだね」

 

では、とルシファーは片手を空に掲げる。伸ばした指先に様々な色をしたエネルギーのようなものが集約されてゆく。

それは少しずつ球体となっていき、徐々に膨張をはじめた。

そしてバレーボールほどの大きさになっただろうか。ルシファーはその球体を宙に放る。

すると球体が弾け、ゆたとルシファーの真上に人一人が通れそうなワープホールのようなものが出現した。

中はキラキラと光っていて、時折光の粒が落ちてくる。

そのなかで手を差しのべるルシファーに今日何度目かのときめきをおぼえる。

 

「さぁ、ここを通ればお前たちの世界に行けるぞ」

「ありがとう、ルシファー」

 

お礼を言い、ルシファーの手をとる。

するとまた二人の体は上昇する。

あともう少しでワープホールに触れる、というところでルシファーがゆたの手を少し持ち上げ、体をルシファーのほうへ向けさせる。

それでも二人は上昇を続けている。

 

「ああ、そうだ、ゆた。少し早いが───」

 

ルシファーの顔に無邪気な、屈託のない笑顔が広がると──。

 

「誕生日おめでとう。これからも我のことを存分に描くと良い。

我は…とても楽しみにしているぞ」

 

 

最後に大輪の笑顔を咲かせるルシファーの顔は、柔らかな光の奔流に飲まれ白く、白く。そして──薄くなっていく。

その白さとルシファーの顔が、姿が、曖昧に見えてきたあたりでゆたは気付く。必死にその腕を伸ばして彼女の腕をとって伝えようとする。

私も───と。

書かせてくれてありがとう、と。

会いに来てくれてありがとう、と。

祝ってくれてありがとう、と。

 

これからもよろしく、と───

 

 

 

 

 

 

「ルシファー‼」

 

伸ばした手は、空をつかむ。

 

そこは───

 

いつもの自分の部屋だった。

 

いつも見ていた天井を眺めながら、空をつかんだ掌を見る。

ゆっくりとその手を額に移動させ、手の甲を押し付ける。

大きなため息。

今が新年明けて二日目なのを完全に失念している行動だったが、そんなことは彼女の頭の中にはなかった。

 

「…言えなかった、なぁ~…」

 

なんだか夢だったような、夢じゃなかったような、不思議な気持ちだ。

でも、なにか大切なものをもらったような。

 

「…また描いてたら、会えるかな、ルシファー…?」

 

それまでに、もっと綺麗に、もっと可愛く描けるようになってるからね、と心の中で決意した。

これが新年の抱負になったのは、そう時間はかからなかったという。

 

 

 

 

因みに、

「…はっ!もしかしたら、二度寝したらもう一回会えるかも!?」

…と再び掛け布団を手に取った彼女の希望は叶ったとか叶わなかったとか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新年二日目の早朝。

一人の女性が周囲に人がいないことを確認すると、そのフードを華麗にはずした。

風に美しい金の髪が踊る。その金髪は、今昇ってきた太陽の光を受け、さらに輝きを増していく。

美しい。そして神々しい。そんな言葉で迎えるしか今の人類には出来ないだろう。

 

 

彼女はひとつ小さくため息をつき、太陽を背に後ろへと振り向く。

 

「…一富士、二鷹、三茄子───」

 

まるで歌うかのように、その形の良い口から言葉が紡がれる。

 

「…四扇、五煙草、六座頭───」

 

そしてその口が一瞬ほころぶ。

 

「…そして、七堕天王」

 

自らが作った最後の縁起ものは、どんな考えで作ったのか。

そしてどんな"願掛け”なのだろうか。

それは彼女だけが知るのみである。

 

「お前はこの一年、良い年になるであろう。

…我の期待を裏切ってくれるなよ───ゆた」

 

その顔は自信と喜びに満ち溢れた、いかにも王らしからぬ笑顔だった───。

 

 

 

 

 

 

END

 

 


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