王騎をはじめとする秦国軍は咸陽に凱旋した。
そして、大王・嬴政の前で論功行賞が行われる。
信(政………………。)
いつもとは違う礼装に包んだその王を見るのは信にはやはり新鮮に思えた。
そして、論功行賞が始まった。
竹簡を読み上げるのは軍総司令・昌平君である。
昌平君「まずは第一功 戦を勝利に導いた総大将・王騎将軍!」
オオーッと文官から、王騎軍から、歓声が上がる。
王騎はンフと一笑すると、嬴政の前に立て膝をついて、嬴政のもとに跪く。
昌平君「王騎将軍には宝物15点、爵位1階級昇級、ならびに金10000と然るべき土地を授ける。」
政「王騎、これからも秦国のため、よろしく頼む」
が
王騎「それは出来ない相談ですねェ 大王。」
政「?!」
一同はどよめきたつ。
昌平君「……………どういうことでしょうか?」
王騎「私、悟ってしまったのですよォ。
六大将軍、三大天の時代は既に過去の時代であると。
完成され、伝説の時代となりつつあることを。
そして、これからの時代は、新たな世代の時代となるでしょう。
この 童 信のような………………ねェ?」
王騎はその巨大な手で信の手を掴む。
信「お、王騎……………将軍…………………。」
王騎「ゆえに大王。 申し訳ありませんが私は貴方と共に中華を歩むつもりはありません。
ですが、 私は大王の行く末を見守っております
どうか偉大な王におなりください。 大王。」
王騎は自らの席に戻った。
一同は黙り込んでいる。
昌平君は構わずに竹簡を読み上げる。
昌平君「続いて、第二功 百人将ながら、かの六大将軍・摎を以てしても討てなかった敵総大将・龐煖を自ら討ち、戦局を決定づけた百人将・飛信隊・信!」
またさらに大きなどよめきが場を支配する。
「百人将で第二の功を? 」
「しかも、六大将軍・摎を以てしても討てなかったという総大将を自ら?」
昌平君「飛信隊・信! 前へ!」
信「え、は、は、うっす!」
緊張のあまり、信はぎこちない動きで政の面前に出る。
政「まさか、もうこの場で会えるとは思わなかった。」
信「へへっ。 俺もだぜ」
信からはいつの間にか、緊張が消えていた。
昌平君「飛信隊・信には宝物8点、金2000を与え、
住居のある風利の地を拡張。
加えて爵位を3階級昇級、将位を三百人将に昇格。
その後、然るべき手柄を以て千人将に昇格させる!」
政「これからも、秦国のために尽くして欲しい。」
信「あ、ありがかく。」
信は立て膝をついて跪く。
そのしっくりと来る光景に目を奪われなかったものはいなかったという。
そして第三功・騰、 第四功・蒙武の表彰などが行われ、論功行賞は終わりを告げた。
信「さて、帰るか」
と、そんな信を王騎は捕まえる。
王騎「後で私の城にいらっしゃい 童信?
いいものを差し上げましょう。」
信「いい物?」
王騎「それは来てからのお楽しみです。
待ってますからねェ? 童信。」
王騎は信に返事をさせる暇も与えずに去って行った。
数日後
信「このさき…………だったよな、渕さん?」
渕「は、はい。 間違いないはずです…信殿」
三百人に増えた飛信隊を引き連れ、信は王騎の城に向かった。
するとあと1里というところで。
ドドドド という土煙が巻き起こり、王騎の騎馬隊がやってきた。
王騎「来ましたか 童信?」
信「それで、何をくれるんだ? 王騎将軍?」
録嗚未「こ、こいつ………!! 殿を」
隆国「黙れ録嗚未。 」
王騎「その前に、龐煖を討ってくれた礼を言い忘れていました。
礼を言いますよ 童信。」
信「い、いや、礼を言われるようなことじゃねえよ」
王騎「実は龐煖さんには借りがあったのですよ。
本来なら私、自ら叩き潰すつもりでいたのですが、貴方に取られてしまいました。
童信の分際で、やるじゃあありませんか コココココ」
信「その因縁って……………六大将軍の摎とかいう将軍か?」
王騎「ええ、 …………まぁ、話すと長くなりますからこの場では話すつもりはありません。
それで、これが貴方への礼です。」
王騎は自らの矛を信に手渡す。
一同、あっけに取られる。
信「い、いいっ!? お、王騎将軍………いいんすかコレ………。」
王騎「童信。 その矛は今日から貴方の物です。
今はまだ貴方には重いでしょうが、いずれ、中華に名を轟かすその時は、その矛と共に、思う存分、暴れまわってください。
貴方には期待していますよ 飛信隊 信」
その後、王騎は完全に前線を引退。
翌年には病死する。
まさに時代の終焉を象徴し、燃え尽きるかのような死であった。
王騎軍を継承したのは王騎軍副官の騰である。
この騰が、後に王騎軍を率いて韓を滅ぼし、内史騰と呼ばれるのは当分先の話だ。
(終わり)
やっぱり原作の王騎将軍の死は信の糧としては正解でしたね