魔法少女リリカルなのは~新たな人生を送る転生者~ 作:れお3
第0話 「終わりという名のプロローグ」
視界が真っ暗だ――
黒く――
黒く――
どこまでも深い。
その暗さが俺の過去のトラウマを思い出させる。
必死にその暗闇から抜け出そうとする。頭を動かし、目を見開く。次に見えた色は……白。黒とは真反対の白。今度はどこまでも真っ白で、吸い込まれそうなほどの白。
その美しさに数秒か見とれていると、ふと、あることに気づく。……俺の身の回りにはこんな真っ白しか視界に入らない場所などない。
(ここは……どこだ……)
どうやら仰向けに倒れていたようで、体を起き上がらせたあと、首を動かし、辺りを確認する。そこにはありえない状況が続いていた。白が横にも奥にも伸びているのだ。白一面とはまさにこのことだろう。
「おお、目を覚ましたようじゃの」
急に後ろから声が聞こえた。反射的に後ろを振り向く。そこにはひげが地面に着きそうなほど長く伸びていた。顔にはシワが何本も入っており、明らかに高齢者だと分かった。
「あなたは……誰だ?」
単刀直入に訊く。不自然なこの場所。そこに現れた謎の老人。正体を確かめようとしない奴などいるものか。
「名乗る前に一ついいかの?」
「どうぞ」
俺の了解を得ると、老人は凄まじい速度で膝を曲げ、手を地面につき、頭を限界まで地面に近づける。世に言う土下座だ。
「ごめんなさい!!」
目の前で、超が付くほどの老人が高校生である俺に何度も頭を下げている。不思議な空間、誰一人、俺と目の前で土下座している人以外いないこの状況はとてもカオスだった。
「ちょっと待ってくれ! ……状況が良く掴めないんだけど」
「怒れないで聞いてくれる?」
「まあ、善処はする」
「では、改めて……」
◇◆◇
「というわけなのじゃ」
「なるほど……」
目の前の老人が話した内容はこうだった。どうやら、目の前で俺に申し訳なさそうな顔をしてる奴は神らしく、ついさっき、俺の世界での存在証明とかいう紙を誤ってシュレッダーに入れたらしい。
それが消えると、世界で俺という存在が認知されなくなり、消滅するらしい。
「神の仕事は紙仕事か……」
「おっ、上手いこと言うの、お主」
「御託はいい。俺はこれからどうなる?」
そう、全てはもう後の祭りだ。くよくよ考えたってしょうがない。今重要視すべきは俺の未来についてだ。
「こういうケースは大抵、他の世界に転生するのが基本なのじゃが……」
「元の世界に転生はできないのか?」
「無理じゃ……再び、存在証明書を書いて、戻ったとしても誰もお主を覚えておらぬ。それはある意味いないと同じじゃ」
「そうか……」
「くよくよするでない。元の世界には戻れなくても、わしがそれと同等の待遇をしてやる」
「例えば?」
「ん~、特典かの? 転生するに当たって、その特典の内容が付与される。人気なのが、その転生先がアニメの世界で、その世界での最強能力とか」
「……それは魅力的だが、俺は何もいらない」
「そういうわけにはいかん。何かなんでもいいので言ってみるのじゃ」
どうやらこの神様、何か言うまで引き下がってくれそうにない。
「じゃあ、名前はこのまま」
母と父から貰った大切な名だ。捨てたくなどない。
「後、二つじゃ」
二つまでいいみたいだ。それじゃあ……。
「記憶の引き継ぎと……顔をこのまま?」
「……そんなものでいいのか?」
「ああ、構わない」
「珍しいのぉ……」
とは言われても、あまり浮かばないのだ。超能力とか、アニメの世界とか魅力的だが、そんなの持ってたら早々と死にそうな予感がする。
神様は空に手を動かすと、下から机と紙を出した。そこになにやら色々と書き込んでいる。
「良し、できたぞい。場所はこちらで勝手に決めさせてもらった。リリカルなのはの世界じゃ。そこで、一般人として暮らすも良し、原作キャラに話しかけるも良しじゃ。そして小学2年生として転生してもらう。そこらへんが一番、どちらを選ぶか分けやすいからの」
「分かった」
文句はない。リリカルなのはの話は前世で見たことあるし、二年生も記憶の引き継ぎをギリギリ隠せるくらいの年齢だろう。
「ところで、なぜそこなんだ?」
「前のやつがそこに行ったのでの。設定が簡単なのじゃ」
「えっ、もしかしてその前のやつが俺が行くところと同じところなのか?」
「心配せんでも、そこらへんは分けるつもりじゃよ」
そう言った途端、目の前に巨大な光の柱が出現する。神に少々、説教やあいさつを済ませ、柱の中に入る。
――光の色が濃ゆくなっていく。最後にうっすらと見えるぐらいになった時に、さっきまで手を振っていた神様が急に慌て出す。こちらに向かって何か言っているが、何故か、聞こえない。
一段と光が濃ゆくなる。意識が、全てが光に飲まれる直前まで、何故、神様が急に慌てたかをずっと考えていた。